ACTIVE RANGER

アクティブ・レンジャー日記 [北海道地区]

北海道地方環境事務所のアクティブ・レンジャーが、活動の様子をお伝えします。

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2022年6月

23件の記事があります。

2022年06月01日環境省アクティブ・レンジャー写真展 北の自然の舞台裏

支笏洞爺国立公園 阿部万純

現任 アクティブ・レンジャー 阿部 万純 

撮影・解説:前任 アクティブ・レンジャー 荒川 真吾

「春の木漏れ日を浴びて」

中モラップ 5月

 5月に中モラップ地区を巡視した際に撮影しました。春の森の中、林床に注ぐ木漏れ日のスポットライトを浴びて、フデリンドウ(Gentiana zollingeri)が精一杯花を咲かせています。

 巡視業務では、支笏湖・定山渓地区の遊歩道や登山道の利用状況の確認や、利用者の方々に心地よく使ってもらえるよう園地内の看板やベンチなどの施設の状況確認を行っています。

「秋の樽前山」

樽前山 11月

 夏山シーズン終了間際の11月初旬、秋の高空に水蒸気を上げる樽前山を撮影しました。

 樽前山は、現在も活動を続ける活火山で、登山初心者でも美しい高山植物や素晴らしい眺望を楽しんだり、活火山の鼓動を感じることができます。

 毎年多くの人々に感動を与えてくれる樽前山ですが、登山者がすれ違うときに登山道脇の高山植物が踏み荒らされてしまったり、ゴミが落ちていたりと、登山者が多い故の問題も。山を歩くときは、登山道を外れず、ゴミは持ち帰りましょう。多くの人が樽前山の登山を通して、自然を楽しむ際のちょっとした心がけについて、考えるきっかけを得ることができたらと思います。

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2022年06月01日環境省アクティブ・レンジャー写真展 北の自然の舞台裏

利尻礼文サロベツ国立公園 福田蒔太

アクティブ・レンジャー 福田 蒔太

「王者の風格」

沓形岬にて 12月

 12月初旬、利尻島西岸の沓形岬にて、日本最大級の猛禽類であるオオワシに出会いました。オオワシは冬が近づくと越冬のため北海道に訪れ、利尻島でも運が良ければその姿を見ることができます。強風が吹き、荒い波が打ち付ける海岸にたたずむその姿に、王者の風格を感じました。

 そんなオオワシも人間と同じく、ウイルスには感染してしまうようです。令和4年1月に北海道内で発見されたオオワシの死体から、高病原性鳥インフルエンザウイルスが検出されました。オオワシへの感染は道内初です。オオワシは鳥獣の死肉を食べることもあるため、ウイルスに感染した野鳥を食べて感染した可能性が考えられます。翌月には利尻島内でも野鳥の高病原性鳥インフルエンザ感染が確認されています。島内での希少猛禽類への感染拡大防止のため、行動に異常がある希少種の個体が確認された際は、慎重かつ迅速な対応に努めていきたいと思います。なお、鳥インフルエンザウィルスは、日常生活においては、過度に心配する必要はありませんのでご安心下さい。

「湖面に輝く利尻富士」

姫沼にて 10月

 姫沼は、利尻山からの湧水をせき止めて造られた人工湖。ヒメマスを放流したことからこの名前がつけられました。秋には色鮮やかな紅葉を眺めることができ、利尻山と美しい湖沼とがあわさって創り出される風景は、心穏やかな気持ちにさせてくれます。天気が良い日には、この写真のように、湖面に映し出される「逆さ利尻富士」に出会えるかもしれません。風がないタイミングに訪れるのがおすすめです。

 姫沼の周囲には環境省が設置した木道があり、一周にかかる時間は約20分。森林浴をしながら、利尻島ならではの風景を探勝することができます。また、クマゲラをはじめ多くの野鳥が生息しており、バードウォッチングを楽しむこともできます。

 この木道を利用者が安全に歩行できるように点検、補修するのも利尻島アクティブ・レンジャーの大事な役割です。日々の巡視では、散策の支障となる倒木や、木道の損壊がないか、利用者目線で考えることを心がけています。

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2022年06月01日環境省アクティブ・レンジャー写真展 北の自然の舞台裏

