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アクティブ・レンジャー日記 [北海道地区]

北海道地方環境事務所のアクティブ・レンジャーが、活動の様子をお伝えします。

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利尻礼文サロベツ国立公園 稚内

268件の記事があります。

2009年02月16日樹木のかたち

利尻礼文サロベツ国立公園 稚内 賀勢 朗子

青々と茂らせた葉を落としてしまったら死んだようにみえる、というわけではなく、冬の樹木には張り詰められた緊張感を感じることがあります。
刺さるような寒さに奪われぬよう、裸の樹木たちが「伸びる、花を咲かせる、実を結ぶ」という生命力の源を冬芽に凝縮させ、しっかり握りしめているようにみえるからです。
冬芽、葉や実がついていた痕、そして枝ぶり。
これらを見ることは花や葉のつき方、枝の伸び方など、樹木がどういう構造をしているのか知るヒントになってくれます。
今回は原野の樹木の冬の様子をいくつか紹介してみたいと思います。


春を待つハルニレの大木

 原野に多いハンノキたちは、冬のこの時期、枝先にえんじ色の粗挽ソーセージのようなものを何個も垂らしています。
そして枝の途中にはマツカサ状の球体を上向きにつけています。これらは一体なんでしょうか? 
実はソーセージみたいなものはハンノキの今年の雄花が集まって房になったもの、マツカサ状の球体は去年の雌花の集まりが受粉後に種子となったときに種子を入れる容器の役割をしていた果穂と呼ばれるものです。
今年の雌花は小さく地味で目立ちませんが、雄花から少し離れた枝の途中にひっそりとついています。
私は、ハンノキやシラカバといったカバノキ科樹木が持つ房状の雄花が開花した様子が好きです。
寒さが緩んだ4月頃、堅く閉ざした房の表面が徐々にほどけて、つづりあわされた多数の鱗片となって長く垂れ、それぞれの鱗片の下から細かい雄しべがのぞくと、まるで精巧な細工をほどこしたかんざしのように見えます。


ハンノキの雄花(枝先)、雌花(雄花の位置から少し下ったところ)、去年の果穂


 次はヤチダモをご紹介しましょう。こちらも原野でよく見かける樹木です。
冬芽の出っ張りと葉痕の窪みが積み重なってできたでこぼこの枝はふしくれだった指のようで、私はこの木に男性的な印象を受けました。また、このでこぼこ模様は縄文時代の土偶にも見えるのですが、皆さんはいかがでしょう? 
ヤチダモには雄の木と雌の木があり、雌の木には冬の時期、秋に翼のある種を沢山つけていた軸の部分が残っていることが多くあります。


ヤチダモの枝先(でこぼこ模様が土偶に見える?)

 ところで、雄しべと雌しべを同じ木につける植物を雌雄同株(しゆうどうしゅ)といいます。
そのうちの多くは雄しべと雌しべが一緒になった花(両性花)をつけますが、
ハンノキのように同じ木に雄しべを持つ花(雄花)と雌しべを持つ花(雌花)を別々につけるものもあります。
一方、ヤチダモのように雄花と雌花を持つ個体が分かれている植物を雌雄異株(しゆういしゅ)といいます。
植物たちがそういった様々な雄と雌のかたちをとるのは自ら動くことのできない彼らがいかに効率よく子孫を残すかという問題と深く関わっています。 一般に、雌雄同株の樹木は相手がいなくとも同じ木の中で受粉を行い、種子をつくることができます。
反面、新たな遺伝子が取り入れられず繁殖力や生存力が低下してしまうという危険にもさらされています。
同じ木の中で受粉を行うことの報酬より損失が大きくなる場合があり、それが雄の木と雌の木を別々に出現させた主な理由と考えられているようです。

 ハンノキとヤチダモについて、これから花になる冬芽、去年の実の痕、葉が落ちた後の枝ぶりなどについて紹介しました。
樹木の持つ美しくおもしろいかたちにはいろいろな意味がかくされています。
特に、冬の樹木からは夏とは違って樹木のつくりの原型のようなものが見られるのではないでしょうか。
皆さんも冬の樹木を観察してみてはいかがでしょう。


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2008年12月22日稚内港の野鳥たち~冬のカモ観察会を行いました~

利尻礼文サロベツ国立公園 稚内 賀勢 朗子

「家に籠もってしまいがちな季節だけど、真冬の道北には豊かな自然があるのだよ。」
今回、特別な場所ではなく、私たちのごく近くで見られる生き物たちのおもしろさを知ってもらう目的で「冬のカモ観察会」という題目で観察会を行いました。

 厳冬の稚内港。寒い中集まった約20名の参加者の皆さんは、野鳥の会の方や私(賀勢)、そして小関自然保護官(Ranger:R)から野鳥の説明を受けながら双眼鏡を覗き、今まで知らなかったカモたちのユーモラスな姿を楽しんでいました。


稚内港でフィールドスコープを覗く小関R


 ここには現在、コオリガモ、シノリガモ、クロガモなどのカモたちが越冬のために渡ってきています。
海ガモ、または潜水ガモと呼ばれている彼らは沼や河川を主な生息場所とするカモたち(淡水ガモと呼ばれています)がお尻を水面に突き出して餌を採るのとは違い、水にすっぽり潜り、深いところまでいって餌を探すことができます。さあ、一度潜ったらどこに顔を出すのでしょう?


