ACTIVE RANGER

アクティブ・レンジャー日記 [北海道地区]

北海道地方環境事務所のアクティブ・レンジャーが、活動の様子をお伝えします。

RSS

2020年8月20日

3件の記事があります。

2020年08月20日ヒサゴ沼に吹く西北西の強い風

大雪山国立公園 上村 哲也

 8月12日(水)から13日(木)、クチャンベツ沼ノ原登山口から五色岳を経て、化雲岳、ヒサゴ沼などを巡視しました。

 前日、朝鮮半島を東進し日本海に達した台風5号が、前線を伴う温帯低気圧となり勢力を弱めることなく、宗谷地方をかすめてオホーツク海に達しました。当日、上空の雲の流れは速く、稜線上は強い風が吹くと予想できましたが、既に前線は遠く離れていて雨が長く強く降り続くおそれはありませんでした。温帯低気圧は東進を続け、やがて風も弱まるものと考えていました。

 8月12日は当初の計画どおりヒサゴ沼野営指定地にテント泊しました。ヒサゴ沼は標高1,690mにあり、三方を1,800mから1,900mの山塊に囲まれ、多くの場合は穏やかな野営地です。低くなった方角にはニペソツ山とウペペサンケ山を望めます。

 しかし、この日は違いました。ヒサゴ沼からトムラウシ山を目指した登山者が、強風に阻まれ引き返してきていました。夜になって風はかえって強まったようにも感じ、テントが揺さぶられ、沼は波を立てていました。地形が開けた方角に吹き抜ける西北西の風が吹いたようです。トムラウシ山と化雲岳を南北に結ぶ稜線が壁となって西からの風をヒサゴ沼に集めるのでしょうか。そんなことを考えながら不安な夜を浅い眠りで過ごしました。

 写真では穏やかに見える野営地。よく見ると、周囲のササの葉が裏返り、真ん中の黄色いテントが風をはらんで一面でへこみ一面で膨らんでいます。

穏やかに見える野営地

 図は、気象庁ホームページからダウンロードした8月12日(水)21時の天気図(日本周辺域)です。北海道付近に西風が吹く等圧線の流れですが、強い風を予想するような間隔の狭さはありません。風向と地形によっては強い風となって吹き抜けることもあるのでしょう。

8月12日(水)21時の天気図(日本周辺域)気象庁ホームページから

ページ先頭へ↑

2020年08月20日高層湿原のモウセンゴケ

大雪山国立公園 上川 忠鉢伸一

高山植物は沢山ありますが、その中でも私の一番好きな植物

食虫植物モウセンゴケについて紹介したいと思います。

植物なのに生きている虫を捕まえて食べるという不思議な生態と、

ずば抜けて個性的なその姿に、モウセンゴケを見る度に心奪われてしまいます。

モウセンゴケ 学名 ドロセラ・ロツンディフォリア

【7月1日撮影 沼の平】

コケのように群生しますが、花も咲くので、実際にはコケの一種ではありません。

モウセンゴケの特徴は、第一に食虫植物であること、湿気があり、やせた酸性土壌を好む湿生植物であるということです。

食虫植物であるモウセンゴケは葉の上にとりもちのような粘液を出して虫を捕え、消化酵素を出して養分を吸収します。

大雪山では主に沼ノ平、沼ノ原、原始が原などで見られます。

【7月30日撮影 沼の原】

どうしてモウセンゴケは植物なのに虫を捕えるのでしょう?

それは植物に不可欠な栄養分が不足している場所にモウセンゴケがはえているために、虫を捕らえて栄養をおぎなう必要があるからです。

では虫を食べないと枯れるのかというと、しっかり光合成も行っているので枯れません。

植物の成長に必要な、リンや窒素が豊富な虫を食べて栄養をとっているのです。

ナガバモウセンゴケ 学名:ドロセラ・アングリカ

【7月30日撮影 沼の原】

ナガバノモウセンゴケは文字どおり葉の長いモウセンゴケで、日本では北海道と尾瀬に自生しています。日本では限られた地域だけにみられる非常に珍しいモウセンゴケです。

虫を捕らえると、長い葉が丸まって虫を逃さないように巻き付きます。

大雪山では沼の原で見られます。沼ノ原はモウセンゴケの生育地でもあるのですが、

ナガバモウセンゴケとの自然雑種の、サジバモウセンゴケという種類もあるようです。

【7月29日撮影 沼ノ原】

7月末に沼ノ原巡視に行ったときに、咲き始めのナガバモウセンゴケの花を見つけました。

つぼみも沢山ついていたので、今頃は沢山の花を咲かせているでしょうか。

見れば見るほど不思議な植物です。

あの粘液がキラキラと輝く姿をまた見たいと思いました。

【7月30日撮影 沼ノ原】

ページ先頭へ↑

2020年08月20日十勝三股で植生復元活動

大雪山国立公園 上村 哲也

 十勝三股は、旧国鉄士幌線の終着駅十勝三股駅があった集落で、昭和53年にバス代行となるまではここまで汽車が走っていました。人口は最大1500名ほどありましたが、現在は2家族が住むのみとなりました。

 環境省では、集落の跡地を所管地として管理し、小中学校の跡地などで植生復元を行っています。鹿の食害を防ぐため木枠と金網の柵で囲いを作り植樹をしました。平成23年からの取組で、30㎡ほどの防鹿柵を作って植樹した区画は17。植えられた木は190本余り。柵は古いものから倒壊が起きていますが、鹿に葉を食べられることのないまで充分に高く生長した木も多くあります。平成27年からは、鹿が特に好む広葉樹を1本1本樹脂網で囲い守っています。少しずつ植樹を増やし、あるいは、ササの中に自然に根付いた稚樹を見つけては樹脂網囲いを施しています。

 この日は、樹脂網囲いの広葉樹、ともに植樹した針葉樹、合わせて180本余りについて、今後の効果が確かめられるよう、樹種や樹高、生育状況を調査しました。樹高2mを超え囲いが狭いくらいに生長したものもあります。反対に、根がつかなかったり周囲の草本に負けてしまったり既に枯れてしまったものもありました。中の木が枯れたり消えたりした樹脂網囲い20基ほどを解体しました。

 集落の跡地には2家族が住む住宅のほかは、ほとんど建物が残っていません。使われていないコンクリートブロックの倉庫がひとつ。雪に押しつぶされ半壊した鉄道修理工場がひとつ。小中学校跡地は、校舎も教員住宅もなく、平らで木のない敷地がかつて校庭であったろうことを感じさせるのみです。時間をかけて元の森に還していきます。

まずは樹脂網囲い施工をおさらい

まずは樹脂網囲い施工のおさらい

樹高を測り、樹種や生育状況を記録します。

樹高を測り、樹種や生育状況を記録します。

暑い一日お疲れ様でした。

暑い一日お疲れ様でした。

ページ先頭へ↑

ページ先頭へ