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北海道地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [北海道地区]

ペンケトー・パンケトー自然探勝会

2006年07月30日
阿寒湖
7月16日(日)曇り後晴れ

 阿寒湖畔エコミュージアムセンター主催の自然ふれあい行事「ペンケトー・パンケトー自然探勝会」に参加してきました。一般参加者30名、阿寒パークボランティア10名、スタッフ(自然公園財団)6名で、3班に分かれて、キネタンペ湾の養魚場、イベシベツ川の清流、目的地のパンケトー、ペンケトー、マリモの生育地のチウルイ湾といくつかの観察ポイントを探勝してきました。

 阿寒湖の北側を通る林道(阿寒パンケトー林道)を車で移動し、最初に3班合同で訪れたのは、養魚場のあるキネタンペ湾。ここでは、阿寒漁業組合により養殖されているイトウ、ヒメマスなどの様子と、イベシベツ川(パンケトーから流れ出し阿寒湖へと注ぐ川)の流入口となっているキネタンペ湾を観察しました。またこのイベシベツ川の流入口は、初秋になるとアメマスなどの魚が産卵のため数多く集まってきます。

 キネタンペ湾を観察した後、3班はそれぞれローテーションで観察ポイントをまわり、私の班が向かった先は、今回の探勝会の目的地でもあるペンケトー。ペンケトーまでは、徒歩で片道40分程度の道中、ふだんじっくり目に触れる事のできないめずらしい植物や、参加者が「人工林?」と見間違うほど整然と美しく立ち並んだ多数のエゾマツ・トドマツの倒木更新など、スタッフやボランティアによる自然解説を交えながらじっくり観察していました。

 ササを掻き分け、先へ先へと進むにつれ、黒々とした木々の間からようやくキラキラ光るエメラルドグリーンの水面、ペンケトーが見えてきました。ペンケトーの水位は昨年より高い位置にあり、昨年歩いた湖岸はすっかり沈んでいました。それでも、なんとか傾斜のある湖岸で参加者の方と記念撮影ができました。ペンケトーの静かなたたずまいに参加者の方々がうっとりされていた様子が印象に残りました。また、ふだん立ち入ることのできない場所であるため、参加者の中には、立ち去るのがとてもなごり惜しそうにしていらした方もいました。

 パンケトーでは、阿寒カルデラの成り立ちや、カルデラ壁の側面を移動することでさまざまな姿を見せる雄阿寒岳、そして阿寒カルデラの広がり、深さを体感することができるといったスタッフによるお話があり、参加者の方々はとても興味深く耳を傾けていました。

 林道沿いを緩やかに流れるイベシベツ川、その川の中ほどにある乙女の滝にも訪れました。川の水は、とても美しく透明で、そしてあたりに響き渡る滝の音はなんとも涼しげで心地いい。そんな乙女の滝は、イベシベツ川でもとりわけ美しく、観察ポイントとしてはとても魅力的な場所のひとつです。

 そして、最後に訪れたのは、マリモの生育地であるチウルイ湾。ここでは、釧路市教育委員会マリモ研究室の職員よりマリモの説明をしていただきました。お話では、球状マリモ、湖底を浮遊しているマリモ、岩などに付着しているマリモなどマリモの特徴、生育地、そして生育条件などについての説明がありました。参加者の方々は、湖岸に打ち上げられたマリモを観察し、直接触れ、とても満足されていました。最後には、3班全員で雄阿寒岳を背景に記念撮影をしました。

 探勝会解散後の後かたづけの最中、一人の参加者が歩み寄り私に一言。満たされた笑顔で「色々とお話ありがとうございました」と。その方は、探勝会の移動中の車内で、私の得意分野の阿寒やエゾシカの話をして仲良くなった参加者の一人でした。思いもよらぬ何気ない一言がとても嬉しく、気づくと参加者以上に心が満たされていた自分がいました。阿寒カルデラの広がり、深さを感じ、阿寒カルデラ内部のさまざまな自然の観察をとおして、参加者の方々や阿寒パークボランティアの方々と交流する素敵な時間を頂きました。

【ペンケトー・パンケトーとは】
 ペンケトー・パンケトーは、雄阿寒岳の東の麓に位置し、約1万年前、雄阿寒岳の噴出により阿寒湖と分割されて、約5000年前に現在の形となって現れた湖です。
 ペンケトー・パンケトーの名前はアイヌ語で、ペンケトーが「上の沼」、パンケトーが「下の沼」という意味です。湖面の標高は、ペンケトー(標高520m)の方が、パンケトー(標高450m)より上にあります。ペンケトー・パンケトーは沢でつながっており、ペンケトーが「上流」、パンケトーが「下流」に位置しています。
 ペンケトー・パンケトーは、国立公園の中で最も厳重に保護されている「特別保護地区」に指定され、ふだんは立ち入りが規制されています。






ペンケトー


湖岸に打ち上げられたマリモ(チュウルイ湾にて)


乙女の滝(イベシベツ川)