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アクティブ・レンジャー日記 [北海道地区]

北海道地方環境事務所のアクティブ・レンジャーが、活動の様子をお伝えします。

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大雪山国立公園 上士幌

71件の記事があります。

2020年02月07日山と森の静寂を大切に

大雪山国立公園 上村 哲也

 今回は、自然を好み自然に興味を抱く登山者のみなさまに野生生物への配慮をいただきたいというお話しです。

 東大雪地域には、登山口まで舗装路が続き広い駐車帯があり登山時間が短い、とある山岳があります。そうして山頂の少し先の岩場にナキウサギが生息しています。山頂を往復するだけでなく、その岩場まで足を延ばす方が大勢いらっしゃいます。

 2019年3月30日(土)から11月2日(土)までの218日間を調査したところ、標準的な登山時間を1時間以上超える登山者が761人いらっしゃいました。入下山時刻を把握できた1584人の48%に当たります。滞在時間の最長は9時間余りでした。

 ナキウサギの生息域に登山者が滞在したと考えられる日数は66%の143日に及びました。平均では3日に2日ですが、最長では18日間続きました。

標準的な登山時間を除いた滞在時間別登山者数 生活の場所へ毎日のように人が訪れるというのは、ナキウサギにとって異常な状態とはいえないでしょうか。ナキウサギは静かで穏やかな暮らしを望んではいないでしょうか。

 特に人数が多く22組49人が滞在した9月21日(土)について、滞在時間の分布を調査しました。

 パーティごとに人数と滞在時間帯を調べ、時間帯を20分ごとに区切り、滞在人数を集計しました。8時20分から18時まで登山者が滞在し、11時20分から13時20分までは20人を超え、最多は12時から12時40分の32人でした。

9月21日(土)の登山者の滞在分布
7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18
1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1
1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1
1 1 1 1 1 1 1
3 3 3 3 3 3 3
1 1 1 1 1 1 1 1 1 1
1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1
2 2 2 2 2 2 2 2 2
2 2 2 2 2 2 2 2
2 2 2 2 2 2
2 2 2 2 2 2 2
2 2 2 2 2 2 2 2 2
3 3 3 3 3 3 3
9 9 9 9 9
5 5 5 5 5
2 2 2 2 2 2 2 2 2 2
2 2 2 2 2 2
1 1 1 1 1 1 1 1
3 3 3 3 3
1 1 1 1 1 1 1
1 1 1 1 1 1 1
2 2 2 2 2 2 2 2
2 2 2 2 2 2 2 2 2 2
0 0 0 0 2 6 8 8 10 10 18 18 17 26 26 32 32 28 22 19 14 14 12 9 8 4 4 2 2 2 2 2 2 0 0 0

 ナキウサギは草食動物です。岩場周辺の植物が食べ物です。冬を過ごすための貯蔵なのか、ベッドの巣材なのか、巣穴へ運び込む光景も目にします。ナキウサギの愛らしさに目を奪われ、知らず知らずに周囲の植物を踏みつけていませんか。掘り巡らされた巣穴の上をゴトゴトと踏み鳴らして歩き回ってはいませんか。

 然別湖ではウチダザリガニが持つザリガニかび病(ザリガニペスト)によりニホンザリガニが見られなくなってしまいました。同じように、人にはなんともなくてもナキウサギは堪えられない菌やウィルスがあるかもしれません。人が持ち込んだものは、食べ物のひとかけら、飴の包み紙一枚も残してはいけません。

 入山前にはトイレを済ませ、携帯トイレも準備しましょう。

 観察は双眼鏡などを利用して十分に距離を置き、撮影には高い倍率の望遠レンズを用いたいものです。

 ナキウサギに代表される愛らしい野生生物たちが、これからも穏やかに暮らしていけるよう優しい心遣いをお願いします。

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2020年01月29日東大雪地域の入山者数推定

大雪山国立公園 上士幌 上村 哲也

 大雪山国立公園 東大雪地域には、現在通行止めとなっているものを除いても10箇所以上の登山コースが存在します。そのうちトムラウシ山短縮登山口、トムラウシ山温泉登山口、石狩岳登山口、ニペソツ山幌加温泉登山口では、登山者カウンターを設置しています。また、多くの登山口には森林管理署が入林簿を設置し、利用者のみなさんに記入いただいています。これらのデータを活用し、利用者の動向を調査しました。

