ACTIVE RANGER

アクティブ・レンジャー日記 [北海道地区]

北海道地方環境事務所のアクティブ・レンジャーが、活動の様子をお伝えします。

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大雪山国立公園 上士幌

92件の記事があります。

2009年08月27日登山道脇の水の中は

大雪山国立公園 上士幌 三浦 武

晴れたと思ったら翌日は必ず雨になる北海道ですが、夏はもう過ぎ去ったんでしょうか。空気もどことなく秋の気配がしてまいりました。
さて、今回は(も?)趣向を変えて登山中ではあまりやらない撮影をしてみました。

石狩連峰を望む(8月26日撮影)

登山をしていると登山道脇に細い沢が流れていることがありますが、通常は上から見るだけのケースがほとんどだと思います。国立公園内は開発が制限されているので沢への土砂の流れ込みも少なく非常に澄んだ水が流れています。登山者として通常気になるのは水場として考えた場合の大腸菌であるとかエキノコックスでしょうか。
今回はその沢の中へカメラを入れてみました。
すると、わずか幅1m程度の沢に魚が群れています。

渓流魚の群れ

背中の虫食い模様の特徴がオショロコマです。
このオショロコマですが、語源はアイヌ語のオソルコマ(ウスルコマという資料もある)。意味は<尻・それによって・泳ぐ(掘る、とも)>。
北海道のサケ科魚類では最も標高の高い場所に生息できます。他のサケ科魚類と違って共食いをしない魚として知られています。縄張り意識が希薄なのか1カ所のポイントにたくさん群れているケースも見られます。落ち葉やそれをエサにする淡水性プランクトン、水生昆虫が豊富だからこその光景です。アメマスや魚食性の高い外来魚に負けずに生存し続けて欲しいものです。

それにしてもなんという透明度でしょう。2日前に大雨だったとは思えません。山の保水力や地質が良い状態なのでしょう。飲みたくなります。

オショロコマ(別名カラフトイワナ)

※水中撮影する場合はあまり粘りすぎないように注意してください。なぜならあまりに水温が低いので手が冷たくなってしもやけになってしまいます。

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2009年08月07日山の遠景

大雪山国立公園 上士幌 三浦 武

梅雨がない北海道にようやく梅雨明け(?)が到来したような暑さになりました。山ではこれから熱射病や脱水症に注意を払って登りましょう。
雪渓の崩れにも細心の注意を払ってください。
山の高山花はそろそろ終わりを迎えています。東大雪エリアで見られるのはイワギキョウ、チシマギキョウ、ミヤマリンドウ、イワブクロなどです。
コケモモやクロウスゴなどの実が見られるようになりました。

最近、動物写真や花の接写ばかりの日記が多くなっていましたのでたまには遠景を紹介することにします。

まずは沼ノ原から見たトムラウシ山です。
鏡面反射は風がないときにそこに居るかどうかです。完全な無風状態ならもっと鏡面に近い風景が撮れたと思います。

8月5日撮影(沼ノ原大沼より)


次はニペソツ山です。
深田百名山(名水百選のように公的な機関の認定ではないので私はこう呼ぶ)に差し替えを本気で考えていたという山です。
その姿を眺めると存在感はありますね。
これはウペペサンケ山から撮影しました。
ウペペサンケ山はニペソツ山に人気の面で大きく水を開けられている山ですが、周辺の山々や湖(糠平湖、然別湖)を眺めることができる点ではなかなか魅力的な山です。

8月6日撮影(ウペペサンケ山より)

天候が良く雲のない日に山を眺めると、登ってみたい衝動に駆られる登山者も多いのではないでしょうか。私もその一人です。
登りたい欲求もまた山の魅力の裏返しではあります。
ですがその欲求が時に山の“魔力”に負けることがあるのもまた事実。
恐ろしいですね。

おまけ画像は6日に撮影したナキウサギ。
余裕があればこそ途中で時間を取って撮影できるわけです。
とはいえ、あまり粘りすぎて下山時間を誤らないようにしましょう。
夏とはいえ6月の夏至からは日没がかなり早まっているのでこれからさらに注意して計画を立てることが必要になってきます。

