知床国立公園 ウトロ
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2018年12月18日冬将軍がやってきました
知床国立公園 ウトロ 白石海弥
全道的に暖冬な今冬、まだかなぁ、まだかなぁと思っていた矢先、ドカ雪が降りました。
知床もついに冬です。一度降ってからは毎日のように雪が降り続いています。
こちらはフレペの滝遊歩道。新雪でまっさらな景色になりました。
この時期の雪は柔らかくズボズボと足がはまります。普通に歩いていても足首、深いところで膝下まで埋まってしまいますので観光にいらっしゃる方は長靴が必須です。
フレペの滝も凍り始めました。自然の織りなす景色に目を奪われます。
知床連山も美しい雪化粧をしました。
この時期に楽しめるのが動物たちの痕跡です。
大変可愛らしい肉球をお持ちのこちらの方。キタキツネです。肉球をみるとキツネも立派なイヌ科なんだなぁと感じます。痕跡の特徴として「足跡が一本」というのがあります。見事な一本線です。
こちらは狩りを行った跡です。雪の下を動く小動物の音を聞き分け、ズボっと頭から入り獲物を捕まえます。そうあの雪に突き刺さっているアレです。
冬になるとやってくる動物もいます。
左がオオワシで右がオジロワシです。どちらも立派な成鳥です。
11月頃からワシたちがロシアなどから渡りを行い、知床にやってきます。ピークは2月頃、流氷の上にいる姿をそこかしこで見ることが出来るそうです。
毎週行っているワシ類調査でも回を重ねるごとにその数が増えてきました。
まだまだ冬になったばかり。本格的な冬はこれからです。道外からいらっしゃる方はコートと手袋とマフラーと長靴、中は長袖インナーにシャツ、その上にフリースなんかを着れば寒さをしのぐには十分かと思います。
今の時期は観光客がグッと減るため、静まり返った自然を堪能できるかもしれません。冬の知床楽しんでみてください。
2018年11月28日エゾシカ料理教室
知床国立公園 ウトロ 笠井 憲子
しれとこ住民講座第2回として「エゾシカ料理教室」を開催しました。
「エゾシカ肉をもっと身近に!」をテーマに釧路のフレンチレストラン「イオマンテ」の舟﨑シェフを講師にお迎えしました。
エゾシカの挽肉を持ち、説明をするシェフ。
メニューは「エゾシカ肉のメンチカツバーガー」と斜里産にんじんを使用した「にんじんケーキ」です。17名の参加者の皆さんと楽しく料理をしました。
メンチカツの材料
メンチカツの作り方
左上 / タマネギを炒め
右上 / エゾシカの挽肉と炒めたタマネギ、生クリームや香辛料を入れ混ぜます。
生クリームは脂肪分の少ないシカ肉をジューシーにするために加えます。
左下 / 成形して冷やします。
右下 / 小麦粉、卵液、パン粉を付け油で揚げます。
にんじんケーキの作り方
左上 / 卵を角が立つまで泡立てる。同時ににんじんをすり下ろす。
右上 / 泡立てた卵と小麦粉、にんじん、香辛料を混ぜる。
左下 / 型に入れる。
右下 / オーブンで焼いて、できあがり。
メンチカツバーガーになり、おいしくできあがりました。
知床の生態系の一部であるエゾシカですが、増えすぎたことで様々な影響を森の生態系に与えています。
環境省や関係行政機関ではエゾシカの捕獲事業を行っておりますが、そのエゾシカを有効活用し、皆さんにおいしく食べて頂くために料理教室を開催しました。ただ取るだけでなく、その先を目指した講座です。
今回使用したシカ肉はエゾシカの捕獲事業で捕獲されたエゾシカを受け入れ、養鹿し、食肉にしている業者さんから購入したものを使用しています。
おいしく調理するコツをシェフからたくさん聞くことができ、参加者の皆さんも大満足でした。
「エゾシカ肉をもっと身近に!」なったでしょうか。
今回使用したエゾシカ肉の購入先はこちら↓
知床エゾシカファーム
家庭でもエゾシカ肉のメンチカツを作ってみようと思います。
2018年08月06日たまには夕方に
知床国立公園 白石海弥
青い空、白い雲、蝉の声が絶えず聞こえうちわを仰ぐ日々。そんな夏の風物詩は好きだけれど暑いのは嫌いな白石です。こんにちは。
さて、知床・ウトロ側では7月16日の海の日から7月31日まで「海鳥WEEK」が開催されていました。