 調査から見えてくる一端をご紹介します。

 なお、登山者カウンターは赤外線を利用する機械ですから誤りを生じることがあり、入林簿も全ての方に記入いただけているとは限りませんので、多少の誤差を含んだお話しであることをご理解ください。

 2019年の夏山シーズン、東大雪地域全体の計測数、記入数は10,175人で、昨年の9,505人を上回りました。登山口別では、白雲山鹿追側が昨年には及ばなかったものの2,646人で最多となりました。ほかの多くの登山口ではいずれも昨年を上回り全体を押し上げました。

東大雪地域の登山口別計測数、記入数

登山口 年間 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月
十勝岳新得側 69 3 7 3 4 39 13
トムラウシ山短縮口 2,621 140 1,078 843 550

10

トムラウシ山温泉口 119 14 40 47 16

2

石狩岳 458 28 89 92 232

17

ユニ石狩岳 215 3 47 73 87

5

ニペソツ山 1,091 206 326 288 234

37

白雲山士幌側 974 105 256 144 84 123 154

80

28
白雲山鹿追側 2,646 40 299 383 385 391 749 390 9
東ヌプカウシヌプリ 1,646 53 184 285 208 250 365 295 6
南ペトウトル山 336 7 62 95 18 62 40 51 1
合計 10,157 205 804 1,305 2,278 2,173 2,466 900 44

 表は、登山口ごとに年間、月別の計測数、記入数を示しています。登山者カウンターと入林簿の両方がある登山口では、登山者カウンターの計測数を利用しています。

 初雪は平年並みで、その後の雪の訪れは遅く、白雲山などは10月も変わらず登山者が訪れました。8月は平年に比べ40%前後多い降水が観測されましたが、顕著な落ち込みにはなりませんでした。

 東大雪地域には、ニペソツ山やトムラウシ山のように健脚向きの山がある一方、然別湖周辺のように初心者や家族連れで楽しめるところがあり、これらは春に雪が早く消えるのでシーズン初めの足慣らしにも適しています。

パーティの人数と単独登山者の割合

登山口  1人  2人  3人  4人  5人  6人  7人  8人  9人 10人以上 最多人数 単独率
白雲山士幌側 278 163 29 15 16 5 0 5 2 5 13 28.5%
白雲山鹿追側 563 462 118 61 19 11 3 4 3 15 100 21.3%
東ヌプカウシヌプリ 486 312 70 30 15 3 2 0 1 5 23 29.5%
南ペトウトル山 66 37 8 6 3 3 1 0 0 3 60 19.6%
ニペソツ山 214 41 12 4 3 2 2 1 1 2 16 49.1%
ユニ石狩岳 52 27 5 6 2 1 1 2 0 2 16 24.2%
十勝岳新得側 16 9 2 1 1 0 0 1 0 1 12 23.2%

 入林簿からパーティの人数を集計しました。ここでは、登山者カウンターのある登山口も入林簿のデータを利用しています。表は、人数別のパーティの数、最多パーティの人数、入林簿に記入された入林者数の合計に対する単独者数の割合を示しています。いずれの登山口でも単独登山者の数が最も多いという結果でした。

 しかし、白雲山鹿追側コースは家族や団体登山の利用が多いと考えられ、総記入数のうち単独登山者の割合は21.3%でした。一方、ニペソツ山では49.1%でした。幌加温泉コースが長く険しい健脚向きであることで、友人などを誘いづらく単独での山行を決意させるのでしょうか。

 ニペソツ山では、午前4時台の入山が最多で、日帰りの方は平均10時間余りで下山しています。日の出とともに入山し余裕をもって下山しようとする傾向が窺えます。登り1時間、下り40分と登山時間の短い東ヌプカウシヌプリでは、15時台の入山も見受けられました。天気がよい、空き時間ができたと気軽に訪れることができるのでしょう。

