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アクティブ・レンジャー日記 [北海道地区]

北海道地方環境事務所のアクティブ・レンジャーが、活動の様子をお伝えします。

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支笏洞爺国立公園 洞爺湖

169件の記事があります。

2010年12月22日新たにパークボランティア誕生しました!

支笏洞爺国立公園 洞爺湖 浅田 唯衣

 先月、洞爺湖地区パークボランティアの募集を行い(※1)、新たに18名のパークボランティアさんが誕生しました。これで洞爺湖地区パークボランティアは総勢29名となり、これから活動の幅が広がりそうです。
 
 今回の募集で集まったボランティアさんは2日間の研修会を洞爺湖ビジターセンターなどで行いました。国立公園やパークボランティア制度についての講義の他、ゆうふつ原野自然情報センターの村井雅之さんを講師にお招きして、自然解説の方法やボランティアについてお話いただきました。


 財田にある洞爺湖畔の遊歩道を歩きながら、自然解説の方法について学びました。

 参加者のみなさんは「知識がないけど」「ボランティアしたいけど時間が」「若くないけど」といった様々なボランティアに対する不安があったようです。でも、村井先生はそんな不安を解消してくれました。「知識がなくてもボランティア一人一人、鳥が好きだったり、花に詳しかったり、写真撮影が好きだったりするから、こうして好きな人や詳しい人に自分の知らないことがあれば聞けばいい」「ボランティアだったらやりたい時間にやればいい」「幅広い年齢層がいた方が良い」これを聞いてみなさんの緊張が少しほぐれたようでした。


 新たに洞爺湖地区パークボランティアに登録された18名のみなさん。

 そして研修最後には、こんな大切なお話をしてくださいました・・・・。「完成したものはおもしろくない。終わらない未完成があった方がやりがいがある。」ボランティア同士で共感しながら終わらない未完成をつなげていくことが“ボランティア活動”だと感じました。まずは四季を通して自然を感じ、パークボランティアさん一人一人ができるボランティア活動を見つけていってほしいと思います。


 研修会後、早速パークボランティア活動を四十三山で行いました。(※2)四十三山にある火口跡や噴気孔を歩きながら、噴火の歴史や動植物などの話を交えながらゴミ清掃や四十三山歩道の冬季閉鎖による看板の撤去などを行いました。
 
 ※1 パークボランティアの募集は不定期に行っています。
 ※2 四十三山歩道は11月19日より4月下旬(予定)まで冬季閉鎖しています。 


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2010年10月28日秋そして冬

支笏洞爺国立公園 洞爺湖 浅田 唯衣

羊蹄山は先月24日に初冠雪を迎え、そして、おととい、洞爺湖・有珠山にも初雪が降りました。
今月中旬に、洞爺湖地区パークボランティア活動で中島の湖畔清掃を行いました。(※1)木々から落ちた葉が中島の歩道を彩り、ホオノキの白っぽい枯れた葉やイタヤカエデの黄色の葉などが道をうめ、この辺りにはこの木があるな。といったように飽きることはありません。(※2)カツラの葉からは甘いにおいがただよってきます。葉だけでなく、色とりどりの実やキノコを発見することができます。自然が生み出すさまざまな色・・・とても不思議です。秋にはいろんな色に出会えます。
 そして冬。冬といえば白ですが、単調な白の中にも自然の美しさがあります。これからどのような自然の造形に出会うことができるでしょうか。

(※1)中島にいるエゾシカは、人間によって持ち込まれ繁殖した。下草(草本類)は、ほぼ食べつくされて、エゾシカの嫌いな植物しか見られない。ここ最近、嫌いな植物も枯れてから食べるなどの様子が見られるようになった。エゾシカの数が増えた今、歩道に埋め尽くされた枯れ葉は特に、秋から春先にかけて、エゾシカの食料となっている。

