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北海道地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [北海道地区]

タビノヒト

2007年04月13日
稚内

海に近い我が家の窓の外から
「フィフィ フィーホ」
と、子供が口笛の練習をするような、少し音程のはずれた
独特の鳴き声が聞こえてくる。
春の渡りの時期が来たのだ。

鳥のように島に訪れ、そして時期が来ると別のところに
飛んで行ってしまう転勤族のことを、利尻では
「タビノヒト」と言う。

人口約6千人のこの島は、関東の普通の街で育った私には
少し息苦しいほど匿名性が無い。

しかしそれだけに多くの人にとって、島の生活は愛着深い
ものになるだろう。昨年度、半年間アクティブレンジャー
としてこの地に暮らして、一番印象に残ったのは、昆布干
しに代表されるように、老若男女問わず島民が総出になっ
て短い夏にエネルギーを集中していく生活リズムだった。

音楽を奏でるように・・
ピタッとリズムが合っている。

それは見ていてとても面白かったし、羨ましく思えた。


私も「タビノヒト」のひとり。
私の上げる声はウソの鳴き声のように、少し音程がはずれ
たものになるのかもしれないし、今居る場所は、本来私が
住む場所とは環境が異なるのかもしれない。

だけど鳥の鳴き声が春を告げ、徐々に体を起こしていくサ
インになるのなら、私も島の奏でる音楽のクレッシェント
位にはなれるだろうか。

いま私は、半年振りに会う、島の人たちと話すのが楽しく
てたまらない。雑談だ。コミュニケーションなんていうス
マートなものではないが、人と会い、話して嬉しくなれる。

これから10月までの「タビノヒトトキ」。
こういうものを大切に思える場所を、守り、絶えず作り続け
ていく一員になれたらどんなに楽しいだろう。


4月の利尻山


夏の昆布干し

【自己紹介】
昨年度に引き続き、利尻島でアクティブレンジャーを務め
させていただくことになりました、岡田と申します。
多くの人と一緒に考え、汗を流したいと思います。
よろしくお願いします。


 END