えりも自然保護官事務所
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2016年10月12日出張授業 えりも町東洋小学校
えりも自然保護官事務所 近藤武
えりものアクティブ・レンジャー近藤です。みなさん、いかがお過ごしですか?
えりも町も肌寒い日が増えてきました。ストーブの恋しい季節です。
豊似岳の山肌も、冬に備えて紅葉が始まりました。
さて、9月のことになりますが、えりも町の東洋小学校の児童3名に出張授業を行いました。
テーマは「ゼニガタアザラシの分類と生態」です。
当日は新聞社の取材も入ってやや緊張したスタートでしたが、クイズを出題すると児童(先生も含めて)が積極的にリアクションしてくれたので、しだいに和やかな雰囲気になりました。難しい問題もありましたが、しっかりと理解してくれたようで、スムーズに進みました。
ゼニガタアザラシの性別の見分け方を、本物の剥製を使って説明しました。特別ゲストの登場に興味津々です。ちなみに、ゼニガタアザラシはおなかの穴(生殖孔)の位置で性別を見分けることができます。
10月には、第二弾「ゼニガタアザラシと漁業の関わり」のテーマで授業を行う予定です。
AR日記でもご紹介したいと思いますので、お楽しみに。
2016年09月05日【日高山脈】十勝幌尻岳 ~登山調査報告~
えりも自然保護官事務所 近藤武
えりも自然保護官事務所の近藤です。みなさん「山の日」はいかがお過ごしでしたか?山にでかけましたか?北海道は典型的な夏空模様となり、すばらしい登山日和となりました。今回の日記では、「十勝幌尻岳」で行った登山調査について報告いたします。
十勝幌尻岳(1,846m)は百名山の幌尻岳(2,052m)と区別するために、通称「カチポロ」と呼ばれています。どちらの山も「ポロシリ」という山名を持っていますが、これは「ポロ・シㇼ」=「大きい・山」というアイヌ語に由来しているそうです。その名に恥じず、十勝平野から望む十勝幌尻岳の姿は雄大で優美。そして、山頂から見渡す日高山脈と十勝平野の大展望は圧巻です。カチポロは、眺めて良し登って良しのステキな山です。
日高の山は沢登りから始まりますが、十勝幌尻岳の沢は随所に写真のような丸太橋がかけられていますので、山頂までは登山靴で登ることができます。沢沿いは涼しく、快適でした。
沢から離れると、日高の名物「急登」が待ち受けています。斜度はきついながらも、ササの刈払いが行き届いているので、一歩一歩に集中して黙々と登ります。山頂に近づくと日射が強くなり、暑くなってきました。
山頂に到着すると、十勝平野に広がる大雲海と南北に連なる日高山脈を望むことができました。しばらくすると、地元の中学生達が登ってきました。3年に1度の学校の行事だそうです。百名山の幌尻岳は、一般ルートでも2泊3日必要でハードルが高い経験者向きの山です。一方で十勝幌尻岳は、日帰りで登れるので登山初心者でも挑戦できる山です。初夏には登山道が雪渓に覆われていることもあるようですが、10月頃の紅葉が素晴らしい時期に登ってもいいかもしれませんね。
(追記:8/29)
※台風の影響により登山道が利用できない場合があります。入山される際は最新の情報を確認してください。※
2016年08月05日【日高山脈】 コイカクシュサツナイ岳 ~登山調査報告~
えりも自然保護官事務所 近藤武
.........早朝にあがる旗......港を往来するトラック......浜の漁師......磯の香り.........
