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アクティブ・レンジャー日記 [北海道地区]

北海道地方環境事務所のアクティブ・レンジャーが、活動の様子をお伝えします。

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支笏洞爺国立公園 洞爺湖

169件の記事があります。

2010年05月24日パークボランティアって?

支笏洞爺国立公園 洞爺湖 浅田 唯衣

  “パークボランティア”ってみなさんご存じですか?日記でよく登場するパークボランティアですが、実際どのような人たちなのか知られていないのが実情です。今回はパークボランティアについて簡単にお話したいと思います。

  国立公園では、私たちアクティブレンジャーとともに国立公園内の清掃活動や利用者へのマナーの案内や指導、自然解説などを行っている「パークボランティア」や「自然公園指導員」といったたくさんのボランティアの方々が活動しています。



洞爺湖地区パークボランティアでは四十三山歩道の倒木の除去や解説板や誘導標の清掃、歩道沿いのゴミ清掃も行っています。

 
  現在、洞爺湖地区では11名のパークボランティアが活動をしています。中島や洞爺湖畔、有珠山、オロフレ山などの場所でゴミ清掃活動を中心に、植物の調査や地域の自然情報を発信するなどさまざまな活動を行っています。



洞爺湖ビジターセンター館内ではパークボランティアより洞爺湖の自然情報や活動状況をお知らせしています。
 
※パークボランティアになるには・・・各国立公園を管理している環境省の地方環境事務所等が募集をかけます。その募集時に開催するボランティア養成講習会を受講し修了することがパークボランティア登録にあたって必要となります。


私たちアクティブレンジャーは黄色い制服が目印ですが、パークボランティアは緑色の帽子が目印です。

★よく聞かれる質問です!
Q.植物や動物などにくわしくなければいけませんか?
A.特別な知識は要りません。国立公園でボランティア活動をしたいという気持ちがあれば大丈夫です。

Q.居住地から活動区域の国立公園まで距離がありますが登録できますか?
A.登録したい地区のパークボランティア活動に継続的に参加できる範囲であれば構いません。

Q.どこに問い合わせをすれば良いですか?
A.参加したいと思う地区の地方環境事務所または、自然保護官事務所まで。
 詳しくは、環境省のHPhttp://www.env.go.jp/nature/park/volunteer.html
または環境省自然環境局自然ふれあい推進室 03-5521-8271 まで。

  みなさんも国立公園へ訪れた際は、パークボランティアが活動していたらぜひ声をかけてくださいね。


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2010年05月21日洞爺湖1周清掃

支笏洞爺国立公園 洞爺湖 浅田 唯衣

  先月の始め、洞爺湖地区パークボランティア(参加者7名)では洞爺湖1周の湖畔清掃の活動を行いました。遠くから見る洞爺湖はキレイでも、湖畔や道路沿いを歩くと草むらに落ちているゴミが目立ちます。捨てられている多くは意図的に捨てられたと思われるゴミばかりです。1時間もたたないうちにゴミ袋は満杯になる状況で全て実施することはできませんでした。


 清掃活動を行うパークボランティア。
  

一番多かったゴミはペットボトルや缶、弁当などの包装ゴミです。ひどいのは飲み終わったペットボトルや缶を袋にまとめていれてしばって捨ててあるようなものもありました。

回収後、パークボランティアで仕分けを行いました。
ゴミの量は・・・
 燃えるゴミ(40L)×16袋(この内ほとんどがペットボトル)
 燃えないゴミ(40L)×9袋
 ペットボトル資源ゴミ(40L)×3枚
 缶・瓶資源ゴミ(40L)×5枚
 他のゴミは、小型テレビ2台、ボーリング玉、パソコン、ビデオデッキ、衣装ケース、照明器具など大型のゴミもありました。



 たくさんのゴミ。分別もかなり大変な作業です。


  洞爺湖ではさまざまな地元団体がゴミ清掃を行っています。しかし拾う人がいれば、捨てる人もいて悲しいばかりです。今、ゴミを捨てれば罰金まであるような世の中です。ゴミはゴミ箱へ捨てるのは常識です。一人一人のマナーが向上しなければいつのまにか洞爺湖畔もゴミの山です。

