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北海道地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [北海道地区]

登山用ストックにキャップをつけましょう

2007年07月30日
稚内
 ストックのキャップが外れたままになっていませんか?
 利尻島では、7月から登山用ストックのキャップを販売(島内の一部の宿泊施設での試験販売です。販売価格は315円)しています。
 ストックは足腰の負担を減らし、バランス補助にもなる大変便利な登山用品ですが、使い方によっては、登山道を傷めることがあります。皆さんも、何かお気付きになったことがあるでしょうか。例えば、登山道脇に無数の小さな穴が開いている場所を見かけたことはありませんか?

【参考写真: 大雪山・銀泉台付近】




 ストック利用が登山道の荒廃へ与える影響は、実証データが無いので、あくまで推測の域を出ませんが、次のような荒廃メカニズムが考えられます。

【1】ストックを突き刺すことで、地表面に穴が開き、掘り返される(ことがある)
【2】掘り返された土壌は、雨や登山者の踏圧によって流されやすくなる。(特に登山道脇のやわらかい土壌や、植生が失われると土砂が流されやすくなります)
【3】登山道の浸食が進むと、歩きやすさを求めて登山道の脇や登山道外への踏み込みが始まり、登山道が横に拡がりやすくなる。
【4】足場が悪くなるに連れ、ストックの利用頻度が増す。

→【1】?【4】を繰り返す

 上記からすると、「ストック利用が与える登山道荒廃への影響」は、よく目立つストックの開けた“穴そのもの”より、むしろストックの開けた穴が、次に起こる雨や登山者の踏圧による“土壌浸食を加速、拡大させてしまう要因になってしまうこと”に、問題がありそうです。また、突き刺しによる影響力は、キャップ無しの状態の方が、より強くなることも予想されます。

 そのため昨年来、利尻山ではこの山特有の崩れやすい土壌を守るために、地域ルール(利尻ルール)として「ストックにキャップをつけて下さい」と呼びかけているのですが、ストックキャップの販売は、このルールをより強く徹底させ、ストックの突き刺しによる地表面の掘り返しを軽減することが狙いです。と同時に、ストックという身近な道具を通じて山にやさしい登山を促すという副次的な効果も期待している所です。

【参考写真:利尻山でストックを利用する登山者】




 よく環境保全PRの常套句として「できることからはじめてみよう」と言われますね。しかし「山にやさしい登山って、一体何から始めたらいいの?」と、実際には分かりづらいと思います。ストックにキャップをつけることで軽減できる浸食は微かなものかもしれませんが、こんな簡単なことで、山にやさしい登山への一人一人の参加のきっかけを作れるのならキャップ装着の促進は、利尻山に限ったことではなく、より大きく広い意味を持つことになるでしょう。

 ただし、最後に登山用ストックにキャップを装着する際の注意点やアドバイスをいくつか挙げておきます。参考にしていただき、またご自分でも色々使いやすくする工夫をして楽しんでください。『道具は使い方次第』ですよね!

1.【ぬかるみ等に突き刺すとキャップが抜け落ちやすいので注意してください】
→粘着性の強いテープで固定しておくこと。先端部分(石突き)の泥や水分をしっかりと拭いてから装着すること。抜け落ちる可能性があるところには、そもそも突かないように注意することなどで対応してください。

2.【残雪や濡れた石の上など、キャップを装着することによって滑りやすい場合もあるので状況に応じて使い分けて下さい】
また岩場やロープの張ってある個所等、場合によってはストックを収納して両手を使った方が動きやすいケースもあります。
→普及の進むストックですが、実は使用に習熟の必要な道具です。

3.【利尻島内で販売しているストックキャップは1種類です】
これは径が細いモデルなので、強く押し込むことで他メーカー製のストックにも装着することが可能ですが、本来、異なるメーカー間でのキャップの互換性はありません。他メーカーのキャップを装着することによる事故に対して、メーカーも、利尻島での販売をおこなっている利尻山登山道等維持管理連絡協議会も責任を負うことは出来ません。
→出来る限り、利尻島に来る前に、ご自分のストックに合ったキャップをご用意ください。

4.利尻島内でのストックキャップ販売についての問い合わせ先
利尻山登山道等維持管理連絡協議会
・利尻町    0163-84-2345
・利尻富士町  0163-82-1114

【参考:ストックキャップ】