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北海道地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [北海道地区]

道のセンス

2006年08月14日
上川
 7月19、20日に山岳・山麓インタープリター養成研修会に参加しました。研修内容は、自然環境を傷めずに利用していく、近自然工法による登山道整備の座学講習会と現地研修です。

 登山道に雪解け水や雨水が流れ、川や池状態となった道が深く浸食し、そこをまた人が水や泥濘を避けるように歩くので、道が広がるという一連の登山道荒廃が、上川町愛山渓温泉?沼ノ平に向かういくつかの道にあらわれていました。その場所が今回の研修対象です。

 座学では、水の流れの特徴についてや、石組みの基本となる伝統工法の基礎知識を学び、翌日には座学をふまえた現場での実習を行いました。まずは、水の流れを読んで、水の道をつくり、それから人が歩きやすい道をつくります。それは道を「つくる」というよりも、「誘導する」道づくりでした。
 水の流れはちょっとの角度で変わるので慎重に水の流れを読んでいきます。そして、石の組み方によって、そこを人が歩くか、避けるかの違いが出たり、月日がたって石組みの役割が残るか残らないかが変わってきたりします。きちんと組まないと石が崩れ、水がたまったり、歩きづらくなったりするのです。
登山道整備は野石や木だけでなく、数々の道具を運ぶので力も使います。しかし、それ以上に違和感がない、自然にとけ込む景観づくりの美的センスや自然に対する配慮など、きめ細やかさが必要な作業でした。

 今回の研修で学んだことはとても難しく、なかなか自分の中には落とし込みが出来ず、実際の現地研修では混乱しました。しかし、山が好きで利用している立場としては、今後気が付いた時に身近なところからでもさりげなく補修していきたいと希望をもっているので、これからも近自然工法の登山道整備をいろいろ見ていきたいと思っています。

 大雪山国立公園の登山道では、近自然工法による整備が着々と進められてきています。自然にとけ込んだ工法なのでよく見ないと気が付かなかったりもするのですが、皆さんも登山道を歩くとき、足下のセンスを見てみませんか?自然にも人にも優しい工夫がしてあるかもしれませんよ。


整備前のぬかるんだ登山道

野石を使った登山道整備後。
水と人の道をつくりました。