(※2)今回中島で回収したゴミの量は燃えるゴミ40L×1でした。パークボランティア活動で中島の清掃活動を始めた当初は、40L×10ほどのゴミがありました。引き続き清掃活動を行っていきます。




倒木の上にキノコ・秋の風物詩 栗の実。



湖岸の水辺も落ち葉で彩られる。秋の自然造形美。



左写真)ヤマシャクヤクの種子。青黒い種と赤い種があり、赤い種は実りません。右写真)緑色の苔の上にはキノコが。ヒイロチャワンタケ(緋色茶碗茸)

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2010年10月22日【日本のいのち、つないでいこう!】COP10開催中

支笏洞爺国立公園 洞爺湖 浅田 唯衣

 いま愛知県、名古屋市で行われているCOP10。“生物多様性”という言葉が新聞やテレビで取り上げられています。
 ここ支笏洞爺国立公園でも、湖や火山、田園地帯、川、市街地などさまざまな自然があり、その自然環境によってさまざまな種の生きものが生活しています。今までのAR日記でも、2000年噴火の際に出来た金比羅山麓火口と、1910年にできた四十三山の火口の植生の違いを取り上げてきましたが、やはり植生が違うということは、そこにすむ鳥や昆虫などの生きものにも違いがあります。

北海道の在来種、エゾアカガエル。地域固有の動植物が日本各地に生息している。

 金比羅山麓火口では主にヨシ(一部ススキ)、イタドリなどが生え、ヒバリやホオジロ、ノスリなど草原性の鳥や、火口壁に育つコケにいる虫や沼に発生するユスリカを食べるアマツバメやハクセキレイ、また、噴石などによって枯れた木を巣に使うアカゲラなどが生息しています。
 四十三山の火口周辺は今や森となり、アカゲラやシジュウカラ、ゴジュウカラなど、森林性の鳥が生息しています。“環境”が違う、金比羅山麓火口と四十三山はわずか2kmほど離れているだけですが“鳥”という“種”だけをみても違いがあります。環境が多様であればあるほど、種も多様であることがわかります。(ある1つの場所にたくさんの種がいれば“生物が多様”であるという意味ではありません。)


テントウムシの仲間(カメノコテントウ?)。
日本人にもなじみの深いテントウムシだが、同じテントウムシでもそれぞれ背中の模様に違いがある。人間も顔や性格が違うように、同じ種の中でも形や模様、生態などに多様な個性がある。
  
  また、生物が多様であることで私たちにはたくさんの恵みを享受しながら生活しています。例えば洞爺湖なら、火山による地形の景観や、火山が生み出す温泉、また有珠山の岩なだれ(※1)による岩礁にはタコやカレイなどが生息し、また火山灰や軽石が生み出す土壌によって水はけが良いため、メロンや豆、キャベツなどの農作物が取れます。また地熱を利用したトマト栽培などが行われています。わたしたち人間もその生きものの一部ですが、自分が日頃どのような生きものとつながり、どのような恩恵を受けているのかについて考えてみませんか。

洞爺湖ビジターセンターでは、今年5月の“地球のいのち、えがいてみよう”企画で洞爺湖の生きものを描いた模造紙を 10月末日まで展示中です。


(※1)
 約7千~8千年前に羊蹄山のような形をした円錐形の有珠山山頂から南西方向に岩なだれをおこして噴火湾(海)に流れ込み、岩礁の多い地形が生まれました。

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2010年08月26日【日本のいのち、つないでいこう! COP10まで50日前】

支笏洞爺国立公園 洞爺湖 加藤 康大

☆☆コブハクチョウ(ガンカモ科ハクチョウ属)☆☆

「ハクチョウが車に引かれそうなんです。助けてあげて下さい」
巡視をしていたら、観光客の人にそう頼まれた。

洞爺湖畔の路上をチョロチョロしているのはコブハクチョウ。ここ数年、明らかに見かける数が増えているし、観光ガイドブックやパンフレットなどでも洞爺湖を象徴する生き物であるかのように写真が使われることもある。




