ACTIVE RANGER

アクティブ・レンジャー日記 [北海道地区]

北海道地方環境事務所のアクティブ・レンジャーが、活動の様子をお伝えします。

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えりも自然保護官事務所

49件の記事があります。

2021年07月07日カルマン渦?!

えりも自然保護官事務所 熊谷 文絵

みなさん、こんにちは。

おそらく 日本一 風の強い事務所、えりも自然保護官事務所の熊谷です。

突然ですが、「カルマン渦」をご存知ですか?

細い円柱状のもの(枝など)に強い風があたったとき、風下側にできる規則的な空気の流れのことを「カルマン渦」といいます。風の渦が目に見えることは少ないですが、川などに枝を入れたとき川下にできる渦はカルマン渦と同じパターンをとるのだそうです。

この"カルマン渦"をイメージして建てられた「襟裳岬 風の館」にて、現在「2021 環境省 アクティブ・レンジャー写真展」を開催中です。

この写真展は、普段あまり業務で関わることがない皆さんにもアクティブ・レンジャー(以下、AR)の仕事を知っていただく機会になり得ると考えています。

北海道札幌管内各地で勤務するARが、それぞれの場所で業務に取り組みながら、ARだから見られる一瞬を収めた写真を展示しています。気軽には登れない山の頂からの景色、中々出会えない野生生物...ぜひ見ていただきたい写真ばかりです。

私からは、もちろん"えりもらしい"1枚を。春にだけ見られる様子を収めた写真を出展しました。

えりも以外にも道内各地を巡回します。下記スケジュールをご確認いただいた上、会場まで足を運んでくだされば幸いです。まだ人の多そうな場所へ行くのが心配な方にも安心です、今年はオンライン会場でも写真展を開催します!

この、アクティブ・レンジャー日記でも12月から開催予定。いやいや、今すぐ見てみたい!と思ってくださった方、Instagramの「hokkaido_active」で検索してみてください! 順次公開中です!

北海道は広い!全て廻るのは大変です、是非「アクティブ・レンジャー写真展」で北海道の大自然をお楽しみください!

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2021年07月06日今年の春は...

えりも自然保護官事務所 熊谷 文絵

えりも自然保護官事務所の熊谷です。

今回のタイトルは、「今年の春は...」です。

気温も高くなってきたこの7月に春の話とは少々違和感を感じる方もいるでしょう。

ですが、私にとってはつい数日前まで「春」でした。

えりも自然保護官事務所の業務のほとんどは、えりも町周辺海域に生息しているゼニガタアザラシに関するものです。

 

このゼニガタアザラシは日本に唯一定住するアザラシで、こんなにも近くで野生のアザラシが見られることは珍しく喜ばしい反面、町内で盛んに行われている定置網漁に漁業被害をもたらす一面も持ち合わせています。えりも町民の多くは漁業関係者であり、漁業被害は死活問題と言えます。

 

▲トッカリ食い

アイヌの言葉でアザラシをトッカリと呼びます。トッカリに食われてしまったサケ・マスです。

ゼニガタアザラシがえりもに生息し続けるということは、何らかえりもを選ぶ理由があるはずです。恐らくは岩礁に上陸し休息をとる習性のあるこのアザラシに適した上陸場となる岩礁が多数あること、そして餌となる魚が豊富なこと、外敵となるシャチなどが滅多に来ないことなどが挙げられると思います。

今後もこの場所でゼニガタアザラシに快適に過ごしてもらいながら、漁業被害を減らすにはどうしたらよいか...これこそ、えりも自然保護官事務所が取り組む業務です。

その業務の中のひとつ、年に2シーズンの長期に渡る乗船調査。

5月からつい先日まで実施されていた「春さけ定置網漁」に同行し、ゼニガタアザラシの漁業被害を把握したり、定置網の入口に魚は通れるがアザラシは通れない格子状の網の設置することで獲れた魚は被害を被らないようにすること、またその網の改良などを行いました。

▼今年、定置網で多く獲れた「ニシン」や「サバ」

 

こうして約2カ月の乗船調査を終えたばかり。つい最近、「春さけ定置網漁に同行しての調査」を終え、やっと春が過ぎた気持ち、という訳です。

とはいえ録り溜めた記録のまとめが残っています。これからしばらくは外に出るよりも机に向かう時間が増えます。調査用紙には漁期を思わすウロコが付いていたり海水が乾いて潮が浮いていたり。長いようで短かった調査の日々が思い出されます。

まとめの結果、どんな傾向が見えてくるでしょうか。

今回は、2カ月の漁期を終えたご報告まで。次回は漁期中の工夫をご紹介します〇 お楽しみに!

