ACTIVE RANGER

アクティブ・レンジャー日記 [北海道地区]

北海道地方環境事務所のアクティブ・レンジャーが、活動の様子をお伝えします。

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知床国立公園

83件の記事があります。

2016年02月01日ワレカラの姿は見えぬ

知床国立公園 高橋法人

 ワレカラというのは、軟甲綱端脚目に分類される生物で、海中の藻の中に生息しており、世界中に様々な種類がいます。


(ワレカラ属の一種、羅臼沖産)


 名前の由来は、食用の藻を乾燥させると表面にワレカラの死骸が残ることがあり、それが割れた殻に見えたので、ワレカラと呼ばれるようになりました。

 また、古くから和歌の題材とされ「我から」という言葉にかけて秋の季語として詠まれていたそうです。




     ワレカラの 姿は見えぬ 冬の海

 と一句詠んでみましたが、海中の藻の中にいるわけですからどんな季節だろうとその姿を地上から見ることはできません。


 ただ先日海中から引き上げられたロープを見る機会があり、そこにはおびただしい量のワレカラがくっついていました。


(ロープの中でうごめく無数のワレカラ。海藻と同系色)


 おそらくはこの無数の命が支えとなり海洋の生態系が保たれているのでしょう。

 こうした微生物から魚類へ、魚類からそれらを餌とする海洋性哺乳類や海鳥に命のリレーはつながれていきます。豊かな漁場であり、また希少なワシ類や鯨類が訪れる羅臼の海においてもそれは変わることはありません。


(ワレカラをつつくカモメ)


(鷲も海産物をよく食べます)



ここで締めの一句

          我知らず うみを育む われたから

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2016年01月29日海ワシ展開催中!

知床国立公園 笠井 憲子

 冬です。知床への流氷の接岸はもう少しですが、ワシたちは来ましたよ。

 ワシたちが来たことに併せて、知床世界遺産センターでは『海ワシ展』を開催中です。

 入口をくぐると、オオワシのハンズオン(触れる展示)がお出迎えしてくれます。

 オオワシとオジロワシの見分け方が学習できるコーナー。

 尾の形や滑空する翼の見え方で見分けて下さい。

 昨年に引き続き『あなたはどっちが好き?オオワシ対オジロワシ』も行っております。

 皆さんの投票により、人気のワシがわかる参加型の企画。どんなとこが好きなのか。ワシ愛を語っちゃって下さい。投票は始まったばかり、スペースはまだまだあります。1月29日現在、10対11でオジロワシが僅差で優勢となっております。

 生息状況調査の結果も速報が掲示されています。私たち、アクティブレンジャーが調査しているデータの公開です。

 これから2月に向かって、ワシたちの数はどんどん増えてくるはずです。

 今年の新しい企画『ワシをさがせ!』は、アクティブレンジャーが行っている調査を疑似体験できます。

 写真のどこかにワシがいます。探してみて下さい。難しい問題もありますよ。ぜひ、挑戦してみて下さい。

 開催期間:平成28年1月16日(土)~平成28年4月上旬ごろまで

 開館時間:9時00分~16時30分(毎週火曜日休館)

 知床にお越しの際は、知床世界遺産センターにもお立ち寄り下さい。

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2015年12月04日知床・羅臼の海岸線ゴミ回収調査報告

知床国立公園 羅臼 宮奈光一郎

 11月24日(火)に全道で記録的な雪が舞い降りた日を境に、知床・羅臼でも雪を目にしない日が、終わりを告げました。今回のアクティブレンジャー日記は、そんな羅臼にやってきて1年目、降り積もる雪にめげまいと奮闘中の宮奈がお送りいたします。

 私が勤めております羅臼自然保護官事務所では、毎年10月から11月にかけて、1週間に1回の頻度で羅臼から知床岬方面へ向かう海岸線において、ゴミ回収調査を実施しています。知床の陸と海をつなぐ海岸線がどのような状況にあるのか、今年度の調査状況とその結果を紹介させていただきます。