原産はヨーロッパ。1952年に都市公園などでの飼い鳥として日本に持ち込んでいる。野生個体の飛来という可能性もないわけではないが、洞爺湖では夏も冬も、年間を通して見かけるし、湖畔でしっかり営巣している。よそから飛んできた可能性は非常に低い。じゃあなぜ洞爺湖に? もちろん人間が持ち込んだもの。観光目的で。ここでは立派な(?)外来生物であり、北海道のブルーリスト(外来生物リスト)にもしっかり名を連ねている。

とはいえ、外来生物であることを知らず保護を求めるのは仕方ない気もする。あちこちの川や湖で、「今年もハクチョウが飛来しました」といった報道も多く(餌付けして定着させた場所もある)、人間はハクチョウを「優雅で美しい生き物」として見る。

指定された希少種以外の保護はしないことに加え、コブハクチョウが外来生物であることを伝えても「冷たいんですね」と返されることが多い。ハクチョウばかりが気になるのは上記のようなイメージのほか、大きくて白くて目立つからだろう。車に引かれて死んでいく生き物は、爬虫類から昆虫まで他にも山ほどいる。

「洞爺湖の中島に行くと可愛いシカに出会えます」
「野生のシカが住み、緑がいっぱいで自然豊かな中島」

本当にそれでいいの?

人間が観光目的で持ち込んだたった3頭が、繁殖と大量死を繰り返しながら現在約300頭にまで増え、島の生態系をメチャメチャに破壊している。草から幼木から首が届く範囲の木の葉まで、シカが食い尽くす。植物が根を張らないから土壌が乾燥化し、雨や雪解け水とともに土が流れ、既存の樹木はどんどん倒れる。常に台風直後のような不気味な景色。植生が普通ではないから当然そこに暮らす生き物にも影響が出る。




地元住民がもっと島のことを勉強し、問題の改善に取り組んで欲しい。環境問題を学ぶ場所として積極的に問題を発信し、人に見せ、そして私たち人間がいかに身勝手な生物であるかをおおいに学んでいただくべきだ。

「シカって可愛いね~」「シカに煎餅をあげてみませんか?」
いつまでもこれではいけないと思う。

夏になると増えるホタルの放流。どうしてこんなにも「ホタル、ホタル」と騒ぐのだろう。ただ単にこの昆虫の『光る』という特性が、日本人が好む「わび」とか「さび」にマッチするというだけの話ではないのか。現に光らないホタルだってたくさんいるのに、そっちには誰も目を向けない。地域の自然や環境を総合的に考えたうえで(地域ごとの個体差や他生物とのつながり、幼虫の餌となる貝を放流することの影響、そもそも現在ホタルが住める環境なのかどうか…など)、それでもホタルの放流に取り組んでいる方は気を悪くされるかも知れないが、奥の深い生き物どうしのつながりには目もくれず、光を放って飛んでいくホタルだけを眺め「綺麗だね~、いいことをしたね~」という自己満足の放流が多すぎる気がしてならない。

富良野岳にリシリヒナゲシ。樽前や羊蹄にも、あるはずのないコマクサが生えている。


様々な種類の生き物がいるということは環境が壊れていない証拠…、綺麗な花がたくさん咲いていれば自然豊か… 「生物多様性」とはそんな単純な話ではない。砂漠に比べ、動物や植物の種類が豊富な熱帯雨林のほうが自然豊か? そうじゃない。砂漠には砂漠の、気が遠くなるほどの時間をかけて築かれてきた砂漠ならではの生物多様性が存在する。 

もう少しだけ考えてみて下さい。それぞれの場所で、それぞれの環境に適応した生き物どうしの「つながり」があるということを。そしてその貴重な環境やつながりを破壊しているのが私たち人間の身勝手であり、それを修復できる可能性を持っているのもまた、私たち人間であるということを。