こんにちは。えりも自然保護官事務所の近藤です。連日暑いですよねぇ~。えりもにもとうとう遅い夏がやってきちゃいました。えりもの夏といえば、コンブです。えりもはコンブのシーズン真っ盛りです。
ここ日高地方のコンブは「日高昆布」です。北海道には「真昆布」「羅臼昆布」「利尻昆布」など、各地に特産のコンブがありますが、その生産地の近くには、コンブを育てる山があります。山から供給されるミネラルなどの栄養分が、沿岸の昆布を育てるのです。日高昆布は、自然豊かな日高山脈からの恵みなのです。
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さて、前回調査を行った楽古岳に引き続き、今回はコイカクシュサツナイ岳(通称:コイカク)で行った調査をご紹介します。コイカクは、日高山脈中央部に位置する標高1,721メートルの山で、中部日高の中では比較的穏やかなシルエットを持つ山です。北には二百名山のカムイエクウチカウシ山、南には日高山脈最深部の1839峰が並び、アプローチや下山ルートとしてセットで登られることが多いですが、コイカクだけを日帰りで登る登山者も多いです。
登頂にはコイカクシュサツナイ沢の遡行と急勾配の夏尾根を直登する必要があり、簡単な山ではありません。登山の際は、十分な準備と安全登山で挑戦してください。
日高の山は沢登りから始まります。入山口から夏尾根まではコイカクシュサツナイ沢の遡行です。両岸の木に囲まれて青空がのぞき、期待に胸が膨らみます。夏尾根の取り付きからは、踏み跡をたどり頂上まで一直線に登っていきます。
...ですが、山の上は霧が濃く景色は微妙でした。(なので、写真少なめです。)
山頂からの景色はまた次回をお楽しみに!
天気が悪くても山を楽しむ方法はたくさんあります。その一つが植物観察でしょう。お花を観るために山に登るという方にも、コイカクはオススメできる山です。稜線上に上がると、植物群落に出会うことができます。この日は、イワツメクサ、エゾノハクサンイチゲ、ミヤマシオガマ、ヒダカゲンゲ、ミヤマダイコンソウなどを観察することができました。自然豊かな日高山脈は、高山植物も豊かなのです。
今年から始まる、「山の日(8月11日)」は、「山に親しむ機会を得て、山の恩恵に感謝する日」です。この機会に、日高に登り、日高昆布のおにぎりを食べ、日高の恵みに感謝をするのはいかがでしょうか。
2016年07月29日【日高山脈】 楽古岳 ~登山調査報告~
えりも自然保護官事務所 近藤武
こんにちは。えりも自然保護官事務所の近藤です。みなさん、いかがお過ごしでしょうか。今週は、低気圧の影響で、えりもでは大雨警報が出ていました。雨がひどくなると町境の国道が通行止めになってしまい、身動きがとれなくなることもありますが、今回は短時間で規制が解除されたのでほっとしております。
さて、当事務所は前回の日記のようにゼニガタアザラシを担当しております。しかし、7~8月は定置網の漁業期間外なので乗船調査は行いません。この期間は、日高山脈の調査を行っています。調査内容は、登山道の状況、高山植生、人工物の状態、及びこれらの管理状況などとなっております。今回は南日高の楽古岳(1,472m)で行った調査について簡単にご報告します。
楽古岳は日高山脈主稜線上の最南部に位置する山で、天馬街道の日高側からアクセスできます。札幌からだと、車で3~4時間程度です。登山口に近づくと間近に楽古岳を見ます。山頂部は天を突くような三角錐型で、強い存在感があります。調査日は、幸運にも晴天でした。
登山口には楽古山荘があり、誰でも利用できるようになっており、地元の山岳会によって大切に管理されていました。車を駐めて入山します。他の登山者はいませんでした。
入山後、しばらくは沢沿いの道です。この日は水量が少なく、沢の渡渉はすべて長靴で突破しました。沢のせせらぎと森の木陰に癒やされ快適に歩けました。その後、尾根を直登し稜線上に出ます。