コオリガモの♂たち ぴょーんと伸びた尾っぽがオシャレです♪


連なって泳ぐシノリガモたち 大ぶりな白斑模様が斬新です。


 そして、冬のカモメたち。稚内市周辺では夏の間では、ウミネコやオオセグロカモメが多く見られるのですが、冬期には主にオオセグロカモメ、ワシカモメ、シロカモメ、ミツユビカモメが見られるようになります。体の配色パターンが似通っていて識別しづらいからか、港周辺ではあまりに普通に見られるためか、
一緒くたに「ゴメ」と呼ばれているカモメ類はちょっとかわいそうです。
普段はあまり注意を払わないようなこの鳥たちにも目を向けてみましょう。

 その他には、ヒメウを観察することができました。
ここではヒメウは泳いでいる姿や防波堤の壁などにびっしり並んでいる様子がごく普通に観察できますが、実は環境省の2006年版レッドリストで絶滅危惧種に指定されています。それだけ、稚内周辺の海はまだ自然豊かだということでしょうか。

 屋外での観察を終えた後、全員で室内に移動し、観察会のふりかえりを行いました。ふりかえりでは野鳥の会の方のお話、そして賀勢が作成した海ガモ類・カモメ類の生態を紹介したチラシを配った後、参加者ひとりひとりが印象に残った野鳥を題材にオリジナル俳句を一句ずつ披露しました!
一番人気はコオリガモでした。♂のコオリガモのつんっと伸びた尾っぽやカラフルな色合いを気に入った方が多かったようです。皆さんの俳句から身近な場所でこんなにおもしろく、美しい鳥たちが見られるということの新鮮な驚きが伝わってきました。
最後に、俳句を書いた紙に題材にした野鳥の写真を貼って、ラミネート加工後、綺麗なリボンをつけました。これはしおりとして参加者のお土産になりました。

 私はシノリガモで一句詠んでみました。下手くそで恥ずかしいですが・・・

   白斑に隠れて目はどこ? シノリガモ

 (シノリガモには白い斑点が沢山あって目がどこだか分かりづらいよ。)

海はもとより、冬は葉が落ちて樹林の中も見通しが良くなり、野鳥観察にはもってこいです。
皆さんも身の回りの野鳥たちを探してみてはいかがでしょう。



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2008年12月11日カパッチリカムイとオンネウのお出まし

利尻礼文サロベツ国立公園 稚内 賀勢 朗子

 真っ青な空に、真っ白な肩と尾羽、黒い翼、嘴の黄色のコントラストが鮮やかなオオワシ。しぶい色合いで老練な狩人を思わせるオジロワシ。その姿には思わず見とれてしまいます。


オオワシ


 11月下旬、宗谷地方でオオワシ、オジロワシの渡り状況を観察しているパークボランティアさんに同行して稚内市増幌に調査に出かけました。稚内など宗谷岬付近は11月に入るとサハリンやオホーツク海沿岸からワシたちが北海道に渡ってくるときの玄関口となります。パークボランティアさんによると増幌川では産卵のために登ってきたサケのホッチャレを狙ってワシたちがやってくるそうです。
 増幌川沿いに車を走らせながら河畔林や土手などに目を懲らしてみると、針葉樹の木立の中に枝に降り積もった雪と見間違いそうなほど白い肩をしたオオワシの成鳥がとまっているのに気がつきました。さらに探すのに慣れてくると木立の間や見晴らしがよさそうな木の枝、土手の斜面などに褐色や黒みがかった色のかたまりもいくつか見つけることができました。オジロワシの成鳥やオオワシ、オジロワシの幼鳥たちです。私は去年の冬に道東で道のオオワシ・オジロワシ調査を補助していましたが、遠目にオオワシ幼鳥、オジロワシ幼鳥を識別するのがあまり得意ではありません。この冬は彼らの姿をよくよく見て今度こそしっかり識別できるようになりたいと思っています。この日の調査では川沿い道路6kmを30分ほどかけて走ってオオワシ(Haliaeetus pelagicus)成鳥16羽、幼鳥9羽、オジロワシ(Haliaeetus albicilla)成鳥7羽、幼鳥2羽、遠くで見分けられなったワシ4羽の計42羽をカウントすることができました。