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2010年08月12日マナーとルール

支笏洞爺国立公園 洞爺湖 浅田 唯衣

 先週、羊蹄山(京極口~ひらふ口)のパトロールを行ってきました。


京極コースからの景色(京極町)

  そこでいくつか気になることがありました。夏山登山シーズンの真っ只中ですが、マナーとルールについて考えてみませんか。

★トイレの使用済みティッシュやゴミは持ち帰ってください。
 京極コースで2箇所、使用済みティッシュが登山道沿いに落ちていました。そこにはハエがたかって異臭を放っています。使用済みティッシュは回収しました。今は携帯トイレが登山用品店などで販売されています。それらを使用するか(もちろんそれも持ち帰りです。)、万が一それが無かった場合には、必要最低限のマナーとして使用済みティッシュは必ず持ち帰ってください。その使用済みティッシュを見て、後から登る登山者はせっかくの自然の中を歩いているのに、その汚いゴミを見たくないのに見なければなりません。また、その使用済みティッシュやゴミは他の人に回収され、わざわざ羊蹄山山頂まで担ぎ上げ、下山するまで持って行くことになります。



右:立入禁止ロープ 左:焚き火跡


★羊蹄山ではテント設営(幕営)はできません!!
 羊蹄山山頂付近のある場所で焚き火(炭までありました。)の跡を見つけました。誰かがテントを張ったようです。張れる場所があるからテントを張ろうというのは絶対にしないでください。植生が傷むばかりか、焚き火で山火事になる危険性もあります。山へ登る前には、その山の登山道状況や水、幕営が可能かどうか、避難小屋の有無、万が一天候悪化した場合のエスケープルートなどの情報をきちんと確認してから登山に臨んでください。羊蹄山では避難小屋があります。水は各自、必要な分を持って入山してください。

★登山道以外には外れないでください。
 避難小屋近くにある登山道沿いで、その登山道を外れて山頂へ上がる一部登山者がいるようです。そこにはロープと立入禁止の看板がついています。そこに見たい植物があるから?上へ上がるのが早そうに感じるから?そのロープをまたいで行く歩行時間は、登山道で山頂へ上がるのとほとんど変わりません。また一人が行う行為は周りの登山者も見ているのです。なぜなのでしょうか。ロープをわざわざまたいで入るというのは理解に苦しみます。一般的に立入禁止という看板やロープは、植生のことだけでなく、落石や土砂崩れなどさまざまな理由で張られていることだと思います。そのような場所へ立ち入るということは自分や他人への危険行為、迷惑行為でもあります。もちろん、立入禁止の看板やロープがなくとも、登山道から外れてはいけません。

 町にもマナーやルールがあるように、山の中にもマナーとルールがあります。だからこそ皆が楽しく安全に歩くことができます。これからまだ夏山登山を計画されている方がたくさんいらっしゃると思いますが、今一度、マナーとルールについて考えてみませんか。

■羊蹄山ひらふコース2合目付近(風穴より手前登山口寄り)では蜂による死亡事故が起きています。



コエゾゼミ 

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2010年08月05日イワブクロの花

支笏洞爺国立公園 洞爺湖 浅田 唯衣

  山の巡視が一番多いこの季節。7月もあっという間に終わり8月に入りました。羊蹄山麓でピンクや白のじゃがいもの花が咲く7月初旬に羊蹄山真狩コースのパトロールを行ってきました。
  巡視では実に多くの植物に出会います。毎回帰ってきてから、記録した写真を元に、どんな植物が咲いているのかを記録していきます。花博士ではないので、分かりずらい花などは名前を特定するのに苦労しますが、調べれば調べるほど、なんて植物の種類が多いことだろうと感心します。どうやって様々な形や色が作られ、決められているのでしょうか。不思議です。7月初旬~中旬の8合目付近から羊蹄山山頂付近にはイワブクロが咲きます。