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2021年04月28日準備着々...

えりも自然保護官事務所 熊谷 文絵

みなさんこんにちは、えりも自然保護官事務所の熊谷です。

▼えりも事務所からの景色

 

山道にはまだ雪が残っているものの気温の高い日が続き、えりもではおなじみの強風も柔らかな春の風へと変わってきました。この時期、個人的には冬が終わってしまった寂しさと花粉が飛ぶなぁ...苦手。そんな気持ちが入り混じります。それでも、"春"に気分が高揚することもあるんです。

それはっ!

野生のゼニガタアザラシの赤ちゃんが見られること。

えりも町周辺はゼニガタアザラシの国内最大の繁殖地・生息地となっていますが、そのゼニガタアザラシは4月後半ごろから出産が始まり子育てのシーズンを迎えます。母アザラシから産まれたばかりの赤ちゃんアザラシは毛が新しいのでツヤッツヤ。成獣(おとな)に比べ、黒っぽく見えます。産まれたその時から泳ぐこともできますが、その動きはまだまだ拙く、こどもらしい可愛らしい姿です。

▼アザラシ親子(4月26日撮影)

 

今年初めてこどもの姿を確認しました!

2頭の間に小さな赤ちゃんアザラシがいます。波が打ち寄せる度、おとなのアザラシはシャチホコのように頭部と尾っぽを反るようにして避けますが、赤ちゃんは波を避けきれずにさらわれそう。見ていてハラハラしてしまいます。本日確認できた赤ちゃんは3頭でした。

近くにはお腹の大きな妊娠個体が沢山いたので、これから小さな赤ちゃんアザラシが増えそうです!

これらの様子を見られる目安は6月いっぱい。その後、栄養、特に脂肪分の多い母乳をもらっていた赤ちゃんアザラシは独り立ちの時を迎えます。少しだけ沖に出てこども同士で遊んだり魚を捕ったりと泳ぎ回ります。

襟裳岬の突端から双眼鏡で覗けばアザラシの子育ての様子が見られます。町施設の「風の館」には望遠鏡が置かれていますので、皆さんもぜひ!

アザラシの子育て。他では見られないこの光景はえりもの春らしさとも言えますが、アザラシとは別のこの光景も、とてもえりもらしいものです。何をしているところでしょう?

▲これは漁師のみなさんが、定置網を設置する準備をしているところです。

えりも町の襟裳岬以西では春(5月上旬~7月に上旬)に定置網漁が行われていますが、その網は周年海に入っている訳ではありません。シーズンが終われば陸に上げ、清掃や修繕をします。またシーズン開始前には網の状況を確かめたり準備をして、初日に間に合うよう決められた場所に設置します。

えりも自然保護官事務所では、今年度も"春さけ定置網漁"に同行し、アザラシによる被害調査を実施します。船に乗り始めるのはGW後からですが、約2カ月続く調査期間を前に準備の進む現場の様子を見て「この時期が来たんだな、始まる」と、ちょっとした緊張感にも包まれます。

漁師さんがよく言います。「準備は前もって、もうこれで大丈夫と何度も確認するくらいでなければダメだ」。定置網漁の準備をする漁師のみなさんの丁寧かつ確実な仕事ぶりを見ていると「えりもの海を熟知していて、だから突風に吹かれても高波がたっても予想外のことが起きてもケガなく対応できるんだ」と思います。

