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北海道地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [北海道地区]

草海原に溺れる

2009年09月17日
稚内
少し前のことになりますが8月下旬、地元NPOのスタッフさんと一緒に豊富町落合地区の巡視に行ってきました。
ここは牧草地と湿原が隣接しており、サロベツ川の氾濫の影響を受けやすい場所でした。
そのため、60年代始め頃から放水路、水抜き水路を設ける工事が行われました。
その結果、牧草地はサロベツ川の氾濫の影響を受けなくなったものの、
乾燥化によって高層湿原の植生は失われて落合沼という沼も干上がってしまいました。
 現在は水抜き水路をせき止めたり、湿原と牧草地の境界に帯状に緩衝帯を設けて
地下水位を湿原側で高く、牧草地側で低く保つことで高層湿原の植生を回復させ、湿原の自然と農業を共存させる取り組みがなされています。

 久しぶりに湿原内に入ったところ、そこはもう人の背丈を超えるほどのヨシの海!
青いうねりがどこまでもどこまでも続く草海原。
ヨシの細長い葉と穂が風に吹かれて流れるようになびいています。





風の通り道 草の波


この中を悪戦苦闘しながらただひたすらかき分けかき分け進むうちに、私たちは本当に荒海を泳いで渡っているような気持ちになってきました。
溺れそうになりながら見上げた空は秋の始めの澄みきった青。
小さい雲がうろこのように無数に集まったいわし雲、マンボウやエイのように平べったくて、すーっとした雲も泳いでいます。
何とも穏やかで優しい雲のかたち。
しかし、空に見とれてぼんやり上を向いていたらヨシに足をとられて何度か海にダイブしました。
青い草海原は見た目の美しさとはうらはらに非常に手強い相手でした。


草の海にダイブして見えた秋の空

 この日の巡視の結果、緩衝帯や落合沼の状況を調査する場合に備えて
調査用木道沿いの草刈りをしておいた方がいいということになりました。
ヨシを刈った後はとても歩きやすくなるでしょうが、
人を寄せ付けないほど密生した草の力強さを体全体で感じて、
原野という環境が長い間人の侵入を拒みそれ故に貴重な自然が残ったことと
この地域を開拓するのは本当に大変だったということを改めて感じることができました。