  ゴミ清掃活動をしながら湖畔に咲くエゾエンゴサク、ナニワズ、エンレイソウ、ミズバショウ、アズマイチゲなど春の花を観察しながら清掃活動を終えました。


湖畔沿いの春の花も観察しました。

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2010年04月21日四十三山(明治新山)歩道オープン

支笏洞爺国立公園 洞爺湖 浅田 唯衣

  四十三山は4月20日(火)冬期閉鎖解除されました。この時期が一番火口が見やすい時期です。今年は雪どけが遅く、壮瞥温泉側(旧北大有珠火山観測所)入口から山頂に向かう歩道の一部に雪が残っています。石畳が続く歩道で滑りやすい箇所もありますので歩行には充分ご注意ください。
  生きものも本格的に活動を始める季節です。四十三山でも冬眠から目覚めたばかりのニホントカゲが日光浴をしているところを発見しました。ニホントカゲはみなさんご存じですか?全国的に広く分布しているトカゲ目トカゲ科です。一般的にオスは3月初旬に冬眠から目覚め、メスが1~2ヶ月後遅れて現われ交尾が行われます。石の下や木の根元などの巣穴を作って5~16個を産卵します。


 ニホントカゲのオスの成体。体の表面に光沢があり、体が太い。小さく尾が青いのは子どもです。

  これとよく間違われるのはトカゲ目カナヘビ科のニホンカナヘビです。ヘビといってもトカゲですが、見分け方としては、細身で鱗に光沢がなくカサカサしています。また子どもの尾は青くありません。どちらも昆虫やクモなどを食べます。


  四十三山山頂にある展望台。早春や晩秋に羊蹄山や中島を見ることができます。

  四十三山の季節情報は洞爺湖ビジターセンター内でも随時お知らせしています。歩かれる前にぜひビジターセンターへお立ち寄りください。


 
  歩道上に見られるキツネかタヌキのため糞。タヌキは特に同じ場所に糞をする習性があります。お行儀が良いようです?!



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2010年04月13日春の便り

支笏洞爺国立公園 洞爺湖 浅田 唯衣

 昨年に比べ天候が不安定でまた気温も低い日が続いています。本州は桜の訪れがあったようですが、北海道の桜の時期はまだまだお預けといったところです。
 でも、例年通り湖畔には春の便りが届いていますよ。フクジュソウやエゾエンゴサク、キクザキイチゲ、アズマイチゲ、エンレイソウといった春の花が湖畔沿いの巨木の下であたたかい日差しを待ち望んでいます。



 フクジュソウ(福寿草)4~5月に咲く。


 エゾエンゴサク(蝦夷延胡索)例年より茎や花がまだ小さいのですが、これからもっと大きくなるでしょう。



  洞爺湖を眺めるアズマイチゲ(東一華)

 洞爺湖に注ぎ込む川は雪解け水で水量も増えています。洞爺湖は1周約43kmで春の便りをゆっくり見るには、車ではなく自転車がおすすめです。さらに体力のある方はぜひ歩いてみてください。
  支笏洞爺国立公園の春の便りでした。

  



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2010年04月01日命と命

支笏洞爺国立公園 洞爺湖 加藤 康大


4月。4年目の僕には最終年度。残る1年、精一杯頑張ろうと思う。


3月某日、保護された野生生物の引き取りで渡島管内の森町まで。

ここ洞爺湖自然保護官事務所は、道内のレンジャー事務所の中では最南に位置し、例えば渡島方面で生物が保護・捕獲された場合、現地まで引き取りに行くのは当所の担当ということになる。

これまで、クマタカ、ハヤブサ、オジロワシなどの猛禽類のほか、特定外来生物であるカミツキガメの引き取りなどで何度か(たしかこの3年間で6~7回くらい)、函館や七飯など、渡島方面へ車を走らせている。

今回は函館市内で保護されたハヤブサ。渡島支庁の方が森まで運んでくれたので、運転距離はかなり短くなった。カラスの群れに追いかけられ、学校のガラス窓にぶつかり動けなくなっていたところを保護されたとのこと。カラスが強いのかハヤブサが弱いのか、大きくて強い鳥類の王、という猛禽類のイメージを覆す感じだが、ハヤブサはワシなどに比べるとそれほど大型の鳥ではない。見たところ左肩の辺りがおかしな形で盛り上がっており、上手く飛べないようだった。

