大雪山国立公園 上士幌
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2007年05月25日小さな侵略者
大雪山国立公園 上士幌 石村 梨紗
4月から上士幌自然保護管事務所でアクティブレンジャーとして勤務している石村梨紗です。
まだまだ未熟者ですが、日々勉強しながら、十勝の豊かな自然のフィールドを通して様々なことを学び、自然の魅力を皆さんに発信していくことができればと思っていますので、どうぞよろしくお願いします。
さて、あんなにあった山の雪も溶け始め、森ではエゾエンゴサク、ヒメイチゲなど可憐な春の花々(スプリングエフェメラル=春の妖精という言葉があります)が見られ始めた5月9日、士幌町でセイヨウオオマルハナバチ(以下“セイヨウ”)防除を行いました。
セイヨウオオマルハナバチは、在来マルハナバチとの競合(セイヨウの方が強いため在来のハチが被害を受ける!)、盗蜜*による野生植物への影響、ダニなど病害微生物の持ち込み、雑種形成の可能性(在来とセイヨウの雑種には繁殖能力がなくなる!)などの生態系への影響が懸念されることから、2006年9月に特定外来種に指定されました。
*盗蜜=強いあごを利用し、花の根本に穴を開けて蜜だけ盗むため、植物の受粉の助けにならない
4?6月頃にまでのこの時期は、越冬した女王バチしか見られないため、セイヨウオオマルハナバチの増殖を防除するには効果的な時期です。
士幌町では1時間で25頭の女王バチが捕獲されました。在来種のエゾオオマルハナバチまたはエゾコマルハナバチも9頭近く目撃されましたが、やはりセイヨウの方が断然数が多く置き換わりが進み始めていると考えられます。(これに対して、然別の山の方ではエゾオオマルハナバチorエゾコマルハナバチしか見られません)
一見かわいらしく見えるセイヨウオオマルハマバチも元々日本にいなかったハチであり、元々住んでいたハチ達を追いやってしまうなど在来の生態系を壊してしまう=いわば侵略者なのです。この状況が広がる前に早めの対策が必要となります。今、セイヨウオオマルハナバチの生態を研究し、防除しようという取り組みが進められています。セイヨウを捕まえるためにハチを調べたり、咲いている花々に目をむけることで新たな発見があるかもしれません。捕まえたハチは、生きたまま運ぶことはできませんので、必ず殺処分するか、フイルムケースにいれ、捕獲日・場所などを記載しまとめたのを東大の保全生態学研究室に送って下さい。
→送り先
〒113―8657
東京都 文京区 弥生1?1?1
東京大学 農学生命科 保全生態学研究室
担当 菊池 玲奈宛
皆さんも、春の花々が咲く野外に出てセイヨウオオマルハナバチを捕まえに行きませんか。
?セイヨウオオマルハナバチ?
・ヨーロッパ原産
・体長は約10?25mm(女王バチは大きい)
・あざやかな黄色と黒の縞模様と、真っ白なおしりが特徴
・全国の温室の受粉昆虫(主にトマト)として利用。1992年より本格的に導入され、現在年間、7万巣が流通している。

春の妖精(ヒメイチゲ)

おしりが白いのが特徴!