私も、スムーズに調査に入れるよう、調査用紙・水中カメラ・水産合羽等の準備はぬかりなく!始めることとします。

▼調査用紙と記入ボードの準備

▼水中カメラの準備

▼今年から乗船デビューの黒田保護官

船上では合羽を脱ぎ着している暇はありません。また、大きすぎても小さすぎても動きづらいので、自分に合ったサイズを身につけることも大事な準備のひとつです。

準備着々◎

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2020年10月29日錦秋の豊似湖

えりも自然保護官事務所 熊谷 文絵

みなさんこんにちは。

すっかり寒くなってきましたね。体調崩されていませんか?風邪などひかぬよう、気をつけましょう。

北海道の"秋"はとっても短い!存分に楽しみたいところですが、えりも自然保護官事務所の業務は秋が最繁忙期。11月20日頃までゼニガタアザラシによるサケ被害調査のため、乗船の毎日を過ごしています。そのため事務所と現場の往復になりがちで、知らぬ間に秋が終わってしまう年もあります。今年は秋を満喫したい!と、えりも町が誇る「豊似湖」に行ってきました。

10月27日時点で、豊似湖の紅葉はやや見ごろを過ぎたようでした。

2018年撮影の一枚ですが、一番よいタイミングではこんなにも美しい紅葉を見ることが出来ます。

この写真のタイトルは「錦秋の豊似湖」。まさに燃えるようなエネルギーを感じます。

美しい紅葉にきれいなハート型。なにかいいことでも起きそうな予感がしてきます。

この場所には多くの生物が生息しており、中でもナキウサギが人気です。この日も、カメラを構えタイミングを計っている方々がいました。

私はこれまで何度も通っていますがナキウサギを見れたことはなく、いつも鳴き声を聞いては「いるいる、元気そうだな」と思っています。他にも、気づくと足元にシマリスがいることもあり、ちいさな動物たちが楽しませてくれます。

 

  

豊似湖の紅葉は終わりでしたが、そこまでの森はどこを見ても美しく、鳥がさえずり何ともいい時間が流れます。道中大きな角を携えたオスジカがよく飛び出してきます。シカは1頭いたらそれに続いて複数頭が飛び出してくることもありますので、お越しの際は十分気をつけながら走行してください。

風が強くなる前に秋を感じることが出来ました。中々遠出しづらい今ですが、森はしっかりと季節を進めています。えりもの主要道路から外れた場所なので中々見る機会はないかと思いますが、えりもにもこんな場所があるんです、私の町内お気に入りスポットのひとつ。

これからは強風、いや暴風吹き荒れるえりも。特に12月~2月は本当に強い風が吹きます。風が強まる前に、もう少しだけ秋を楽しみたいです。えりも町にお越しの際は、暖かく、風を避けられる服装を!

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2020年08月27日盗掘防止活動で高山植物を守ろう!

えりも自然保護官事務所 熊谷 文絵

みなさんこんにちは。

えりも自然保護官事務所の熊谷です。

アザラシ業務の多いえりも事務所ですが、たまには山にも行っています○

8月中旬、振興局主催の『アポイ岳高山植物盗掘防止合同監視』活動に参加しました。

●アポイ岳とは...

北海道様似町に位置しており、標高810.23m。ここの岩石は地球深部にある「マントル」が冷えてできた岩石「かんらん岩」を主とする特殊なものです。

加えて、冬は積雪が少ないことにより地表が凍結、さらには海霧の影響で夏でも低温になるという特異性を有しています。

このような特殊な環境に適応した高山植物には、アポイ岳やその周辺でしか見ることのできない固有種など貴重な植物が沢山あります。しかし、近年ではハイマツやゴヨウマツが分布を広げ、高山植物群落が縮小しており、その希少性から、一部の心ない人による盗掘も見られます。

貴重な高山植物が絶滅の危機に瀕しています。今回参加した盗掘防止活動は、これらの植物を守るためにも、新たな盗掘箇所がないか確認したり、登山を楽しむ皆さんにはルールを守って楽しんでいただけるようお声がけ・注意喚起をするといったものです。

美しい植物を見つけ、"ちょっと写真を撮るだけのつもり"で登山道のロープを越えてしまったら...足元には絶滅の危機に瀕した植物があるかもしれません。気づかぬうちに踏みつけてしまい植物が傷んでいるかもしれません。盗掘をしないことは勿論ですが、植物を傷めないよう、登山道以外には立ち入らない。みんなでルールを守り、美しい環境を維持したいです。

アクティブ・レンジャーをしているくらいです、自然は大好き。ただ、どちらかというと海を得意としている私は登山にはちょっとした苦手意識を持っています。この苦手意識を克服するためにも、登り約3時間、下り約2時間のアポイ岳はチャレンジしやすい山なので、出会える植物や絶景を楽しみに頑張ろう!と意気込んだはずでした...

