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北海道地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [北海道地区]

温根内木道のリニューアル

2008年03月11日
釧路湿原
釧路湿原の西側に位置する温根内には、ビジターセンターを起点に湿原内を散策できるよう木道が整備されています。
同じルート上でヨシ・スゲ湿原からミズゴケ湿原と、タイプの違う湿原を観察できるコース。春から夏にかけては多くの湿原の花が観察できるので特に人気があります(1年を通して利用できます)。
12月よりこの木道の1部区間の掛け替え工事が実施され、先日ついに通行可能となりました。

素材は道産カラマツ。湿原に混入した場合のことを考えて着色料、防腐材等の薬剤は一切使用していません。
真新しい木材の色が掛け替えていない区間とややミスマッチですが、じきに湿原になじんでいくでしょう。

現在の温根内の木道は、実は2代目。
平成4~5年に設置された初代木道の劣化に伴い、平成11年~12年に掛け替えられたものです。
泥炭という不安定な地盤、水位の変動、厳しい寒さによる凍結など、湿原の環境は木道にとってかなり過酷なもの。
支柱を深く埋め込んだり、横木を渡すなどさまざまな工法の工夫が行われてきたものの、数年間湿原のサイクルに翻弄され続けると、歪みや傾き、木材の腐食が生じてしまいます。

(掛け替え工事の途中の様子 2007年12月撮影。支柱を新しいものに交換し、交換前の古い板をのせてある状態)

(撤去された支柱の木材。設置されていた場所によって劣化の程度に差はあるが変色、腐食がみられる)

ベストと思われる工法をもってしても、現状では数年で掛け替えになってしまうのはやむを得ないようです。

湿原の東側、達古武オートキャンプ場の散策路も、劣化に伴い一部区間を平成16年に掛け替えています(補修未完の区域は通行止め)。
ここの散策路は直接湿原の中に分け入っていく温根内とは異なり、湿原と丘陵地との境目にあります。
さて丘陵沿いなら泥炭上より安定感はあるのでしょうが・・・。

2月に巡視した時の様子です。左側の丘陵地から流れ出る湧水が木道を飲み込むように凍結していました。
凍結の厳しい場所では、一面がスケートリンクのよう。

(標識でかろうじて木道の位置でがわかります)
夏はじわじわと湿原を潤すようにしか見えないのですが、湧水の流出量に驚かされました。
湿原に道をつけるということは、やはり一筋縄ではいかないようです。

木道は私たちの足場となり、安全を確保し、植生を踏みつけから保護するなど適正な利用を誘導するルートとして機能し、自然と向き合う機会を与えてくれます。
あたりまえのように歩いていますが、その場の設置、維持管理にはより深く湿原の自然の有り様と向き合うプロセスが係わっています。
リニューアルされた木道もこれまで通りの木道も、湿原を見に来る多くの方に活用されてほしいと願います。