稜線上に上がると、日高山脈が一望できました。北は大雪山、南は襟裳岬近くの豊似岳までグルッと見渡せました。西には様似のエンルム岬も見えます。快晴無風で抜群のコンディションでした。
山頂が近づくと、日高山脈らしいカール地形が現れます。その中に、エゾシカの親子がいました。こちらに気がついたのか、逃げるように山頂に駆け上がっていきました。野生動物はたくましいです。この付近で、ナキウサギの鳴き声もきこえました。
楽古岳山頂に到着いたしました。山頂標識は2年ほど前に新しくなったようで、木材から鉄骨に材質が変わっていました。GPSを確認すると標高差は 1,100m 程度でした。楽古岳は、日高らしい山歩きと緑豊かな自然を楽しめるワイルド感が魅力です。小一時間ほど休憩し下山しました。
《日高山脈の紹介》
日高山脈は、北海道の中央部を南北150キロに連なる山脈で「北海道の背骨」とも称されています。長い年月をかけて形成された地史をもち、氷河地形の「カール」や「ナイフリッジ」などがその魅力です。雪解けとともにヒグマは冬眠から目覚め、暖かくなるとカール地形や岩場の隙間などに高山植物が花をつけます。日高山脈は氷河時代を生き残った野生の王国です。日高山脈には一般的な登山道は少なく、沢を遡行し急峻な尾根を登り、稜線上はハイマツを漕ぐことで山頂にたどり着けます。自然環境は厳しく、人を寄せ付けない印象の日高山脈ですが、今回の楽古岳など、一部の山には比較的簡単に登ることができます。
2016年07月01日ゼニガタアザラシ ~登別水族館へ~
えりも自然保護官事務所 近藤武
登別マリンパークニクスに譲渡されたゼニガタアザラシについてお伝えします。
6月24日の早朝6時、えりも岬の近くのサケ定置網でこのゼニガタアザラシは捕獲されました。
今年の5月頃に生まれたメスの幼獣で、親離れした直後のこどもだと考えられています。
捕獲されてから、はじめのうちは落ち着かない様子でしたが、次第に水槽のなかでおとなしくなりました。
でも、近づいたり水をかけたりすると、「ウゥ~ウゥ~」とよく吠えます。
6月27日、登別マリンパークニクスで飼育されることが決定。
無事に譲渡先が決まり、我々も胸をなでおろしました。
まずは、体重測定を行います。飼育員さんに抱えられて専用のかごに移されます。
体重は、31.5キロでした。
続いて、採血を行います。野生のアザラシなので、病気の有無などを確認しています。
アザラシは分厚い皮下脂肪を持っているので、注射針は足ひれに刺します。
そのあと、ゼニガタアザラシは屋内の水槽に移されました。さっそく水槽の中を泳いでいました。
今後、血液検査の結果をみて、水族館の餌に慣らしてから一般公開される予定になっています。
環境省では、ゼニガタアザラシの管理計画を策定しています。
これは、えりも地域における漁業とゼニガタアザラシの共存を図ることを目標にして策定されたものであり、この計画に基づいて、ゼニガタアザラシの捕獲・譲渡などを行っています。
今後も各地の水族館などに、えりものゼニガタアザラシが譲渡される予定になっております。
2016年06月06日トッカリ防除網
えりも自然保護官事務所 近藤武
アザラシのことを、アイヌの言葉で「トッカリ」と呼びます。
えりも町の漁師さんも、ゼニガタアザラシのことを「トッカリ」と呼びます。
かつて、ゼニガタアザラシは生息数を減らしました。
しかし現在のえりも岬では、ゼニガタアザラシの生息数は増えています。
↑アザラシの捕食跡。「トッカリ食い」と呼ばれる。
ゼニガタアザラシの生息数が増えたため、サケ定置網に侵入する個体も増えており、
ゼニガタアザラシによる、漁業被害は深刻な問題となっております。
えりも自然保護官事務所では、漁業被害を減らすために、
定置網にゼニガタアザラシの侵入を防ぐ防除網を設置しました。
前回のAR日記で紹介した水中カメラは、この防除網の効果を確認するためのものでした。
