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アクティブ・レンジャー日記 [北海道地区]

北海道地方環境事務所のアクティブ・レンジャーが、活動の様子をお伝えします。

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大雪山国立公園 上士幌

67件の記事があります。

2019年08月16日してはならない。

大雪山国立公園 上村 哲也

 大雪山国立公園を含む自然公園では、優れた自然の風景地を保護する、生物の多様性の確保に寄与することなどを目的に、「してはならない」行為が法律で定められています。特別保護地区内において火入れ又はたき火をすることもそのひとつです。

火入れやたき火をしてはならない。

 先日、大雪山国立公園東大雪地域の特別保護地区の中で、たき火の痕が見つかりました。周辺の枯れ枝などを集め燃やしたようです。一部に紙やアルミ箔も含まれていました。たき火は山火事の最大の原因とされています。周囲はハイマツ帯が隣接し、イワウメやコメバツガザクラ、ガンコウランほか、高山植生に囲まれた場所でした。山火事は、すぐれた自然景観が失われるだけでなく、滞在する登山者の生命も脅かします。山火事のおそればかりではなく、炎の揺らめきや煙の臭いを察知して野生動物の行動に影響を与えないでしょうか。ナキウサギやシマリスの生息密度が高いところでした。

 

 昨年も同じ場所で小さなたき火の痕が見つかっていました。きれいに取り除いたつもりでしたが、僅かな痕跡が、後から訪れたものに我も我もと思わせるのでしょうか。たまりにたまった痕跡なのでしょうか。楽しむだけ楽しんで後の始末は何もせず、防火意識の低さが気がかりです。いつか取り返しのつかない事態を招くのではないかと不安です。時間をかけて取り除きましたが、岩や土には炭の色が残っていました。これきり、たき火への欲求など呼び起こさないで欲しいものです。

二度としませんように この規定に違反した者は、「6月以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。」とされています。たき火好きの山仲間がいらっしゃったら教えてあげてください。我々も啓発に努めて参ります。

 大雪山国立公園の特別保護地区は次のリンクで確認することができます。

 大雪山国立公園区域図

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2019年07月29日たまには山へ恩返しinトムラウシ

大雪山国立公園 上村 哲也

 7月20日(土)、21日(日)、大雪山・山守隊が中心となってトムラウシ山のカムイ天上付近で実施した登山道整備イベント「たまには山へ恩返しinトムラウシ」に同行しました。

 トムラウシ山のカムイ天上に延びる登山道は、2003年に新たに開削された区間です。それまでのカムイサンケナイ川を辿るコースは渡渉や登降を繰り返し、辛く難しいコースで事故も起きていました。

 しかし、ササ原を切り開いたこの区間は融雪期や降雨直後にぬかるみがひどく、評判はよくありません。少しずつ整備を進めてきましたが一向に改善されません。ここは切れ目なく木道を敷きつなぐ方が、土が削られてぬかるみが作られることも抑えられるのではないか、そう考えられるようになりました。

参加者自ら資材を荷揚げ このイベントは、参加者自らも長さ60センチや120センチの木材、釘、ハンマー、カケヤなどを分担して運搬します。登山口でトラックから降ろされた資材が、我こそと参加者の背負子に収められてゆきました。みなさん、意欲満々です。主催者の担ぐ荷が少なくなりバツが悪そうです。いえいえ、このほかに山守隊のみなさんは事前に何度も資材を担ぎ上げたと見聞きしました。

 荷揚げは、普段、登山装備を担いで山に登るみなさんですから、それほど苦とはしません。難しいのは組み立てるための釘打ちと揺れ動かない安定した設置です。

釘打ち 枕となる60センチの角材に踏み板となる120センチの角材を4寸釘で固定します。4寸釘は長さ125ミリ、太さ4.6ミリ。厚さ6センチ×2枚をわずかに突き抜けさせます。突き抜けた先を叩いて曲げ、抜け止めにします。並の金槌では打ち込めません。重さが1キロを超える石頭鎚を用います。これが、いうことを聴きません。斜めに当たったり端に当たったりすると、太い釘も平気で曲がってしまいます。いくらか上手に打ち込むことができても、すぐに腕の力がなくなったりします。交代、分担しながら作業を進めました。

