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北海道地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [北海道地区]

露天風呂の珍客

2007年10月26日
羅臼
「露天風呂で暴れている動物がいる!」と、事務所のすぐ近くにあるホテルから朝一で電話がありました。大掛かりな捕獲を覚悟して飛び出していった石名坂ARがホテルに着くと、小さな瓶を手渡されました。「暴れていた動物」はすでに捕まえられて、空気穴が開けられた瓶に入れられていたのです。
瓶の中でうごめく動物の正体は、小さなコウモリでした。
体の特徴から大人のモモジロコウモリであることが判明。夜行性なので、夕方まで保護することにしました。


個体識別用のリングが付けられた翼
コウモリの翼の膜は奥が透けてしまうほど薄い


コウモリというとたいていの人が吸血コウモリを想像しますが、日本にいるコウモリは昆虫や果実などを食べているので、いきなり飛びつかれてガブリッ!なんてことはありません。このモモジロコウモリも、川や湖で蚊などの昆虫を食べています。
ホテルの裏側を流れる川で餌を探していたのでしょうが、冷え込みの厳しくなってきたこの季節は、暖かい露天風呂が絶好の休憩場所だったのでしょう。


軍手の中から様子をうかがうモモジロコウモリ


日も落ち、辺りが真っ暗になってきた頃、モモジロコウモリを放しに外へ出ると、周りの木の枝が揺れるほどの風が吹いていました。モモジロコウモリの体重はわずか8g。1円玉8枚分の重さしかありません。この強風の中飛んでいけるのかな・・・と不安になりながらゆっくり手を離すと、風などものともせず元気に飛び去っていきました。

鮮やかだった山々の紅葉も色あせ始め、冬眠間近のモモジロコウモリが活動できるのも残りわずか。まもなく知床半島に厳しい冬がやってきます。