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北海道地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [北海道地区]

釧路湿原の出口にラッコが来た

2009年02月16日
釧路湿原
釧路湿原国立公園から海岸へ約10km下った場所(釧路市街地)なのですが、釧路川の河口に数日前からラッコが現れています(テレビなどで既にご存知の方も多いでしょう)。

 出没地点が役所や繁華街も近いまさに街のど真ん中ということもあり、なま「野生ラッコ」をひと目見ようと橋の上や河岸は人だかり。



それにしても・・・ち、近い。
間近で見るラッコに群衆(私も含む)は大興奮です。

(2/18追記)
この付近では、ラッコ見学者の釧路川への転落事故も発生しています。足もとも氷や雪で大変滑りやすくなっていて危険です。見学に際しては、柵にもたれかからないなど現地での注意事項を遵守してください。また、ラッコに負担をかけないよう静かに見学しましょう。




当のラッコは大観衆に囲まれても潜ったり毛繕いをしたりとかなりのリラックスぶり。ケガや衰弱している様子はないのでこの場所が嫌なら自力で去るとは思うのですが、陸の人間の存在は今のところ気にしていないみたいです。
さてこんな街中の川で食べるものがあるのか?と心配だったのですが、次々と潜っては貝やヒトデを獲って食べていました。これには釧路川の河口もけっこう豊かなのだなと驚きました。同時に、漠然とですが海の資源が豊かなのも釧路湿原やその上流の森林の恵み、それらが流域を通じて海へ流れ込んだ結果なのだろうと感じました。

釧路川は阿寒国立公園の中の屈斜路湖に流れを発し、その流路154kmの間には森や釧路湿原、そして町や農地など人の生活の場があります。それらの良い影響も悪い影響も全て流域を通じ下流へ移動し、最後は海へ流れ出ていきます(もちろんその先の海へも・・・)。
釧路湿原自然再生事業の進め方の基本的な考え方では「生態系のつがなりある流域全体を対象に考える」という原則を挙げていますが、このようなつながりを実感する機会はあまりなく、意識しにくいようです。ただ野生動物を媒介とすると自然環境のつながりや大切さが理解しやすくなったり、魅力を持って受け入れられる場合があります(例えば森が海の魚を育てる・・・など、最近よく言われますよね?)。
釧路川の河口は釧路湿原の「出口」。そこで強引かもしれませんが釧路湿原を「ラッコの暮らす海とつながっている場所」と考えてみるとどんな印象になるでしょう?ちょっと流域のつながりを意識しやすくなる人もいるのでは?あるいは釧路湿原に対して今まで以上に大切な役割を持った場所に感じる人もいるのでは?

(2/18追記)
 ラッコは野生動物です。ラッコの生態を乱すおそれがあるので、写真撮影をするなどの目的で餌付けはしないでください。

(2/20追記訂正)
 餌付けの可能性を示す写真として、ツブ貝の写真を掲載していましたが、その後このツブ貝の所有者の方より、餌付けに用いるものではないとの連絡を頂きました。
このため、誤解が生じないようツブ貝の写真を削除させて頂きました。
皆さんもラッコと追いかけたり餌付けしたりせず、その野生の姿を暖かく見守りましょう。


<参考>
ラッコについては、農水省(水産庁)所管の法律「猟虎膃肭獣(らっこおっとせい)猟獲取締法」で捕獲禁止などの措置がとられています。
環境省レッドリスト2007ではCR(絶滅危惧IA)類に指定されていますが、いわゆる「種の保存法」や「鳥獣保護法」は適用されません。