 設置もまた難しい作業のひとつです。登山道は平坦ではありません。設置した木道のどこを踏んでもガタガタと動かないように調節します。根気よく丁寧な作業が求められます。

安定した設置

 2日間に汗をかいた参加者は延べ37人。組み立てた木道は69基、敷き延ばした区間は約300mです。大雪山・山守隊のみなさん、参加された山好きのみなさん、お疲れ様でした。

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2019年06月04日登山道巡視、始めました。

大雪山国立公園 上村 哲也

 5月14日(火)、白雲山士幌コースを巡視しました。然別湖の外輪にある白雲山は、標高1,186m。然別湖側と士幌町側にそれぞれ登山口があります。
 士幌町側の登山口は「士幌高原ヌプカの里」の山側にあり、公衆トイレと駐車場が利用できます。登山口から山頂までは大雪山グレード2「大雪山の自然とふれあう軽登山ルート」です。
 大雪山国立公園の最も南にあり、雪の少ない十勝地方の気候も加わって、比較的早く夏山シーズンを迎えます。登り2時間ほどと行程は短め、愛好家の足慣らしに最適でしょう。
 山頂近くまで樹林におおわれていますが、樺など広葉樹はまだ葉が広がっておらず、飛び交う鳥たちが眼に止まります。
 途中、岩石山にも足を伸ばしました。山頂からは十勝平野を一望できます。整然と区切られた耕地やまっすぐに延びる道路が十勝らしさを感じさせます。「なつぞら」が広がった一日でしたが、水蒸気が少なければ太平洋まで見渡せたことでしょう。
 圧巻は白雲山から然別湖を見下ろす眺望です。湖を挟んで外輪山の向こうにはウペペサンケ山が立ち尽くしています。合間には、忠別岳や五色ヶ原がまだまだ白い山肌を見せていました。白雲山から然別湖

 5月28日(火)、然別湖のトウマベツ川落ち口近くにある登山口から、白雲山、天望山、東雲湖を巡る天望山周回線を巡視しました。一巡すれば6時間ほどの行程でしょうか、大雪山グレード2「大雪山の自然とふれあう軽登山ルート」です。シーズン中、登山口には簡易トイレが設置されます。
 岩が積み上がった白雲山、緑豊かな天望山、十勝平野や然別湖を見下ろしながら進む尾根沿いの歩道、奥深くひっそりとたたずむ東雲湖、水辺の自然を感じながら歩く湖岸沿いの歩道、変化に富んだ見所の多いルートです。

 天望山周回線は、樹林帯、笹原、岩稜など様々な環境があり、植物の種類も環境に応じて多く見られます。この日は、コヨウラクツツジ、エゾムラサキツツジ、オオカメノキ、ツバメオモト、ミツバオウレン、オオバナノエンレイソウなどの花を見ました。

 白雲山の山頂は大きな岩が積み重なって形作られています。岩の隙間に携帯電話やコンパクトカメラを落としてしまうと、ほぼ取り戻せません。ペットボトルや食べ物の包み紙などについても充分に注意を払ってください。

 然別湖周辺の登山道は、毎年、然別自然休養林保護管理協議会のメンバーやその関係者が、ササ刈りなど手入れをしています。この日も一部の整備を行いました。刈り払った笹が芯だけ徒長していたものを剪定バサミで刈り取り、風や雪で倒れ道をふさぐ樹木を手のこで対応できる分だけ取り除きました。大きな支障のないものはそのまま残しています。倒木を潜り、跨ぐのも自然とのふれあいと感じていただけたらと考えています。