 イワブクロ(ゴマノハグサ科)
 今回も、ガレ場斜面には一瞬遠目からだと雪渓と見間違えそうになるくらいにイワブクロの群落が広がっていました。


 雪渓のように見えるイワブクロの群落

  イワブクロは、別名タルマイソウ(タルマエソウ)とも呼ばれ同じ支笏洞爺国立公園内にある樽前山にも多く、火山の砂礫地や岩場が好きです。

 
 6月末ではエゾノツガザクラの群落が見られます。その時々で出会える花は違います。また咲いていても、その花に出会える人と出会えない人がいるようです。



 ※羊蹄山避難小屋では一部、床などの補修がされてました。トイレでは使用状況を確認するためにカウンターが付いています。ご協力ください。また水などはありません。各自必要な分を持って入山してください。

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2010年07月22日四十三山 森の観察会

支笏洞爺国立公園 洞爺湖 浅田 唯衣

  先月、火山活動によって誕生した四十三山(明治新山)で自然ふれあい行事を行いました。今年は誕生して100年目の節目となります。噴火当時の写真を見ると火口周辺には植物は見られません。また火口内部からは噴気があがっている様子さえ見られます。でも噴火により荒れ地となった四十三山は100年たち、現在では緑豊かな森となっています。その森はどのように変化してきたのか?またこれからどのように変化していくのか?を想像しながら参加者21名と歩きました。


噴火当時の四十三山。(四十三山歩道解説板より)
現在、噴気は一部しか見られません。

  森についてお話していただくのは元林業普及指導員の鈴木 隆さんです。今回のキーポイントになる木はこの時期に空気中にふわふわと雪のように種子を飛ばすドロノキ(ドロヤナギ)の種子です。みなさんに聞いてみると「あ~よく飛んでいるわ!!」という声。実は、10年前の2000年噴火の際にできた金比羅山麓火口の斜面には約2mほどのドロノキが育っています。他にもイタドリやケヤマハンノキ、ウダイカンバ、カラマツなどが見られます。このドロノキは風に飛ばされた種が火口の小さな沢筋に定着しています。きっと四十三山も現在の金比羅火口のように噴火後にドロノキが入り、育っていったと想像できます。四十三山のドロノキはいったいどのくらいの大きさの木に成長しているでしょうか?


講師の鈴木さん。

 歩き始めてまもなくドロノキの大木が見ることができます。でも風によって運ばれてくる木ばかりではありません。ミズナラの木も多くはありませんが見ることができます。ミズナラの木はご存じドングリから芽を出します。そのドングリはおそらく小動物によって少しずつ山の上へ上へと、または雨に流れて山の下へと種が運ばれていきます。風や雨、または小動物などによって種が運ばれたりして森が作られていくことがわかります。また、四十三山では昭和40年代にトドマツなどの植林された場所がいくつかあります。人によって植えられた人工林と、歩道を挟んで、人の手を加えない自然の力によって変化してきた天然林を見ることのできる場所があります。かたや緑まぶしく葉をいっぱい広げ、太い木から細い木までさまざまな天然林。手入れのされていない人工林の方はといえば、同じ1種類の木で木の太さは細いまま、そして森の中は暗い印象です。それだけ天然林と手入れのされていない人工林では違いがあります。四十三山の天然林では講師鈴木さんによると少なくとも確認しただけで約30種類以上の木が現在見られるそうです。でも常に同じ木の種類があるのではなく、木は少しずつ種類を変化させていきます。今まさに初めの方に定着したはずのドロノキが倒れ初め、少しずつカツラやミズナラといった木に変化しているようです。それはすべて自然の力で変化していき、今の四十三山もさらにまた100年経てば木の種類(や優先している木の種類)も変化していることでしょう。私たちは普段なかなかそのような森の変化に気づくことはありません。じっくり森の姿を見てみると、いろんな種類の葉っぱを見ることができます。噴火によってできる火口などの自然景観とともに、何気なく見ている植物が長い時間をかけて変化しているのだと思うと、“生きもの”の生きる生命力を感じます。


