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北海道地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [北海道地区]

打ち上げマリモ、湖に帰る

2007年12月10日
阿寒湖

  平成19年10月21日、阿寒湖チュウルイ湾にて湖岸清掃にあたっていた自然公園財団と阿寒湖パークボランティアにより、直径20cm近い球状マリモが多数打ち上げられているとの情報を受けた。このため12月4日、打ち上げられたマリモの凍結による枯死を避けるため、水深50cmの湖底の沖合に移動させる作業が行われた。主な参加団体は、特別天然記念物「阿寒湖のマリモ」保護会、釧路市教育委員阿寒生涯学習課、釧路市役所阿寒湖畔支所、NPO法人阿寒観光協会まちづくり推進機構、まりも倶楽部他、約20名。
 
  作業方法は、ポンプで汲み上げた湖水を流しながらマリモを動かすというもの。しかし実際は想像していた以上の作業で、スコップやツルハシ、ポンプの水などで、ガチガチに固まった土を除去しながらマリモを取り出すという作業だった。


▲ポンプで汲み上げた湖水を流しながらマリモを湖に動かす様子

  早速私も胴長をはいて、作業開始。ポンプの水の甲斐あって、少しずつ2~3cm前後のマリモが出てきた。だいぶ、マリモを取り出せたかと思えば、なにやら数名が一生懸命スコップを使って凍った土を掘っていた。よく見ると、直径20cm近いマリモが土の中で身動きがとれないような哀れな姿になっていた。通常、水中にいるマリモの姿を見ているが、こんな姿のまりもを見たのは初めてだ。


▲土の中で身動きがとれない哀れなマリモ
 
  そもそもマリモの打ち上げとは、阿寒湖チュウルイ湾の水深1.5m前後に生育する球状マリモが風波によって湖岸まで大量に運ばれる現象のこと。マリモは、最大で年間3~4cmほど直径を増大させ、直径が20cmを超えるようになると風波で容易に移動しやすくなるという。


▲直径20cmのマリモ

  マリモの打ち上げが発生したのは、平成19年10月21日に、低気圧が道東を通過中で強い風が吹いていたためと推察されている。昔は、湖岸に打ち上げられた球状マリモは、細かくなってしまうため、被害とみなされてきたが、今日では、細かくなっても再び生長ができるため、生態的過程として捉えられている。阿寒生涯学習課の若菜氏によると、保護・管理上の措置として、乾燥や凍結による枯死が発生しない限り、自然の推移に任せる方針でいるという。しかし、今回、湖岸に打ち上げられたマリモは、すでに低気圧や寒波により凍結し始めていたため、早急に沖合に移動させる必要があったという。
 
  吹きすさぶ冷たい風の中の作業だったが、こんなに間近にマリモを見る機会はない貴重な体験だった。すでに白い雪をかぶり寒々とした雄阿寒岳と雌阿寒岳に見守られながら、もうじきマリモが氷の下で眠る長い冬の訪れを感じた。