海鳥について知ってほしいと知床ウトロ海域環境保全協議会という組織が中心となって行っているものです。
知床にはケイマフリをはじめ多くの海鳥が生息し、重要な繁殖地となっています。それらを守り持続的に海鳥や海の環境を保全していくために、知床の海や観光に関わる様々な関係者が一丸となって取り組んでいます。
海鳥WEEK中は様々なイベントがウトロ全体で行われており、なかでも専門家による海鳥の解説を聞きながら海鳥を観察する【海鳥トーク】はとても面白いです。ホテルや観光船で行われていますので今年聞けてない!という方はぜひ来年聞いてみてください。
さて、今回は海鳥WEEKイベントの一つである「海鳥サンセットクルーズ」に参加してきました。
日暮れの時間帯に小型船で出港し、夕日を背に海鳥を観察するというイベントです。専門家の解説もあります。前田一歩園財団様からの補助を受け、高校生以下無料という破格のクルーズです。大人の方も3000円で乗れますよ!
夕方の5時半に船に乗り込み、いざ海へゆかん!
船が出てすぐにケイマフリが姿を見せてくれました。意外にも港のすぐ近くにいます。彼らが主食とするイカナゴがいるからです。イカナゴが好むとされる砂地の海底が港付近にあり、イカナゴが集まっているのです。
ケイマフリの赤い足を見ると幸福が訪れると言われています
☆ケイマフリとは☆
良く目立つ赤い足に黒い身体、目の周りの白い模様が特徴の海鳥。名前の由来はアイヌ語の「ケマ=足、フレ=赤い」から。エサは海に潜り、ペンギンのように泳いで獲ります。大きさはハトぐらいで、国RDB絶滅危惧Ⅱ類に指定されている、希少な鳥類です。岩の割れ目や隙間を利用して繁殖し、知床でも繁殖が確認されていますがごく僅かです。実は謎多き海鳥の一種で生態がよく分かっていません。
しばらく船を進めるとオジロワシの姿が!親子でしょうか。希少なオジロワシを見ることが出来てラッキーですが、海鳥たちにとってはアンラッキーです。繁殖シーズンを終え、雛が次々と孵化しこれからという時にオジロワシが雛を捕食してしまうのです。海鳥にとってヒグマとワシ類は天敵。その天敵たちが近づかない市街に海鳥たちが押し寄せ糞被害などが出ている、そう解説するのは海鳥専門家の福田さん。
こうしたイベントを通し、海鳥にふれる機会を増やして関心を持ってもらうことが大切だと、普及・啓発運動に力を入れています。
獲物を狙うオジロワシたち
そうこうしているうちに日が傾いてきました。雲がまた良い雰囲気を作っています。
海鳥が夕日を背に飛ぶ姿は絵になりますね。クルーズに乗っていた方々も一斉にカメラのシャッターを切ります。
いやぁ良いものを見ました。お客さんも大満足です。海鳥WEEK限定のイベントですので逃した方はぜひ来年参加してみてください。きっといい思い出になりますよ。
知床ウトロ海域環境保全協議会のホームページは以下のURLからアクセスできます。
https://www.facebook.com/shiretoko.keimafuri
協議会では「海のハンドブック」を販売し、その売り上げを海鳥の普及・啓発活動や、ケイマフリの保全活動に活用しています。
知床遺産センターや観光船で購入できます。スタンプラリーを集めるとプレゼントがもらえますよ!
来年も同じく海の日から7月末まで海鳥WEEKが開催されますのでその時期に知床に来てみてはいかがでしょうか。
2018年07月06日シレトコスミレの調査に行ってきました
知床国立公園 ウトロ 白石海弥
じめっとした暑さが続き、果たして夏を越すことが出来るのか不安な知床国立公園ウトロ側の白石です。
夏がやってきましたね。
さて、今回はエゾシカによるシレトコスミレの食害調査についてです。6月28,29日の一泊二日で調査に行って参りました。人生二回目の登山です。
展望台まで上がり、採掘跡地までくると硫黄の香りがツンとしてきました。いつ嗅いでも硫黄の香りは慣れないものです。途中、ガレている道や滑落注意のロープの張られている箇所がありますので十分お気を付けください。
そして岩登り。岩登りは楽しくできました。硫黄山好きです。
新噴火口のあたりから地熱の関係か、温度が高くなることが多いのでこまめな水分補給を!
