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北海道地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [北海道地区]

タンチョウ調査? 鶴見台は危険な給餌場?

2007年01月16日
釧路湿原
 釧路湿原からの2007年最初の話題は冬の風物詩「タンチョウ」の調査について。続々といくつかの調査に参加する機会があるので、随時お届けしたいと思います。

 今回は「鶴見台タンチョウの事故発生状況調査」について。
 
 この調査は、(財)日本野鳥の会「鶴居伊藤タンチョウサンクチュアリ」が一般からボランティアを募って実施しています。タンチョウ保護を進める各機関が協力しており、釧路湿原のAR2名も時々参加しています。

 鶴見台は、タンチョウ保護増殖事業の一環として冬の餌不足の解消を目的として位置づけている「給餌場」の一つです。タンチョウへの給餌活動は1950年頃から住民の地道な努力によって始められ、1962年には北海道庁による地域の人への給餌委嘱が開始されるなど、長い歴史があります。鶴見台もこのような経緯を持つ古い給餌場の一つで、今では多い時は1日に300羽近くのタンチョウが飛来します。観光バスの利用も頻繁にある「タンチョウ観察の一大人気スポット」です。

 一方で、鶴見台で給餌が開始された1960年代と比べ、周辺に民家や道路が増えるなど、状況が変化しています。そのため、当初は予見されていなかった問題が生じているようです。

 タンチョウは道路の上を飛んで鶴見台に出入りします。実は、道路沿いに縦横に配置されている電線などの人工物が曲者。タンチョウの電線への接触を目撃したという情報があるのです。電線への接触はバランスを崩して墜落、時に感電死してしまう危険性もあります。そのため北海道電力が目立つ色のガードをとりつけ衝突防止の対策をとっています。また現地には電線以外の人工物、気象条件、人の活動など、影響が考えられる様々な要素が存在します。したがって人工物以外、あるいは複合的な要因によって接触等が生じている可能性もありますが、これまできちんと調査がされていませんでした。今回の調査の目的は、このような状況をデータとして把握することなのです。
 
 この調査では、定点から鶴見台を往来するタンチョウを観察し、通過した数、時間、方向などを記録しています。通過時にもし「人工物への接触・衝突事例」が発生した場合は、更に詳細に状況を記録することとしています。

 残念(?)ながら私はまだ決定的瞬間には立ち会っていません。しかし、直前でタンチョウが足を曲げて電線を回避する「未遂」の行動は何度か目撃しました。中でも、目の前でタンチョウが急に進路を変えて電線をくぐり、車道を超低空飛行で横断した時は、車と衝突しないかと思わずひやり。一体、順調に飛んでいた(と見えた)タンチョウが何故危険な方向転換をしたのか?実際にこのような場面に居合わせると、人工物への衝突が発生する状況下では、車の往来や人間の動きなど様々な要素の関連を感じます。

 保護の為の給餌の成果とはいえ、人の生活の近くにタンチョウが集まる現実がある以上、人の活動による影響の軽減は不可欠です。この調査は3月まで続けられますが、タンチョウとの共生を模索する上で非常に意味深い結果が得られると思います。

 調査ボランティアは随時募集しているそうです。事故発生状況調査の他、観光客の利用状況調査も行っているので、冬の観光シーズン本番のこれからは忙しくなることでしょう。1回のみの参加でも歓迎とのことです。興味のある方は是非ご参加下さい。

問い合わせ先:
(財)日本野鳥の会
鶴居伊藤タンチョウサンクチュアリ
(0154)64?2620


鶴見台給餌場に集まるタンチョウ


看板・電線の上を通過し鶴見台へ「出勤」するタンチョウ。電線には衝突防止のガードが付けられている


氷点下の中、風よけを設置して調査(ストーブもあり)。写真左は森永AR。