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北海道地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [北海道地区]

入山カウンター (登山者カウンター)

2007年09月21日
羅臼
 知床国立公園内の各登山口や主要歩道の入口には、利用者の動向を把握するための「入山カウンター」と称する機械が設置されており、羅臼町側では計5台が稼働しています。

 外観はこんな感じです。


 この機械には赤外線センサーがついており、その前を人が通過すると、進行方向、日付、時刻などを記録するようになっています。

 入山カウンターのデータ回収や機械本体の保守・点検は、知床AR(羅臼・ウトロ)の多様な業務の一つです。回収してきたデータは自然保護官事務所のパソコンで読み取り、エクセル上でカチカチと20段階くらい作業をおこなうと、集計表ができあがります。こうして作られた集計表が、知床国立公園の「利用適正化検討会議」などで配布される資料の基となり、国立公園であり世界自然遺産でもある“知床”の現状分析や、今後の方向性に関する議論に活用されています。

 前を通過する人々を毎日黙々と数え続ける入山カウンター。時々へそを曲げることもありますが、おおむねよく働いてくれています。彼らは雪が本格的に降り始める頃までの期間、国立公園内各地の登山道や歩道の入口に立ち続けます。

 さて折角なので、入山カウンターのデータからわかったことの具体例を1つ。
 日本百名山の1つである羅臼岳には登山口が2つありますが、そのうち「羅臼温泉登山口」からの入山者が「岩尾別登山口」のそれより相当少ないことは、以前から感覚的に知られていました。それがカウンターデータから、岩尾別側の15分の1程度しか入山者がいなかったことが判明しました(2006年データ)。登山ルートを覆い隠す大規模な雪渓が真夏まで残り、標高差1600m弱を5-7時間かけて登る厳しいルートが、上級者以外には敬遠されていることをよく物語っている数字でしょう。

 ちなみに羅臼温泉から羅臼岳山頂までを往復するなら、所要10-12時間はみておかないと危険です。

羅臼岳登山道(羅臼温泉ルート)の終盤に待ち受ける「屏風岩」の急登。
今年の7月1日、山開きの日に撮影。

屏風岩を越えた先にも難関あり。「お花畑」の分岐点付近で、正規ルートを完全に覆い尽くす広大な雪渓(7/1撮影)。ルートをよく知っているか、地図読みができる人以外は迷いやすく、今夏も遭難しかけた人がいました。
8月に雪が減った後ならば、コースを教える誘導ロープが雪渓上に張られます(環境省→羅臼山岳会の委託事業)。しかしあたり一面が雪に覆われ、看板も完全に埋もれている7月は、そのような手段でのルート表示は困難です。

登山道の真ん中に落ちていたヒグマの山盛りウンコ。クマも登山道を利用しています。
でもクマはティッシュを山に捨てていかない分、人間よりはマナーが良い?