 
 次に調査に出かけたのは11月末日、今度は一人で出かけました。オオワシの成鳥が空高く舞っています。が、その後を追いかけているずっと小さな黒い影。カラスです。ワシがカラスに追われている場面はこの日何回か見かけました。普段、市街地周辺でもトビがカラスにモビング(*)されているのを見かけることがありますが、カラスって本当にいじめっ子だと思いました。王者が追われていることころはちょっと痛々しいです。


この日は識別が難しかったワシはできるだけ写真に撮っておくようにしていたので、後から動物カメラマンをしているパークボランティアさんの生態解説写真集「原野の鷲鷹」でオオワシ・オジロワシの成鳥の様子を写した写真と比較して何羽かは後から判別することができました。特に、褐色の体に混じった白い羽毛が目立ち、嘴の上部が黒い個体がオジロワシの2年目の幼鳥ではないかと見当がついた時は嬉しかったです。オジロワシはオオワシより嘴が小さめだという特徴もこの時しっかり学習しました。全体的に、オオワシは頭の羽毛がワックスで固めたようにごわごわでたっており、オジロワシの頭はどちらかというと櫛でなでつけたように滑らかな印象も受けました。


左側の枝の3羽のうち、上2羽はオオワシ幼鳥、下はオオワシ成鳥。右はオジロワシ幼鳥か・・・。


前と同じルートを35分かけて走ってオオワシ 成鳥5羽、幼鳥7羽、オジロワシ 成鳥7羽、幼鳥4羽、見分けられなかったワシ4羽の計27羽をカウントすることができました。

 最近、私は動物のアイヌ語名を調べるのが好きなのですが、ワシについても調べてみると、オオワシはアイヌ語で「カパッチリカムイ」、オジロワシは「オンネウ」というのだと知りました。それぞれは「ワシ神」「老大なるもの」という意味であるそうです。このような名称をつけられるほどワシたちには人を惹きつける風格があるのでしょう。私はまだ彼らの姿をほんの少ししか知りませんが、その魅力のひとつは彼らの表情や人に気を許すことのない姿勢から感じられる「野性」ではないかと思っています。増幌川にかかる橋の上で、すぐ近くの木にとまっていたオジロワシに気づいて車を停めたとき、即座に飛び立つポーズをとって様子をうかがう姿にそれを見たように思いました。

*モビング 小さな動物が大きな動物を追い払うために行う嫌がらせ的な行動



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2008年11月07日求む!活動プロジェクトニックネーム

利尻礼文サロベツ国立公園 稚内 賀勢 朗子

サロベツに芽生えた活動プロジェクトに素敵な名前を贈ってください!

 ご存じの方はまだ少ないと思いますが、サロベツ原野の北に位置する上サロベツ地区では、自然再生事業が行われています。「サロベツの自然再生事業ってどんなことをやっているの?」という方に経緯と内容を簡単にお話すると次のようになります。

 サロベツ原野では、かつて酪農に適した土地をつくるために湿原の水を抜く工事を行い、開拓を進めてきました。最北の厳しい土地で生きていくために人々は湿原の環境を改良して、利用していかなければならなかったのです。しかし、サロベツの自然の豊かさ、貴重さが認識され始め、昭和49年に利尻礼文サロベツ国立公園に指定された頃から、地元の方々の間からも自然との共生を目指し、サロベツの素晴らしさを未来に受け継いでいこうという気運が高まってきました。そして平成17年には、「上サロベツ自然再生協議会」が設置され、乾燥化が進行する湿原の再生と農地と湿原の水位バランスをよりよく保つことで「湿原と農業との共生」を目指す自然再生事業が動き出しました。


サロベツの牧草ロールと利尻山


 けれどこの自然再生事業は環境省を始めとする国の機関や道、市町村の機関のみで進むものではありません。「人の生活と自然との共生」を目指す限り、サロベツに実際住んでいる地域の人たちやサロベツを訪れる人たちが主役になってサロベツをよりよくしていかなければ始まりません。自然再生に対する理解と協力を広く得るために、湿原の自然に興味を持ってもらい、地域の歴史や文化の魅力を知ってもらえるような環境教育を活発にしていくことが必要となってきます。そのために、「上サロベツ自然再生普及行動計画」が立ち上がり、その一環として昨年度から「サロベツを楽しむ活動プロジェクト」が誕生しました! 
 