 マダニにも注意が必要です。肌の露出を避け、見つけやすい明るい色の衣服を選びましょう。

天望山山頂のツツジ

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2019年04月24日十勝三股で植生復元活動

大雪山国立公園 北海道地方環境事務所

 十勝地方、上士幌町の三股は、かつて林業で賑わい千人以上が暮らす集落でした。帯広から国鉄士幌線が延び、小中学校が置かれ、神社には土俵も造られたと聞きます。広大な三股のカルデラは黒々とした針葉樹の森に満ちていたそうです。三股を起点に林道や森林鉄道、馬車による鉄道も敷かれ、風倒木をはじめ大量の木材が搬出され生産されました。

 しかし、やがて林業は衰退し、現在は二世帯が暮らすのみです。

 その三股で、環境省は跡地を森に帰そうと植生復元活動を続けています。ひがし大雪自然館と共催で植樹イベントを開き、鹿の食害を防ぐため、柵で四角く囲んだり、網で丸く囲んだりしながら植樹を増やしてきました。大雪山国立公園パークボランティアのみなさんの力を借りながら手入れもしています。

 雪解けが進む4月のある日、設備の点検に訪れました。

 設えてから年月が経った柵は、老朽して変形し、錆びて弱くなった金網は鹿に突き破られるようになりました。幸いにも柵の中に植樹した多くの木々は2メートル以上に生長し、鹿の食害を受けにくくなっています。倒れた柵は、これから順に解体していきます。

 数年前から、一本一本の木を支柱と網で囲む対策に変わりました。初めは、支柱の数を節約したり、固定の方法を試行錯誤したりしたものの、雪の重さに堪えられず変形してしまいました。今では、囲む網の径や支柱の数、そのほか設置のコツをつかみ安定するようになりました。植える木は、周辺の道路脇などから、放っておけば安全管理などのため刈り払われてしまう稚樹を掘り取っています。

 小さな小学校の跡地でも、かつての森に帰すには何十本も木を植え、長い年月をかけて見守っていかなくてはなりません。

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2019年03月14日大雪山のスノーモビル乗り入れ規制

大雪山国立公園 上士幌 上村 哲也

 自然環境の優れた地域でのプレジャーボート、スノーモビル、オフロード車などの無秩序な使用は自然環境に悪影響を与えることから、これらを防ぐために国立公園内の特別保護地区、車馬等乗入れ規制地区、原生自然環境保全地域において、それらの乗入れを禁止しています。(北海道地方環境事務所のウェブページから)

 自然保護官事務所では、乗入れ規制地区への入口となる場所に看板を立て、乗り入れ規制を周知しています。また、これらの地区を随時、巡視しています。この日、十勝三股の森、奥深くに通じる林道の入口まで来ると、スノーモビル乗り入れの痕跡がありました。この場所は昔、山奥に野湯が湧いていて密かに人気であったらしいのですが、2016年の大雨被害で、道路は寸断、湯殿も流れ去っています。

林道に残るスノモビルのキャタピラ痕

 スノーモビルが自然環境に与える悪影響とは、排気ガスや踏圧、エンジンの音が考えられます。

 十勝三股は、石狩連峰やクマネシリ山塊に囲まれた広大なカルデラ地形で、スノーモビルのエンジン音は山に跳ね返されて森中に響き渡ります。

 大雪山に棲む野生動物たちは、ほとんどが臆病な性格をしています。シマエナガやハシブトガラ、カワガラス、ヤマセミ、エゾリス、ウサギ、...。大きな音におびえながら身を隠しているでしょうか。何度も繰り返されれば引っ越しも考えるでしょうか。これら臆病な小動物を捕食する猛禽類やキツネたちも、彼らがどこかへ姿を消してしまっては大迷惑です。静かな森は静かなままに、真っ白な野原は真っ白なままに、そおっとしておいてほしいものです。