沢出合いから雪渓がありました。それでも例年に比べると雪渓は少ないそうです(笠井AR談)
そしてでました、雪渓。羅臼岳の大沢よりなだらかですが、これまた長い長い。
どうにも雪渓は苦手です。ひぃひぃ言いながらなんとか登りました。これで少ないほうだというから驚きです。
硫黄山頂上に向かう途中でかなり急な雪渓をトラバースすることになりますのでアイゼン・ピッケルを装備していくと良いかもしれません。
ようやくたどり着いた頂上からは濃霧により何も見えませんでした。現場からは以上です。
一日目は第一火口でお泊りです。第一火口は9月まで雪渓が残ります。今回も一面真っ白でした。
夜ご飯は大定番カレーライスです。山の上で食べるご飯は格別においしいですね!!
さて二日目は調査に出かけます。テントを置いていざ調査地へ。知円別分岐まで大変良い尾根でした。落ちたらどうなるんだろうと考えると非常にワクワク感が増してとても楽しかったです。
お目当てのシレトコスミレは硫黄山の尾根大岩から少しずつですが咲き始めていました。
登山者の皆さんもぜひご覧になってください。
小雨のためか少ししょんぼり気味です。
道中エゾシカの足跡が確認されました。やはり食べに来ているようです。
調査地ではコドラート法を用いシレトコスミレの調査を行います。
今年もわずかですが被食株が確認されました。
硫黄山ではシレトコスミレ以外にも羅臼岳とはまたちょっと違った花々も見られます。ただ、くれぐれも植生を壊さないよう登山道を外れて歩かないようお願い致します。
展望台まではヒグマ出没の可能性が高いので十分注意してくださいね!
ミネカエデ カラフトイソツツジ
おまけ
今回は余裕を持って頂上にたどり着けました。硫黄山制覇です!
下りの際、新噴火口から晴れ、きれいな青を見せてくれました。
2018年06月25日目指せ!羅臼岳頂上!!
知床国立公園 ウトロ 白石海弥
【目指せ!羅臼岳頂上!!】
登るぞ羅臼岳、待ってろ羅臼岳。そう意気込めたのは束の間でした...。
申し遅れました、わたくし知床国立公園(ウトロ側)に新しく着任しました白石 海弥と申します。よろしくお願い致します。
さて、6月19日羅臼岳の巡視に行ってきました。この巡視では道標の確認や、銀冷水のトイレブースの確認、登山道の状況などを確認します。実は登山は初めてな私、最初は意気込んでおりました。
オホーツク展望台、岩峰を超え弥三吉水に着くと湧水を汲むことが出来ます。蒸し暑く火照った身体に冷たい水が染みわたります。美味しい!
※湧水ですので腹痛等を起こす可能性があります。飲む際は煮沸等自己責任でお願い致します。
さて、次は極楽平です。ここは登山道が崩落している箇所の確認を行いました。
地点によってはかなり段差が出来ていましたので、利用者の方は十分にご注意ください。
仙人坂から雪渓が残っている箇所があります。アイゼン・ピッケルがあると安全に歩くことが出来るかと思います。
溶けかけの雪渓。足を滑らせないよう注意してください。
銀冷水では携帯トイレブースが使えます。使用される方は必ず携帯トイレを使用するようお願い致します。使い方はパウチにてわかりやすく説明していますので、そちらをご覧になりながらご使用ください。登山の際は携帯トイレを必ず持参してくださいね!