緑豊かな四十三山の森を歩く参加者。
  
  過去100年の間に4回噴火している有珠山は、噴火後の植生(植物)がどのように変化するのかをまさに体感できる貴重な場所であり、また植物が変化することによってそこで生活する動物も変わってくるでしょう。火山という現象のみならず、動植物なども含めた地域自然の魅力を再発見できた行事でした。

 


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2010年06月29日感動を共有する時間

支笏洞爺国立公園 洞爺湖 浅田 唯衣

 
先月、地元の洞爺湖温泉小学校4年生のこどもたちと「火山」をテーマに3回の学習を行いました。今年の4年生は8人で少数ですが、いつも元気いっぱいで、特に野外へ出かける時のテンションは最高潮です!
  まずは、洞爺湖ビジターセンターで洞爺湖と有珠山の生い立ちについて勉強しました。子どもたちは目の前にある巨大なカルデラ(噴火などによってできた直径が2kmを超える窪地のこと:洞爺湖はその窪地に水がたまってできたカルデラ湖)がどのようにできたか想像するのは少し難しいことのようです。でも自分たちに生い立ちがあるように、洞爺湖や有珠山にもきちんと生い立ちがあることを知りました。


マグマの仕組みを洞爺湖ビジターセンターパネルで学習しました。
「実は日本には有珠山と同じように活火山が多く、決して有珠山だけが特別なのではないんだよ。」
 噴火の仕組みを知るために、コーラを使って実験も行いました。


2回目、3回目は早速、火山を体感する野外学習です。過去100年の間にも4回噴火が起きている有珠山で、10年前に活動してできた西山山麓火口群と金比羅山麓火口群を見に行きました。8人のこどもたちはどちらもほとんど歩いたことがないようです。地元にこんなすばらしい自然があるのに、今まで歩いたことがないという事実は最初は寂しく感じました。でも水蒸気をあげる火口、地熱のある地面や盛り上がった地面、コバルトブルーの水をたたえる大きな火口やその周りに住む生きものを初めて見るこどもたちは今日、どんな気持ちでそれらを見るのかなあと、ある意味、子どもたちとは違ったわくわく感もありました。


地熱を測ったり、世界でもなかなか見ることができない地溝(グラーベン)を見る。※地溝(グラーベン)とは、互いに向き合った一対の階段状の断層群ができて、見かけ上、中央部が落ち込んだように見える地形のこと。ここではマグマの上昇によってできた。

ある子から火口から出てくる白い煙を見て「あの煙は何なのか?」という質問がありました。大人であれば「水蒸気です。ここには地熱があって・・・」のように簡単に答えは済む時もあるのですが、子どもたちには「煙」が「水蒸気」なのではなく、子どもたちが言う「煙」がなぜ出てくるのか?について簡単そうで難しい質問にわかりやすく説明しなければなりません。いつもそのためにイラストを描いた画用紙を持っていったり、写真を使ったりします。また興味を引き出すために、双眼鏡で発見させたり、温度計で地熱を測ったりといったこともします。当日を大きく左右するこの下準備は大変ではあるけれど、自分にとっても勉強になっていて、子どもたちはどんなことに興味がわくのだろう?と想像しながら作成します。
  自然の中を歩く時、どんな言葉よりも見て触って感じることが一番の心に残る感動となり、またそれが興味へとつながります。これは自分の経験から感じていることなのですが、だからこそ、こどもたち自身が自然の不思議を発見したり、自然の姿に感動する時、自分もこどもたちと共に発見や感動を共有できる時間がとても幸せに感じます。豊かな地域の自然を知ることで自分たちの身の回りにある自然へ興味を持ってくれるよう今後も、少しでもお手伝いできたらいいなと思っています。