 大雪山国立公園 東大雪地域の多彩な山岳をお楽しみください。

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2019年11月07日特定外来生物防除・オオハンゴンソウ その後

大雪山国立公園 上士幌 上村 哲也

 今年、東大雪地域で抜き取ったオオハンゴンソウの数は1,026本でした。

 花を付けた個体を根塊ごと掘りとる方法で駆除しました。要した活動時間は17時間35分、活動日数は14日でした。大雪山国立公園の東大雪地域の中で最も大きい生育地は、国道273号線の三国峠に近い道路脇です。757本を駆除、8日の13時間余りを費やしました。

 既往文献を探したところ、「特定外来生物オオハンゴンソウの管理方法 ー引き抜きの有効性の検討ー」(大澤・赤坂 2009)を見つけました。「複数年にわたり、可能な限り根を残さないように引き抜き続けることで、オオハンゴンソウを根絶できる可能性がある」という記述があり、心強く感じます。

 駆除活動で根塊を取り残すと茎や葉が再発生することが知られており、室内実験により、根塊は生重量2.4gの場合に50%の確率で再発生することが確かめられたそうです。大きさにすると太さ2.1cm、長さ2.1cmに相当するということで、もし野外でもこの大きさなら、見逃すことはないように思えます。

 さらに、野外に調査区を設けて実験したところ、「オオハンゴンソウを地下部から引き抜き続けた結果、2 年間で開花茎の数は、もとの5%未満にまで減少した。」ともあります。これほど目に見える成果に出逢えるのならやりがいを感じます。

 しかし、この後が大切です。「引き抜き開始から3 年目にあたる2007 年には、それまで殆ど見られなかった未開花茎が、観察初年度(2005 年)の開花茎数とほぼ同数観察された。

 つまり、土の中に眠っていた種子が発芽し始めたというのです。「開花茎が見られる場所では、たとえ全ての開花茎を除去したとしても、数年間はシードバンク由来の実生が発生してくることが予想される。」なかなかの手強い相手に腰を据えた活動が必要です。

 今年は、ほかの業務と併せて立ち寄った際に2時間前後を充てて駆除を繰り返したので日数は多くなってしまいました。最終日が10月7日でしたから、大雪山の環境では結実期に入りかねません。来年以降は、集中して駆除にあたり9月中には終えたいところです。大きな生育地でも3日に収めたいところです。反対に僅かな生育地でも時間をおいて2度目の確認が欠かせません。

 また今後、未開花茎の駆除も必要になるかもしれません。花に頼らず、茎や葉だけで同定できる目を養わなくてはなりません。

 今年、開花茎を抜き切れたことで生育数と生育場所が把握でき、活動の日数や時間も業務の中に収められると分かりました。長い年数はかかるでしょうが地域根絶を目標にできると確信しています。

活躍した道具たち

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2019年09月27日特定外来生物防除・オオハンゴンソウ

大雪山国立公園 上村 哲也

 すばらしい景観を永く保ってほしい大雪山国立公園ですが、これを脅かすもののひとつに外来生物の侵入があります。

 オオハンゴンソウは北アメリカ原産。寒冷地に生育でき、大雪山国立公園にも侵入しています。

 大雪山国立公園の中でオオハンゴンソウが花を開くのは8月半ばから10月初めまで。花があれば同定が容易なので駆除が捗ります。花が終わり種を散らす前に完了させたいところですが、様々な業務が集中する夏、駆除作業に充てる時間を確保するのは容易でありません。生育数の少ない箇所はほかの業務で立ち寄ったときに併せて行うこともありました。東大雪地域で最も生育量の多い三国峠近くではほとんど駆除できていませんでした。