が、この日はよい天気で気温が高く、日影が少なくなる5合目以降、一気にバテてしまいました。。

頂上に着く頃には、海霧に覆われ周りは真っ白に。下りではいつの間にか霧も晴れ気持ちの良い風も吹いて、海霧と風、よい見晴らしとアポイ岳らしさを感じることが出来ました。

この日の私のお気に入り写真はこちら↓

▲エゾルリムラサキ

強風で上手く撮れませんでした。。ムラサキ科の植物は、紫色の濃いものが多いように感じますがこの花は少し青みがかった美しい瑠璃色です。

▲キンロバイ(金露梅)

様々な植物の緑、かんらん岩の黒色のなかで黄色の花弁をもつこの花は、とても目立ち目に留まります。

花についた露が花色に映えて金色に輝くこと、さらに梅に似た形からついたとされる名前「金露梅」。名前の由来までも好きな花のひとつです。

▲旧幌満お花畑

「旧」となっています。現在も多少の花がありますが、お花畑と呼ぶにはなんとも寂しい場所となってしまっています。かつては沢山の花が風に揺れていたのかと思うと、今ある植物を大切にしないといけないと考えさせられる場所でもあります。

▲眼下に広がる様似市街

霧が晴れ、緑が美しかったです!

今回は盗掘防止を目的とした活動でしたが、多くの方はルールを守り楽しんでおられました。みんなが快適に山を楽しめるよう、盗掘しない、登山道から外れない、どうかご協力ください。

とてもすがすがしい気持ちになれおススメです。みなさんも是非、アポイ岳登山を楽しんでみてはいかがでしょうか。

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2020年07月28日えりも"夏の風物詩"

えりも自然保護官事務所 熊谷 文絵

この季節がやってきました~!えりもの夏はコレ!!

この今にも動き出しそうな黒いもの、みなさんな何だか分かりますか?

この風景を見ると、えりもにも本格的に夏がやってきたな~と実感します。

町のあっちでも!

こっちでも!

町内全域にこのような景色が広がります。

これは、日高昆布(別名:ミツイシコンブ)と呼ばれる昆布が干されているところです。

日高地方の広範囲で採れる日高昆布ですが、なんとその約8割がえりも町で採られたものです。

7月~9月頃は昆布漁の最盛期! 町内の多くの各家庭ごとに行われています。

早朝4時半ごろ日の出と共に出港する昆布採りの様子は美しい、、、

(岩の上にやや白っぽく見えるのはゼニガタアザラシ、ゴロゴロしています)

採った昆布は家族総出で各干し場に広げていきます。私も体験させていただましたが、これが難しい。えりも町内でも地域によって採れる昆布の長さが違っており、私の行く地域では6~7mもあり町内でも長い昆布なのだそうです。これらを1本1本がくっつかないように、極力捻じれないように...隙間なく広げていきます。

※昆布干し場には、専用の砂利が敷かれています。町内へ来られる際は、昆布が干されていても干されていなくても砂利の中へ入ることはお控えください。

高級昆布として知られる「利尻昆布」「羅臼昆布」は主に出汁用ですが、「日高昆布」は柔らかいので出汁を取った後にも昆布巻きや煮昆布として食されます。家庭用には日高昆布が使用されることが多く、みなさんも知らぬ間にえりも産の日高昆布を食べているかもしれませんね!地元では、小さく切った昆布を揚げておやつとしているそうです。皆さんもえりも町で親しまれているおやつを試してみてはいかがでしょうか。

