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北海道地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [北海道地区]

近自然工法整備のその後

2007年08月09日
上川
昨年愛山渓で研修を受けた、近自然工法による登山道整備をした箇所のその後の経過です。(昨年の近自然工法研修の様子はAR日記「道のセンス」に載せています。)

7月下旬に大雨が降ったのですが、登山道は水の流れによる新しい浸食と見られる物は無く、組んだ石も崩れているところも無くがっしりと固定されています。水の流れを止める役目のプールにきちんと水が溜まっており、歩く道もきちんと確保しているものも健在しています。1年たち、組んだ石組の間には、土砂が溜まり始め、さらに安定し、周りの自然になじんで来ていました。

愛山渓周辺では、いままで試験施工を含め、数年かけて、近自然工法による登山道整備を行ってきています。古いもので5、6年たっています。ここまで年月がたつと、組んだ石の上に苔も生え、周りにも植物が生えてきていて、もちろん登山道は歩きやすくなりました。

石組み工事をしたばかりは、目立ちますが、年月をかけて、登山道をより自然の状態になじませるようにしてあげる、未来の環境まで想定した工事は、今年も大雪山では少しずつ、着工していきます。


◆近自然工法とは?◆

雪解け水や雨水による浸食、また人による踏みつけによる登山道の浸食によって、破壊された生態系が、元の成熟した状態に回復するまでには、自然の遷移のみに委ねた場合、多くの年月を要する。これを人間の手によって、ある程度まで回復させるのが近自然工法の役割である。それは、自然の発展を阻害する傷害を取り除き。自然自らが発展できる領域をできる限り広げ、その成長を助ける手段を講じることである。

参考:西日本科学技術研究所HPより


◆近自然工法の石組による保全修復のポイント◆

・自然に同化する登山道の整備を進める上では、自然石を用いた修復保全を図ることが景観的にも望ましく、浸食を防止する効果が高い。
・使用する自然石については、浮石等周辺で確保できる場合は植生等に影響のない範囲に限定して用いることとし、必要な場合には類似の自然石を搬入す る。
・なお石組の多様は逆に硬い道となるため段差のある箇所、浸食の激しい箇所等に限定することに留意する。

参考:大雪山国立公園における登山道整備技術指針より


昨年、石組工事完成間近の様子。
組んだ石がはっきりしていて、工事したのが目立ちます。


上の写真付近の石組工事現場の1年後の今年。
組んだ石に砂利がたまり、さらに固定されました。
きちんと水もたまり、水の勢いを止める役割も果たしています。


工事から4,5年たった石組工事現場。
周りの景観になじんできていて、生態系も回復しつつあります。
かつて浸食されていたであろう登山道脇の周りに、植物が生えだしています。