たいていの場合、引き取った生物は洞爺湖まで運んだあと、苫小牧の自然保護官が洞爺湖まで引き取りに来てリレーする。そしてウトナイ湖野生鳥獣保護センターに収容され、そこで獣医師の診断のもとリハビリ、リリースされる(前回のオジロワシは苫小牧とリレーできなかったため、洞爺湖→七飯→苫小牧→洞爺湖という長距離となり、保護官と交代で運転しながら運んだ)。



(2010年1月、大沼にて保護されたオジロワシ)



(ウトナイ湖野生鳥獣保護センターにて。鳥類専用の保護ラップにくるまれ、診察される)


これらの猛禽類のように、種の保存法で指定される希少種や、鳥獣保護法で指定される希少鳥獣および国指定鳥獣保護区で発見された全ての鳥獣が、環境省が収容すべき対象種となる。種の保存法では鳥類のほか、哺乳類5種、爬虫類・両生類が1種ずつ、魚類4種、昆虫類10種、植物23種が希少種として指定されているが、鳥類は38種と圧倒的に種数が多い。

このように希少種として保護され、人間が自然復帰の手助けをしてくれる生きものがいる反面、先述したカミツキガメなどの特定外来生物が引き取られた先に待つのは「死」だ。

2009年6月に函館警察署まで引き取りに行ったカミツキガメ。路上をトコトコ歩いていたところを一般の方が捕獲して警察署に届けた。その後、希少種と同じように僕が洞爺湖まで運んだあと苫小牧へリレーされ、そこで炭酸ガスによる殺処分となった。



(飼育・運搬・譲渡などに規制がかかる特定外来生物)


どうしてカミツキガメが函館の路上に?

原産はアメリカ大陸。1960年代以降にペットとして輸入されているが、2005年、特定外来生物の指定を受けたことにより、ペットとしての飼育は不可能となったため大量遺棄されたと言われている。

救われる命と断ち切られる命。

人間にそんなことを決める資格があるのだろうか?仕事柄、僕が必要以上に敏感なだけなのだろうか?

3月末の春近い道南。快晴の噴火湾と駒ヶ岳を眺めつつ、助手席の段ボールの中で時折ゴソゴソ動くハヤブサを気に掛けながら、複雑な気持ちで洞爺湖に戻った。




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2010年03月23日冬の巡視

支笏洞爺国立公園 洞爺湖 浅田 唯衣

 「冬の巡視ってどんなことをするの?」とたまに聞かれる質問があります。冬眠をしているわけではありません。冬の巡視は例えば、羊蹄山地域では、登山口4箇所のスキーやスノーモビルの利用状況や冬の標識の確認などがあります。
 

真狩野営場から、傘雲に覆われた羊蹄山の姿。
  ここ最近、羊蹄山では、冬でもスキーやスノーボードなどで入山する人が多くなっています。登山口4箇所の内、真狩やひらふ(倶知安)コースからの入山は夏と同様に多く、巡視した平日にもちらほら入山者(下山者)を見かけました。その日は気温が大幅にゆるんだ日で雪崩の起きやすい日でもありましたが、装備を見ると軽装の人が多いいのが実情です。昨年では羊蹄山でも雪崩に巻き込まれた事故もありました。他、京極や喜茂別にもスキーのトレースがあり4箇所登山口すべてに冬の利用があるのが分かりました。冬の入山規制はありませんが、雪崩などハイリスクが予想される場合は入山しない、多数で入山の場合には雪崩をおこさない、そしてビーコン着用や雪崩に対処する技術を持っていることなど、また一人で入山する場合にはリスクはより伴うことを知った上で入山されたいと思います。
 もう1つは冬の標識の確認です。みなさん標識って普段あまり気にはならないけれどないと困るものですよね。北海道などの豪雪地帯にはかかせない標識があります。例えば道路では、赤と白の矢印の標識がかなり高い位置に、そして一直線に存在しています。これは雪が道路脇に積もりどこが車道の境界か分かるように示すものです。