8月6日撮影(秘技岩化けの術)

※ウペペサンケ山登山道周辺で熊のフンが7カ所確認されております。大きさから子熊と思われますが好奇心旺盛なお年頃であれば人に平気で近づいてくるので十分な警戒をお願いします。

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2009年07月30日絶滅危惧種

大雪山国立公園 上士幌 三浦 武

さて前々回に大雪山にしか咲かないホソバウルップソウを紹介しましたが、この植物は絶滅危惧種でもあります。正確には絶滅危惧ⅠB類といいます。
今回はⅠB類より上のクラス、絶滅危惧ⅠA類(ごく近い将来における絶滅の危険性が極めて高い種)をご紹介しましょう。

エゾルリソウです。北海道固有種です。


拡大


青いですねえ。
図鑑や解説書などには青紫色と表現されていますが、青そのものですねえ。
花の形はハマベンケイソウそっくりです。ハマベンケイソウもエゾルリソウもムラサキ科なのですが、ベンケイソウ科という種もあって混乱いたします。
ちなみにベンケイソウ科ではイワベンケイとかホソバイワベンケイというのが高山帯でよく見られます。

エゾルリソウは北海道固有種ですが、どういう訳か本州の植物園や園芸店で見ることができる種なのですが、こうやって標高の高い場所で野生種を発見するのとではその感動には雲泥の違いがあります。
近い将来の絶滅の危機を乗り越えて生存し続けて欲しいものです。

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2009年07月24日登山中に出会える小動物

大雪山国立公園 上士幌 三浦 武

あしたのジョーに出てくる丹下段平のモデルとなった人物(注1)と同郷の三浦です。

これまでいくつか高山花を紹介してきましたが、東大雪エリアの山々には野生動物もたくさん生息しています。
先週の登山道巡視の際に撮影できた野生動物を紹介します。

まずはエゾシマリスです。


地下巣を作って出産や冬眠をするのですが、冬眠中に目を覚まして貯め込んだ植物の実を食べたりします。地下巣が登山道に近い場所にあったりするので見られる確率は高いのではないでしょうか。




そして同じ日に撮影できたナキウサギです。冬眠をしません。


繁殖期は春から夏で6-7月に3頭前後の子を産みます。子育ては岩が積み重なってできた「迷路」を利用しているのでその様子が確認されたことはありません。でも見てみたいですね。

北海道のほぼ全域に分布するエゾシマリスですが、ナキウサギとともに本州には分布していません。これは最終氷河期のときに津軽海峡は陸橋化しなかったために北海道から本州へ渡れなかったからなのです。
これが生物の授業で出てくるブラキストン線という分布境界線なのです。

一般登山者はナキウサギやエゾシマリスなんかを見ることができれば非常にうれしいものです。
そして写真を撮ろうとあわててカメラを構えたときには時すでに遅し。さっきまで居たはずなのに目の前から消えてどこかに行ってしまった、なんてことが多いのではないでしょうか。
そこで、私の工夫をご紹介します(撮影テクニックではありません)。
自称忍者研究家の私がやっているのは、気配を消すこと、それだけです。
感情も消します。逃げられても悔しがってはいけません。感情を消しているのですから何の欲もありません。「忍」とは心に刃と書くのです。
動作も止めます。
これだけで会える確率がぐっと上がるはずです。間違っても餌付けしようなどと思わないでください。餌付けなどせずとも会えます。

※この方法でヒグマと出遭っても環境省および三浦ARは一切の責任は負いません

(注1)千葉県市川市キクチジム会長菊池萬造氏(元日本フェザー級王者)

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2009年07月22日大雪山の花

大雪山国立公園 上士幌 三浦 武

痛ましい遭難事故から一週間ですが、トムラウシ山を目指して続々と入山している状況は現在も変わりません。
くれぐれも繰り返さないことが一番大事なのです。

さて、トムラウシとはアイヌ語で花の多い山という意味なのですが、その花が咲き乱れる風景がまた魅力でもあります。
周辺の山々でも固有の花がよく見られるので疲れた体に力を与えてくれたりします。