大雪山国立公園 忠鉢伸一

アクティブ・レンジャー 忠鉢 伸一

「錦秋」

式部沼 9月

 式部沼から高根ヶ原を見上げると、色鮮やかに染まった山肌が錦のようでした。

 緑一色だった夏山シーズンを越えると、日に日に色づく紅葉が息をのむ絶景を見せてくれます。その日の天候や時間帯でもその美しさは変化し、同じ場所でも毎回違った印象を受けます。大雪山の素晴らしい紅葉の風景は、まさに一期一会の出会いです。

「雪上に佇む

三段山 1月

 真っ白な雪の中に、冬毛に生え替わったエゾユキウサギを発見しました。遠目で見ると雪と同化して見つけにくいのですが、運良く出会うことができました。見た目に不釣り合いなたくましい後脚を持つエゾユキウサギは、日本最速のほ乳類と言われています。

 しばらく観察していましたが、まだ見つかっていないと安心しきっているようです。

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2022年06月01日環境省アクティブ・レンジャー写真展 北の自然の舞台裏

羽幌 津田涼夏

希少種保護増殖等専門員 岩原 真利

「絆」

天売島 7月

 目の周りの白い模様と赤い足が特徴のケイマフリ。

 餌を咥えて巣に戻るケイマフリのモニタリング調査をしていると、定点の周辺で「ピ、ピ、ピ、ピピピ~」ときれいでかわいらしい声が聞こえてきます。振り返ると、2羽のケイマフリが相互に羽繕いをしていました。子育てシーズンになるとこんな愛らしい光景をよく見かけます。お互いの絆を深めているのでしょうか。

「春の訪れ」

天売島 4月

 春が近づくと、ウミネコは群れとなり、子育てのために天売島に集まります。その数約4000羽!

 島の玄関口である天売港でもウミネコが群れとなり飛んでいます。

 島でウミネコが賑やかに鳴き交わしながら舞い始めると、いよいよ春の訪れです。

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2022年06月01日環境省アクティブ・レンジャー写真展 北の自然の舞台裏

利尻礼文サロベツ国立公園 福井翔太

アクティブ・レンジャー 福井 翔太

「Restoration」

サロベツ湿原 10月

 サロベツ川は春先の雪解け時期に幾度となく氾らんを起こし、多くの農地や宅地が浸水するなどして人々の暮らしに大きな影響を与えてきました。そのため、治水対策として1961 年からサロベツ川放水路工事が行われ、氾らんは大幅に減少しました。その一方で、放水路に併せて作られた排水路によって湿原の地下水位は低下し、サロベツ湿原の中にある落合沼はその姿を消すこととなったのです。
 平成16 年に、環境省をはじめとする行政機関、専門家、地域の方々が協力して地域の基幹産業である酪農と多くの生き物を育む湿原の共生を目指した上サロベツ自然再生協議会が立ち上がりました。その中の取組で、地下水位を下げていた排水路を埋め立てたことによって、落合沼は再び水をたたえるようになりました。現在の落合沼にはエゾトミヨが暮らし、オオヒシクイが憩う場となり、サロベツの空を映し出します。

「優美な女神」

下サロベツ園地 7月

 日本でも最大級の高層湿原の面積を誇るサロベツ湿原は、希少種・固有種を含め様々な生き物の住処としての役割を果たしています。オオヒシクイ、コハクチョウ渡来地や高層湿原が評価され、2005 年には国際的に重要な湿地を守る取組としてラムサール条約の登録湿地になりました。渡り鳥や湿原一面に咲き誇るきれいな花々はサロベツ湿原の大きな魅力ですが、足下にも美しい生き物たちがひっそりと暮らしています。

 カラカネイトトンボ(Nehalennia speciosa)という名前がつけられたこのトンボは氷河期の遺存種(いぞんしゅ)と言われ、サロベツ湿原が成立したといわれる1 万年前から湿原とともに生きてきたのです。ガラス細工のような光沢のある金属色の身体に瑠璃色の目はまるで宝石のよう。この小さな生き物もずっと昔からサロベツ湿原の立派な一員なのです。

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2022年06月01日環境省アクティブ・レンジャー写真展 北の自然の舞台裏