道路沿いにある赤と白の矢印標識。
  国立公園内の登山口にも、冬に対応した看板があります。夏にはあまりにも不用意に背が高すぎてびっくりされる方もいるかもしれません。それは、羊蹄山地域にはスノーモービル等の乗り入れ規制がありそれを示した標識です。その標識がきちんと雪に埋もれず表示されているかどうかの確認を行います。
 このような冬の巡視は頻繁には行えませんが大切な仕事です。アクティブレンジャーのお仕事の1つをお知らせいたしました。



夏と冬の標識の様子。水色のラインが入ったスノーモービル規制については、冬仕様の一番背が高い標識。

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2010年03月16日四十三山~冬から春へ

支笏洞爺国立公園 洞爺湖 浅田 唯衣

 気温が高くなりつつある今日この頃、まもなく洞爺湖湖畔にも春の訪れがやってくるでしょう。冬期閉鎖中の四十三山歩道の巡視を行ってきました。四十三山にはいち早く春の知らせが届いていました。


林内の雪面はたくさんの足跡が交差する

  まだ歩道上は、雪面に覆われています。その上をエゾリスやキツネ、エゾユキウサギなどの足跡がたくさん見られます。冬歩きの楽しみは四十三山に限らず、こういった雪面の足跡をたどりながらどのように生きものが暮らしているのかを想像することです。広い四十三山でもだいたい足跡を見られる場所は毎年決まっていて生活範囲も知ることができます。


周りは雪で覆われているのに、ある部分は地温があるため雪がとけている

 そしてそんな中、今年もやってきました。四十三山の地温が高い場所には早くも1月末にフキノトウが芽を出します。その時はまだまだ冬の真っ盛り、慌ただしく黄緑色の芽を出すフキノトウはせっかちだなとも思っていましたが、もうそろそろ春も待ち遠しくて、フキノトウに限らず小さな花々や木々の新たな芽吹きが早く出てこないかなと期待しています。
 標識等の破損や歩道上の変化などはありませんでした。4月中旬には冬期閉鎖の解除予定です。それまでしばらくお待ち下さい。またその頃には、湖畔沿いも小さな花が咲き始めます。
みなさんの住んでいる場所の周りには春は訪れていますか?


春の知らせ、フキノトウ
 



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2010年03月02日三年

支笏洞爺国立公園 洞爺湖 加藤 康大

2月14日(日)、洞爺湖一円の生物多様性に関するフォーラム、「いま、洞爺湖の生命(いのち)と環境について考える」を開催した。

現在洞爺湖では、洞爺湖町と地域総合交流協定を結んだ酪農学園大学の学生が様々な自然環境調査を実施し、データを蓄積してくれている。地元NPOや、もちろん私たちとも連携を図りながら、各調査のほか、地域児童の環境教育にも携わっている。

そんな活動が進むなか、「僕らが洞爺湖で何をしているのか、地域の方に知ってもらわないと」「まずは足下の自然環境の現状を知ってもらうところから始めよう」という合致のもと今回のフォーラムを企画するに至った。

ウチダザリガニに関するフォーラムや防除体験会は何度か開催してきたが、「洞爺湖の生物多様性」という幅広いテーマは初であり、準備は全てゼロからのスタート。たたき台が無いというのはなかなかしんどい。しかしながら僕も言い出しっぺの一人でもあり、途中で引くわけにもいかず。

卒論やテストで苦しむ学生たちにも協力をいただき、なんとか開催までこぎつけた。学生のみんな、本当にありがとう。忙しい日程のなか、各準備を進めていただいた先生方、UWクリーンレイク洞爺湖、洞爺湖町、壮瞥町役場の皆様、本当にお疲れ様でした。

第Ⅰ部は学生による各調査の発表、第Ⅱ部ではクリーンレイク洞爺湖や壮瞥町によるウチダザリガニの防除報告や洞爺湖温泉小学校4年生による総合学習「とうやこタイム」の発表などを「地元の取り組み」として紹介した。