 大きく生長する個体は地中に芋のような太い塊を持っていることがありますが、これを掘りとると駆除できるのではないかと感じています。テコ付の草抜きを使いますが、ときにはシャベルが必要なことも。これまで、駆除した量を袋の数やおおよその重さで記録していましたが、効果を確かめるにはもっと正確な把握が必要でした。今年の夏は、東大雪地域における実態を捉えようと、生育場所、本数、重量を記録しながら抜取りを試みました。本腰を入れてみると気づくということもあるのか、生育数は少ないものの新たな生育場所が5箇所も見つかりました。

東大雪地域の生育場所

 寒冷地でも生育するとはいえ、北海道の、それも標高の高い大雪山では、生育は遅かったり限られていたりするかもしれません。ほかの地域の状況に比べれば数は少なく、面積も小さいようです。今夏、抜き取った数は800本余り。まだ200本ほど残っています。二週間ほどのうちに抜ききりたいところです。

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2019年08月16日してはならない。

大雪山国立公園 上村 哲也

 大雪山国立公園を含む自然公園では、優れた自然の風景地を保護する、生物の多様性の確保に寄与することなどを目的に、「してはならない」行為が法律で定められています。特別保護地区内において火入れ又はたき火をすることもそのひとつです。

火入れやたき火をしてはならない。

 先日、大雪山国立公園東大雪地域の特別保護地区の中で、たき火の痕が見つかりました。周辺の枯れ枝などを集め燃やしたようです。一部に紙やアルミ箔も含まれていました。たき火は山火事の最大の原因とされています。周囲はハイマツ帯が隣接し、イワウメやコメバツガザクラ、ガンコウランほか、高山植生に囲まれた場所でした。山火事は、すぐれた自然景観が失われるだけでなく、滞在する登山者の生命も脅かします。山火事のおそればかりではなく、炎の揺らめきや煙の臭いを察知して野生動物の行動に影響を与えないでしょうか。ナキウサギやシマリスの生息密度が高いところでした。

 

 昨年も同じ場所で小さなたき火の痕が見つかっていました。きれいに取り除いたつもりでしたが、僅かな痕跡が、後から訪れたものに我も我もと思わせるのでしょうか。たまりにたまった痕跡なのでしょうか。楽しむだけ楽しんで後の始末は何もせず、防火意識の低さが気がかりです。いつか取り返しのつかない事態を招くのではないかと不安です。時間をかけて取り除きましたが、岩や土には炭の色が残っていました。これきり、たき火への欲求など呼び起こさないで欲しいものです。

二度としませんように この規定に違反した者は、「6月以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。」とされています。たき火好きの山仲間がいらっしゃったら教えてあげてください。我々も啓発に努めて参ります。

 大雪山国立公園の特別保護地区は次のリンクで確認することができます。

 大雪山国立公園区域図

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2019年07月29日たまには山へ恩返しinトムラウシ

大雪山国立公園 上村 哲也

 7月20日(土)、21日(日)、大雪山・山守隊が中心となってトムラウシ山のカムイ天上付近で実施した登山道整備イベント「たまには山へ恩返しinトムラウシ」に同行しました。

 トムラウシ山のカムイ天上に延びる登山道は、2003年に新たに開削された区間です。それまでのカムイサンケナイ川を辿るコースは渡渉や登降を繰り返し、辛く難しいコースで事故も起きていました。

 しかし、ササ原を切り開いたこの区間は融雪期や降雨直後にぬかるみがひどく、評判はよくありません。少しずつ整備を進めてきましたが一向に改善されません。ここは切れ目なく木道を敷きつなぐ方が、土が削られてぬかるみが作られることも抑えられるのではないか、そう考えられるようになりました。

参加者自ら資材を荷揚げ このイベントは、参加者自らも長さ60センチや120センチの木材、釘、ハンマー、カケヤなどを分担して運搬します。登山口でトラックから降ろされた資材が、我こそと参加者の背負子に収められてゆきました。みなさん、意欲満々です。主催者の担ぐ荷が少なくなりバツが悪そうです。いえいえ、このほかに山守隊のみなさんは事前に何度も資材を担ぎ上げたと見聞きしました。