帯広自然保護官事務所 丸岡梨紗

アクティブ・レンジャー 丸岡 梨紗

「露寒し孤高の峰」

コイカクシュサツナイ岳の夏尾根の頭付近 10月

 1839m峰は、旧標高(新標高1842m)から山名がついた山です。沢歩きから北海道三大急登の1つであるコイカクシュサツナイ岳の夏尾根を登り、ハイマツの藪漕ぎを含む長い縦走路を経て、山頂直下の壁を越えて辿り着くピークは、登山道のある山では北海道最難関と呼ばれており、岳人憧れの原始性のある奥深い山です。

 周囲の北の無名沢、南のサッシビチャリ沢はどちらも日高屈指の険谷であり、主稜線から離れた存在感のある独特な山容は遠くからでもよく目立ちます。夕暮れには初雪が舞い、早朝の霜を踏みしめて歩いた晩秋の荒涼とした山は、空気が澄み渡り、遠方の稜線まで良く見渡せました。

 北海道の背骨とも呼ばれる北の日勝峠から南の襟裳岬まで100km以上にもおよぶ脊梁山脈の壮大で急峻な日高の稜線を、思わず山旅したくなります。

「カール壁とブロッケン」

エサオマントッタベツ岳にて 10月

 エサオマントッタベツ岳は、水の湧き出る美しい北東カールをもつ中日高の山です。

 カールは緯度と標高による雪線の影響から北側と、冬の季節風と吹きだまりの影響から尾根直下の東斜面に多くなっています。晴れていて稜線は遠くまで見渡せるのですが、谷方向には湿った空気が流れ込んでいて、山の斜面に沿って上昇するときに霧がわきやすく、一面の雲海が広がっていました。その中で、壁の山肌に沿って霧がゆっくり這い上がり、稜線で日光にあたって消える条件で発生しやすい、ブロッケン現象が見られました。

 ブロッケン現象は、霧がスクリーンの役割をして自分の背後から差し込む光を投影することで発生しているのですが、霧の中の水の粒子により光が散乱されることで、自分の影の周りに虹のような光の輪ができています。雄大な切り立ったカール壁をもつエサオマントッタベツ岳は、雲海やブロッケン現象を観察しやすい場所です。

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2022年06月01日環境省アクティブ・レンジャー写真展 北の自然の舞台裏

苫小牧 大久保 智子

アクティブ・レンジャー 大久保 智子

「雪の妖精」

ウトナイ湖 8月

 8月のウトナイ湖の散策路は、ハンノキ、ミズナラなどの広葉樹の葉が繁り、緑に包まれます。その散策路を行ったり来たり飛び交って、チュルリチュルリと小鳥たちが賑(にぎ)やかです。シマエナガは、白くて丸いフォルム、キュートな仕草で、多くのファンを持つ小鳥界のアイドルです。身近に生息しているのに、なかなかその姿を見ることができませんが、会えた時にはハートを鷲づかみにされます。

「家族」

宮島沼 8月

 夏、ヨシ原が生い茂った宮島沼では、水鳥たちがくつろいでいて、時折ヒナ連れの家族もみられます。カルガモは産まれてからすぐに歩くことができ、親鳥に誘導されて水辺に現れます。親鳥についていく姿は微笑ましく、おいていかれまいとする健気な姿をみると、たくましく生き抜いてほしいと願わずにはいられません。

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2022年06月01日環境省アクティブ・レンジャー写真展 北の自然の舞台裏

支笏洞爺国立公園 小松瑠菜

アクティブ・レンジャー 小松 瑠菜

「火山が生む絶景」

昭和新山 11月

 1943年12月に有珠山の北山麓で地震が頻発し始めました。後に大地が隆起し、畑や民家、道路、鉄道があった場所が盛り上がり、翌年5月までに最大50m隆起しました。6月には畑から水蒸気爆発が始まったことで、10月末には7個の火口が誕生しました。1954年春に急激に大地が盛り上がり、407mの昭和新山が誕生しました。

 こちらの写真は、支笏洞爺国立公園の特別保護地区に位置する「昭和新山」の山頂で撮影した写真です。私有地であることや、防災の観点から、通常は立ち入り禁止区域となっておりますが、業務で特別に立ち入った際に撮影しました。支笏洞爺国立公園を代表する羊蹄山・洞爺湖・中島・昭和新山と、火山が生み出す絶景を一望できたことはもちろん、この写真の下部にもうっすらみえる、白煙が足元から立ち上っていく様子にも圧倒されました。