エゾムラサキツツジとセイヨウオオマルハナバチ
まだまだ未熟者ですが、日々勉強しながら、十勝の豊かな自然のフィールドを通して様々なことを学び、自然の魅力を皆さんに発信していくことができればと思っていますので、どうぞよろしくお願いします。
さて、あんなにあった山の雪も溶け始め、森ではエゾエンゴサク、ヒメイチゲなど可憐な春の花々(スプリングエフェメラル=春の妖精という言葉があります)が見られ始めた5月9日、士幌町でセイヨウオオマルハナバチ(以下“セイヨウ”)防除を行いました。
セイヨウオオマルハナバチは、在来マルハナバチとの競合(セイヨウの方が強いため在来のハチが被害を受ける!)、盗蜜*による野生植物への影響、ダニなど病害微生物の持ち込み、雑種形成の可能性(在来とセイヨウの雑種には繁殖能力がなくなる!)などの生態系への影響が懸念されることから、2006年9月に特定外来種に指定されました。
*盗蜜=強いあごを利用し、花の根本に穴を開けて蜜だけ盗むため、植物の受粉の助けにならない
4?6月頃にまでのこの時期は、越冬した女王バチしか見られないため、セイヨウオオマルハナバチの増殖を防除するには効果的な時期です。
士幌町では1時間で25頭の女王バチが捕獲されました。在来種のエゾオオマルハナバチまたはエゾコマルハナバチも9頭近く目撃されましたが、やはりセイヨウの方が断然数が多く置き換わりが進み始めていると考えられます。(これに対して、然別の山の方ではエゾオオマルハナバチorエゾコマルハナバチしか見られません)
一見かわいらしく見えるセイヨウオオマルハマバチも元々日本にいなかったハチであり、元々住んでいたハチ達を追いやってしまうなど在来の生態系を壊してしまう=いわば侵略者なのです。この状況が広がる前に早めの対策が必要となります。今、セイヨウオオマルハナバチの生態を研究し、防除しようという取り組みが進められています。セイヨウを捕まえるためにハチを調べたり、咲いている花々に目をむけることで新たな発見があるかもしれません。捕まえたハチは、生きたまま運ぶことはできませんので、必ず殺処分するか、フイルムケースにいれ、捕獲日・場所などを記載しまとめたのを東大の保全生態学研究室に送って下さい。
→送り先
〒113―8657
東京都 文京区 弥生1?1?1
東京大学 農学生命科 保全生態学研究室
担当 菊池 玲奈宛
皆さんも、春の花々が咲く野外に出てセイヨウオオマルハナバチを捕まえに行きませんか。
?セイヨウオオマルハナバチ?
・ヨーロッパ原産
・体長は約10?25mm(女王バチは大きい)
・あざやかな黄色と黒の縞模様と、真っ白なおしりが特徴
・全国の温室の受粉昆虫(主にトマト)として利用。1992年より本格的に導入され、現在年間、7万巣が流通している。

春の妖精(ヒメイチゲ)

おしりが白いのが特徴!

エゾムラサキツツジとセイヨウオオマルハナバチ
3日間での合計捕獲個体数は1359(♀461、♂898)個体。去年防除した5月末から6月初めより遅い時期に行ったため、水温が高いのと、カゴの数を2倍に増やしたために、去年の防除結果である187個体の約7倍という結果となりました。然別湖のウチダザリガニは、去年1年間で2458個体も防除をしたのになかなか減少せず、去年の春より生息水域が広がっているとのことで、個体数を減少させるのはとても大変です。
また、以前、然別湖ではニホンザリガニの佃煮が売られていたというほどにニホンザリガニがいたのですが、ウチダザリガニの侵入によって、1匹も見られないほどに減少してしまったのです。ウチダザリガニは最大のものは15cm以上(ニホンザリガニは最大でも7?8cm)で卵の数も100?500個(ニホンザリガニは20?80個)と一度定着してしまうとあっというまに分布を広げてしまうのでニホンザリガニとっては脅威です。
ウチダザリガニがニホンザリガニに与えると懸念される影響
・在来種のニホンザリガニを捕食
・ニホンザリガニと巣穴を巡っての競合
・ニホンザリガニへのザリガニペストの媒介
他にも然別湖にはオショロコマの湖固有亜種であるミヤベイワナが生息しており、生息域の一部は北海道の天然記念物として保護されています。ウチダザリガニの増加はこのミヤベイワナの魚卵も補食される可能性がでてきます。ミヤベイワナの卵が産卵されるヤンベツ川へのウチダザリガニの侵入は避けたいものです。
さて、そのウチダザリガニを、防除終了後にゆでてみなさんで試食しました。
気になるお味は・・・おいしい!!!
参加者のみなさんが美味しそうにザリガニを食べる光景が見られました。怪獣みたいなウチダザリガニを食べるのを怖がっていた子供も、一口食べてみると「ハサミが美味しい!」とにっこり。※なんと、このウチダザリガニ、フランス料理の高級食材としても取り扱われています。
やはり、人間が増やしてしまったものは人間が取り除かなければなりません。駆除するとはいえ命あるもの・・・ただ殺処分してしまうより食べられるものは食べたほうが命の重みが感じられますよね!
外来種はまるで悪者のように感じてしまいますが、真の悪者は持ち込んだ人間なのです。そのためにも、絶対に家で飼っている外来の生物を野外に放したりしないで下さい。 また、特定外来生物に指定されたものは、捕まえて家に持ち帰ったりするのも、特定外来生物の移動が法律で禁じられているので、法律違反になってしまいます。
皆さん、このような例を増やさないためにも、かわいいからといって衝動飼いをせず、飼う前によく考え、飼った以上ペットは責任をもって最後まで面倒見るようにしましょうね。。。
ウチダザリガニ
子供達はウチダザリガニに興味津々
茹でたウチダザリガニはおいしい!