アクティブ・レンジャー日記 [北海道地区]
オロフレ山のキタキツネ
2009年01月13日
洞爺湖
快晴。こんな日に外に出なければアクティブレンジャーの名が廃る、とオロフレ山へ巡視に出た。オロフレ山は、標高1230mと胆振管内では比較的高さもあり、夏場は様々な高山植物が咲き乱れ、訪れる登山者を楽しませる(悲しいことに盗掘の被害が後を絶たないが)。一転冬期は、唯一のアクセスとなる道道2号線の夜間通行止め及び道道から登山口までの道路が完全閉鎖となるため、入山者はごくわずかとなる。これもまた冬山の魅力だ。
洞爺湖と登別温泉を結ぶ道道2号線(冬期17:00~9:00は通行止め)を走る。途中、写真撮影のため、道路沿いから洞爺湖や羊蹄山、ニセコ連峰を一望できる黄渓展望駐車場に車を入れると先客がいた。キタキツネだ。抜けるような青空の下、退屈そうに駐車場のど真ん中に、ダラーッと寝そべっている…。
かなりやる気なさそうに寝そべっていたのに、僕の車を見かけた瞬間、おもむろに起き上がり一目散に車めがけて走ってきた。異常なほどに人慣れしている。常に人間から何かをもらって食しているのだろう。
しかし今日は相手が悪かった。奇声を発して追いかけ回し、雪玉を投げつけ追い払った。思いっきり不審人物。他に人がいなくて良かった…。そこまでしなくても…と思う方もいるのかも知れないが、「人間は怖い」と思わせる必要がある。
ところが任務完了し車に戻ると、このキツネは消え去った斜面を登り返し、トコトコ駐車場に戻って来た。ここは相当に美味しい餌場らしい。追いかける、姿を消す、また現れる、また追いかける…。これは無理だ、諦めよう。
バックミラー越しに、勝利を確信したキツネが悠々と、駐車場のど真ん中に再び寝そべるのが見えた。
たしかに、これだけ人慣れしたキツネが目の前に現れたら、普段あまりキツネなど見る機会のない人や、特に本州からの観光客などが「わぁー!さすが北海道!ルールルルル…」と餌をあげたくなる気持ちも分からなくはない。が、キツネに限らず野生生物への餌付けはいけない。人から餌をもらったり、また人間の残飯を食し、本来彼らが自然界では口にするはずのない人間の食物を当てにするようになると、その生物の生態変化を引き起こし、それは=生態系の変化につながる。また、昨年騒がれた鳥インフルエンザなど、野生生物から人間への感染症の恐れもある。キタキツネだってエキノコックスを持っているのだ。観光地では、魚や鳥などに餌付けする行為を観光資源として扱っている場所が未だに少なくないが、そういった行為が間違っているということを、もっと知って頂く必要がある。保護や防除等の目的以外で、人間が自然環境や野生生物に手出しをし、良い結果が生じた試しがない。放っておける野生は放っておくべきだ。
「共生って難しいな」などと考えながら、山スキーにシールを張りつつふと思った。冬山を縦横無尽に駈け回り、滑り倒すことが出来るこの素敵な道具も、野生生物にとっては有り難くない人間の「文明」なのかなぁと。もしかしたら、深い雪の中でひっそりと春を待っているリスやウサギやキツネたちは、「冬くらいそっとしておいてくれよ…」と思っているのかも知れない。
超快晴とあって、冬のオロフレ山は珍しく混雑しており、僕の他に2グループと、自衛隊が十数名でスキー歩行の訓練をしていた。
オロフレの見事な樹氷を見上げ、「やっぱり山は冬に限るな」とニヤニヤしながらウサギの足跡と併走した。人間とは、まったくもって身勝手な生物である。
洞爺湖と登別温泉を結ぶ道道2号線(冬期17:00~9:00は通行止め)を走る。途中、写真撮影のため、道路沿いから洞爺湖や羊蹄山、ニセコ連峰を一望できる黄渓展望駐車場に車を入れると先客がいた。キタキツネだ。抜けるような青空の下、退屈そうに駐車場のど真ん中に、ダラーッと寝そべっている…。
かなりやる気なさそうに寝そべっていたのに、僕の車を見かけた瞬間、おもむろに起き上がり一目散に車めがけて走ってきた。異常なほどに人慣れしている。常に人間から何かをもらって食しているのだろう。
しかし今日は相手が悪かった。奇声を発して追いかけ回し、雪玉を投げつけ追い払った。思いっきり不審人物。他に人がいなくて良かった…。そこまでしなくても…と思う方もいるのかも知れないが、「人間は怖い」と思わせる必要がある。
ところが任務完了し車に戻ると、このキツネは消え去った斜面を登り返し、トコトコ駐車場に戻って来た。ここは相当に美味しい餌場らしい。追いかける、姿を消す、また現れる、また追いかける…。これは無理だ、諦めよう。
バックミラー越しに、勝利を確信したキツネが悠々と、駐車場のど真ん中に再び寝そべるのが見えた。
たしかに、これだけ人慣れしたキツネが目の前に現れたら、普段あまりキツネなど見る機会のない人や、特に本州からの観光客などが「わぁー!さすが北海道!ルールルルル…」と餌をあげたくなる気持ちも分からなくはない。が、キツネに限らず野生生物への餌付けはいけない。人から餌をもらったり、また人間の残飯を食し、本来彼らが自然界では口にするはずのない人間の食物を当てにするようになると、その生物の生態変化を引き起こし、それは=生態系の変化につながる。また、昨年騒がれた鳥インフルエンザなど、野生生物から人間への感染症の恐れもある。キタキツネだってエキノコックスを持っているのだ。観光地では、魚や鳥などに餌付けする行為を観光資源として扱っている場所が未だに少なくないが、そういった行為が間違っているということを、もっと知って頂く必要がある。保護や防除等の目的以外で、人間が自然環境や野生生物に手出しをし、良い結果が生じた試しがない。放っておける野生は放っておくべきだ。
「共生って難しいな」などと考えながら、山スキーにシールを張りつつふと思った。冬山を縦横無尽に駈け回り、滑り倒すことが出来るこの素敵な道具も、野生生物にとっては有り難くない人間の「文明」なのかなぁと。もしかしたら、深い雪の中でひっそりと春を待っているリスやウサギやキツネたちは、「冬くらいそっとしておいてくれよ…」と思っているのかも知れない。
超快晴とあって、冬のオロフレ山は珍しく混雑しており、僕の他に2グループと、自衛隊が十数名でスキー歩行の訓練をしていた。
オロフレの見事な樹氷を見上げ、「やっぱり山は冬に限るな」とニヤニヤしながらウサギの足跡と併走した。人間とは、まったくもって身勝手な生物である。