 調査は大きく分けて2区間で行っています。両区間とも世界自然遺産地域に含まれています。

 1区間目は、国立公園の境目、ルサフィールドハウスから道路が途切れる相泊までの国道沿いです。ここは羅臼昆布を浜で干しているなど、漁業活動が活発に行われており、瀬石温泉や相泊温泉といった観光スポットもあるため、シーズン中は人の出入りが多い場所です。

 2区間目は、相泊から海岸線を歩いて2時間ほどで到着する観音岩までの区間です。知床岬へ続くトレッキングコースの一部で、道路はなく、年間を通して漁業関係者以外の出入りが少ない場所です。ただ、サケ・マスのシーズンには釣り人が多く訪れる場所であり、昆布番屋も数多く残っていることから、漁業利用も活発に行われいます。

 今回は、1区間目の調査について紹介していきます。

ゴミ回収調査地、海岸線をはしる国道沿いの様子(2014年11月撮影)

調査地の様子(左手に見えるのがルサフィールドハウス)

 世界自然遺産地域。その名に恥じぬよう、ゴミはほとんど見られないはず。しかし、実際に調査をしてみると...

調査中に回収された缶ゴミなど(2015年10月撮影)

あ・・・

調査中に回収された煙草の吸殻などのゴミ(2015年10月撮影)

うーん・・・

海岸線で見られたビニール袋などのゴミ(2015年10月撮影) おお・・・

 思っていたよりもかなりのゴミが放置されていました。

 どのくらいかといいますと・・・

一度の調査で回収された200ℓ以上のゴミ(2015年10月撮影)

 このぐらいです。

 多い時で200ℓを越えるゴミが一度の調査で回収されました。

 (実際、1度で回収できるゴミの量は限りがあるため、回収しきれないゴミも多々あります。)

 最も多く回収されたゴミは缶やペットボトルでした。そのほとんどが清涼飲料水の入っていたものです。次いで多かったのが発砲スチロールでした。これは主に漁業由来のゴミではないかと思われます。また量こそ少ないのですが、数が多かったのが煙草の吸殻です。道路脇に放置されていることが多く、缶に詰めて放置されていることもありました。

 ゴミを回収していて気が付いたことは、多く回収されるゴミのほとんどが、持ち帰ることのできるゴミだということです。また、ゴミの量や劣化の状態から、誤って落としてしまったというより、特に気にもせずゴミを放置している様子が伺えました。

 私たちから出るゴミは、現代においてそのほとんどが自然に発生しえないものです。自然の中に放置してしまえば、それを壊す原因になるのも当然と言ってもよいものです。

知床の陸と海、自然の営みをつなぐ海岸線が、これ以上ゴミで溢れないように、ゴミが減っていくように、知床を利用する全ての方々に今一度、ゴミに対して正しい認識をもつことが求められていると思います。

 ゴミも人が作り出したものですから、人が責任をもって扱う必要があることを、私たちが意識して自然と向き合うことが大切なのではないでしょうか。

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2015年11月11日一つ積んでは道のため、二つ積んでは穴のため

知床国立公園 ウトロ 高橋 優太

 三寒四温ならぬ三寒一温ぐらいのペースで冬に向かって一足飛びな感があります、知床国立公園・ウトロの高橋です。知床の山々も稜線に白く雪がつき、スキー板へワックスをかける手に力がこもる季節になって参りました。

 

 そんなわけで先日、夏山納めも兼ねまして、羅臼岳・銀冷水に設置されている携帯トイレブースの冬じまいに行ってきたのですが......


登山道に開いた穴

 

 おお、なんということか、登山道に大きな穴が!!!!!深いところでは大人の腹から胸の高さほどもあります。10月上旬に歩いた時はこんな穴は無かったので、中旬に襲った暴風雨の影響でしょうか。穴の底は大きな岩が転がりまるでポットホール、穴の周りは砂混じりの軟弱な土壌で触れただけでボロボロと崩れる有様。これでは春先に大量の雪解け水が流れたらどこまで大穴が広がることか......。

 

補修作業参加者

  

登山口に十傑が集う

 

 ということで急遽、登山道の補修をおこなうことに決定!

