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北海道地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [北海道地区]

2008年12月15日(月) オンネトー湯の滝への巡視

2008年12月25日
阿寒湖
 阿寒国立公園雌阿寒岳の南西麓に、オンネトー湯の滝と呼ばれる温泉水が流れ落ちる滝があります。湯の滝は、入口の駐車場から、南へ約20分林道を歩いたところにあります。かつては秘湯として入浴が可能でしたが、天然マンガン鉱床の生成が見られ、世界的に希少な場所であることから、2000年に「オンネトー湯の滝マンガン酸化物生成地」として天然記念物に指定されており、現在は入浴することができません。
 湯の滝下の池には、マンガン生成現象を作る藻類が繁茂しています。ところが、その藻類を捕食する2種類の外来魚(ナイルティラピアとグッピー)が生息していることによって、その貴重な生態系の維持が危ぶまれています。常時お湯が沸き、冬も水温が下がらない湯の滝は、熱帯魚である彼らにとって生息や繁殖に大変適した環境と言えます。そこで、湯の滝の貴重な生態系を守るため、環境省と足寄町によって、これまで様々な外来魚防除事業を行ってきました。
 現在、環境省では、国立公園等民間活用特定自然環境保全活動(グリーンワーカー)事業を活用して、平成18年度からの3カ年事業で外来魚の防除に向けた取り組みを行っており、今年度は過去の経緯を踏まえた上で、特に外来魚の生態や水質などの調査研究を行いました。足寄町では、10月29~31日に滝下の池の水をポンプで抜くという大々的な駆除事業を行い、約4000匹の成果が得られました。
 足寄町の駆除事業が終了した日から冬期間の雌阿寒温泉地区のゲートが閉鎖になるまでの間、滝下池とその下流の2つの堰(外来魚の他水域への出入りを防止するためのもの)の間に残存する外来魚の状況確認と捕獲作業が、私の業務内容に加わりました。捕獲方法は、主にたも網と釣り竿によるものですが、外来魚もだんだん知恵を付けてきており、釣りでの捕獲は困難になってきました。そこで、最近では主に両手にたも網を持ち、追い込みながら捕獲するような形態を採っています。現在、目視できる範囲での個体数は、滝下の池にナイルティラピア4匹とグッピー数十匹、滝下池の下流に位置する2つの堰の間ではナイルティラピア3匹とグッピー数匹にまで減少しました。
 普段は1人で捕獲作業を行うのですが、この日はボランティアの方3名が駆除作業に加わって下さいました。堰と堰の間での捕獲作業では、2人が下流側で網を構え、残りの2人が上流側から水音を立てながら外来魚を川下へ追いやります。1人では追い込みによる捕獲には限界があるのですが、4人だとやはり作業効率は上がり、いつもより捕獲個体数は多く、ナイルティラピア3匹、グッピー30匹という成果が得られました。
 冬期間は道道オンネトー線のゲート閉鎖により、湯の滝への巡視は難しくなりますが、来春以降も、外来魚駆除に積極的に取り組んでいきたいと思っています。




駆除作業中

岩に咲いた雪の花

捕獲個体の一部(左:ナイルティラピア、右:グッピー)