 荷揚げは、普段、登山装備を担いで山に登るみなさんですから、それほど苦とはしません。難しいのは組み立てるための釘打ちと揺れ動かない安定した設置です。

釘打ち 枕となる60センチの角材に踏み板となる120センチの角材を4寸釘で固定します。4寸釘は長さ125ミリ、太さ4.6ミリ。厚さ6センチ×2枚をわずかに突き抜けさせます。突き抜けた先を叩いて曲げ、抜け止めにします。並の金槌では打ち込めません。重さが1キロを超える石頭鎚を用います。これが、いうことを聴きません。斜めに当たったり端に当たったりすると、太い釘も平気で曲がってしまいます。いくらか上手に打ち込むことができても、すぐに腕の力がなくなったりします。交代、分担しながら作業を進めました。

 設置もまた難しい作業のひとつです。登山道は平坦ではありません。設置した木道のどこを踏んでもガタガタと動かないように調節します。根気よく丁寧な作業が求められます。

安定した設置

 2日間に汗をかいた参加者は延べ37人。組み立てた木道は69基、敷き延ばした区間は約300mです。大雪山・山守隊のみなさん、参加された山好きのみなさん、お疲れ様でした。

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2019年06月04日登山道巡視、始めました。

大雪山国立公園 上村 哲也

 5月14日(火)、白雲山士幌コースを巡視しました。然別湖の外輪にある白雲山は、標高1,186m。然別湖側と士幌町側にそれぞれ登山口があります。
 士幌町側の登山口は「士幌高原ヌプカの里」の山側にあり、公衆トイレと駐車場が利用できます。登山口から山頂までは大雪山グレード2「大雪山の自然とふれあう軽登山ルート」です。
 大雪山国立公園の最も南にあり、雪の少ない十勝地方の気候も加わって、比較的早く夏山シーズンを迎えます。登り2時間ほどと行程は短め、愛好家の足慣らしに最適でしょう。
 山頂近くまで樹林におおわれていますが、樺など広葉樹はまだ葉が広がっておらず、飛び交う鳥たちが眼に止まります。
 途中、岩石山にも足を伸ばしました。山頂からは十勝平野を一望できます。整然と区切られた耕地やまっすぐに延びる道路が十勝らしさを感じさせます。「なつぞら」が広がった一日でしたが、水蒸気が少なければ太平洋まで見渡せたことでしょう。
 圧巻は白雲山から然別湖を見下ろす眺望です。湖を挟んで外輪山の向こうにはウペペサンケ山が立ち尽くしています。合間には、忠別岳や五色ヶ原がまだまだ白い山肌を見せていました。白雲山から然別湖

 5月28日(火)、然別湖のトウマベツ川落ち口近くにある登山口から、白雲山、天望山、東雲湖を巡る天望山周回線を巡視しました。一巡すれば6時間ほどの行程でしょうか、大雪山グレード2「大雪山の自然とふれあう軽登山ルート」です。シーズン中、登山口には簡易トイレが設置されます。
 岩が積み上がった白雲山、緑豊かな天望山、十勝平野や然別湖を見下ろしながら進む尾根沿いの歩道、奥深くひっそりとたたずむ東雲湖、水辺の自然を感じながら歩く湖岸沿いの歩道、変化に富んだ見所の多いルートです。

 天望山周回線は、樹林帯、笹原、岩稜など様々な環境があり、植物の種類も環境に応じて多く見られます。この日は、コヨウラクツツジ、エゾムラサキツツジ、オオカメノキ、ツバメオモト、ミツバオウレン、オオバナノエンレイソウなどの花を見ました。

 白雲山の山頂は大きな岩が積み重なって形作られています。岩の隙間に携帯電話やコンパクトカメラを落としてしまうと、ほぼ取り戻せません。ペットボトルや食べ物の包み紙などについても充分に注意を払ってください。

 然別湖周辺の登山道は、毎年、然別自然休養林保護管理協議会のメンバーやその関係者が、ササ刈りなど手入れをしています。この日も一部の整備を行いました。刈り払った笹が芯だけ徒長していたものを剪定バサミで刈り取り、風や雪で倒れ道をふさぐ樹木を手のこで対応できる分だけ取り除きました。大きな支障のないものはそのまま残しています。倒木を潜り、跨ぐのも自然とのふれあいと感じていただけたらと考えています。

