ACTIVE RANGER

アクティブ・レンジャー日記 [北海道地区]

北海道地方環境事務所のアクティブ・レンジャーが、活動の様子をお伝えします。

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2016年9月30日

2件の記事があります。

2016年09月30日ルサカフェ オープン中(9/28−10/3)

知床国立公園 羅臼 高橋法人

 ルサフィールドハウスでは9月28日から103日までの期間限定で今年もルサカフェをオープンしています。






 インフォメーションではドリンクの他に、羅臼町で作られたお菓子や総菜パンも販売されており館内でいただくことが可能です。











 根室海峡や国後島を見ながらゆっくりくつろぐことができます。

 羅臼町にお越しの際はぜひお立ち寄りください。




おまけ




 ルサフィールドハウス近くのルサ川ではサケ・マスが多く遡上してきています。

 体長1m以上の魚群は圧巻です。こちらの観察も併せていかがでしょうか。



 熊には注意してください。

 近くでサケを食べているかもしれません。

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2016年09月30日「ちょっと川の様子を見に行ってくる」

知床国立公園 ウトロ 桑原 靖則

 まさかもう、9月が......終わる......!?

 今年は台風に次ぐ台風で、雨に降りこめられているうちに夏が終わってしまった感のある知床国立公園・ウトロの高橋です。冬の爆弾低気圧による暴風雪には慣れましたが、夏にこんなに台風が直撃するのは初めてです。北海道は台風来ないんじゃなかったのかー!!!

 

 さて、嵐の日の決まり文句と言えば「ちょっと川の様子を見に行ってくる」ですが、我々も8月から10月にかけ、近隣の河川へ巡視に行きます。何を見に行くかというと......。

 

ウトロの町と知床国立公園の境界を流れる幌別川

ウトロの町と知床国立公園の境界を流れる幌別川

 

 ウトロの町外れにあり、知床国立公園との境界線となる幌別川。その河口では8月中旬頃からカラフトマスが遡上を始めており、マス釣りの人々で連日大盛況です。しかしマスを狙うのは釣り人だけではなく......そうです、ヒグマです。今まで蟻などを舐めてギリギリ口を糊していたヒグマ達ゆえ、マスの遡上は待ちかねた瞬間なのでしょう。人がいようが爆竹を鳴らされようが、退かず、媚びず、省みない、覚悟が完了している個体が居着いて、釣り人とヒグマの接近遭遇トラブル(釣り人が自転車のサドルを壊される、ザックを奪われる、釣ったマスを奪われる等々)が連日発生していました。

 

 環境省や林野庁、北海道、斜里町、知床財団ら行政関係者で構成され、知床におけるヒグマ関連の諸問題に連携して対応にあたっている「知床ヒグマ対策連絡会議」では、今回の事態を重く受け止め、このままエスカレートしていけば人身事故発生待ったなしであるとして遂に「幌別川河口への立ち入りを当面禁止する」という緊急措置を決定したのでした。

 

立入禁止の看板とロープが設置された幌別川河口

立入禁止の看板とロープが設置された幌別川河口

 

 巡視をしていて感じるのは、ベテランから初心者の方まで、知識や意識にだいぶ差があるということです。声をかけると「知ってる知ってる、全部ちゃんと持って帰るから」と魚の残滓が入ったゴミ袋を見せてくれる方がいる一方で、川辺に血のついたエラや内臓が散らばっていたり......。シーズン中は毎日入れ替わり立ち替わり大勢の釣り人が昼夜問わず訪れるわけで(良い釣り場所をとるために深夜1時~2時から河口に向かう方も!)、人によって知識・意識がまちまちなのもしょうがないのかもしれません。

 

釣り人でにぎわう日中の幌別川河口。朝夕のマズメ時には人が倍増する(らしい)

釣り客でにぎわう日中の幌別川河口。朝夕のマズメ時には人が倍増する(らしい)

 

 とはいえ「これぐらい、大丈夫だろう」という行動が積もり積もった結果、ヒグマが人と食べ物を結びつけて学習してしまうと、もはや釣り人だけに限った話ではなくなり、まったく関係のない人々までヒグマに襲われかねません。よって緊急措置として今回の立入禁止になったのですが......。大多数の良識ある釣り人、これまでルールを守って釣りをしてきた皆さんの立場になってみれば、ごく一部の心ない方のためにバッサリ全面立入禁止とは納得いかん!という気持ちは想像に難くありませんし、正直、個人的にも共感してしまうところです。

 

 この立入禁止措置を受けて、地元の方を含む幌別川常連の釣り人達から「今回の立入禁止に関して説明を受け、話をする場を設けてほしい」という声が上がり、去る9月8日、釣り人達との意見交換会が開かれました。

 

地元釣り人と行政関係者間でおこなわれた意見交換会

 

 長年、幌別川で釣りに親しんできた地元釣り人達の思い、現場でヒグマ対応に追われる職員らの葛藤等々、活発かつ建設的な意見が交わされ、最終的に次の3つをおこなうことで幌別川の立入禁止解除を検討する方向で結着したのでした。その3つとは......

 

1. 釣り人らで団体を立ち上げ、ルールの周知・違反者への注意をおこなうこと
釣り人ら有志による団体「幌別の釣りを守る会」を立ち上げ、上記2点を含む幌別川の安全な釣り利用のルールについて、釣り人同士で周知しあう。ルールに違反している場合は注意し、改善を促す。

 

2. サケマスの残滓は投棄せず、回収ボックスに入れること
幌別川河口にサケマス残滓回収ボックスを設置し、さばいた内臓等はすべて臭いが出ないようビニール袋等に入れた上で、このボックス内に保管するなど管理を徹底し、ヒグマを誘引しないようにする。

 

3. 荷物の管理を徹底する
荷物を肌身から離さず管理して、ヒグマに奪われないようにする。

 

 

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 9月16日、幌別川の立入禁止が解除される日が来ました。河口の手前には、ヒグマでも破壊不可能な鋼鉄のサケマス残渣回収ボックス「とれんベア」が設置されています。その隣に新たな幌別川利用ルールを示した大看板が、「幌別川の釣りを守る会」会員らと行政関係者らによって打ち立てられ、立入禁止の立札とロープが回収され、晴れて再び幌別川の釣り利用が解禁となったのでした。

 

幌別川河口に設置された大看板

関係者らによって幌別川河口に設置された大看板と「とれんベア」

 

 「釣り人とヒグマの問題」は、毎年サケマス遡上の時期になると繰り返されてきました。知床では人とヒグマに関わる課題がいくつもあります。あちらを立てればこちらが立たないような難題ばかりの中、今回の一件のように行政だけではなく、利用者も含めたすべての関係者が話し合い、協力しあって建設的な方向に前進したのは、とても素晴らしいことだと感じています。もちろん今回設置された残滓回収ボックス等々も正しく使用されなければ元の木阿弥......ですが今後「ちょっと川の様子を見に行ってくる」のが楽しみになりました。

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