北海道のアイコン

北海道地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [北海道地区]

礼文の桃岩

2009年08月12日
稚内
 サロベツの海岸線には砂浜がありますが、利尻島には砂浜がほとんどなく、礼文島にも少ない。
私は、砂浜を散策するのが好きですが、最近、礼文に行って南部の桃台・猫台周辺から桃岩を見上げたとき、
海に面する地形のおもしろさに惹かれました。
 礼文の桃岩の岩肌の荒々しさを言葉で表現できないかと頑張ってみました。でも、地質に関する事柄をほとんど知らないので、うまく書き表せませんでした。
生物や自然の風景を述べるとき、絵を描くにも文章を書くにも人に伝えるにも、科学的な知識や考え方を持っていれば、どんなに表現の幅が広がることだろう、とよく思います。
 今回も岩石や地質に関する図鑑を開いてみたのですが、地学に関することなど高校生以来。
ごちゃごちゃ調べて、ようやく、桃岩の構成地質が輝石ひん岩という鉱物で、
壁面はたまねぎの皮のように幾重にも岩が巻き、皮状に剥離しやすいものであるということ(これを球状節理(※)というそうです)、新第三紀という地質年代にできたものだということが分かりました。
地学は苦手だったけれど、この機会に鉱物のことをもっとよく知ってみようかと思いました。
勉強不足ですが、以下、桃台・猫台から見上げた桃岩の岩肌の様子をポエムにしてみました(笑)!

※1.節理 岩石中に見られる規則正しい割れ目のこと


桃岩展望台より見おろした桃岩斜面も絶景です!



礼文の桃岩・岩肌の詩

大地がうねりうねった何億年もの集積が、

めくれあがって荒々しく露出し、渦を巻くように刻み込まれた地層の文様が見える。

壁面には多数の柱状の岩石が突き刺さり、楔のように打ち込まれた大地の記憶。

桃岩を見上げ、最北の島の太古から現在を想う時、

迫ってくる圧倒的な地質的時間の積み重なりにもう押しつぶされそうだ。

 けれど荒々しさとは対照的に、人力を越えて創られたこのとてつもなく巨大な岩の上には、

土と水が溜まって草花の種がこぼれ、短い夏には、青草の間に白や桃色、紫、黄色の優しい花影が揺れる。

北に惹かれる人とは、何か切ないことがあって、心踊るものとは別の厳しいものを求めて訪れる人である、

と聞くことがある。

そのような人たちがいるとすれば、花壇や気候が温和な場所に咲く花ではなく、

風が吹き付け、冷涼なこの厳しい岩肌に咲く野生の草花に心を慰められるのだろうか。



 礼文は今、秋の花々の盛りです。
トウゲブキ、ツリガネニンジン、ミヤガワソウ、キタノコギリソウ、エゾノコギリソウなどが、
草紅葉が始まりかけた斜面に咲き、初夏とは違った彩りを楽しむことができます。

皆さんもぜひ、初秋の礼文を訪れて秋の花々の美しさと島の地形のおもしろさを満喫してみてはいかがでしょう。



秋の草花の彩り


見える花々は、ミヤガワソウ、エゾゴマナ、キンミズヒキ、オニシモツケ