えりもに来てから知ったことですが、昆布は採ってから出荷までの工程が多く、とても手間と時間のかかる仕事です。そして、天気・海況に左右されやすく3~4カ月の漁期中、15日実施出来れば上々とのこと。自然相手の仕事ゆえ事故無く実施するためには仕方ありませんが、当日早朝まで実施の可否が判断されないことなどを考えると根気も必要だなと感じます。ただ、その日昆布採りが実施されなくても、これまでに干し終えた昆布を裁断したり等級別に分けたりとみなさん大忙しです。。

町内あちこち干された昆布で真っ黒になる、多くの町民が昆布漁で忙しく過ごす...これこそ、「えりも"夏の風物詩"」です♪

毎日暑い暑いと感じている方に朗報です。

えりもは道内でも寒暖差が少ない地域で夏は平均20℃程度、風が吹けば半袖では肌寒く感じます。

夏のひと時を避暑そして"風物詩"を感じにえりも町で過ごされてみてはいかがでしょうか。

(場所によっては風が強いので、長袖を1枚持っていると安心ですよ)

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2020年07月15日現場の後は事務仕事...

えりも自然保護官事務所 熊谷 文絵

みなさんこんにちは!

えりも自然保護官事務所の熊谷です。

えりも町では、春(5月上旬~7月初め)と秋(8月末~11月下旬)にサケの定置網漁が行われています。

ここに併せ、えりも自然保護官事務所では周辺海域で生息する「ゼニガタアザラシによる食害調査」を実施しています。

今年の春も、毎日乗船しての調査を実施しました。

この数年、記録的な不漁が続いているため期待半分不安半分で始まった今年の定置網漁でしたが、結果は奮わず...サケマスの大漁を見ることなく漁期終了を迎えました。

定置網は定められた場所に置かれた網に泳いできた魚がかかります。

漁期が長いのでシーズンが進むにつれ水温や海況に変化があり、例年であればかかる魚種も少しずつ変化していくところですが、今年は最初こそその傾向は顕著でソウハチガレイやスケトウダラの漁獲が目立ったものの、5月後半以降は漁獲は少なく魚種が多い状況が最後まで続いたことが、今年の特徴だったように思います。

この他にも、イワシ、ニシン、イカ、ゴッコ(ホテイウオ)などもかかりました。

漁が終わった今、私の主な仕事は2カ月間とり溜めたデータをまとめること。

船に揺られながら書きとった数値や情報をPC入力したり、グラフを作ったり。体力気力勝負の調査から、頭を使う作業へとパッと切り替えせっせと事務仕事を進めています。その際、調査用紙にはウロコが付いていたり、船上で漁師さんとどういった調整をしていくのがよいか等話し合ったメモが残っていたりと海水まみれの調査の日々が思い出され、漁期が終了したことをしみじみと実感しています。

表やグラフを起こしてみると、乗船期間中に抱いた感覚が目で見て分かり「この感覚は正しかった」「この感覚は少しずれていた」など確認することもでき、どんどんえりもに詳しくなれる気もしています。

データまとめの後には、調査用紙の様式変更、水中カメラテストなどが待っています。

現場仕事の多い私たちも、こんな風に事務所にこもって事務仕事という日も少なくありません。

まとめが済んだら今期見えてきたことなど、何等か皆さんにお伝え出来るとよいと思っています。

また、現在 襟裳岬「風の館」では7月20日正午までアクティブ・レンジャー写真展を開催中です。

各地域のアクティブ・レンジャーが業務中に出会ったとっておきの瞬間を収めた写真、どんな風にして撮ったものか、被写体にはどんな特徴があるのかなどの情報もお伝えしています。

私からはもちろんゼニガタアザラシ、なぜか春にしか姿を現さない場所で撮影した"えりも町らしい"自慢の1枚を出展しています。よろしければこの週末お出かけください。

令和2年度「アクティブ・レンジャー写真展~北の自然の舞台裏~」

開催場所・期間等の詳細はこちら↓をご覧ください。

http://hokkaido.env.go.jp/pre_2020/post_122.html

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2020年05月01日えりもに"春"がやってきた!

えりも自然保護官事務所 熊谷 文絵

みなさんこんにちは。えりも自然保護官事務所の熊谷です。

最近、道内での桜開花のニュースを耳にして季節の移り変わりを感じたところです。

みなさんはどんなことで春を感じますか?