中と外にそれぞれありますので、ご活用ください。
疲れが見え始めたころに立ちはだかるは大沢の雪渓の壁。絶望しました。
遠くに知床五湖が見え絶景なのですが景色を見る余裕はありませんでした...。
大沢の雪渓は8月まで残ります。滑落に十分気を付けてください。
羅臼平でテント泊をされる方はヒグマ対策にフードロッカーをご活用ください。頂上に登るためザックデポ(ザックの仮置)される方がいますがお止めください。ここはザックではなく食料を入れる場所です。
道中さまざまなは花を見かけました。キバナシャクナゲも咲き始めています。
彼らを踏まないよう登山道を外れて歩かないようにしてくださいね。
今回の巡視はここまで。来週はシレトコスミレの食害調査のため、硫黄山へ向かいます。
8月まで雪渓は残っていますが羅臼岳も登山シーズンを迎えます。山開きは7月1日です。
装備をしっかりと整えて登山を楽しんでください。入山前に入山届の記入と掲示板のチェックを忘れずに!
大沢の雪渓は尻滑りで帰りました。(一番楽しかった)
2018年05月07日目覚めし知床
知床国立公園 笠井 憲子
4月27日に知床横断道路が開通しました。
知床の半島を横断し斜里町ウトロ地区と羅臼町を繋ぐ、重要な道路が開通すると、知床観光の本格的スタートとなります。
道路の開通に併せて、知床観光の安全を祈願し安全祈願祭が開催されました。
知床観光の安全を祈願して、玉串奉奠する竹原レンジャー。
知床峠開通を祝してテープカットも行われました。
開通と共に多くの車が知床峠に向かいます。
夕方から朝にかけては路面凍結や雪崩のおそれがあるため、段階的な夜間通行規制がおこなわれるとのことです。
しばらくの間は10:00~15:30の通行になります。
詳しくは網走開発建設部のwebサイト〈https://www.hkd.mlit.go.jp/ab/〉をご覧ください。
そして、知床峠には残雪を求めてスキーヤーが集います。
春の残雪の時期にだけ訪れることができる火口湖。
羅臼湖はまだ凍結していました。
業務ではありませんが、知床の春を満喫しております。
皆さまも安全に知床を楽しんでください。
2018年01月15日流氷初日
知床国立公園 笠井 憲子
あけましておめでとうございます。知床国立公園・ウトロの笠井です。
ついに、やってきました。流氷ですよ。
1月11日今年初の流氷が陸地から観察できました。
粉々感は否めませんが、荒波に揉まれながら先発隊の到着です。
流氷本隊の到着はもう少し先のことになると思います。
知床冬の観光シーズンが始まりますよ。
エゾシカたちも反芻(はんすう)しながら、皆さんをお待ちしております。
2017年12月14日鳥!鳥!!そして...鳥!!!!! Japan Bird Festival 2017参加報告
知床国立公園 ウトロ 高橋 優太
鳥はお好きですか?あなたの推しメンならぬ推し鳥はなんですか?私の推し鳥はもちろん、知床の海鳥を代表する絶滅危惧種ケイマフリ・・・・・・と言いたいところですが、一番好きなのはトラツグミな知床国立公園ウトロの高橋です。5~6月のいまだ残雪が残る羅臼岳で寝ていて、深夜ふと目を覚ますと遠くから聞こえてくる「ヒ―――......」という寂しげでどこか不気味でもある独特の鳴き声に、もののあはれを感じずにはいられません。トラツグミ、私の一推しです。(ちなみに二推しがオオジシギで、三推しがエゾセンニュウです)
......。
なんの話かと言うと、去る11月3・4日、「鳥」の祭典ジャパンバードフェスティバル2017に参加してきました。今回はその参加報告です!!!
ジャパンバードフェスティバルとは!!!
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ジャパンバードフェスティバル(Japan Bird Festival/略称:JBF)は、千葉県我孫子市手賀沼周辺にて行われる、鳥をテーマにした日本最大級のイベントです。
鳥のお絵かきやミニ工作、双眼鏡やスコープの体験、ミニライブやトークショー、小・中学生、高校生が自然観察の成果を発表する環境学会、鳥学講座、手賀沼バードウォッチングツアー、野鳥撮影体験、抽選によるプレゼントつきスタンプラリー、野鳥の写真展、バードカービング作品展、野鳥関連グッズの販売、全国各地からの自然や野鳥保護団体の展示、軽食コーナーなど「遊ぶ、学ぶ、親しむ」鳥を楽しむ2日間。
(引用元:ジャパンバードフェスティバル公式サイトhttp://www.birdfesta.net/)
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このように「鳥」がらみなら何でもウェルカム!というぐらい様々な人・物・活動等々が日本全国から集まる、とにかく鳥づくしの一大イベントです。このJBFに「知床ウトロ海域環境保全協議会」のPR活動の一環で参加してきました!
