アクティブ・レンジャー日記 [北海道地区]
巡視場所紹介①
2008年05月26日
羅臼
私たちアクティブレンジャーの仕事の一つに「巡視」という仕事があります。配属されている担当地区にある、国立公園や国指定鳥獣保護区などを巡回し、自然状況や利用状況をみる仕事です。
例えば、自然の状況が現在どうなっているか、そこにどんな動物が生息し利用しているか、生息している動植物にどんな変化があるか、観光客の方々や地域の方々がどれくらいどのように利用しているか、ビジターセンターや歩道など施設の利用上の問題はないか、自然に悪影響を及ぼす人為活動が無秩序に行われていないか、など自然と人間活動両方の監視と情報収集を行う仕事です。
今回より羅臼地区のアクティブレンジャーが定期的に巡視を行っている場所とその活動内容を紹介していきたいと思います。
まず第1回目は、国指定野付半島・野付湾鳥獣保護区を紹介します。
野付半島は知床半島と根室半島の中間に位置し、標津町と別海町をまたぐ日本最大の砂嘴(さし)です。野付半島はその特異な環境を利用する海鳥を始め様々な鳥類が生息することから、ラムサール条約(特に水鳥の生息地として国際的に重要な湿地に関する条約)湿地にも登録されています。
ナラワラやトドワラと呼ばれる場所では、かつて存在した原生林が海水浸食のため立ち枯れを起こし、荒涼とした景観が広がります。また、その景色の中を歩くとエゾカンゾウやハマナスなどの花々が彩る原生花園も楽しむことができます。
野付半島は、そんな自然が体感できる道東の観光名所の一つでもあり、訪れる人が沢山います。
そんな野付半島が私たち羅臼地区アクティブレンジャーの定期的巡視場所の一つです。現在は週に1~2回の巡視を行っています。
まず、野付半島の自然状況がどうなっているか、どんな動植物が野付半島に生育・生息し利用しているのかを調査し、記録する仕事です。
プロミナーで鳥類を観察する木村AR
野付半島には沢山の鳥達が飛来します。野付半島で繁殖している鳥も沢山います。オジロワシやタンチョウなどの大きな鳥からベニマシコなどの小さな鳥まで、また、海を利用するカモメ類から湿地を利用するシギ類まで、様々な鳥類を一度に観察することができるのも野付半島ならではの環境です。
その季節によって観察できる鳥に違いがあり、現在は冬鳥が少なくなり夏鳥が多く観察できるようになりました。4月初旬には多くのカモ類が観察できましたが、現在は水辺を利用するシギ・チドリ類、オオジュリンやコムクドリなどの夏鳥が増え、観察することができます。
オオジシギ
トウネン、キョウジョシギ、ムナグロ、ダイゼンなど様々なシギ・チドリ類を多く観察できるようになった現在の野付半島で、最も目立っているのがこのオオジシギです。というのも、その鳴き声に特徴があるからなんです。
今、オオジシギは大事な繁殖時期にあって、ディスプレイ飛翔というのをするんです。上空で「ズビャーク、ズビャーク」と激しく鳴いたかと思うとまるで雷のような「ダダダダ……」という尾羽で風を切る音と共に急降下!この写真の可愛らしい顔からは想像がつかないような声と音です!
一見地味に見えるオオジシギの派手で意外な一面を見ることができます。
また、これらの調査とともに行っている野付半島・野付鳥獣保護区巡視の仕事の一つに、セイヨウオオマルハナバチの監視・防除活動があります。
セイヨウオオマルハナバチ捕獲!
セイヨウオオマルハナバチはヨーロッパが原産の外来生物で、盗密による植生への影響や在来マルハナバチとの餌や営巣箇所の競合などが問題となり、外来生物法(通称)に基づく特定外来生物に指定されています。
そのセイヨウオオマルハナバチが昨年初めて野付半島で観察され、野付半島に元々生息しているエゾオオマルハナバチやアカマルハナバチなどの在来種、道東の限られた場所にしか生息しないノサップマルハナバチ(希少種)などの生息を脅かす要因になっています。このままセイヨウオオマルハナバチが沢山増え続けてしまえば、在来種や希少種の数が減り、絶滅の危険性もあることから、セイヨウオオマルハナバチを捕獲しなくてはいけません。
そのため、巡視の途中で飛来しそうな環境があると網を持って捕獲作業をします。
5月15日(木)野付半島では今年初となるセイヨウオオマルハナバチを捕獲することができました。セイヨウオオマルハナバチにとっては可哀想ですが、もともとある自然を守るためには必要な活動の一つです。
花のシーズンの始まりとともに活動を開始するセイヨウオオマルハナバチ。彼らも地球上のかけがえの無い生き物ですが、ここにしかない自然、生態系を末永く未来に残すため、野付半島の自然の貴重さを改めて認識してもらうため、そして、セイヨウオオマルハナバチの防除に向けた活動に多くの方々へ理解・協力してもらうため、5月31日に別海町でセイヨウオオマルハナバチのシンポジウムが開催されます。興味・関心のある方は是非ご参加下さい。
また、セイヨウオオマルハナバチは北海道のみならず、全国で分布拡大が懸念されている状況です。もしかしたらお庭の花や、畑の花に飛来しているかもしれません。皆さんのまわりでも注意して見てみてください。
STOP!セイヨウオオマルハナバチ
○講演会○
日時:5月31日(土) 14:00~17:30
場所:別海町マルチメディア館 マルチメディアホール
講演:「野付半島の自然と送粉共生系」加藤真 京都大学教授
「セイヨウオオマルハナバチの侵入と対策」鷲谷いづみ 東京大学教授
野付半島におけるセイヨウオオマルハナバチの確認 石川聖江 野付半 島NC主任専門員