 そうそう、冬眠を妨げられると不機嫌で凶暴になる山親爺もいます。まだ体温が残っているのではないかという真新しい足跡を見つけて、この日は退散することにしました。

目覚めた山親爺の足跡 

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2019年02月06日タンチョウ総数調査

大雪山国立公園 上士幌 上村 哲也

 

 タンチョウは、日本で繁殖する唯一の野生ツルで、全長140cm、翼開長240cmに達し日本最大級の鳥類です。夏期は湿原に分散して営巣・育雛を行い、冬は里近くへ移動し群れで生活をします。特別天然記念物であり、絶滅危惧Ⅱ類(VU)(環境省レッドリスト2019)でもあります。

 かつて、一時は絶滅したのではないかとまで考えられました。大正時代に十数羽が再発見され、地域住民が主体となって給餌が試みられました。1952年に釧路管内旧阿寒町と鶴居村で給餌に成功し、一斉調査で33羽が確認されたといいます。1984年には当時の環境庁が給餌など保護事業を始めました。NPO法人タンチョウ保護研究グループによると2017年度には1,600羽に増加、絶滅の危機から脱する目安の1,000羽を超えたとしています。

 しかし、現在のタンチョウは、かつての数羽のオスの血を受け継ぐもので、遺伝的多様性が失われている可能性があり、それが故に鳥インフルエンザなど何かの感染症がまん延したときに、また絶滅の危機を招くのではないかと危惧されています。そこで、生息域の分散を促し感染症のまん延を回避するため、給餌量の削減を段階的に進めています。

 さて、生息域の分散を確かめるにも、生息数の増減を知るにも、調査は欠かせないということで、NPO法人タンチョウ保護研究グループが行っているタンチョウ総数調査に参加してきました。長い間の調査の積み重ねにより、いくつもの生息地が把握されてきました。この日、タンチョウが集まる川べりで双眼鏡を片手に広く囲み、二人が川岸を歩き追い立て、無線で連絡を取りながら、飛び去った方角や数を共有し、カウントの重複を取り除きながら生息数を調査しました。こちらの気配を感じるとすぐに飛び去ってしまう個体もいますが、遠くまで行くことなく畑など見通しのよいところに降りてくれれば、成鳥、幼鳥を判別し、足輪がついていないか観察します。足輪があればより倍率の大きい望遠鏡を取り出して刻印された数字などを読み取ります。これはある年の春、まだ飛べない幼鳥を捕まえて雌雄や体重を観察、血液を採取し、足輪を取り付け、その後の生長や行動を見守っています。

 本グループの丹念な調査によって、最近になって、ひとつの細い支流が凍らずにタンチョウの餌場となっていることが分かりました。この日もとある場所で二家族、7羽を確認しました。地域の周辺をくまなく巡り、別の場所に飛来していた4羽を見つけましたが、元の場所へ戻ってみると二家族の姿がありません。二家族のうち一家族が移動していたのでしょう。このようにきめ細かく観察しカウントの重複を除きながら調査しました。

畑地の堆肥に集まるタンチョウ
 こちらは別の場所の調査時の風景です。成鳥となったタンチョウは、真っ白と真っ黒に塗り分けられ、その名の由来通り、頂を丹色(にいろ)に染めています。立ち姿、飛ぶ姿は優雅であり、鳴き声は高らかで、夫婦の息の合った舞いも見事です。そして、タンチョウそのものの美しさに加えて、彼らが集う汚染されていない川や湿原にはカエルや魚が棲み、それらの清らかな環境が美しい景観を織りなしています。本州に比べれば豊かな自然が広がっているイメージのある北海道ですら、このような環境は意外と少ないものです(本来、タンチョウは冬でも川が凍らず魚などの餌を得られる場所に生息するのですが、家畜用の飼料などを得られる農家や牛舎の周辺に生息する個体もいます)。彼らが自然な状態で生息できる環境を守り、次世代につないでいきたいではありませんか。