2000年噴火でできた金比羅山麓火口群の有くん火口。「火口から飛び出した噴石の層も見ることができるんだよ。」

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2010年06月15日四十三山の生きもの

支笏洞爺国立公園 洞爺湖 浅田 唯衣

  四十三山の森は、ますます緑濃くなってきています。今月頭、パークボランティア活動で歩道の維持管理作業を行いました。ぐんぐん延びる下草を刈っている時によく見られるのは小さな生きものたちです。そこで見られる生きものを紹介したいと思います。


脱皮直後のエゾハルゼミ(メス)と抜け殻 
エゾハルゼミもやっと通常より1週間ほど遅れて鳴き声の確認ができました。この時期にはよくその抜け殻を見ることができます。


左からサッポロマイマイ、エゾマイマイ
カタツムリのなかまです。雨あがりの日によくみかけます。


左からニホンアマガエルとカミキリムシのなかまとワカバグモ
カエルは他にもエゾアカガエルがいて、四十三山では夏になると見られます。ワカバグモはどこにいるかわかりますか?

この森には鳥や哺乳類だけでなくたくさんの生きものが生活していることがわかります。山を歩く時はゆっくりとじっくりと足元にひそんでいる生きものを探してみましょう。おもしろい発見があるかもしれません。

※四十三山は、1910年(明治43年)の有珠山の活動によって多くの火口が生じ、マグマの上昇によって生まれた山です。噴火当初、火口やその周辺からは水蒸気(噴気)が見られ、木は枯死し植物はみられませんでした。しかし100年たった今、火口周辺は緑豊かな森となっています。今年は誕生してちょうど100年目となります。これを機に、100年たった火口周辺の森を観察する行事を6月19日(土)に行います。詳細は洞爺湖自然保護官事務所(0142-73-2600)まで。


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2010年06月09日中島清掃

支笏洞爺国立公園 洞爺湖 浅田 唯衣

5月30日にパークボランティア活動で中島の清掃を行いました。この日は、ゴミ(53)ゼロの日です。みなさんご存じでしたか?
今回、回収したゴミの量は、燃えるゴミ20L×2、燃えないゴミ20L×2です。対岸から漂着するゴミは時期や湖面の流れで左右されるとは思いますが、中島の地面に埋めてあるようなゴミ(なぜ埋められているのかはわかりません。)は少しずつ回収できていて、全体的にゴミが少なくなったという印象を受けました。実は、昨年度も同日に清掃を行いましたが、今回のゴミの量は昨年度回収のゴミ量の約3分の1の量でした。ゴミゼロにふさわしく今回の活動ではゴミがあまり見つからず気持ちの良い活動でした。



 中島(大島)1周の清掃活動を行いました。1周約7.6km、約4時間(徒歩)かかります。

これから夏期に入ると中島で焚き火や、バーベキューを行い、缶ビールなどのゴミをそのまま中島に捨てていくといった利用者がみられます。ゴミの持ち帰りはマナーとして徹底してほしいと思います。今後、中島のゴミがゼロになる日を願っています。ヤマシャクヤクやツツジはつぼみでした。もうまもなくで開花するでしょう。



 フデリンドウ(筆竜胆):リンドウ科。5~6月に日当たりの良い場所に咲きます。注意して見ないと通り過ぎてしまうほど小さな筆です。


 マムシグサ(コウライテンナンショウ):サトイモ科。(左):上部についていた花序が食べられている。(右)仏炎ほうに包まれた花序。この花序がないマムシグサがいくつか中島で見られた。
※中島にいるシカは、人間によって持ち込まれました。現在は約300頭近くいます。中島を歩くと下草はほとんど食べ尽くされ、現在はシカの嫌いな植物しか見当たりません。でも食べるものが減ったため、今まで食べなかったマムシグサも食べているようです。

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