前回のヒサゴ沼清掃登山で見かけたその一部を紹介します。


ミヤマリンドウです。この青色が実に良い。咲いたり咲かなかったりするのですが運良く開花に立ち会えました。



ハクサンチドリです。やや白色が強い個体です。



そして大雪山にしか咲かないホソバウルップソウです。
結構な面積に咲いていたのですが、思い切って接写してみました。
水滴が分かるでしょうか。ガスがかかってなおかつ無風状態でしたのでこのような絵になりました。水もしたたるいい女ってとこでしょうか。自己満足の一枚です。

これはまだ一部です。他にも場所は言えませんがエゾルリソウやコマクサなど貴重な高山花がたくさんあります。

それにしても天気が悪い日が続き気温の低い北海道の7月です。くれぐれも無理せず防寒対策には万全を期して大雪山の花を観賞しましょう。

※トムラウシの遭難事故にはいわゆる百名山ブームもあると思いますが、いつか深田久弥が百名山を書くに至った背景(妻への不義、代筆問題、愛人問題)についてシーズンオフにでも書こうかなと思っています。正妻は青森県出身の北畠八穂という女性文学者ですので同じ県民としては触れなくてはならない。女性登山者の皆さんも知っておいても損はないと思ってます。

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2009年07月15日ヒサゴ沼避難小屋清掃登山・登山道整備

大雪山国立公園 上士幌 三浦 武

 降りしきる雨の中、車内で緊急会議が開かれた。沼ノ原登山口は雨。会議中さらに雨は強くなっていく。
「この雨だと間違いなく急坂は滝の状態だ。転んで怪我するし、登れない人もいるよ」
山を知り尽くしたパークボランティア(以下PV)Yさんの言葉は重い。予報ではこのあとさらに雨は強くなる。
 いったん引き上げて翌日出直すか、無理して登るか。
「引き上げよう」
リーダーFさんの決断に反対者ゼロ。ヒサゴ沼B隊満場一致の引き上げだった。
 その夜、トムラウシ登山道コマドリ沢付近で女性骨折との一報が入る。まさかトムラウシA隊の事故ではないかと皆一瞬凍り付くが、本州からの登山客と判明した。登山道が危険な状態であったことは間違いない。


 翌日、曇り空ではあったが雨は上がっていた。所々の難所を慎重に通過し、五色岳分岐から一気にヒサゴ沼へ向かう。途中、ハイマツによる顔面への波状攻撃をかわしながら木道へ抜けると、そこにはホソバウルップソウの群生が待っていた。
 ヒサゴ沼へ近づくにつれ霧が濃くなり視界が悪化。木道が消え、代わりにとてつもない大きさの雪渓が姿を現す。


いつの季節でしょう


「本州の人はこの残雪見ると歩けなくなっちゃうらしいんだよ。気持ちがこわばっちゃうんだろうね」
 リーダーが語っていたそのことが2日後事故となって現実のものとなった。(注1)

 濃霧と大雪渓の関門をクリアし、ヒサゴ沼に到着すると、不思議なことに沼周辺だけは霧が晴れている。テントを設営し、それぞれ持ち寄った食料が並び、ビールと日本酒と・・・
     (中略)
 明日の晴天を祈り就寝についた。

 最終日の朝、霧が出たり消えたりの天気ではがゆい思いをしながらヒサゴ沼避難小屋清掃と登山道ロープ張りを行った。置きっぱなしなのかデポなのか不明のものは記録して秋に同じものがあった場合は撤去することになる。携帯トイレの使用済みと使用前を一緒に放置しているものやハンガーなど、ありとあらゆるゴミを集めて最後に集合写真を撮るときになって、青空が現れたのだ。ゴミは分担して担ぎ下山するという大変なことが待っているのだが、この青空はうれしいのである。