 マダニにも注意が必要です。肌の露出を避け、見つけやすい明るい色の衣服を選びましょう。

天望山山頂のツツジ

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2019年04月24日十勝三股で植生復元活動

大雪山国立公園 北海道地方環境事務所

 十勝地方、上士幌町の三股は、かつて林業で賑わい千人以上が暮らす集落でした。帯広から国鉄士幌線が延び、小中学校が置かれ、神社には土俵も造られたと聞きます。広大な三股のカルデラは黒々とした針葉樹の森に満ちていたそうです。三股を起点に林道や森林鉄道、馬車による鉄道も敷かれ、風倒木をはじめ大量の木材が搬出され生産されました。

 しかし、やがて林業は衰退し、現在は二世帯が暮らすのみです。

 その三股で、環境省は跡地を森に帰そうと植生復元活動を続けています。ひがし大雪自然館と共催で植樹イベントを開き、鹿の食害を防ぐため、柵で四角く囲んだり、網で丸く囲んだりしながら植樹を増やしてきました。大雪山国立公園パークボランティアのみなさんの力を借りながら手入れもしています。

 雪解けが進む4月のある日、設備の点検に訪れました。

 設えてから年月が経った柵は、老朽して変形し、錆びて弱くなった金網は鹿に突き破られるようになりました。幸いにも柵の中に植樹した多くの木々は2メートル以上に生長し、鹿の食害を受けにくくなっています。倒れた柵は、これから順に解体していきます。

 数年前から、一本一本の木を支柱と網で囲む対策に変わりました。初めは、支柱の数を節約したり、固定の方法を試行錯誤したりしたものの、雪の重さに堪えられず変形してしまいました。今では、囲む網の径や支柱の数、そのほか設置のコツをつかみ安定するようになりました。植える木は、周辺の道路脇などから、放っておけば安全管理などのため刈り払われてしまう稚樹を掘り取っています。

 小さな小学校の跡地でも、かつての森に帰すには何十本も木を植え、長い年月をかけて見守っていかなくてはなりません。

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2019年03月14日大雪山のスノーモビル乗り入れ規制

大雪山国立公園 上士幌 上村 哲也

 自然環境の優れた地域でのプレジャーボート、スノーモビル、オフロード車などの無秩序な使用は自然環境に悪影響を与えることから、これらを防ぐために国立公園内の特別保護地区、車馬等乗入れ規制地区、原生自然環境保全地域において、それらの乗入れを禁止しています。(北海道地方環境事務所のウェブページから)

 自然保護官事務所では、乗入れ規制地区への入口となる場所に看板を立て、乗り入れ規制を周知しています。また、これらの地区を随時、巡視しています。この日、十勝三股の森、奥深くに通じる林道の入口まで来ると、スノーモビル乗り入れの痕跡がありました。この場所は昔、山奥に野湯が湧いていて密かに人気であったらしいのですが、2016年の大雨被害で、道路は寸断、湯殿も流れ去っています。

林道に残るスノモビルのキャタピラ痕

 スノーモビルが自然環境に与える悪影響とは、排気ガスや踏圧、エンジンの音が考えられます。

 十勝三股は、石狩連峰やクマネシリ山塊に囲まれた広大なカルデラ地形で、スノーモビルのエンジン音は山に跳ね返されて森中に響き渡ります。

 大雪山に棲む野生動物たちは、ほとんどが臆病な性格をしています。シマエナガやハシブトガラ、カワガラス、ヤマセミ、エゾリス、ウサギ、...。大きな音におびえながら身を隠しているでしょうか。何度も繰り返されれば引っ越しも考えるでしょうか。これら臆病な小動物を捕食する猛禽類やキツネたちも、彼らがどこかへ姿を消してしまっては大迷惑です。静かな森は静かなままに、真っ白な野原は真っ白なままに、そおっとしておいてほしいものです。