えりも町の桜はまだ咲いていません。けれどすでに私はアザラシの様子から、"えりもの春"を感じています。

これまでにもご紹介してきた通り、襟裳岬は国内最大のゼニガタアザラシの生息地および繁殖地です。

日本のゼニガタアザラシは、5~6月頃に岩礁(稀に海中)で出産し子育てをします。

えりも自然保護官事務所の業務の多くは、ゼニガタアザラシによる漁業被害の防除と個体群管理に係るもののため、今年はいつ頃から出産が始まったかなど把握できるよう、生息数調査を兼ね観察を行っています。

彼らは人が近づきにくい岩礁を好むことから、出産シーンを見ることは非常に難しいのですが、ドローンで撮影をしていると昨日までいなかった小さな"赤ちゃんアザラシ"を見つけることがあります。

出産直後で神経質になっているだろう母アザラシを驚かさぬよう、高度を保ち、音が響かぬようゆっくりと進めます。そして、「...産まれた~!!」と、気持ちは大きく声は小さく喜びます。

(ドローンは遠隔操作なので、私のいる場所で声を出してもアザラシには届きませんが、カメラ映像を見ながらの操作のため自分も近くまで行った気になり、ついつい声を潜めてしまいます。。)

出産前のお腹の大きなうちから観察をしているためか、生まれたときの喜びはひとしお!

生まれたての赤ちゃんの腹部はシワシワです。これから独り立ちまでの1ヵ月半から2カ月の間に、脂肪分たっぷりの母乳を飲み体重を20㎏も増やし躰はパンパンになります。同時に、母からアザラシ社会での過ごし方や餌の取り方を学んでいきます。

このように、今年もアザラシの出産シーズンが始まり、これこそ"えりもの春"だな~と実感しています。

政府から発出された緊急事態宣言に伴い、えりも町の各施設は現在臨時休館となっています。

そんな中でもゼニガタアザラシの生活スタイルは変わらず季節を進めています。自粛生活が続く中ですが、中々見れない赤ちゃんアザラシの写真を是非楽しんでください。

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2020年01月31日アザラシ会議が開催されました

えりも自然保護官事務所 熊谷 文絵

えりも自然保護官事務所の熊谷です。

襟裳岬のゼニガタアザラシは、ここしばらく姿を見せてくれません。

この時期は特に強風な上、日中の潮位(海面の高さ)が高く、いつも休んでいる岩場が海に沈んでしまいます。日向ぼっこできずに泳いでいるものと思いますが、潮位の下がる夜にはしっかり休息できているでしょうか...しばらく様子が見られず残念ですが、そのうちひょっこり姿を見せてくれると期待もしています◎

さて、地上では1月29日、札幌にてゼニガタアザラシに関する会議が開かれました。

ゼニガタアザラシに関する会議は、「保護管理協議会」「科学委員会」「作業部会」と呼ばれるものがそれぞれ年に2~3回程度ありますが、今回は本年度3回目の「科学委員会」です。

この会議では、アザラシの事業を進めるために必要な分野の専門家のみなさんにお集まりいただき、意見交換や方針検討を行います。

その"専門家"とは、地元漁師や漁業組合の職員、アザラシやその他海棲哺乳類・数理モデル・獣医学などのスペシャリストです。道内各地や首都圏からも来ていただいています。

今回の主な会議内容は、2019年度の調査から得られたデータのまとめ・考察の報告、来年度以降の管理に向けた方針の検討・意見交換など。

私が襟裳岬で撮影したドローンの映像も、これら会議で検討される材料となります。撮影データが多ければそれだけ詳細に現状が分かり、傾向が分かり、より深く今後の方針を考えることが出来ます。今回の会議で昨年度よりも今年度、ドローンのデータが役に立っているなという実感も湧いたので、引き続き気象条件の許す限り逃さず撮影しよう!と思います。

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2019年12月24日空からアザラシを見ています!

えりも自然保護官事務所 熊谷 文絵

みなさんこんにちは。えりも自然保護官事務所の熊谷です。

早いもので年の瀬ですね。。みなさんにとってどんな一年でしたか?