会場は千葉県我孫子市にある手賀沼周辺です。画像中央の青いテント群の中に我々のブースがあります。
知床ウトロ海域環境保全協議会のブースは、ケイマフリのデコイ・知床半島ジオラマから、鮭とば・羅臼昆布・ヒグマやトドの缶詰まで、色々盛りだくさんな感じになりました。
開場すると一気に人が増え始め、我々のブースにも入れ替わり立ち替わりお客さんが。「今年の夏、知床行ったよ!」なんて声をかけてくれる方が思いのほか沢山いました。
バードウォッチングといえば光学機器。メーカー各社のブース前には最新機種のスコープや一眼レフカメラをのせた三脚がずらりと並び、大盛況です。
中央ステージではバンドが演奏していたりして常時にぎやかです。屋台で買った料理を食べながらくつろぐ家族客がたくさんいました。
手賀沼を船で回って鳥を見る、船上バードウォッチングツアーもありました。(乗りたかった)
この他にも手賀沼周辺の複数の施設で、様々な催しが同時多発的におこなわれていて、全部見て回るのが大変なほど。すごいボリュームです、まさにフェス!
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今回はじめて道外のイベントに参加し、色々な方と話しましたが、日本各地でおこなわれている様々な取り組みを知ることができて、逆に我々が知床でおこなっている活動がどんな位置づけにあるか、どういった風に見えるか、客観的に見なおす大変良い機会になりました。この経験を来年度以降の活動に活かしていければと思う次第です。というわけで、それでは皆さん良いお年を―――!!!
2017年09月07日水上スペシャル!謎の洞穴にケイマフリの巣箱を設置せよ!
知床国立公園 ウトロ 高橋 優太
これが何かおわかりでしょうか。タコ漁用の箱?うーんおしい、タコ漁用の箱を再利用してつくった海鳥の巣箱でしたー!初見は灯油のポリタンクかと思った知床国立公園ウトロの高橋です。
先日、「知床ウトロ海域環境保全協議会」の活動の一環で、この海鳥用巣箱を設置しにいきました。知床ウトロで海鳥と言えば・・・・・・そうです「ケイマフリ」です!
ケイマフリ
ケイマフリとは、知床半島ではウトロ近海でのみ見られる希少な海鳥(絶滅危惧I類)です。その数わずか100~140羽ほど。繁殖期である夏5月~8月の間だけ姿を現し、海に面した断崖で営巣します。子育てが終わると沖へ飛び去り、翌年の夏まで姿を現すことはありません。その生態はいまだ多くの謎に包まれています。
今回設置した巣箱にケイマフリが営巣すればしめたもの、内部に調査の機材をとりつけモニタリングすることで、生態を解明する大きな手がかりが得られるのです!
しかし海鳥が営巣するような断崖にどうやって巣箱を設置したのか......ここからは現場の臨場感をお伝えするため、文体を変えてお届けしたいと思います。
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かくして我々はケイマフリの巣箱とともに、知床海鳥研究会会長・福田佳弘氏が駆る小型船「蒼鷹丸」に乗り込み、オホーツク海へと出航した!
ウトロ港から船を走らせることおよそ1時間。目的地の断崖に到着した。船はゆっくりと岩壁に近づいてゆく......その時である!我々をいざなうかのように、謎の洞穴が姿を現した!!!