 地元の山岳関係者の方々に協力をお願いすると、林野庁や山岳ガイドの皆さんが快諾してくださり、その数総勢10名!雪が積もり始め、日も短くなってきた中で作業期間は1日のみ。

 厳しい条件ではありますが、「背負子」を背負うと気合いが入ります。

 

 「背負子」――それは歩荷(ボッカ)の代名詞。今回の登山道補修は、「石を運んで穴に詰める」という単純にして明快なソリューションです。オレ達の夏山はまだまだ納まらんぞ―――ッッ!!!!!

 

土嚢袋に石材を詰める

 

夏山を納めたくなる寒々しさ

 

 

 作業はまず土嚢袋に石を詰めるところから始まります。登山道上には雨で流されてきた浮石がゴロゴロしているため、これらを集めて再利用します。雪を被って濡れた土石は冷え冷えとして、薄い作業手袋一枚しか持ってこなかったことが悔やまれます。

 

背負子で石を運搬する

 

背負子が火を噴く

 

 次に袋詰めの石を背負い、埋める穴まで運びます。欲張って沢山背負おうとしたら、重すぎてまったく立ち上がれません。うーんなるほど、さすが石だ!!!雄叫びをあげても気合いを入れても3袋背負うのが限界です。

 

土嚢袋を穴に敷き詰めていく

 

石の土嚢で埋めていく

 

 さて穴まで石を運んだら、いざ施工!穴の中に石入り土嚢を積み、固め、間に石や砂利を入れて水平にならして、さらに積みます。本格的な石組み工ができれば一番良いのですが、技術と経験と時間が必要になってしまう......よって今回はあくまで春先の雪解け水対策に絞った応急補修、とにかく水に負けないよう物量作戦で穴を塞ぎます。

 

施工前 / 施工後の比較

 

か、完成した......(施工前→施工後)

 

 さらに雨水を登山道外へ逃がす排水路も掘り直して、よし!これだけやれば雪解け水がザブザブ流れても大丈夫!かどうかは約7ヶ月後、来年の春に分かります。果たして登山道、穴、土嚢の運命や如何に!!!

 

参加者みんなで記念写真

 

冠雪した羅臼岳をバックにお疲れ様でした

 

 今月11月4日にはカムイワッカへのゲートが閉鎖となり、続く9日には知床峠へ続く知床横断道路が、そして25日には知床五湖が冬期閉園になります。秋が深まり冬の足音が近づくにつれ一抹の寂しさを感じつつ......厳冬期・白銀の知床がすぐそこまでやって来ていると思うと、つい顔がニヤけてしまう今日この頃です。

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2015年10月01日Shiretoko Planarians(シレトコプラナリアンズ)

知床国立公園 羅臼 高橋法人

 皆さん、突然ですがプラナリア(ウズムシ)という生き物はご存じでしょうか。

 口が頭部ではなく体の中心にあり、腸が体全体に広がっている原始的な動物です。

 再生能力があり、その実験を耳にしたことのある方もいるのではないでしょうか。



(ナミウズムシ:日本全土に生息。中流~下流の比較的水温が高いところでもよく見られます。

知床ではほとんど見られません。再生実験で有名?な種)


 ところで、知床の川は年間を通して冷たく、また川の長さが短く傾斜が急なため、砂や泥を含んだ状態になる前に海に注いでしまうことから、河口付近であっても他地域の上流の礫河川に近い環境です。