雪原にたたずむタンチョウのペア

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2018年11月30日ニペソツ山幌加温泉コースの復活

大雪山国立公園 上士幌 上村 哲也

 ニペソツ山は標高2,013m、東大雪いちばんの鋭鋒です。深田久弥氏が「日本百名山」の執筆までに登高できなかったことからそこには選ばれていませんが、その後の著作で「申し訳なかった」と言わしめるほど、山容、展望、景観のよい立派な山です。けれども、選ばれなかったおかげで大勢の登山者が押し寄せることなく、じっとナキウサギとの出逢いを待つことのできる静かな山です。5分、身じろぎせず待っていればニペソツ山のナキウサギは愛らしく姿を現してくれます。5分の内に次々と登山者が続くことはニペソツ山では滅多にありません。

前天狗から望むニペソツ山の頂 2016年の夏、連続して接近した台風などの大雨によって、十六ノ沢登山口に通じる林道が崩壊してしまいました。その被害は大きく復旧の目途は立っていません。もう、ニペソツ山には登れないでしょうか。ひがし大雪自然館やひがし大雪自然ガイドセンターなどに多くの問合せが寄せられていました。

 ニペソツ山にはもう一つ登山コースがあります。幌加温泉コースです。十六ノ沢コースの8時間に対して10時間余り(*1)と登山時間が長いことが敬遠されて利用されず、10年近く整備されることなく笹やハイマツが被っていました。この幌加温泉コースが地元関係者の努力により復活することになりました。入口となる2kmの作業道が整備され、登行を妨げていた笹やハイマツが刈り払われ、簡易トイレや携帯トイレ回収ボックスが設置され、道標が整備されました。

 上士幌自然保護官事務所は、赤外線を検知して登山者の通過日時と人数を記録する登山者カウンターを登山口に設置しました。西暦標高年2013年の十六ノ沢コース、2,648人(*2)には遠く及びませんが、2018年夏山シーズンに千人余りの登山者が訪れました。幌加温泉コースは行程が長く標高差も1,300m余りと大きく日帰りで往復するには健脚が求められます。自身の体力をしっかり見極め、例えば下山が日没前になるように綿密な計画が必要です。9月下旬ともなれば日の出から日没までは12時間ほど、登山口から中腹辺りまで森の中を歩く東大雪の山では、日が落ちれば途端に暗くなってしまいます。足下が暗くなれば転倒の危険があります。ありがたくない野生動物との遭遇も起こりえます。

登山道の途中、三条沼 ニペソツ山を訪れる登山者はそこのところをよく心得ていて、それが登山者カウンターのデータにも表れていました。次の図は、日別の入下山時間帯分布です。バブルの大きさが通過した登山者の人数を表しています。早朝の下山や遅い入山、日出没の線から大きく外れているのは恐らくはシカなど野生動物を検知したものでしょう。登山者が、日のある内に行動時間を納めようとしていることがうかがえます。

ニペソツ山幌加温泉コースの日別時間帯分布

*1 北海道新聞社刊 夏山ガイド第3巻による。

*2 上士幌町観光協会設置の登山者名簿による。

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2018年08月14日南沼汚名返上プロジェクトの傍らで、せめてものお願い事

大雪山国立公園 上士幌 上村 哲也

 南沼汚名返上プロジェクトでは、南沼野営指定地周辺のし尿ごみゼロを目指しています。さらに大雪山国立公園全体として携帯トイレの普及に取り組んでいます。

 しかし、今日はそれは一旦横に置いといて、携帯トイレで自身の排泄物をザックに入れ、あるいは外にぶら下げようとも、持ち帰ることがどうしてもどうしても受け入れられない方たちへのせめてものお願い事です。

 ウンコをするときは穴を掘り、後で掘った土を被せ埋めてください。本州では標高2,500m以下、深さ10センチと紹介されているでしょうか。北海道は緯度が高く気候が冷涼なので森林限界が違います。標高1,500m以下を目安にしてください。バクテリアが活発であると1か月ほどでウンコは分解され臭いがなくなり見かけも土と変わらなくなるそうです。地表に残したままだと雨に溶けて川に流れ入る恐れがあります。片手で扱えるシャベル、あるいはスコップを装備に加えてください。

