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北海道地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [北海道地区]

自然が生んだ芸術の世界

2008年11月05日
羅臼
羅臼岳。
知床半島を貫く知床連山で最も高い山です。その標高は1661m。
登山口の標高が約100mなので頂上との標高差が約1500mもある山です。

10月最後の日、まだ晩秋の気配がわずかに感じられる麓を、私たち羅臼の
自然保護官とアクティブレンジャーは羅臼岳巡視に出発しました。


登り初めて1時間、標高364mの里見台を過ぎたあたりから、登山道に積雪が
確認されました。
そして標高995mの屏風岩付近では積雪20㎝ほど。1340mの羅臼平付近では
積雪50㎝ほどもありました。
前回羅臼岳巡視に来た10月15日にはそんな気配すらなかったのに、
たった半月でこんなに景色がちがうの?!と驚きました。

積雪が足首よりも超えると徐々に歩きづらくなってきます。
羅臼平付近の積雪50㎝程もあると膝上になり、先頭を歩く人は雪を踏み固めるだけで体力消耗してしまいます。

「ハァハァ」息を切らしながら懸命に登った先に広がる羅臼平。
登るのに一生懸命になりすぎてふと気づくと、足下の雪質はパウダーで、
握ってもサラサラと手からこぼれるほどの雪。
そして辺り一面、自然が造り出した芸術作品に囲まれていました。


(山頂直下)
ウトロ側からの強風で吹き付けられた雪と氷が樹木や岩に着氷し、
まるで白い塗料を吹き付けた大きな作品の中にいるようでした。

そして、山頂。
眼下には別世界が広がっていました。

雪をまとい始めた知床連山、山々が映り込みそうなほど真っ青なオホーツク海、その水平線に浮かぶ国後島…
冷たい澄んだ空気が大空に一層鮮明に写しだしているようでした。

今年も多くの登山者を迎え、楽しませてくれた羅臼岳、知床連山の山々。

生き物の息吹が感じられない冬山は、可憐に咲く花も綺麗な声でさえずる
小鳥も見ることはできません。
私たち人間の侵入もそう簡単に許してはくれない厳しさが冬山にはあります。
しかし、それもまた知床の山々の表情なのでしょう。
今回の巡視では、そんな冬山へと変わっていく姿を垣間見た気がしました。


屏風岩迷い込みロープ回収作業

屏風岩は下りすぎてしまうとサシルイ方面に迷い込んでしまう恐れがある
ため、毎年山開き前に迷い込み防止ロープを張っています。
冬期はそのロープも雪の下になってしまい、積雪の重さに耐えきれず切れて
しまったり痛んだりしてしまうので、冬期前には回収しています。
屏風岩の大雪渓が溶ける6月下旬から7月上旬頃にまた設置します。

今回の巡視目的の一つだった回収作業も無事終え、新たな羅臼岳の表情を見ることが出来た満足感に浸りつつ、白銀の天上界から無事下山してきました。

また来年もたくさんの人がこの羅臼岳を訪れてくれることを願いながら…。