「実るまで10年以上...」

羊蹄山 7月

 羊蹄山を下山していたところ、地面で何かが動きました。よく見ているとシマリス(Tamias sibiricus)が登山道を駆け回っていました。どうやら食べ物を探していた様子。

背伸びをして、何かを頑張ってもぎ取る姿はなんとも愛らしく、こちらが何度もシャッターをきってもお構いなしで、夢中になって青々とした実に食らいついていました。

 その後、山の中へ走り去っていったため、何を食べていたのか不思議に思い、残飯を見たところ、シマリスが食べていたのは、なんと実るまで10年以上かかるエンレイソウ(Trillium apetalon Makino)...!

エンレイソウに少々同情しつつ、食い意地を張り続けるシマリスの愛くるしい姿に癒されたひとときでした。

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2022年06月01日環境省アクティブ・レンジャー写真展 北の自然の舞台裏

大雪山国立公園 入江瑞生

アクティブ・レンジャー 入江 瑞生

「表大雪を一望」

パノラマ台 6月

 この写真は6月上旬に層雲峡のパノラマ台に登った時に撮影しました。この時期はまだ大雪山の登山口に至る林道の多くのゲートが閉じられており、登山口に行くことができる山でも、登山道はまだ厚い雪渓に覆われています。

 登山口から標高400mほど上がると、層雲峡温泉街から表大雪を目の前に眺める事ができます。私の層雲峡おすすめのスポットです。

「隠れています...」

俵真布 7月

 巡視で登山道を歩いていると、私たちの行く手の枝の上にエゾライチョウ(Tetrastes bonasia vicinitas)の幼鳥がとまっていました。私たちが近づいても微動だにせず、ただじっと首を傾けたままこちらを見ていました。周りの木の枝に同化しているかのようなポーズはとても愛らしかったです。

 エゾライチョウは長距離飛行をする事はあまりなく、林床を主に歩いていると言われており、この個体は私たちの接近に驚いて木の枝にとまってこちらの様子を伺っていたのかもしれません。

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2022年06月01日環境省アクティブ・レンジャー写真展 北の自然の舞台裏

大雪山国立公園 上村 哲也

アクティブ・レンジャー 上村 哲也

「夜明け」

「夜明け」石狩連峰にて 9月石狩連峰にて 9月

 石狩連峰には、ユニ石狩岳三股登山口とシュナイダー登山口があり、山から山へと続く道が表大雪の沼ノ原までつながっています。

 石狩連峰からは、北に石狩川が始まり日本海へ、南に音更川が始まり十勝川に加わって太平洋へ、東に無加川が始まり常呂川に加わってオホーツク海へと流れていきます。北海道の長い川が始まるような遠いところに連なる山々ですから、人々が暮らす街からも遠いところです。山に登る人がテントを張る場所は、日が落ちればたちまち暗くなります。風が木の葉をゆらす音、小川のせせらぎを耳にしながら、夜を過ごします。

 夜明け前、気の早い小鳥たちがさえずり始めます。深く息を吸って雲のない空を見上げると今日の行動に向けて体に力が湧いてきます。

「夏の訪れ」

「夏の訪れ」高根ヶ原にて 7月高根ヶ原にて 7月

 大雪山は、冬が長く雪の多いところです。6月の山開きにも多くの場所で雪の上を歩きながら山登りを楽しみます。9月には黒岳や銀泉台、旭岳周辺などに日本一早い紅葉が訪れ、初雪もやって来ます。

 7月、花々は短い夏を待ちわびたように雪が消えてゆくそばから次々に咲き広がります。高根ヶ原は白雲岳から忠別岳へと緩やかに続く尾根。冬は強い風が吹き、雪が少ないことでかえって地面が冷たく凍りつきます。厳しい気象に堪えた様々な花が開きます。その中で初夏を知らせる花のひとつがホソバウルップソウ(Lagotis yesoensis、環境省レッドリスト2020絶滅危惧IB類)です。栄養の少ない大地にたくましく根を張っています。

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