 この活動プロジェクトの内容は主に7つに分けられ、明確な区切りはありませんが今年集まった活動アイデアや現在実施に向けて準備されている活動には次のようなものがあります。

① サロベツを見つけよう        サロベツ宝探しゲーム、アイヌ語地名の景色を探そう
② サロベツの話をしよう        サロベツの昔話を聞いてみようサロベツ宝探しゲーム
③ サロベツを楽しもう         サロベツ星空観察会、夏のポニーの馬車と冬の馬橇
④ サロベツのことをまとめよう     サロベツマップ作り、サロベツ自然環境体験学習会
⑤ サロベツを発信しよう        サロベツを熱く語る会、サロベツ学び隊
⑥ サロベツの利用ルールを作ろう    サロベツカントリーコードを作ろう
⑦ サロベツでつなげよう        サロベツガイドを育成しよう、サロベツ学会




 さて、今回募集するのはこの活動プロジェクトのニックネームです。正式名称は「上サロベツ自然再生普及行動計画」ですが、さきほど書いたように自然再生事業には多くの人たちの理解と協力が必要で、それを得るためにはこの活動プロジェクトには親しみを持ってもらいたいという思いがあります。「上サロベツ自然再生普及行動計画」では子どもにも大人にもお年寄りにも親しみを持ってもらえる名前にはなりません。難しくて取っつきにくいイメージがどうしても出てしまいます。
 
 そこで求む!サロベツに贈る素敵な名前!

 サロベツファンの方、名前をつけるのは任せておけ!という方、そして初めてサロベツの自然再生を知ったという方、どなたからも応募大歓迎です!
応募締め切りは12月1日。詳しくは以下のホームページをご覧ください。

http://c-hokkaido.env.go.jp/  北海道地方環境事務所ホームページ

http://sarobetsu.env.gr.jp/  サロベツ自然再生事業ホームページ



サロベツから望む夕焼けの利尻山

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2008年11月07日食われるという掟

利尻礼文サロベツ国立公園 稚内 賀勢 朗子

 人を見かけることがなくなった10月末の幌延の木道。冬の訪れが目の前といっても、よく晴れた日にはお日様に温められて木道はほのかなぬくもりを持っています。木道に触れてみると指先に暖かさを感じ、日増しに強まる寒さに張り詰めていた気持ちが少し緩みます。ふと足下を見るとジュウジナガカメムシがひとところに集まっています。この虫は赤と黒のコントラストがとても美しい虫ですが、数多く群れると多くの昆虫に対して私たちが感じるようにグロテスクな雰囲気を放っています。彼らは何かにたかっているようです。
彼らを追い散らしてみると毛虫の死骸が横たわっていました。それは春先にも沢山木道上で見かけたヨシカレハの幼虫でした。辺りをみまわしてみると何匹かの幼虫が木道上を這っているのを見つけました。夏に見た終齢幼虫と比べるとどれも小さく、若い幼虫だと思われました。おそらく春に幼虫時代を過ごし夏に羽化したものの子どもたちで、そろそろ幼虫のまま越冬に入ろうとしていたのでしょう。それにしてもヨシカレハにとってカメムシは恐ろしい天敵なんだと実感しました。本州にいた頃、越冬を終え、エノキの樹幹を登るゴマダラチョウの幼虫が途中でサシガメ(肉食性カメムシ)に補食されるのを観察したことがあります。その時、小さい昆虫の世界の出来事であれ体液を吸われて捕食されている様子に恐ろしさを感じ、こんな死に方はしたくないと思いました。ヨシカレハ幼虫は冬ごもり場所を探しているうちにジュウジカメムシに捕まってしまったのでしょうか。ジュウジナガカメムシはこれから集団で越冬します。ヨシカレハの体液は彼らに冬を乗り切るエネルギーを与えたのでしょう。


ヨシカレハの体液を吸うジュウジナガカメムシ


 原生花園の木道には両側から垂れるヨシの穂のアーチが続いています。ここではトガリネズミが死んでいました。しゃがみこんでよくよく見ようとしていたとき、黒い体に赤い斑点、先端に三つのひだがついた立派なアンテナのような触角を持った甲虫がシャカシャカと歩いてきて自分の体の何倍もあるトガリネズミの体を持ち上げてひっくり返したり、体の下に潜り込んだりしました。この怪力昆虫はツノグロモンシデムシ(?)と思われました。しばらくの間、トガリネズミの体と格闘し、吟味した後、気に入った部位を見つけたのか食事を始めました。トガリネズミもまたツノグロモンシデムシに生きるエネルギーを与えたのです。


トガリネズミの体を調べ、美味しい部分を探すツノグロモンシデムシ


 そして、海岸近くの草地ではこの日の巡視だけで3頭のエゾシカが死んでいました。いずれも若いシカでした。近づいてみるとカラスが飛び立ちました。一週間後に通りかかったときにはもうすでに骨と皮になっていました。カラスの他にもトビやキツネが来て食べたのでしょうか。