美しい風景にゴミは似合わないがこれが現実

 これで終わったわけではない。木道の傾きや浮きの応急処置をしながらの下山が待っている。
「持ち上げてみようか」
「無理じゃないの」
「やってみるべ」
「持ち上がったー。やればできる」


上から59歳64歳70歳(すごい)

 木道を持ち上げている間に素早く土台に石を積んでバランスを取る。こうしてシーソー状態となった木道が安定する。
 ある者は血圧の薬を飲み、ある者は膝に爆弾を抱えながら、皆それぞれ健康に不安を抱えながらの登山である。
今回のB隊PV平均年齢64歳。こうした人たちによって登山道の安全が保たれているのである。
 全員無事登山口に降りて解散、のはずだったが思わぬサプライズが用意されていた。当初のリーダー予定だったIさんがFさんの車の陰にメロンとそうめんと水を差し入れていたのだった。水分とエネルギーが枯れる寸前だったメンバー全員がメロンにかぶりつきそうめんをすする。Iさんたら味な真似を。お礼に秋のウチダザリガニ防除でいっぱい茹でザリガニ持って帰ってもらいましょう(笑)。

(注1)埼玉県の男性(69)が13日午後2時頃、化雲岳付近の雪渓で右足を負傷。ヒサゴ沼避難小屋で一夜を明かし、ガイドを通じ救助を要請。道の防災ヘリが出動し、男性を救助し清水町の病院へ搬送した。

(注2)さらに残念なことが起こりました。16日にも2件の遭難が発生し、10人の方がお亡くなりになりました。軽装と無理な続行が惨事を引き起こしたのではないかと指摘されているようです。大雪山は、とても厳しい山です。真夏とはいえ、氷点下にもなる気候。しっかりした準備と、引き返す勇気を持たなければなりません。 

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2009年07月02日高山植物保護キャンペーンinウペペサンケ山

大雪山国立公園 上士幌 三浦 武

 山の稜線上空をけたたましい音が鳴り響く。
 道警航空隊のヘリコプターが旋回しているのだ。
 山頂には衛星電話を持ったレンジャーがヘリに向かって何かの合図をしている。
 やがてヘリは谷の合間に飛び去った。
 翌日の新聞には「高山植物を踏んで5人逮捕」の見出しが。
 容疑は登山道を故意に外れて高山植物帯に踏み入れて下山したというもの。


 穏やかでない文章で驚かせて申し訳ありません。↑はフィクションです。ただし、登山道を外れて下山していった5人組は実際にいました。このことが常態化してしまうと近い将来、国立公園内で登山道外に踏み入った場合、上記のような逮捕劇がないとは言い切れない。そういう世の中にはなって欲しくはないが、登山者自らが自分の首を絞める行為をしてどうするのだ。
「彼らは登山者かもしれないけれど自然愛好家ではないねえ」とは目撃していた別の登山者の憤りに満ちたコメント。
 5人組の皆さん(うち女性一人)、しっかり顔見られてますよー。

 さて、その5人組が目撃された6月28日は十勝支庁の高山植物保護キャンペーンに協力するため森林管理署や道警の方々とともに朝5:00から登山口でパンフレットを配りました。
 ウペペサンケ班として最初に配った登山者が道警の航空隊員だったり、配った登山者の合計が5人だったり人気の面ではニペソツに完全に水を開けられている山ですが、せっかくなので登ってみることにしました。

 糠平コース登山口から稜線に出るまでの1時間20分ほどは針葉樹と白樺の混じる森林帯で所々ぬかるむ場所があります。後半は急勾配の段差もあるので特に下山時には転倒に注意ですね。稜線に出てからはハイマツ帯の尾根を2時間30分ほど登ると1834.5の山頂に到達します。途中、ホシガラスが出迎えてくれました。この山頂はウペペサンケ山とも糠平富士とも表記されています。実は本峰(1848)はさらに尾根伝いに1285m歩く必要があります。
 糠平富士からウペペサンケ本峰まではイワウメやエゾノツガザクラの群落が目を楽しませてくれます。滑落に気をつけて進みます。本峰に到達すると南に然別湖の姿が現れるのもこの山の魅力であります。
 この日の気象は非常におもしろく、糠平富士への尾根から東側では猛烈に霧が発生している一方で西側は晴れて見通しが良い状況が続いていました。尾根から真っ二つに分かれる天気が目の前で見られたことに他の登山者も興味深かったようです。
 最後に花の状況です。みんなまとめて一枚の画像にしました。クリックで拡大します。
 

本峰はどれだ?