 淡水性のプラナリアの多くは、上流の水が冷たく清澄な環境で生息することとされていますが、上記の理由で、知床では海抜が低いところでも見ることができます。


その① ミヤマウズムシ

 つぶらな瞳が魅力的なプラナリアです。

 その名前の通り、山奥の渓流でしか見ることができないのですが、知床では海抜5m位の河口でも見ることができます。


その② キタカズメウズムシ

 矢尻型の頭部が特徴的なプラナリアです。

 写真ではわかりにくいのですが、眼点という小さな眼が頭部周辺に100個前後あります。

 北海道中部から本州ではカズメウズムシという同じ属のプラナリアが河川上流部に見られます。


その③ キタシロカズメウズムシ or アッケシカズメウズムシ

 透き通る白が特徴のプラナリアで、こちらも頭部周辺に眼点が複数あります。

 プラナリア特有の石を滑るように移動する動きと相まって、優雅に見えのは私だけでしょうか...。

 なお、キタシロカズメウズムシとアッケシカズメウズムシの違いを見分けるのは非常に難しいです。



 現在、知床の川にはカラフトマスが遡上しておりにぎわいを見せております。

 カラフトマスと一緒にウズムシ観察はいかがでしょうか。

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2015年09月18日知床連山は秋色?

知床国立公園 ウトロ 笠井 憲子

 1泊2日の行程で硫黄山から羅臼岳へと知床連山の巡視に行ってきました。

 知床連山の縦走路は秋色に色づいています。

 ハイマツの緑の中に赤や黄色、オレンジの秋色。

特に二ツ池周辺の紅葉が見頃を迎えておりました。

 日差しが出ていれば、ぽかぽかと暖かいのですが、吹く風はひんやりと秋のもの。

 動いていないと、肌寒く感じるときもありました。

 秋らしく色づいている高山植物たち。

 秋の実りも感じられました。

 

 左上:ウラシマツツジ(手前)とチングルマ(奥)  右上:コケモモ(実)

 左下:エゾオヤマリンドウ  右下:ハイオトギリ

 一転して、羅臼岳方面から下山途中の大沢付近は季節が逆戻っているようでした。

 左上:エゾツツジ 左上:ジムカデ

 左下:チングルマとエゾノツガザクラ 右下:ミネズオウ

 初夏に見られる花たちが、まだ咲いています。

 大沢付近は、秋ではなく初夏?

 今年の大沢は最近まで雪渓があったため、雪渓の雪解けを待ち構えていた花たちが大急ぎで、咲いているようでした。

「早くしないと、雪が降っちゃうよ。」と言いたくなります。

 今回の巡視では、ヒグマとの遭遇はありませんでしたが、あちらこちらに熊糞がモリモリと落ちており、「俺はここにいるゾ」というヒグマの主張が感じられました。

 知床で登山をする際には、事前に情報収集を行うと共に、ヒグマに出会わないために声を出したり、音の出るもの(クマ鈴など)を身に付けたりしてヒグマに人の存在を知らせながら歩きましょう。

 ヒグマ対策情報

 知床半島先端部地区でのヒグマ対策-環境省

 https://www.env.go.jp/park/shiretoko/guide/sirecoco/bear02/

 ヒグマ対処法 公益財団法人 知床財団 自然センター

 http://www.shiretoko.or.jp/library/bear/

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2015年07月06日世界自然遺産・知床ディケイド

知床国立公園 ウトロ 高橋 優太

 「7.17」......この数字が何を指し示すかお分かりでしょうか。そうです!知床が世界自然遺産に登録されてから、今年の7月17日で丁度10周年なのです!おめでとう知床!ありがとう知床!知床国立公園・ウトロの高橋です。おめでとうございます!!!