大学生、地元NPO、児童など…洞爺湖の自然についてそれぞれの目線で発表していただいた。


学生の調査発表は非常にためになった。細部までは紹介しきれないが、中島のエゾシカの現状や調査方法の実演、エゾシカが鳥やコケ、土など、他の生きものや自然環境に与える影響、アライグマの被害状況やウチダザリガニの移動距離、洞爺湖の水とウチダザリガニの関係、洞爺湖周辺のニホンザリガニ…。写真やアニメーションを多用しているのでとても分かりやすい。「専門家だけが理解できるような発表では意味がない」という思いが根本にあった。

約150名の来場をいただき、質疑応答では会場からもたくさんの質問や発言が。地域の方に洞爺湖の現状を知っていただく良い機会になったのでは。


思えば2007年4月、僕が洞爺湖に来たばかりの頃はまったく先が見えなかった。グリーンワーカー事業でウチダザリガニに手をつけてはいたものの、地域には認識されていなかったと思う。「捕ってもお金にならないものを誰が捕ると思うの?」とも言われた。

手探り状態でとりあえず自らウチダザリガニを捕獲しつつ、地域の方とも積極的に交流するように心がけ、呼ばれればどこにでも顔を出し、子供たちともよく遊んだ。あっという間の三年。

そんな毎日を過ごすうち、ウチダザリガニ防除のNPOができ、生物多様性保全協議会も設立された。今年度は壮瞥町が防除に乗り出し、洞爺湖町と酪農学園大学が協定を結び、僕はザリガニやその他の生きものについて教える環境学習などで外に出る時間が増えた。ザリガニという生きものが人の興味を惹きやすかったこと、地域の方や大学の先生・学生たちに支えていただけたことなどが功を奏し、ここまでたどりついた。「よそ者」の僕に出来ることなど限られていると思っていたから背伸びをせず、「どうしたらここの自然を守れるか」「自然保護と地域に必要なものをどうリンクさせるか」「そのために自分に出来ることは何か」を考えて動いてきた。

来年度は、環境教育の時間を増やしてもっとたくさんの子供と接したいし、一般向けや親子向けのイベントも開催したい。壮瞥町に甘え、自らウチダザリガニを捕獲する時間が減ってしまったので、「防除勘」を取り戻すために、また単独での捕獲作業も増やしたいし、今回のフォーラムも単発で終わらせるつもりはない。「洞爺湖の生きもの展」みたいなものも開催したい。

時は金なり。きっと今まで以上に毎日がバタバタと過ぎていくのだろう。「アクティブ」レンジャーなんだからこれでいいのだ。



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2010年02月26日地球のいのち、えがいてみよう

支笏洞爺国立公園 洞爺湖 浅田 唯衣

みなさん、生物多様性という言葉を聞いたことがありますか?最近は、新聞やニュースなどでよく耳にする方もいらっしゃるかもしれません。
生物多様性とは簡単に言うと・・・
「生きもの」たちの 豊かな「個性」と「つながり」のことです。(※1)
地球上には微生物から動植物にいたるまで数え切れないほどの「生きもの」がいます。これまでわかっているものだけでも約170万種といわれています。地球上の「生きもの」は全部で何種とハッキリいうことは難しいですが、それでも1000~3000種を超えるのではないかといわれています。しかも、私たちの顔がそれぞれ違うように、「生きもの」でもそれぞれ違う「個性」を持っています。
  そして「いきもの」は、地球上にある森、里、川、海などいろいろな場所に、住む場所を見つけています。また、そこの環境とそこにいる「生きもの」同士の「食う・食われる」や「利用したり、されたり」という様なかかわりあいによって「つながり」を作っています。この「つながり」には同じものはひとつもなく、そこからいなくなってもいい「生きもの」もいません。それぞれの「生きもの」がそこで重要な役割を果たしています。