エゾシカの死体をあさりにきたカラス

 この日は死んでいったものたちに多く出会った一日でした。そしてそれらを食うことで生き残るものたちにも。野に棲む生き物たちは生きている途中であれ、死んでからであれ、必ず他の生き物にその体を食われていく運命です。食われることなど想像さえしたことのない私。人間であるなら拒否するその運命を受けいれて生きている野生の生き物たちに潔さと生き残ることの大変さを教えられたような気がしました。
早く沈むようになった太陽が長い夜に押されるように最後の光を放ちながら水平線の彼方に消えていきました。



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2008年10月17日遠つひと(とほつひと)

利尻礼文サロベツ国立公園 稚内 賀勢 朗子

 秋が深まるにつれ、青々としていたサロベツ原野は黄金色へとその姿を変えていき、冬の訪れが近いことが感じられます。北から旅をしてきたヒシクイたちが今年もパンケ沼、ペンケ沼周辺の牧草地にやってきたと聞き、パークボランティアさんに案内していただき、様子を見に行きました。ヒシクイはガン類に属する鳥でカモより大きく、ハクチョウより小さい水鳥です。私はヒシクイを見るのは初めて。「グワン、グワン」と盛んに鳴き交わしているヒシクイの大群には圧倒されるものがありました。サロベツ原野はこのヒシクイたちの南への渡りの中継地であることから2005年11月に「水鳥の生息地として国際的に重要な湿地」としてラムサール条約湿地に登録されました。

 彼らについてほとんど何も知らなかったので調べてみたところ、遠くユーラシア大陸北部で繁殖し、越冬のために渡ってきたということ、サロベツを訪れるヒシクイ(Anser fabalis)にはヒシクイ(Anser fabalis serrirostris)とオオヒシクイ(Anser fabalis middendorffii)という亜種があること、国の天然記念物に指定されていること、また、ヒシクイ以外にもサロベツ原野にはマガン、サカツラガン、カリガネ、シジュウカラガンといった雁たちも訪れるということを知りました。

 ヒシクイなど雁の仲間のことを聞くと私は小学生のころに親しんだ児童文学者である椋鳩十の作品「大造爺さんと雁」を思い出します。国語の教科書に載せられていたお話なのでご存じの方も多いかもしれません。老練な猟師、大造爺さんと残雪と名付けられた雁の群れのリーダーの物語です。大造爺さんと残雪の間には狩るものと狩られるものの戦いが繰り広げられます。市立図書館で久しぶりに読み返してみたところ、物語の舞台は九州地方の内陸の沼地で、そこまで渡ってくる可能性がある雁はヒシクイかマガンが考えられると解説に書いてありました。主人公、残雪は渡りの途中でサロベツ原野に立ち寄っていたかもしれません。物語にあるように、雁は一昔前まで狩猟の対象でした。確かに目の前にいるヒシクイたちはまるまる太って美味しそうです。サロベツに降りたったヒシクイは残雪のように警戒心が強く私たちが近づくとその分遠ざかり、一定の距離を保っていましたが、さらに近づこうとすると力強い音をたてて一斉に飛び立ちました! しかし、物語には誤りもあるようです。それは、雁を罠にかけるためにタニシを使っているところです。ヒシクイがヒシの実を好んで食することで知られているように、雁の仲間は植物質のものを食べるため、この部分だけちょっとおかしいです。


原野のオオヒシクイ

ところで、雁たちを始めとして鳥たちはなぜ渡りをするのでしょうか?
「渡り」という行動自体に私は疑問がありました。そもそも危険を冒して渡りをするくらいだったら、どうして夏の間もずっと越冬地に棲まないのでしょうか?越冬地は繁殖地より南にあり、暖かいし、餌も豊富に感じられます。春にわざわざ北に帰って行く必要もないような・・・。

生態学的には、鳥たちが「渡り」をするか否かは、渡りをすることで得られる「利益」と渡りに伴う「コスト」のバランスで決まると考えられているようです。しかし、利益の量、コストの量を何をもって正確に換算するのがよいかは分からないため、これは未だに理論にとどまってるそうです。しかし、簡単に考えてみることもできます。たとえば、利益を餌の量とし、コストを渡りに関する労力や危険性とします。もし、渡った場所で得られる餌が留まった場
所で得られる餌よりも多い上に、それが渡りをする危険や労力分を補ってもなお上回る量ならば、渡りをした方が得であるということですから、鳥たちは渡りをします。しかし、留まった場所で得られる餌の量の方が大きい場合、或いは、渡った場所での利益が大きくても渡りをする危険や労力の方がこれよりさらに大きかったりすると渡りをするのは危険な目に遭うだけで損ということになってしまいます。

 実際に、どんな利益を目的に渡りをしているのか?というと様々なものがあるでしょうが、重要なもののひとつはやはり餌であるようです。冬を越えた鳥たちには次に繁殖と子育てという大切な仕事が待っています。その仕事を行うためには十分な栄養を得られる場所が必要です。 春から夏にかけて北方には多くの虫が発生、植物資源も豊富に出現します。北方に渡った方が餌を食べつ
くした大入り満員の越冬地に残っているよりも個体あたり多くの餌を確保することができます。そして冬になり繁殖地が雪に閉ざされて餌が手に入らなくなると再び南へ移動するのです。