立ち上がる霧


他にも咲いていましたがこれで勘弁してください

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2009年07月01日白雲山-天望山-東雲湖

大雪山国立公園 上士幌 三浦 武

 いまだ怒り冷めやらぬ三浦です(笑)。

 気を取り直して23日と25日に歩いてきた白雲山-天望山経由で東雲湖へ至る天望山周回線の開花状況を伝えたいと思います。
 白雲山南側中腹から岩石山周辺ではミヤマオダマキが開花し始め、白雲山北側のミヤマハンショウヅルはつぼみの状態でしたのでそろそろ見頃を迎えたでしょう。白雲山8合目あたりでチシマフウロが開花していました。
 天望山から東雲湖へ向かう道ではギンリョウソウ(銀竜草)が出始めており、真っ白で不思議な魅力の姿に初めて見る人は驚くことでしょう。このギンリョウソウは葉緑素を持ちません。光合成をせずにある種のキノコから栄養をもらって成長すると考えられています。毎年同じ場所に現れるわけではないそうです。
 これから次々に開花する高山花もあるので夏にかけて楽しめると思います。

左上:ミヤマオダマキ 右上:チシマフウロ 左下ギンリョウソウ 右下:ミヤマハンショウヅル

 天望山から1.2kmほど下って行くと東雲湖に到達します。誰が決めたのか北海道三大秘湖の一つといわれる湖ですが、年月とともに湿地化が進み、やがて陸地になってしまう運命で、数十年後にはまさに幻の湖となっているのです。然別湖畔から直接東雲湖へ向かう3.7kmのルートは標高差もなく危険箇所も少ないので約1時間30分~2時間で到達できます。とはいえくれぐれも油断は禁物です。

幻となる運命の東雲湖

 白雲山と天望山の山頂からは天気が良ければ遠くに大雪山系、近くにウペペサンケ山、眼下に然別湖を眺めることができます。次回はそのウペペサンケ山からのレポートです。

左奥がウペペサンケ山(白雲山頂上から)

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2009年06月26日誰が?なんのため?

大雪山国立公園 上士幌 三浦 武

 然別湖の南、白雲山登山道の士幌高原ルート脇に、等間隔に謎のプラスチックコップが埋め込まれていることがこれまでに分かった。単なる廃棄なのかいたずらなのか、はたまた壮大な実験計画なのか、その目的は謎に包まれている。
 発見したのは環境省上士幌自然保護官事務所の三浦アクティブレンジャー(以下AR)。三浦ARによると、発見したのは6月23日。登山口からまもなく最初のプラスチックコップを発見し、下山時に回収するつもりであったが進んでいくと同じ物が等間隔に100m近く続いて数も尋常ではないため不審に思い、事務所ならびに森林管理署と協議することにしたという。
 上士幌自然保護官事務所によると「そのような申請は出ていないしどのような目的であろうと撤去されるべきもの」といい十勝西部森林管理署東大雪支所でも「まったく意味不明で置いた意図がわからない」と困惑している様子。
 気になるコップの中身はというと、三浦ARによれば、前日までの大雨で雨水が溜まっていた物がほとんどで、ハンミョウやコガネムシなどの昆虫が溺れているのがいくつか見られたという。
 三浦ARによれば「たとえ将来ノーベル賞を受賞するような壮大な実験であっても、無許可で実験することはルール違反です」とのこと。
 誰が何のために埋め込んだコップなのか、謎に包まれたまま撤去されることになりそうだ。


目的は?