今年度の初めに私が立てた目標は「今年は、ドローンを飛ばせるだけ飛ばすこと!」でした。

えりも自然保護官事務所では、えりも地域に生息するゼニガタアザラシの個体数調査にドローンを使用しています。ゼニガタアザラシは襟裳岬の先に約2km連なる岩礁で休息をとるため、この岩礁一帯の上空にドローンを飛ばしアザラシを撮影します。

岬の突端から望遠鏡を覗き数える場合、岩の裏側までは見えず...そんな時に真上から撮影できるドローンが活躍します!

岬の突端から岩礁を見ると...

今日は見晴らしも良く風も弱くてドローン日和!いいものが撮れそうな予感がして気分が高まります!

目が慣れてくると、肉眼でも、アザラシの顔までは見えなくともいることは分かりますよ♪

まずは風速を測って飛行準備を整えて...

※ちょっと寒い日だったので、あるだけの防寒をしています

準備出来たら飛行開始!

アザラシが上陸している岩礁の上空に差し掛かりました。

海面から約60m程の高さを確保して飛行しているためか、さほどこちらを気にする様子はありません。

この岩礁はアザラシが沢山上陸していて混雑気味。

米粒のような形に見えているものは全てアザラシ。日向ぼっこをしています。

この時、撮影している側はというと、、ドローンに不備が起きていないか、飛行中に受けている風の具合を見ながらこのまま続行しても安全かどうか、また、アザラシがドローンに驚いていないかなどを気にしています。

この場所、風を避けるものがなにもないのでとっても寒い。。

飛行経路は事前にドローンに登録してあり、いつ飛ばしても同じ場所を自動で撮影できるようにしてあります○

この岩礁一帯を静止画で撮影すると約1時間を要します。静止画の撮影はアザラシが上陸しやすい干潮時刻を挟んで3~4回行います。次に、干潮時刻に近いところで動画撮影を行います。こちらは約10分と短時間で終了です。

という流れで今年度 条件よくスムーズに調査出来たのは、当初私が見込んでいたよりもとても少ない回数でした...

アザラシの上陸は月の満ち欠けや潮の満ち引きと関わりがあり、上陸しやすいおおよその日や時間帯を把握することが出来ます。今年は絶対に機会を逃すまい!と張り切っていた私は「潮汐表」を肌身離さず持ち歩き気にしていましたが、今年は天候不良に阻まれました。。

ドローンは便利でもありますが荒天の中飛ばす事は出来ません。

◆襟裳岬は国内屈指の強風地帯

えりもに住んでいれば強風には慣れっこな上、飛ばせる風速であることの方が珍しいことも想定内。ただ、撮影したい!と思う時に強風(いや、暴風)なことが多く残念でした。。

◆8月のほとんどが荒天

この時期アザラシは全身の毛が生え変わる「換毛期」、上陸しやすい時期でもあります。撮影にはもってこいですが、10m先も見えない濃霧&土砂降りの日がほとんどでやる気を持て余しました。

◆9月以降の台風

今年は台風の影響で強風や高波となることが多かったです。ドローンを飛ばせないだけでなく、強い波しぶきを浴びるのはアザラシにとっても過酷なようで、上陸する個体は少なくみんな泳いでいるようでした。

(おまけ)ひどく時化た数日間必死に泳ぎ続けたアザラシは、相当に疲れていたようで時化明けの日の岩礁にはいつもより長い時間「寝ぼけ眼のアザラシ」がゴロゴロしていました。それはそれでかわいらしい○

えりも地域に生息するゼニガタアザラシの推定個体数を出すためには、まずドローンの撮影結果から得られる「上陸個体数」を出すことが必須事項です。

中々天候には恵まれませんでしたが、そんな中で機会を逃さぬよう努めたということでは及第点でしょうか。季節柄、これからの時期は強風が続くためドローンでの調査は見込めません。次年度も引き続き"目標"のひとつに定め取り組みます!

※参考※

国立/国定公園内でのドローン使用には配慮が必要です。使用にあたっては、環境省/都道府県の担当部署に事前にご相談ください。

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