 また、ティッシュペーパーの多くには僅かにプラスチックが含まれていて、強い雨に晒されても容易に溶け消えることがありません。使用済みの紙は持ち帰りましょう。持ち帰りには、冷凍向けの密閉袋などが厚手で臭い漏れを防ぎ便利です。

 登山道はもはや人間社会の領域です。悪臭を漂わせ景観を損ねて他の利用者に迷惑を及ぼさないよう、安全を確保しつつも登山道から距離を置いて位置を定めましょう。下流の方に迷惑とならないよう川や水場の近くは避けましょう。岩場はバクテリアの活動が活発でなく適切ではありません。

 植生に踏み込む場合はそれが稀少な植物でないか、そうでなくても踏み込みによって枯死することがないか観察しましょう。登山道に被れば煩わしい笹も、その根は登山道の侵食を防いでくれています。

 携帯トイレを使うのであれば、同じパーティのメンバーに一時通行止めにしてもらうとかポンチョや傘で隠すとか登山道でいたすこともできるでしょう。

「人間も生物の一員として野糞をすることは自然の摂理だ。」と仰る方がいました。

 しかし、南沼野営指定地がし尿で汚されているとされ、我々が調査を始めてから周辺で見つかるし尿のほとんどは人間のものです。熊のそれは見たことがなく、わずかに鹿やナキウサギ、狐やオコジョらしいものが見られるくらいで、高山植物が動物の排泄物を栄養分としてほとんど利用していないことは明らかです。利用しているのは蝿やコガネムシなどでしょうか。

「人間の大便はそのまま放っても自然界にインパクトを及ぼさない」と考える方は、例えば熊や狐のように蜂や蟻、コガネムシ、コケモモの実や葉や根などを食して排泄してください。その頻度も野生動物に倣いましょう。より、自然界の法則に近い状態を再現できます。

 ところで、ヨガの達人は心臓の鼓動さえ止めることができるそうです。極めれば3日間くらい便意を抑えることができるかもしれません。あるいは1錠で24時間、2錠で48時間、便意を抑える薬はないものでしょうか。

 携帯トイレを使い持ち帰っていただきたいのがいちばんですが、せめて土に埋め、紙だけは持ち帰りいただきたいというお願いでした。

 写真は本文と関係ありません。トムラウシ山への登山道、コマドリ沢の上の岩場で納めた一枚です。可愛いアイツが登山道にまで顔を出してくれています。

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2018年04月12日トムラウシ南沼汚名返上プロジェクト

大雪山国立公園 上士幌 上村 哲也

「初夏の五色ヶ原」

初夏の五色ヶ原 初夏、まだ残雪が多く残る頃、パークボランティアのみなさんと沼ノ原クチャンベツ登山口から入山し、ヒサゴ沼野営指定地に泊まってトムラウシ山まで登山道整備に赴いたときの風景です。五色岳山頂を間近にして、来た道を振り返ると、大沼を抱えた沼ノ原越しにニペソツ山を望むことができます。

 五色ヶ原は、雪の消えるそばから高山植物が咲き乱れ、季節が移ろえば次々と花が代わり、紅葉期にも華やかに色づいて訪れる人の目を楽しませてくれます。

 残念ながら、現在、沼ノ原クチャンベツ登山口へ通じる層雲峡本流林道は、平成28年に台風などの被害を受け通行止めが続いています。

「トムラウシ南沼汚名返上プロジェクト...トムラウシ山では携帯トイレを使いましょう。...」

 上士幌自然保護官事務所は、「トムラウシ南沼汚名返上プロジェクト」に取り組んでいます。し尿ゴミの調査と回収

 トムラウシ山頂直下にある南沼野営指定地の周辺では、草陰や岩陰にし尿ゴミが散見され、野営地から物陰まで経路の高山植物が踏みつけられています。現状に衝撃を受け、自然保護官と十勝総合振興局の呼びかけに応えて多くの協力が集まり、平成29年4月にこのプロジェクトが立ち上がりました。新得山岳会、十勝山岳連盟、山のトイレを考える会、十勝西部森林管理署東大雪支署、新得町、上川総合振興局、十勝総合振興局(事務局)とともに、南沼野営指定地周辺において、携帯トイレの利用を促進することでし尿ゴミを無くし、踏み分けられたトイレ道の植生を復元することを目指しています。