「隊長、どうやって中に入りましょうか」
洞穴は海抜1.5mほどのところにあり、もちろん乗り移るための桟橋やロープなどは存在しない。
「しかたがない、船首から飛び移るぞ!」
みな息をのむ。もし海に落ちればただでは済まない......オホーツク海は夏でも水温が18℃前後ととても冷たいのだ!オホーツク海沿岸約280kmに海水浴場が4件くらいしかないのも納得の冷たさである。最悪の場合、冷水のショックで心臓が停止し、即死する......隊員達の顔に不安の色が浮かぶ。しかしそんなに高くないため飛び移ることができた。
上陸し洞穴内部を見回すと、思いのほか空間が広がっている。8畳+クローゼット+ロフトぐらいの広さである。さらに左手上部には、人一人が入れる大きさの横穴が5mほど続いており、その先は小さな岩の小窓となって外の光が差し込んでいた。
「高波が避けられ、外敵が来ず、冬の流氷すらも防いでくれる、ケイマフリ安寧の地......ここだ、ここしか考えられない!巣箱を設置しよう!!」
のべ3日間に及んだ設置作業を終え、我々は洞穴を後にした。
9月に入ればウトロの海は荒れ始める。そうなればもはや、人類がこの洞穴に足を踏み入れるのは不可能になるだろう。訪れることができるのは唯一、海鳥達だけである。
「......本当にこれ※で、よかったのでしょうか。」 (※ 巣箱の設置場所・固定方法等)
「何が正しいかなんて誰にもわからないさ。答えはきっと───ケイマフリだけが知っている。」
完
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というわけで今回とりつけた巣箱、はたしてケイマフリは営巣してくれるのでしょうか。来夏の繁殖期にむけ、周囲にデコイを設置する等して、より営巣したくてたまらない環境を整えていく予定です。随時レポートしていきますので乞う、ご期待!
こんにちは。知床国立公園ウトロの白石です。
1/14にウトロで流氷を初確認してからしばらく、、、大海原は見渡す限り真っ白な流氷で覆われました!
雪原のようにみえるオホーツク海
流氷は毎年1月下旬頃から2月上旬にかけて接岸します。実は流氷が近づいている前兆として海が"シーンッ"となることがあげられます。これは、流氷により海に蓋がされたようになり、波が起きなくなる、または起きても伝わりにくくなることで起きる現象です。嵐の前の静けさのようで個人的には少し怖くもあります。
そんなこんなでやって来た流氷は、波によっては沖へ行ったり接岸したりと行ったり来たりをしながら、段々と海を覆っていきます。
さっそく流氷上にはオオワシや、オジロワシが多く見られました。先日の調査では合わせて100羽以上を確認!大人気です。流氷の割れ目から魚を探しているようです。
オジロワシ(まだ若そう) オオワシ(幼鳥)
カラスのエサを横取りできたオジロワシの幼鳥 エサを横取りできなかったシロカモメの幼鳥
さて、知床が世界自然遺産に登録された2005年に流氷が初着岸した日が1月30日。この日を北海道は「知床の日」と定めました。ウトロ側ではその「知床の日」に合わせさまざまなイベントを行っています。
こちらは1/30~2/28まで開催されている【流氷フェス】。氷のドームや造形物があり、お酒も飲むことが出来ます。去年に比べ今年は規模が大きく作品もかなり手が込んでいますのでぜひお立ち寄りください。
詳しくは☞こちら
知床世界遺産センターでは海ワシ展を開催中です。
知床を訪れる皆さんが海ワシを見分けられるよう、生態や特徴などを写真を交えながら解説しています。ちなみに「海ワシ」とは魚を主食とするワシの総称で、この場合はオオワシ・オジロワシ双方を指します。まずは遺産センターに立ち寄って学んでから観察を楽しんでみてはいかがでしょうか。
玄関には流氷が登場です!オオワシのぬいぐるみ2m40㎝とほぼ同じサイズ!厚さは80㎝ほど。これからまだ厚くなっていき、最終的には背丈ほどまでになるそうです。これだけ大きくても極々一部、自然のスケールの大きさにただただ驚くばかりです。
舐めることはお勧めしませんが触ることはできるので、ぜひ流氷を体感してみてください。(上手くいけば4月頃までありますよ!)
流氷が春になり溶けると海水が大きく循環し、流氷にくっついてきた植物プランクトン(アイスアルジー)がそれに伴い爆発的に増えます。このプランクトン達こそが知床の海の豊かさを生み出す縁の下の力持ちであり、とても大切な生き物です。これらを運んできてくれる流氷は世界自然遺産に選ばれた大きな理由の一つとなっています。
溶けてしまうのは寂しいですが春が待ち遠しいですね。流氷は3月頃まで見られます。