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北海道地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [北海道地区]

中島

2009年07月24日
洞爺湖
 今月中旬、洞爺湖地区パークボランティアさんと今年2回目の中島ゴミ清掃に入りました。ここ最近気になることがあります。それは「倒木や落石が多くなった」こと。中島は約4~5万年前に火山活動によって洞爺湖の真ん中に出来た小さな島です。
 中島には50年程前に人間によって持ち込まれた3頭のシカが繁殖し、今では250頭程が約5.2k㎡の小さな島内で生活しています。そのシカによりシカが食べられる高さの植生ラインはほぼ葉や樹皮を食べられてしまい、シカが好まない植物のみを残し、ほとんど下草が無い状況です。



地面を見ると・・・シカが歩いた跡がいくつも。中島の歩道脇では倒木が目立ち、地面は下草がほとんどない。一部、樹皮剥ぎ(写真右)が見られる。

さらに、狭い島の中で多くのシカが歩き、表土は荒れて、そこにあった樹木は、根を張れなくなっています。中島は火山活動でできた溶岩ドームの集まりです。だから土のすぐ下は溶岩が積み重なって出来ていて、もともと地盤が弱く、根も深くまで張ることが出来ない場所です。耐えきれなくなった木は倒れ、今度は倒れた木の葉や樹皮をまたシカが食べています。落ち葉も食べていることが研究では分かっているようです。



薄い表土の下は分厚い岩が積み重なっていて不安定な状況。


 想像してみましょう。倒木が増え、その倒木の葉などをシカが食べ、厳しいながらも生きていく・・・またシカが増え、木が倒れていく・・・・中島は「木のない島」になるかもしれません。木が無ければ鳥や昆虫もいなくなり、シカもいずれ死に至るかもしれません。人間が持ち込んだたった3頭の生きものが、小さな島に与えた影響は大きく、もともとあった自然に戻すにはいかに大変であるかというのをこの島は訴えていると思います。
 今回の清掃活動では、羽化したばかりのコオニヤンマを見ることが出来ました。この中島の将来を知ってか知らないのかゆっくりと空にはばたいていきました。今、私たちに欠けていることは、「想像すること」。想像して今できることを少しずつやっていきたいと思います。


羽化したばかりのコオニヤンマ。翅(はね)がまだキラキラしています。