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北海道地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [北海道地区]

ウスバキチョウ

2009年07月02日
上川
大雪山の高山帯にいる蝶の中で人気の高いウスバキチョウ。
残雪と小さい春の花がポツポツ咲いている中を黄色い羽を輝かせながら舞っている姿はとても優雅です。大雪山を代表する蝶ですが、限られた環境でしか生活が出来ないので、国の天然記念物に指定されています。しかし、心ない人による盗採が絶えないので、環境省やパークボランティアでは盗難パトロールを行っています。


パトロール中に、岩の上でじっとしている不思議な虫をPVさんが発見。
近くにいた登山者を含め4人でその虫をのぞき込んだら、わずかに赤い斑点が見えたので、ウスバキチョウの羽化したてのものだとわかりました。


羽化してすぐはこんな格好。


しばらくじっとしていましたが、突然早足でウロウロ歩き出し、岩陰でじっととまりました。どうやら、風をしのぐ場所を探していたようです。観察していると、じわじわと羽が伸びていき、すこしずつ体を動かすようになりました。


ただいま羽を伸ばし中。


途中、アリにちょっかい出され、しつこい攻撃にも耐えながらも、1時間半後にやっと飛び始めました。貴重なものを見られてそして無事飛び立ってくれて嬉しい1日でした。


飛び立って一休み。


【ウスバキチョウとは】
・過去の氷河期に大陸から渡って来て、その後の温暖化に向かったときに、陸地が大陸と完全に分離されてしまうと、北方へ帰ることができなくなり、寒冷な気候条件を求めて高山へのぼりつめていったと考えられる生物が大雪山には多くいます。ウスバキチョウなどの高山蝶もそういった生物です。

・ウスバキチョウは、1年目の冬は卵で過ごし、翌年5月~6月頃孵化し、繭になり、2年目の冬は蛹で越します。まる2年、足掛け3年目にようやく羽化します。