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北海道地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [北海道地区]

「宗谷岬」に歌われた春が来た② ~春先の花々と昆虫編~

2009年05月21日
稚内
 水鳥たちの大半が北へ旅立って少し経った4月下旬、サロベツ原生花園周辺ではワタスゲやヤチツツジ、ホロムイツツジの小さな花が、牧草地わきや日当たりのよい林床などではエゾノエンゴサクの青紫がちらほら咲き始めました。
 海岸砂丘の地面に近い草むらでは去年飼育観察していたヨシカレハの幼虫を発見!


これはホロムイツツジの花


ヨシカレハの幼虫

エゾエンゴサクが花盛りになった5月連休中。ふさふさの毛を持ち丸々とした何匹ものエゾオオマルハナバチの女王がひっきなしに訪花していました。夢中になって花筒に頭を入れている様子を見ていると何か楽しい気持ちになりました。


エゾエンゴサクとエゾオオマルハナバチ

最近、私が興味を持っているハナバチ類など社会性昆虫の研究者、故坂上昭一さん(北大)は、エゾオオマルハナバチがエンゴサクを訪れている時の様子をこんな風に述べていたそうです。

「はじめて札幌にきた年の春、あの北国のもっとも素晴らしい季節、私はよく円山公園にでかけた。今のように荒らされていなかった谷沿いには、一面にキバナノアマナの黄色とエゾノエンゴサクの紫青の花が、萌え出たばかりの緑を彩っていた。そして本州では山岳地帯にしかみられない、オオマルハナバチの女王が、底深い翅音をたてて訪れていた。彼女が黒、赤、白の三色の長毛で覆われた巨体を花にあずける時、花はおもみで垂れ下がり、女王は、じゃれている猫のようにあおむけになって、背中を地面につけたまま蜜を飲んでいた。」
<蜂の群れに人間を見た男 坂上昭一の世界 本田睨著・NHK出版より>

この文章を読んでエゾオオマルハナバチの活動の様子が生き生きと目の前に浮かんでくるようでした。研究者として鋭く無駄のない論理性を持ち、研究にあけくれていた坂上さんも春のエゾオオマルハナバチたちを見ることが純粋に楽しかったに違いありません。