 そんなわけで世界遺産登録10周年を記念して、式典と講演会が先日7月4日に開催されました。

 記念式典には官民問わず、大勢の方がご出席くださいました。知床の世界遺産登録を目指して尽力された方々、遺産登録後の知床の行く末を担ってきた方々、あるいは世界遺産になるずっと以前から、この知床に関わってきた方々――総勢約600名が斜里町ゆめホールに集い、馬場 隆 斜里町長による歓迎のことばで、式典が開会されました。

馬場 隆 斜里町長と望月 義男 環境大臣左: 馬場 隆 斜里町長 / 右: 望月 義夫 環境大臣

 環境省からは望月 義夫 環境大臣が出席し、当日知床を視察した所感も交えながら、「本日の「つどい」をきっかけとして、10年度、50年度に、より魅力ある知床の姿が見られるよう期待する」と挨拶を述べました。

 つづく記念講演会では、元・北海道日本ハムファイターズ選手、現在は同球団のスポーツコミュニティオフィサーとしてご活躍の稲葉 篤紀さんをゲストにお招きしてご講演いただきました。

 稲葉さんは、この日の午前中に知床五湖を散策した際、実際にヒグマを目撃したとのこと。さらに町を走る「ヒグマえさやり禁止キャンペーン」のステッカーを貼った自動車もご覧になったそうで、「こんな(ちっぽけな)餌ひとつのために、(奪われる必要のない)ヒグマの命が奪われてしまうのは悲しい」「クマに餌をやったら覚えてしまって、最後には駆除しないといけなくなる。道外の人達に伝えていけたら」と話されました。

最後は湊屋 稔 羅臼町長によるお礼のことばで閉会となりました最後は湊屋 稔 羅臼町長によるお礼のことばで閉会となりました

 湊屋羅臼町長は「これは台本に無いんですけども......」と前置くと、ここでまさかのサプライズ。馬場斜里町長と二人で手を取り合って「羅臼町・斜里町、二町で力を合わせて、将来の世代のために頑張っていきましょう!」と会場に呼びかけ、拍手喝采、大団円の内に閉会となりました。

稲葉さんと共に、知床の未来へ向けたメッセージを朗読する羅臼・斜里両町の子供たち

稲葉さんと共に、知床の未来へ向けたメッセージを朗読する羅臼・斜里両町の子供たち

 知床の一つの節目ともいうべきこの日、この場所に居合わせることができたことは、なんとも感慨深いものがあります。私、高橋がアクティブレンジャーとしてここ知床国立公園・ウトロに着任して、3年と少々。世界遺産登録10周年、国立公園指定50周年に比べればほんの短い期間ではありますが、知床の魅力に触れた者の一人として、護り、伝えていかねばと襟を正した一日でした。(もちろん、楽しむことも忘れずに!)

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2015年06月18日遠い羅臼岳

知床国立公園 羅臼 高橋法人

アクティブレンジャー 高橋です。

 7月の上旬に山開きを控えた羅臼岳ですが、まだまだ残雪が多く危険も多いことから

 月に数回、主に残雪状況と登山道の確認のため巡視を行っています。

 6月16日現在、羅臼岳登山口周辺はスミレやサクラなど春の花々が咲き終わり初夏の訪れを

感じることができますが、ここから歩いて4時間ほどの泊場周辺では





 ダケカンバやハンノキが芽吹いているものの、厚さ1m以上の雪に覆われています。



 ここは通さないとばかりに急傾斜の雪渓もあり、急な所では50度以上の傾斜がありました。



 さらに歩くこと2時間、目の前に羅臼岳は見えるものの残雪が多くなり

 距離は近いのですが、なかなか前に進みません。

 結局この日は時間切れでリターン。頂上まではもう少し季節を待たないといけないようでした。



 帰路はほうほうの体でした。

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2015年05月25日近くて遠い、でも近い。

知床国立公園 ウトロ 笠井 憲子

 知床国立公園は斜里町ウトロ地区と羅臼町の両町によって構成されておりますが、実は冬の間は両町をつなぐ、知床横断道路は雪のため閉鎖されており遠回りを余儀なくされ、 近くて遠い場所となっておりました。

 それが5月22日から夜間通行止めが解除され、終日通行可となりました。時間を気にすること無く斜里町と羅臼町を行き来することができるようになり、距離的にも時間的にも近い場所になります。地元の方々にとっても観光客の皆様にとってもうれしいことです。