↑網の中に侵入しようとするゼニガタアザラシ。防除網に塞がれて侵入できない。
網の中の魚を求め、ゼニガタアザラシが網の中に侵入しようとしています。
ですが、肩がつかえて侵入できず、ゼニガタアザラシは魚をあきらめて帰って行きました。
防除網は、ゼニガタアザラシの防除に効果があることが確認できました。
ですが、防除網をつけていても「トッカリ食い」は生じています。
ゼニガタアザラシと漁業の共存のためには、より効果的な被害を減らす方法を開発する必要があります。
2016年05月19日漁船デビュー
えりも自然保護官事務所 近藤武
えりも町東洋地区の定置網漁が始まりました。
春の定置網では、トキシラズやスケソウダラが捕れます。
実は、漁船に乗るのは初めてです。
緊張の漁船デビューでした。
定置網の漁船は10人程度が乗る小型船なので、
小さな波でも大きく揺れます。
網を引き上げるとその勢いでさらに揺れます。
この乗船調査のミッションは、魚やアザラシの行動を記録することです。
そのために、今日は水中カメラをセットしました。
うまく撮れるでしょうか。続きはまた来週。
2016年05月10日えりも岬と日高山脈
えりも自然保護官事務所 近藤武
はじめまして、4月からアクティブ・レンジャーになりました。近藤です。
趣味は登山やサイクリングなどアウトドア活動全般です。
山と海に囲まれたえりも町は、私にとっては恵まれた環境です。
これは、学生時代にアポイ岳に登ったときに撮影したえりも岬の写真です。
免許を取って初めてドライブに訪れたのがえりも岬とアポイ岳でした。
ここに戻ってきたということに、なんとなく運命を感じています。
続いてこちらは、先日えりも山岳会のみなさんと登った豊似岳からみたえりも岬です。
このように、海と山が非常に近いのが日高山脈の特徴です。
風の強い日が多く、冬は特に厳しい環境になりますが、この日は暖かでした。
趣味の山の写真ばかりになってしまいましたが、私が普段行っていることを紹介します。
奥には、先ほど紹介した豊似岳が見えます。(以前に撮影された写真です)
えりも岬の波の弱い日には、このようにゼニガタが岩の上にあがってきます。
実は、このゼニガタの個体数は近年大幅に増えています。
えりもはサケや昆布などの海産資源が豊富です。
多くのゼニガタが生息できるのは、この豊富な海産資源のおかげなのですが、
ときには、漁業で捕獲した魚を食べてしまうこともあります。
環境省では漁業への被害を減らす取り組みを行ってきていますが、
そのためにはゼニガタに関する基本的なデータが必要です。
そのために、私は毎日岬から双眼鏡をのぞいて、
ゼニガタが何頭上陸しているかを数えています。
えりもはまだまだ寒いですが、アクティブ・レンジャー近藤は、日々精進してまいります。
以後よろしくお願いします。
ついに、11月がやって参りました。私、各地から届く初雪・初冠雪の便りに心を躍らせております。
「えりもの冬、早く来い!」と、白銀の日高山脈に思いを寄せる今日この頃です。
さて、今回の授業は前回の続きで、テーマは「ゼニガタアザラシと漁業の関わり」です。前回は「アザラシの生態」にフォーカスしましたが、今回は「野生生物と人間の衝突」について理解を深め、皆で考えようという趣旨でした。発展的な内容だったので、専門用語や科学的な考え方なども説明しつつで、難しい授業内容になってしまいました。しかし、5・6年生の生徒3名は、積極的に質問をするなど、しっかり集中していました。
「定置網に装着した格子網」アザラシに開けられた穴について説明中
「定置網内部の撮影に使用した水中カメラのケース」このあと、生徒達が触ってみた
授業の最後では、これからのえりもの海での「ゼニガタアザラシと人間の共存」について考えました。アザラシも人間も、えりもの海に頼って生きる同じ生き物です。未来のえりもを担うかもしれない東洋小学校の生徒たちが、海のことやアザラシのことを、自分のこととして考えるきっかけになればいいなと思います。