 そうそう、冬眠を妨げられると不機嫌で凶暴になる山親爺もいます。まだ体温が残っているのではないかという真新しい足跡を見つけて、この日は退散することにしました。

目覚めた山親爺の足跡 

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2019年02月06日タンチョウ総数調査

大雪山国立公園 上士幌 上村 哲也

 

 タンチョウは、日本で繁殖する唯一の野生ツルで、全長140cm、翼開長240cmに達し日本最大級の鳥類です。夏期は湿原に分散して営巣・育雛を行い、冬は里近くへ移動し群れで生活をします。特別天然記念物であり、絶滅危惧Ⅱ類(VU)(環境省レッドリスト2019)でもあります。

 かつて、一時は絶滅したのではないかとまで考えられました。大正時代に十数羽が再発見され、地域住民が主体となって給餌が試みられました。1952年に釧路管内旧阿寒町と鶴居村で給餌に成功し、一斉調査で33羽が確認されたといいます。1984年には当時の環境庁が給餌など保護事業を始めました。NPO法人タンチョウ保護研究グループによると2017年度には1,600羽に増加、絶滅の危機から脱する目安の1,000羽を超えたとしています。

 しかし、現在のタンチョウは、かつての数羽のオスの血を受け継ぐもので、遺伝的多様性が失われている可能性があり、それが故に鳥インフルエンザなど何かの感染症がまん延したときに、また絶滅の危機を招くのではないかと危惧されています。そこで、生息域の分散を促し感染症のまん延を回避するため、給餌量の削減を段階的に進めています。

 さて、生息域の分散を確かめるにも、生息数の増減を知るにも、調査は欠かせないということで、NPO法人タンチョウ保護研究グループが行っているタンチョウ総数調査に参加してきました。長い間の調査の積み重ねにより、いくつもの生息地が把握されてきました。この日、タンチョウが集まる川べりで双眼鏡を片手に広く囲み、二人が川岸を歩き追い立て、無線で連絡を取りながら、飛び去った方角や数を共有し、カウントの重複を取り除きながら生息数を調査しました。こちらの気配を感じるとすぐに飛び去ってしまう個体もいますが、遠くまで行くことなく畑など見通しのよいところに降りてくれれば、成鳥、幼鳥を判別し、足輪がついていないか観察します。足輪があればより倍率の大きい望遠鏡を取り出して刻印された数字などを読み取ります。これはある年の春、まだ飛べない幼鳥を捕まえて雌雄や体重を観察、血液を採取し、足輪を取り付け、その後の生長や行動を見守っています。

 本グループの丹念な調査によって、最近になって、ひとつの細い支流が凍らずにタンチョウの餌場となっていることが分かりました。この日もとある場所で二家族、7羽を確認しました。地域の周辺をくまなく巡り、別の場所に飛来していた4羽を見つけましたが、元の場所へ戻ってみると二家族の姿がありません。二家族のうち一家族が移動していたのでしょう。このようにきめ細かく観察しカウントの重複を除きながら調査しました。

畑地の堆肥に集まるタンチョウ
 こちらは別の場所の調査時の風景です。成鳥となったタンチョウは、真っ白と真っ黒に塗り分けられ、その名の由来通り、頂を丹色(にいろ)に染めています。立ち姿、飛ぶ姿は優雅であり、鳴き声は高らかで、夫婦の息の合った舞いも見事です。そして、タンチョウそのものの美しさに加えて、彼らが集う汚染されていない川や湿原にはカエルや魚が棲み、それらの清らかな環境が美しい景観を織りなしています。本州に比べれば豊かな自然が広がっているイメージのある北海道ですら、このような環境は意外と少ないものです(本来、タンチョウは冬でも川が凍らず魚などの餌を得られる場所に生息するのですが、家畜用の飼料などを得られる農家や牛舎の周辺に生息する個体もいます)。彼らが自然な状態で生息できる環境を守り、次世代につないでいきたいではありませんか。

雪原にたたずむタンチョウのペア

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