 今年の終日通行可の開始は、昨年と比べて22日早く、例年に比べても早い終日通行可の開始となります。

 少し前の話になりますが、5月1日に知床横断道路が冬季閉鎖から日中のみ開通になりました。そのとき、知床横断道路の開通にあわせて『知床ヒグマえさやり禁止キャンペーン』を関係機関と共におこないました。

 開通を待つ車両へのチラシやシールの配布と、通行する車両に対しての横断幕での啓発活動です。

 横断幕を持つ前田Rと永瀬R。くまごろうには高橋ARが入っています。

 知床にお越しの際はヒグマだけで無く、野生動物にはえさをあげないようお願いいたします。

 知床ヒグマえさやり禁止キャンペーンHP

 http://dc.shiretoko-whc.com/esakin/

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2015年03月13日BLIZZARD / 私を町外に連れてって

知床国立公園 ウトロ 高橋 優太

 週末の度にやってくる暴風雪、通行止め、そして――孤立。知床国立公園・陸の孤島ウトロの高橋です。

 

 先月2月はじめ、知床半島東側にある羅臼町が数日間にわたる暴風雪で孤立し、全国ニュースで取り上げられました。疲弊した町民の皆さんや、災害派遣された自衛隊員による除雪作業の様子は、記憶に新しいことと思います。この暴風雪では、羅臼町ほどではないにしろウトロにも大雪が降り、例によって道路は通行止め、町が孤立しました。

 

雪に埋まった車両を掘り出す 横殴りの吹雪の中、車を掘り出して帰宅する永瀬レンジャー
(この後、途中で道が無くなったため、車を乗り捨てラッセルして帰ったとのこと)

 

 東北出身の私は、ここ知床ウトロに暮らすまで「北海道は台風も梅雨も無いからいいよなー」などと思っていましたが、浅はかな考えでした。穏やかな夏の代価を取り立てるが如く、冬に壮絶な暴風雪がやってきます。最低3回はきます。慈悲は無い。

 

 実際、2月15~16日、27日、3月2日と立て続けに3度の暴風雪が北海道東部を襲い、ウトロの観測史上最高となる積雪200cmを記録。いずれの暴風雪でも、やはり町が孤立しました。

 

 「町が孤立する」これは結構な危機的状況のはずなんですが......私の周りだけでしょうか、住民の皆さんは意外と普段通りだったりします。先述の通り、ウトロは毎冬すくなくとも3回は暴風雪により孤立するため、幸か不幸か「孤立慣れ」していると言いますか......あまり悲壮感がありません。「週末に斜里町の大きなスーパーへ買い出しにでかけ、一週間分の生活物資を買いこんでくる」というような買い物スタイルのご家庭が多いせいか、普段からの備蓄がなされていることが、心理的余裕に繋がっているのかもしれません。

 

暴風雪時の道東の通行止め状況

暴風雪時の道東地域の通行止め状況。実際はウトロだけでなく、大体どこも孤立します。
(画像: 北海道地区道路情報 / 国土交通省北海道開発局 ※2013年2月の暴風雪時のもの)

 

 またウトロは漁業や農業も盛んな町。夏にとった魚や野菜を貯蔵してある、なんてお宅も多く、食べ物の心配がないのも大きいと思います。(ちなみに私の場合は、食生活が近所のコンビニに全面依存しているため、道路閉鎖で流通が止まると死活問題です)

 

 そして何よりも、「数日で必ず除雪が完了して、道路が開く」という事実と、それにもとづく「どんな雪でも2、3日我慢すればいいだけ」という全幅の信頼、楽観こそが、孤立時の一番の心の支えになっている気がします。巨大な除雪車を駆って、日夜道路を除雪してくださっている関係者の方々には、本当に感謝することしきりです。

 

雪原にたたずむエゾシカと羅臼岳

台風一過の晴天の下、朦朧とたたずむエゾシカと、雪化粧に磨きがかかった羅臼岳

 

 そんな3月10日現在、この記事を書いている今もまた、巨大な二つ玉低気圧が近づいてきています。さて、今回は果たして......。

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