遠い昔から雁たちの間で何世代にも渡って繰り返されてきた「渡り」の営み。そこには私が考える以上に意味深い未知の部分が秘められていました。

 雁は日本人の心情や季節感とも深い関わりを持っています。短歌の中で、雁には「遠つ人」という枕詞があるそうです。雁を「遠く旅する人」に喩えています。秋になると鳴き交わしながらやってくる彼らに、人々は昔からひとりぼっちの寂しさや遠く離れて会えない人への想いを乗せたのでしょう。海原を越えて旅する国境なき雁たち。彼らと彼らが疲れた翼を癒すサロベツ原野を大切にしていくことは私たちの心の風景を守ることにも繋がるのかもしれません。



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2008年09月04日エゾニュウの秋

利尻礼文サロベツ国立公園 稚内 賀勢 朗子

エゾニュウの秋

 サロベツ原野の9月。観光客で賑わった7,8月が去って、日々秋の気配が感じられます。晴れた日にはどこまでも高く青く澄み渡った空。風の流れを映し出して大空のキャンパスに描かれた柔らかい羽毛状の秋の雲が浮かんでいます。


秋の青空

このような空の美しさと利尻山の風景を楽しみながら海岸線を走っていくと、海岸砂丘の草むらからニョッキニョッキと突き出ている大型の枯れた草本に気づきます。枯れて茶色くなった彼らはしかし、びっしりと種をつけています。この草本の名はエゾニュウ、セリ科の一稔性の多年生植物です。
花期は7~8月、小さな白い花が無数に集まり、まるで打ち上げ花火が開いたかのようなとても大きな複散形の花序を形成します。


エゾニュウの花~白い大きな花火のよう~

この花は夏の間、昆虫たちの人気レストランでした。しばらく観察していると、お客はひっきなしにやってきました。
カミキリムシ、マルハナバチ、コハナバチ、ハナアブ、ハナバエ、カメムシ、甲虫etc・・・。
特にハエの類が数多く訪れていたようでした。セリ科植物の花には外に向かってさらけ出された花盤と呼ばれる蜜を出す部分があります。
ハエたちは舐めとるのに適した口で花盤を舐めていたようでした。
ハチたちもエゾニュウの花の間で花粉まみれになっています。
私が近づいても気づかないくらいエゾニュウに夢中でした。
直径が4,5cmの太い茎を持ち2,3mもの高さに成長するのも、無数の花を散りばめた大きな花序をつけるのも、
原野の中でよく目立って昆虫を沢山呼び寄せ、花粉を運んでもらうためなのでしょう。
一生に一度だけ花を咲かせるエゾニュウ。年々エネルギーをためこみためこみようやく建てられた花の塔。
次世代を創る沢山の種を実らせ、枯れていきます。
厳しい最北の原野に生育する野草に健気さとたくましさを感じました。


びっしりと種をつけ、役目を終える

エゾニュウの他にも多くの植物が今年の仕事を終え、実を結びました。
季節は巡って、サロベツ原野にはもうすぐヒシクイなど冬鳥たちが渡ってきます。原野の沼地も賑やかになることでしょう。



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2008年07月30日カヌーが一艘、サル・オ・ペツを行く

利尻礼文サロベツ国立公園 稚内 賀勢 朗子

 サロベツはアイヌ語でサル・オ・ペツ、「芦原を流れる川」という意味です。湿原の名称にもなったサロベツ川は湿原を生みだし、その水環境をよりよく保つためになくてはならない川です。今回、稚内自然保護官事務所の千田レンジャーと私、賀勢はサロベツ川でカヌーによる巡視を行いました。天気予報は外れてしまい、あいにくの曇り、おまけに寒くて川の流れとは逆方向に風が強く吹いていたので下流側の幌延町の音類橋から豊富の開運橋まで遡ることに決めました。
 私はカヌーは初めて!こぎ始め当初いくら頑張ってもカヌーが進みません!水を漕げていないのです。さらに困ったことには千田レンジャーと漕ぐタイミングが合いません(涙)!カヌーは川岸のアシの中に突っ込んだり、勝手な方向に曲がったりして、ちっともスムーズに進みません。「パドルは水面に対して垂直に!」、「漕ぐときにかけ声をかけるように!」と、指示を受け、その通りにやってみようと必死に努力しました。あっ、進み始めた! 少しずつカヌーを動かしたい方向に操れるようになってきました。
 サロベツ川のような湿原河川では水の流れは緩やかで河畔林がよく発達します。蛇行しながら緩やかに流れるこの川の特徴がサロベツ湿原の豊かな生態系を形づくってきたのです。ペンケ沼、パンケ沼含むサロベツ原野は、日本最大規模の高層湿原であり、ヒシクイ、タンチョウ、ガンカモ類の重要な飛来地として2005年11月にラムサール条約登録湿地に登録されました。
 やがてカヌーはパンケ沼の入り口に近づきました!目の前に広がるのは赤茶色に波立つ広大な湖。岸辺は遠く、まるで海のようです。サロベツ原野に広がるこの沼は海からの塩水が流入する特異な汽水環境を形成しており、ヤマトシジミが生息していることから、昔からシジミ漁が行われてきました。シジミ漁の漁船ともすれ違い、漁をしている状況を見ることができました。