セイヨウオオマルハナバチ監視活動について 菊池玲奈 東京大学東京 特任研究員
※詳細は野付半島ネイチャーセンターへお問い合わせください。
例えば、自然の状況が現在どうなっているか、そこにどんな動物が生息し利用しているか、生息している動植物にどんな変化があるか、観光客の方々や地域の方々がどれくらいどのように利用しているか、ビジターセンターや歩道など施設の利用上の問題はないか、自然に悪影響を及ぼす人為活動が無秩序に行われていないか、など自然と人間活動両方の監視と情報収集を行う仕事です。
今回より羅臼地区のアクティブレンジャーが定期的に巡視を行っている場所とその活動内容を紹介していきたいと思います。
まず第1回目は、国指定野付半島・野付湾鳥獣保護区を紹介します。
野付半島は知床半島と根室半島の中間に位置し、標津町と別海町をまたぐ日本最大の砂嘴(さし)です。野付半島はその特異な環境を利用する海鳥を始め様々な鳥類が生息することから、ラムサール条約(特に水鳥の生息地として国際的に重要な湿地に関する条約)湿地にも登録されています。
ナラワラやトドワラと呼ばれる場所では、かつて存在した原生林が海水浸食のため立ち枯れを起こし、荒涼とした景観が広がります。また、その景色の中を歩くとエゾカンゾウやハマナスなどの花々が彩る原生花園も楽しむことができます。
野付半島は、そんな自然が体感できる道東の観光名所の一つでもあり、訪れる人が沢山います。
そんな野付半島が私たち羅臼地区アクティブレンジャーの定期的巡視場所の一つです。現在は週に1~2回の巡視を行っています。
まず、野付半島の自然状況がどうなっているか、どんな動植物が野付半島に生育・生息し利用しているのかを調査し、記録する仕事です。
プロミナーで鳥類を観察する木村AR
野付半島には沢山の鳥達が飛来します。野付半島で繁殖している鳥も沢山います。オジロワシやタンチョウなどの大きな鳥からベニマシコなどの小さな鳥まで、また、海を利用するカモメ類から湿地を利用するシギ類まで、様々な鳥類を一度に観察することができるのも野付半島ならではの環境です。
その季節によって観察できる鳥に違いがあり、現在は冬鳥が少なくなり夏鳥が多く観察できるようになりました。4月初旬には多くのカモ類が観察できましたが、現在は水辺を利用するシギ・チドリ類、オオジュリンやコムクドリなどの夏鳥が増え、観察することができます。
オオジシギ
トウネン、キョウジョシギ、ムナグロ、ダイゼンなど様々なシギ・チドリ類を多く観察できるようになった現在の野付半島で、最も目立っているのがこのオオジシギです。というのも、その鳴き声に特徴があるからなんです。
今、オオジシギは大事な繁殖時期にあって、ディスプレイ飛翔というのをするんです。上空で「ズビャーク、ズビャーク」と激しく鳴いたかと思うとまるで雷のような「ダダダダ……」という尾羽で風を切る音と共に急降下!この写真の可愛らしい顔からは想像がつかないような声と音です!
一見地味に見えるオオジシギの派手で意外な一面を見ることができます。
また、これらの調査とともに行っている野付半島・野付鳥獣保護区巡視の仕事の一つに、セイヨウオオマルハナバチの監視・防除活動があります。
セイヨウオオマルハナバチ捕獲!
セイヨウオオマルハナバチはヨーロッパが原産の外来生物で、盗密による植生への影響や在来マルハナバチとの餌や営巣箇所の競合などが問題となり、外来生物法(通称)に基づく特定外来生物に指定されています。
そのセイヨウオオマルハナバチが昨年初めて野付半島で観察され、野付半島に元々生息しているエゾオオマルハナバチやアカマルハナバチなどの在来種、道東の限られた場所にしか生息しないノサップマルハナバチ(希少種)などの生息を脅かす要因になっています。このままセイヨウオオマルハナバチが沢山増え続けてしまえば、在来種や希少種の数が減り、絶滅の危険性もあることから、セイヨウオオマルハナバチを捕獲しなくてはいけません。
そのため、巡視の途中で飛来しそうな環境があると網を持って捕獲作業をします。
5月15日(木)野付半島では今年初となるセイヨウオオマルハナバチを捕獲することができました。セイヨウオオマルハナバチにとっては可哀想ですが、もともとある自然を守るためには必要な活動の一つです。
花のシーズンの始まりとともに活動を開始するセイヨウオオマルハナバチ。彼らも地球上のかけがえの無い生き物ですが、ここにしかない自然、生態系を末永く未来に残すため、野付半島の自然の貴重さを改めて認識してもらうため、そして、セイヨウオオマルハナバチの防除に向けた活動に多くの方々へ理解・協力してもらうため、5月31日に別海町でセイヨウオオマルハナバチのシンポジウムが開催されます。興味・関心のある方は是非ご参加下さい。
また、セイヨウオオマルハナバチは北海道のみならず、全国で分布拡大が懸念されている状況です。もしかしたらお庭の花や、畑の花に飛来しているかもしれません。皆さんのまわりでも注意して見てみてください。
STOP!セイヨウオオマルハナバチ
○講演会○
日時:5月31日(土) 14:00~17:30
場所:別海町マルチメディア館 マルチメディアホール
講演:「野付半島の自然と送粉共生系」加藤真 京都大学教授
「セイヨウオオマルハナバチの侵入と対策」鷲谷いづみ 東京大学教授
野付半島におけるセイヨウオオマルハナバチの確認 石川聖江 野付半 島NC主任専門員
セイヨウオオマルハナバチ監視活動について 菊池玲奈 東京大学東京 特任研究員
※詳細は野付半島ネイチャーセンターへお問い合わせください。