 夏山シーズン、トムラウシ山には、麓の短縮登山口やトムラウシ温泉登山口から3,000人を超える登山者が登ります。表大雪や十勝岳連峰から縦走する登山者も多くいます。平成29年7月下旬から9月末までの限られた期間ですが、自動カメラを設置して設営されたテント数を調査したところ71日間に324張りを数えました。野営指定地で7回行ったアンケート調査に基づくテントひと張りあたりの平均宿泊人数から試算してみると調査期間中に約700人余りが宿泊したと考えられます。ただし、この調査は夏山シーズンを全ては網羅しておらず、悪天候による19日の欠測日を含んでいますから、実際にはこれ以上の人数になります。携帯トイレの普及啓発

 南沼にはトイレがありません。携帯トイレを利用するためのブースが1基だけ置かれています。し尿ゴミが無くならないのはブースが足りないからなのか、携帯トイレそのものが知られていないのか。プロジェクトでは、アンケート調査、利用者数調査を行い、携帯トイレの増設が必要か、その設置は、維持管理はどのように実現していくか、検討を積み重ねています。平成29年のアンケート調査では、84%の登山者が携帯トイレを装備していました。新聞などに大きく取り上げられ高い数字となりました。今後も普及啓発に力を注いでいきます。

トイレ道の植生復元 踏み分けられたトイレ道では、土壌や種子が流れ出るのを食い止め植生を復元しようと、周囲の植生に影響がないヤシ繊維のネットを敷きしました。多くの参加者が協力して資材を運び上げ作業しました。今後も経過を観察し、修繕や改良を施し、施工箇所を増やしていきます。

 登山者の皆様には、どうぞ高山植物の植生域に踏み込まず、汚物や使用済みの紙はお持ち帰りいただきますよう協力をお願いいたします。

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2017年02月09日シマフクロウに棲み家の森を戻そう

大雪山国立公園 上士幌 上村 哲也

大雪山国立公園の美しい景観を保全するほか、希少な野生生物を保護することも私たちの大切な仕事です。

中でもシマフクロウは、巣となる大木があった森は切り開かれ、エサの魚が住んでいた川はダムなどで分断され、生息地を奪われて一時は80羽ほどまで数を減らしてきました。

環境省では1980年代から、研究者の協力を得て保護増殖活動を続け、2016年には140羽ほどまでに回復しましたが、まだまだ危機を脱したとはいえません。

保護増殖活動の柱は、シマフクロウの大きな体に見合う巣箱の設置と、池に魚を放つ給餌です。

この日は、十勝のとある森の中にある池に30kg分の魚を運びました。背負子にコンテナを括り付け厚手のビニール袋を広げて魚を入れます。魚を活かす水も背負うのでずしりと肩に重さがかかります。数にすると100匹以上でしょうか。二人で二往復。シマフクロウたちには、お腹を満たし、寒さが厳しくとも繁殖の大切な季節を乗り切ってほしいものです。

背負子で運搬オショロコマを放流保護増殖活動のもうひとつの柱は巣箱掛けですが、こちらの写真は設置していた木が倒れて一部が壊れてしまった巣箱を、ひがし大雪自然館での展示に利用しようと加工中のものです。壊れた部分を切り取って、断熱材が施されていることなどを断面展示します。出入口に残るシマフクロウの爪痕なども感じることができます。完成間近、乞うご期待です。

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