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北海道地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [北海道地区]

換毛の時期

2008年10月09日
東川
9月24日に大雪山系で初冠雪を記録してから2週間ほど経ちましたが、例年ならば初冠雪後に一度は溶けてしまう雪が、今年は完全に消える事がないまま、積雪量は一進一退を繰り返しながら少しずつ冬に近づいています。
10月上旬、姿見の池園地で見かけたエゾユキウサギは、いつもより早い根雪に換毛が間に合わず雪の上で茶色の夏毛が目立っていました。人間は年中勝手に?毛が抜けかわりますが、意識しないと普段の生活ではあまり気がつかない出来事です。一方、ほ乳類は毎年一定の時期に身体全体の毛が抜けかわります。ほ乳類の中でも毛の色があまり変わらないタヌキなどと違って、エゾユキウサギやオコジョ、本州の雷鳥などは冬毛が真っ白になるので換毛が目立ちます。換毛には保温と敵から身を守る保護色の働きがあります。
白く染まった姿見の池園地で、身を隠す術を失ったエゾユキウサギがとても臆病に見え、「ウサギさん、何を基準に換毛が始まるの?今年は予想より積雪が早くて換毛が間に合わなかったの?」と聞いてみたかったのですが、聞いたところで返事が返ってくるはずはありません。帰ってからエゾユキウサギの換毛の仕組みを図鑑で調べてみると、褐色の夏毛が抜け白い毛が生えてくるのではなく、夏毛が白くなるのは白化(はっか)と言われる現象で、一定の温度の低下によりホルモンか酵素などが働き、それによって毛の色素が無くなり白くなるようです。(新たに生えてくる下毛は白なので冬は白く、春には褐色の毛が新たに生え夏毛に換わる)
単純に雪が降れば保護色の白に換毛すると思っていた私ですが、そう簡単に変われない複雑な仕組みがDNAに組み込まれていたようです。
冬、真っ白なユキウサギが悠々と雪の上をかけている姿を見つけてみたいと思いました。


エゾユキウサギの姿は写真に納められませんでしたが、旭岳周辺ではこんな冬の風物詩も。10月2日、キバナシャクナゲに出来たミニエビの尻尾。(後ろは旭岳)

10月6日の旭岳。姿見の池に白い旭岳の姿が映し出されてとても綺麗でした。


天人峡では紅葉が見頃を迎えています。秋と冬の風景を同時期に味わえるのも広い大雪山ならではです。