アクティブ・レンジャー日記 [北海道地区]
2008年8月28日 橘湖(たちばなこ)巡視
2008年08月29日
洞爺湖
今夏は洞爺湖サミット関連の業務に追われ、なかなか外に出ることができなかった。久しぶりの巡視。
橘湖は国内では珍しい(唯一の?)個人が所有する湖。同じ支笏洞爺国立公園内にありながら、支笏湖や洞爺湖、クッタラ湖などと比べるとそれほどメジャーではなく、その存在を知っている人は少ない。周囲約1.2km・面積9ha、ちなみに洞爺湖は70k㎡だから、橘湖は洞爺湖の1/777しかない。
霧雨の中、背丈ほどもあるササやイタドリをかき分け、天然シャワー状態でびしょ濡れになりながら30分ほど歩くと、橘湖が姿を現した。周囲を丘に囲まれ、また湖岸には赤茶けた岩石が転がっており、火山活動によって形成された火口湖(カルデラ湖かと思ったが、直径2km以上はカルデラ、それ以下を火口と別けるらしい)であることが一目で見てとれる。数年前までは湖岸に釣り人用の管理小屋が建っていたが、今はその小屋も無く、人間の痕跡を感じる物は何一つない。とてもいい湖だ。
辺りはぼんやりガスがかかり、小雨が降っていたが、何故かこの湖にはとても雨が似合うと思った。聞こえるのは鳥の声と、木々の葉をたたく雨の音だけ。心地良い静寂。思いっきり深呼吸して美味しい空気をたくさん吸い込む。しばらくして雨が止み、湖面が鏡になった。時折大型の魚類(おそらくコイだろう)が「ジャボン!」と跳ね、その水紋がゆっくりと、いつまでも湖面に広がる。水は限りなく透明で、遠浅の湖中に流木や火山岩が沈み、幻想的な風景を作り出している。中心部は深いエメラルドグリーン。
水際を歩き、湖を半周した。ついつい「ザリガニはいないだろうな?」と水の中を覗き、石をはぐったりしてしまう。かなり特殊な職業病だ…。ウチダザリガニどころか他の水生生物の気配もまったくない。栄養の乏しい貧栄養湖なのだろう。
しばらく歩くと、この手つかずの「秘境」の中にはじめて人間の痕跡を発見。たき火痕とアルコールの空き缶と折れたパドルの残骸。カヌー?どうやってここまで運んで来たんだろう?確かにこんな場所でキャンプして、カヌー浮かべて、お酒でも飲もうものならさぞ気持ちよいだろうが…。
僕は数年前、カナダの山岳学校に在籍していたのだが、山の学校にも関わらず何故かカヌーの授業があった。そこでは、河原でのキャンプからその場所を立ち去る際、完全に人間の痕跡を消すように厳しく指導された。自然環境や動植物への配慮プラス、次にその場所を訪れるかも知れない人の気分を害さないためだ。当然ながら排泄物も全て持ち帰る。毎朝、携帯オマルを誰の船に積むか凄まじい牽制が始まる。結局最後はジャンケンになるのだが、僕の提案で「あっち向いてホイ制度」を導入してからというもの、唯一のあっち向いてホイ経験者の僕の船に「ブツ」が積まれることはほとんどなくなった。話が逸れてしまったが、とにかく、自分が出したゴミくらいは自分で持って帰っていただきたい。
そんなことを思い出しながら昔を懐かしみつつ、害された気分を元に戻すため、しばらくのあいだ大きな岩の上に寝転がって空を眺めた。それからたき火痕を消し、空き缶と折れたパドルを背負って帰路についた。
橘湖は国内では珍しい(唯一の?)個人が所有する湖。同じ支笏洞爺国立公園内にありながら、支笏湖や洞爺湖、クッタラ湖などと比べるとそれほどメジャーではなく、その存在を知っている人は少ない。周囲約1.2km・面積9ha、ちなみに洞爺湖は70k㎡だから、橘湖は洞爺湖の1/777しかない。
霧雨の中、背丈ほどもあるササやイタドリをかき分け、天然シャワー状態でびしょ濡れになりながら30分ほど歩くと、橘湖が姿を現した。周囲を丘に囲まれ、また湖岸には赤茶けた岩石が転がっており、火山活動によって形成された火口湖(カルデラ湖かと思ったが、直径2km以上はカルデラ、それ以下を火口と別けるらしい)であることが一目で見てとれる。数年前までは湖岸に釣り人用の管理小屋が建っていたが、今はその小屋も無く、人間の痕跡を感じる物は何一つない。とてもいい湖だ。
辺りはぼんやりガスがかかり、小雨が降っていたが、何故かこの湖にはとても雨が似合うと思った。聞こえるのは鳥の声と、木々の葉をたたく雨の音だけ。心地良い静寂。思いっきり深呼吸して美味しい空気をたくさん吸い込む。しばらくして雨が止み、湖面が鏡になった。時折大型の魚類(おそらくコイだろう)が「ジャボン!」と跳ね、その水紋がゆっくりと、いつまでも湖面に広がる。水は限りなく透明で、遠浅の湖中に流木や火山岩が沈み、幻想的な風景を作り出している。中心部は深いエメラルドグリーン。
水際を歩き、湖を半周した。ついつい「ザリガニはいないだろうな?」と水の中を覗き、石をはぐったりしてしまう。かなり特殊な職業病だ…。ウチダザリガニどころか他の水生生物の気配もまったくない。栄養の乏しい貧栄養湖なのだろう。
しばらく歩くと、この手つかずの「秘境」の中にはじめて人間の痕跡を発見。たき火痕とアルコールの空き缶と折れたパドルの残骸。カヌー?どうやってここまで運んで来たんだろう?確かにこんな場所でキャンプして、カヌー浮かべて、お酒でも飲もうものならさぞ気持ちよいだろうが…。
僕は数年前、カナダの山岳学校に在籍していたのだが、山の学校にも関わらず何故かカヌーの授業があった。そこでは、河原でのキャンプからその場所を立ち去る際、完全に人間の痕跡を消すように厳しく指導された。自然環境や動植物への配慮プラス、次にその場所を訪れるかも知れない人の気分を害さないためだ。当然ながら排泄物も全て持ち帰る。毎朝、携帯オマルを誰の船に積むか凄まじい牽制が始まる。結局最後はジャンケンになるのだが、僕の提案で「あっち向いてホイ制度」を導入してからというもの、唯一のあっち向いてホイ経験者の僕の船に「ブツ」が積まれることはほとんどなくなった。話が逸れてしまったが、とにかく、自分が出したゴミくらいは自分で持って帰っていただきたい。
そんなことを思い出しながら昔を懐かしみつつ、害された気分を元に戻すため、しばらくのあいだ大きな岩の上に寝転がって空を眺めた。それからたき火痕を消し、空き缶と折れたパドルを背負って帰路についた。