広大なパンケ沼

 パンケ沼を出てしばらく行くとヤナギが水面近くまで覆い被さった優雅な岸辺がありました!風に揺れる緑の枝先が水面にゆらゆらと映っています。私が子どもの頃好きだった本にケネス・グレーアムの「楽しい川辺」というのがあります。このヤナギの岸辺の景色は物語の舞台である川辺に似ていました。

水面にかぶさる緑のトンネル

 昼食後、サロベツ川から下エベコロベツ川に入り、ペンケ沼を目指しました。ペンケ沼はパンケ沼と比べ、とても浅い沼でした。パドルを突き立てると底まで届き、底から湿原の植物が生え、頭をのぞかせています。なにやら不思議な世界。ペンケ沼では「幻の魚」と呼ばれるイトウの生息が確認されています。しかし、ペンケ沼は河川流入量の増加や土地利用の変化にともなう土砂の流入などで面積を減少させています。将来は消滅してしまうかもしれません。
現在、サロベツ原野で取り組んでいる自然再生事業では、このペンケ沼の埋塞をこれ以上進めないような対策を検討しているようです。

水底から草が突き出るペンケ沼

 ペンケ沼からサロベツ川に戻り、後は開運橋を目指してひたすら漕ぐのみです。サロベツ川までは風向きが逆風のため、なかなか進みません。千田レンジャーと私は交代で休みながら漕ぎ続けました。初心者なので、手が棒のようになり親指の付け根が擦りむけてきました。座りっぱなしなのでお尻も痛くてしょうがありません。ようやく開運橋が見えてきました。一踏ん張りと踏ん張って、橋のたもとのぬかるんだ岸辺にカヌーをつけました。「やっと着いた!」陸に降り立ってホッと一息。・・・と、「ぼちゃん」という音がしました。カヌーの上で立ち上がり、岸に移ろうとしていた千田レンジャーがバランスを崩して川の中でしりもち!びしょびしょになって岸に上がってきました(笑)。これで私と千田レンジャーは「湿原で水の中に落ちた仲間」になりました。
 今回の巡視でカヌーの漕ぎ方を覚えた上に、普段見ることのできないペンケ沼、パンケ沼の様子を知ることができました。サロベツ原野核心部の世界。多くの動物たちにとって楽園であるこの場所が未来まで残ってくれることを願ってやみません。





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2008年06月06日蛾眉(美人)には虫がつく???

利尻礼文サロベツ国立公園 稚内 賀勢 朗子

 サロベツ湿原では早春になると、雪の上を這う毛虫を見かけることがあります。湿原の代表的な昆虫種ヨシカレハという蛾の若齢幼虫です。幼虫の食草はヨシやササなので湿原ではよく見かけます。

 
ヨシカレハ幼虫(NPOサロベツ・エコ・ネットワーク 島崎暁啓さん提供)
 
来たばかりの頃、この毛虫に出会った私は、修士課程でやっていたように、幼虫を何十匹か飼育し、寄生蜂や寄生バエの種類を確認することで湿原昆虫の食物連鎖の一部を調べようと思い、5月中旬から実行に移しました。

 採集した場所はもちろん国立公園外です。全部で40匹採集。毛虫が寄生されていた場合、1匹の毛虫から何匹の寄生蜂、寄生バエが出てくるのか、毛虫が死んでしまった場合、それは寄生によるものか、その他の原因かを正確に把握するため、1匹ずつ別々のプラカップに入れました。


ヨシカレハ飼育の様子

 2日おきくらいの頻度で、ササの葉っぱを入れ替え、糞のお掃除をします。ヨシカレハの幼虫の糞は乾いた感じのとてもきれいな緑色をしています。幼虫はササの葉の先っぽでつんっとつついてやるとすぐに丸まってしまい、その様子はシダ類やワラビの新芽に似ています。
次の機会に写真を載せたいと思います。

 ところで、皆さんは「蛾眉」という言葉をご存じでしょうか?古い時代の中国で使われていた、死語になりつつあるこの言葉は「美人」という意味です。なぜ美人を表す言葉に嫌われ者の「蛾」が入っているのでしょうか?