  今年2010年は生物多様性年です。10月には名古屋市で生物多様性条約締結国会議(COP10)が行われます。これを機に「生物多様性」に対する関心を深めてもらうため、全国46のビジターセンターで「地球のいのち、えがいてみよう」を実施しています。この企画は、各国立公園の自然環境を描いた模造紙に、その場所に住んでいる「生きもの」から“見た”“見たい”「生きもの」のぬりえを選んでもらい、色をつけて貼り付けてもらうというものです。
洞爺湖では縦220cm、横320cmほどの大きな模造紙へ絵の具を使い、多くの水をたたえるカルデラ湖や川、火山地帯や温泉街、田園地帯を描きました。学生卒業以来、絵の具の使用は皆無で絵のセンスを問われる作業でひやひやしました。また、さらなるセンスを問われたぬりえのイラストも全て手作りで、多くの方の協力を得て、たくさんの個性ある?!ぬりえが完成しました。イラストは今年、洞爺湖周辺で調査を行っている酪農学園大学の学生さんにもご協力をいただきました。



洞爺湖ビジターセンターの様子です。洞爺湖ビジターセンターは、洞爺湖や有珠山を中心に温泉街も含めた自然環境を模造紙に描きました。洞爺財田自然体験ハウスでは、洞爺湖と田園地帯や川を描いています。


 
日頃、みなさんが生活している所ではどのくらいの「生きもの」を目にしますか?私は洞爺湖に来てさまざまな「生きもの」の存在を意識して生活しています。湖畔には巨木があり、春先には小さな花々が咲き、夏、山は緑まぶしく、そしてたくさんの野鳥が鳴いて、秋には落葉の上をエゾリスが駈けぬけ、冬にはキツネやユキウサギの足跡を目にし、1年を通して「生きもの」が自分の周りの環境に生きていることを知ります。洞爺湖とその周辺では数え切れないほどの「生きもの」が存在するでしょう。それは、一般に日本中どこでも見られるような「生きもの」もいれば、北海道にしかいない固有の「生きもの」や洞爺湖の自然環境を特徴づけるような「生きもの」もたくさんいます。私たちも含めてその「生きもの」たちはつながっています。
洞爺湖では、洞爺湖ビジターセンターと洞爺財田自然体験ハウスにて行っています。ぜひみなさんのご参加をお待ちしております!5月16日まで開催しています(予定)。(※2)

 
2月14日、洞爺湖で行われた「生物多様性フォーラム」に参加してくれた地元の子供たち。洞爺湖にいる生きもののぬりえの中から選び、図鑑を見ながら真剣。「この生きもの洞爺湖に本当にいるの?」「これ見たことがある!」といった声もありました。大人の方も参加してくれました。

ぬり終わったら、その生きものが生活している場所に貼り付けます。

※1 詳しくは・・・http://www.biodic.go.jp/biodiversity/まで

※2 「地球のいのち、えがいてみよう」は 洞爺湖自然保護官事務所、
洞爺湖ビジターセンター等利用協議会の主催、酪農学園大学の協力を得ています。


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2010年02月18日四十三山とゴジュウカラ ~冬その1~

支笏洞爺国立公園 洞爺湖 浅田 唯衣

 閉鎖中の四十三山の巡視を行ってきました。

 道内では比較的暖かく雪が少ない洞爺湖ですが、北海道に来て3年目でも寒い日は体がなかなか慣れません。林内の歩道は、土の水分が氷って足を一歩踏み出すたびにざくざくと音を立てます。
 こんな寒い日には鳥も活発ではなさそうだと勝手に思いながら歩いていると、「コンコンコン」と木をつついている音が聞こえました。探してみるとせわしなく枝を行き来しているゴジュウカラがいました。



この時期に良く見かけるゴジュウカラ。
 
 生息環境は平地から山地の広葉樹林や針交混交林に生息します。木の幹を垂直にとまり、頭を下に向けて降りることができるのが特徴です。ちょうどその様子を見ることができました。図鑑には、「幹や枝に沿って移動しながら、幹をつついたり樹皮を剥がしたりして昆虫やクモを補食する他、草の種子や木の実も食べる。樹皮の隙間に木の種子を押し込み、嘴でつつき割って食べ、殻を残す」とありました。
 
 冬の厳しい寒さの中でもあんなに小さな鳥が生きていけるのはすごいことだと改めて思いました。四十三山の夏はまぶしい緑におおわれますが、冬は衣を無くした木で少しさみしい感じがします。倒木はあったものの、看板や標識などは問題ありませんでした。




噴気孔から出るあたたかい水蒸気で周りの木々は白く化粧されていました。

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