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北海道地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [北海道地区]

鳥の顔

2008年12月16日
羅臼
知床がすっかり冬景色に包まれる。
葉が散って丸裸になった森、流氷が流れ着く海に、知床の冬を待ち望んでいた鳥がたくさん飛来する。
木の皮に潜む小さな虫を探す者。
餌を求めた移動の途中に羽を休める者。
更に寒さの厳しい北国から、冬を越すために訪れる者。
生まれた川を目指して帰ってきたサケなど、海を賑わす魚たちを狙う者。
 

「鳥の顔を描いてみて」
きっと多くの人が横を向いた鳥の、その横顔を描くだろう。
ふと、なぜだろう?と考えてみた。

クマやタヌキを描こうとするとき、正面を向いた顔を頭の中で想像している。でも鳥の場合、描こうと想像するのは横顔だ。
私たちが捉えた鳥の特徴の一つに長いくちばしがあり、それを表そうとするから横顔を描くのか。あるいは、普段見る鳥の顔は横を向いていることが多いため、想像しやすい横向きの顔が描きやすいからなのか。

そう考えると、鳥ってあまり正面から見たことがないような気がしてきた。
今まで深く考えることはなかったし、意識してなかったからかもしれない。

でも、私たちが鳥を観察する時、彼らの横向きを見る機会が多いと感じるのは、実は本当にそうだからなのではないだろうか。

鳥を観察しようとする私たちに気づくと、多くは飛んで逃げてしまうが、こちらの様子を伺っているような者もいる。そんなとき鳥は、片側の顔をこちらに向け、片目だけでこっちをみている、といったような様子だ。
また、鳥が上を見上げるとき、首をかしげているような格好をするのを
見たことがある。


鳥は物を見ようとする時、片目で見るのだろうか。
鳥の多くはくちばしが長く、顔の両サイドに目がある顔の造りをしている。
目が顔の正面についている私たちとは、明らかに違う。

でも正面に両目がついている種もいる。
フクロウやワシ。
獲物を捕らえる鳥は、物が立体的に見えたり、距離感をつかんだりするために両目で同時に見る「両眼視」が必要になる。
フクロウやワシなどの猛禽類は、正面に両目があることで、狙った獲物を確実に捕らえることができる。でもその分視野が狭くなるので、首が回る範囲を広くしている。フクロウなんて両眼視界は約70度だが、270度も首が回るらしい。

両目で見る視野以外に片目の視野、「片眼視」がある。
獲物となる鳥は狙われる立場にあるから、即座に逃げることができなくてはいけない。いつでも周囲に目を向けていられるよう顔の両サイドに目をつけることで、全体を見る視野が広い。
例えばヤマシギという鳥は約360度(ほとんど全体!)の視野があるが、両眼視できる範囲はくちばしの先端と後頭部のわずかしかない。


その種の生き方や見るもの、その見方によって、見るという能力は大きく違う。
彼らにとっては、食うか食われるか、生きていくための戦略だ。


見慣れた鳥の横顔。
実は、鳥の片眼視界で私たちを観察していた顔かもしれない。


****正面顔を披露してくれた鳥たち****

オオワシ
大きい両目が顔のほぼ正面についている。ただいま両眼視中。



ユリカモメ
魚を捕らえる目は、天敵に気づく目でもある。



オナガガモ♂
目は顔のほぼ真横についているし、頭の形も扁平。片眼視界は広い。


□参考文献□
大自然の不思議 鳥の生態図鑑/学研研究社/1993