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北海道地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [北海道地区]

さらわれたエゾスカシユリ

2009年07月21日
稚内
 エゾスカシユリは花びらと花びらの付け根に隙間がある鮮やかなオレンジ色のユリで、
サロベツ原野では海岸砂丘に多く自生しています。
花全体を透かし細工の切り絵のように見せている花びらの付け根の隙間は、
真っ直ぐ上を向いて咲くときに花の中に雨水が溜まって腐ったり傷んだりしないようにするためのものです。



エゾスカシユリの真綿のような蕾・・・私は最初アワフキムシかと思いました。(5月下旬撮影)



オレンジ色が鮮やかなエゾスカシユリの花


 多くのユリが首を垂れ、うなだれて咲くのに対し、背は低いけれど真っ直ぐ上を向いて咲くこの野生のユリに
私は何か強くて凛とした印象を受けます。

 今年も多くの人たちがエゾスカシユリの咲く海岸線の風景を楽しんでいたに違いありません。
 
 ところが、7月始め、自然公園指導員の方から浜勇知にあるコウホネ沼周囲の木道沿い(利尻礼文サロベツ国立公園第2種特別地域)に
エゾスカシユリと思われる植物を盗掘した跡があるとの連絡を受けました。
現場に行ってみると木道から数メートル離れた場所にスコップで掘り取ったであろう穴が5つ。
穴の周囲は草が踏み倒されて無惨な状況です。


エゾスカシユリと思われる植物を無惨に掘り取った跡


 国立公園内で植物を採取することは法律で禁止されています。
特別地域内ではエゾスカシユリなどの指定植物(※)を盗掘するのは自然公園法違反!山野草は、自生の地に根付いいて意味があります。たとえ指定植物でなくても、採取するのは止めましょう。

 美しいものを手元に置きたいと願うのは人の心の常ですが、
皆のものであり、動植物が守られねばならない国立公園内からこっそり花を盗んで独り占めしても花は生き生きとは咲きませんよ?

 ルールを守って自然に優しい利用を心がけましょう。

※自然公園指導員
国立公園、国定公園内において、動植物の保護、美化清掃、事故の防止などについて利用者の指導や情報収集を行うため、環境省の委嘱により活動しているボランティアのこと

※指定植物
絶滅が危惧されているものや国立公園の景観の重要な構成要素として指定された植物。
詳しくは環境省HPをご覧下さい。 http://www.env.go.jp/park/doc/data/plant.html