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北海道地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [北海道地区]

知床岬を目指して

2009年08月05日
羅臼
 知床半島には「先端部地区」と呼ぶ場所があります。
道路も通らず、海岸線に漁業番屋が点在する以外は人の活動はなく、自然が
そのまま残されている場所です。
 そんな原始性の高い自然が残された「先端部地区」にはたびたび、自然体験に訪れる利用者がいます。


 先月終わり、私たち羅臼のアクティブレンジャーは、相泊から知床岬までの
巡視を行いました。
相泊から知床岬まで約20㎞を往復。2泊3日の行程です。

 知床岬までは海岸線を歩いて行きますが、途中には「難所」と呼ばれる箇所がいくつかあります。
その『難所の状況把握』は、巡視の目的の一つでもあります。
またその他にも『海岸のゴミ状況の把握』や『たき火跡などの確認』
『自然状況の確認』など、巡視で得られた情報は、「先端部地区」利用のルールやマナーを考える上で参考となり得ます。
また、利用者への情報提供にもなります。


 さて、巡視の様子を少しご紹介しましょう。
不揃いな石で埋め尽くされた石浜を歩くだけでも困難ですが、高巻きやへつりなどの「難所」と呼ばれる場所を通過するには、技術が必要とされます。


【へつり】海に切り立った断崖を、はりつくようにして渡る。
崩れやすい岩場や、藻が生えていて滑りやすい箇所もある。
大きな荷物を背負っていると、余計にバランスが取りにくい。


【高巻き】海岸を歩けない箇所は岩壁を高巻く必要があるが、なかには写真      のようにロープを使って垂直な壁を降りなくてはならない箇所も。
     落下したら大きな事故につながる。


【へつり】や【高巻き】以外にも、注意点はいくつかあります。
例えば、海岸を歩いて行く場合には、必ず潮の満ち引きを計算する必要があります。干潮時でなければ歩けない箇所があるからです。
…ただし、干潮時でも【水没】しなければ渡れない箇所もありますので、
ご注意を。


 さて、今回は海岸線を主に紹介しましたが、「先端部地区」には知床岳や
知床沼などの山岳域も含まれています。先端部地区の山岳域に登山道は整備されていません。自らの判断でルート設定を行わなければならず、高度な登山技術を要します。

 このように先端部地区の利用は、安全が保証されない厳しい条件下での行動となります。十分な知識や経験、体力や判断力が必要です。
 また、特に「先端部地区」では、ヒグマに関わる事故を防ぐ準備と知識も必要です。


 自然の中で、人間は本当に微力です。
予想だにしなかったことが待ち受けているかもしれません。
その時、適切に対応できるだけの経験や知識、体力や判断力を持ち合わせていなかったら…。
誤った判断は、自分の身だけでなく、同行している仲間や、さらには今後同じように訪れようとする方々をも危険にさらしかねません。

 ただ、知床岬は本当に素晴らしいところです。
自らの足で知床岬にたどり着いた喜びは、何にも代え難いものでしょう。


【知床岬 先端部】知床岬先端は火山によって形成された海岸段丘が広がる。


***知床半島先端部利用をお考えの皆様へ***
知床半島先端部地区利用の心得
(PDFファイル)