延々と続く光景


 謎のプラスチックコップ発見から2日後の25日、三浦ARは再びおかしなものと遭遇したそうだ。
 場所は然別湖南岸の遊歩道でうぐいす湾のあたりだという。そこで発見した物は、男物のパンツ。三浦ARによれば、白雲山から天望山、東雲湖を巡る天望山周回線をすべて巡視して湖畔沿いの道を通って登山口に戻るところだったという。
「最初はなんだこれ?と思ったが環境省として見過ごすこともできずどうしようかなと思っていたが、よく見ると茶色い染みが・・・。見なきゃ良かったと思いました。回収することにしたが前週の曇天からようやく晴れて気分の良い湖畔で、男物の下着を持って歩く気分は良いわけないですね。まあ持ち主はどうしてもここでデポしなければならない理由があったんでしょうけど」と冷静に語る三浦ARだが、その目は怒りに満ちていた。
「落とし物として登山口にさらしておこうかなと思いましたが他の利用客もいることだし物が物だけにそれはやめておきました。しかし、誰かが回収してくれると思ったら大間違い。次からは登山者名簿やDNA鑑定の手段を使ってでも持ち主を洗い出す」とも。


おいおい・・・

 三浦ARによれば東雲湖の状況や周辺の開花情報を後日AR日記にアップするという。

※お見苦しい画像で申し訳ありません。次回は花も湖もありの日記にいたしますのでご容赦を。

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2009年06月24日ウチダザリガニ春防除in然別湖

大雪山国立公園 上士幌 三浦 武

前回の続きです。

 ウチダザリガニ春の捕獲大作戦を鹿追町および北海道ネイチャーセンターとともに先週行いました。6月16日から19日までかご罠を使った捕獲を行い、20日はダイバーによる捕獲でした。
 防除活動には大雪山パークボランティアの方々や十勝支庁、帯広百年記念館、上川自然保護官事務所などから援軍が駆けつけてくれたおかげで作業を円滑に進めることができました。この場を借りてお礼申し上げます。20日のダイバーさんも寒い中水中での作業お疲れ様でした。

 さて、この然別湖でウチダザリガニを捕まえなければいけない理由はただ一つ。他の場所では二ホンザリガニを守るためであるとか水草の被害を食い止めるためであるとかなのですが、然別湖ではミヤベイワナ(オショロコマ亜種)の繁殖地域に入らせないためであります。然別湖の二ホンザリガニはすでに絶滅したと考えられ、守るべきものはミヤベイワナということになります。
 ウチダザリガニの食性は食えるものならなんでも、時には共食いもします。魚も植物も食べてしまうので逃げることができないミヤベイワナの卵が狙われるとひとたまりもないわけです。そのようなわけで捕獲作戦は続けて行かなくてはならない状況です。

 今回の作戦では合計2000超のウチダザリガニを捕獲できました。それでも昨年実績の8割程度の成果。これが数年来の防除効果で絶対数が減ってきた、と考えるのは早計で、実はかご上げ三日目の19日に一日あたりの個体数では今までにない約900匹のザリガニが捕獲されてしまったのです。前半二日間は水温の低さもあってザリガニが活発に行動していなかった可能性もあるので、秋の防除作戦に向けた作戦を鹿追町と北海道ネイチャーセンターのスタッフとともに練っていかなければならないでしょう。

 さて捕獲されたウチダザリガニですが、特定外来生物であるので生きたままの移動は禁じられています。したがって、計測が終われば塩茹での刑です。


茹でます

完成です

食べます

 試食した感想を皆さんに聞いてみたところ、「思いのほかおいしい」とのこと。しかし「個体によって当たり外れがある」とも。
 このウチダザリガニなんですが、阿寒湖などで食材として利用されている事例はあります。何とか利用できないものかという声も聞かれます。しかし、駆除した個体を利用するのは良いとしても、需要ありきで商業ベースに乗せようとするのには反対です。もともと居てはならない生き物ですし、然別湖の場合はミヤベイワナを保護するという至上命題がありますので安定供給の道を開いてはならないと思っています。

 秋の大作戦は10月です。

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