 皆さんは蛾の触覚を見たことがあるでしょうか?蛾の触覚の形もいろいろありますが、ヤママユの仲間など、中心の軸に対してひだが沢山つき、羽毛状になった触覚を持つものがいます。触覚の先端にいくほど、ひだの背も低くなっていって、触覚全体は細かい毛の流れまで形よく整った三日月型の綺麗な眉のように見えます。このことから、蛾の触覚のような眉を持つことが美人を表す言葉として使われていました。

 採集した毛虫のうち、1匹が色が白っぽくてキレイなコだったので、稚内自然保護官事務所の美人レンジャーの名前からとって、蛾眉〇〇〇と名づけました。

 そして、ことは起こりました!!!
5月末のある日、ヨシカレハたちの世話をしに行った私は蛾眉〇〇〇ちゃんの背中にコマユバチの繭がびっしりついているのを発見しました!繭数を数えてみると約40個。その後、体長数ミリの小さい蜂が羽化してプラカップ内を飛び回りました。う~ん・・・。やっぱり美人には虫がつく!!! 
美人レンジャー、同じ名前の毛虫がこんなことになって申し訳ない!
私を嫌いにならないで~!
コマユバチの種名まで調べられるかは分かりませんが、この蜂を豊富ビジターセンターに置いてある顕微鏡で観察できるようにし、湿原のヨシ・ササ→ヨシカレハ→コマユバチの食物連鎖を紹介したいと思います。


コマユバチ(?)に寄生された蛾眉〇〇〇ちゃん

 さて、他の毛虫くんですが、今のところ順調に育っています。ヨシカレハの成虫を図鑑で調べると、蛾眉の由来になったようなきれいな羽毛状の触角を持っていました。成長が楽しみです。

 湿原は一見地味な環境です。起伏のない平坦な地形。森林もありません。そして、蛾も嫌われ者です。毒を持つものがいたり、方向感覚なくバサバサ飛び回るからでしょう。でも、湿原に生きるようになったヨシカレハの生活史や、 コマユバチの親がヨシカレハの居場所を突き止める方法を考えていると、生き物の世界は本当におもしろく、不思議に満ちていると気づかされます。
サロベツ湿原は不思議の宝庫です。

 今後もおもしろい虫がいたらちょくちょく飼ってみようと思っています。また、新しい毛虫(おそらくヒトリガの仲間)も飼い始めました。オニシモツケの葉を食べていました。心当たりがある方は名前を教えてください。



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2008年06月05日火星人(賀勢人)、サロベツに来たる

利尻礼文サロベツ国立公園 稚内 賀勢 朗子

 始めからぼちゃん!
・・・で幕を開けたサロベツ生活は2ヶ月が過ぎました。サロベツARに着任して初めて上サロベツ原野に出た日のこと、湿原に足を踏み入れた直後に雪解け水でできた深い水溜まりに落ちてお腹までびちょびちょ。事務所のカメラも水没させてしまいました。顛末書から始まったトホホ・・・なスタートです。

 遅ればせながら、はじめまして。4月からサロベツ地区ARになりました賀勢朗子(かせいあきこ)と申します。北海道は4年目。最初の2年は北大苫小牧研究林でミズナラにつく昆虫の研究を、去年は釧路にある道東地区野生生物室でエゾシカ調査やオオワシ・オジロワシ調査の補助をしていました。

 道北に来たのは初めて。
サロベツ原野に吹く猛烈に強い風、晴れた日に海上からつきでる利尻山。湿原の沼地に生息する沢山の水鳥たち・・・。様々な景色や周囲のものが新鮮に感じられる毎日です。
そして、人々。 
来た当初から海岸清掃や観察会、自然再生活動などサロベツを舞台に生き生きと活動する沢山のおもしろいパークボランティアさんたち、NPO、町、支庁、研究者の方たちに出会い、日々刺激されています。


稚咲内海岸清掃で頑張るみなさん

この方たちとのつながりを大切に、利尻礼文サロベツ国立公園のよさや楽しさをどんどん発見していこうと感じました。

 サロベツでは特に観察会やビジターセンターの展示解説物を作るのに関わってみたい!と思っている私は4月末に幌延地区で行われた野鳥観察会で子どもたちに水鳥のしぐさに興味を持ってもらおうとクイズ形式の紙芝居を作成しました!


水鳥しぐさクイズの紙芝居の様子(真ん中で紙芝居を持っているのが私です。)

 これからサロベツ原野には花々が咲き乱れる楽しい季節になります。様々な発見や活動をAR日記を通してお伝えしていけたらと思います。

 サロベツの火星人に応援よろしくお願いします!


サロベツ原生花園(豊富)VC木道沿いのショウジョウバカマ

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