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北海道地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [北海道地区]

秋の森の探検(その2:けったいなキノコ)

2009年10月05日
稚内
砂丘林の巡視では、形や色などがかなり風変わりなキノコたちに出会うことができました。

 私たちがキノコとして見ているのは、繁殖器官である子実体という部分であり、菌類が胞子を分散させるためのものです。
菌類は森の中で次のような役割を担っています。

・枯れた樹木などに取り付いて、これらを二酸化炭素とより元素に近いかたちにまで分解して森の物質循環を円滑にします。
・生きている樹木に寄生して時に枯死させ、樹木の間引きや森の更新を促しています。
・樹木の根と共生関係を結び、樹木が光合成でつくった養分を分けてもらうかわりに
 樹木が必要な養分と水を樹木単独の場合より効率よく取り入れる手助けをしています。
 
 上の役割によってキノコなど菌類は森を豊かで健全に保ちます。
この巡視で沢山の種類のキノコが見られたのは、稚咲内の砂丘林が豊かな証であるように思いました。沢山見られたキノコの中からいつくかご紹介します。
でも、砂丘林内は国立公園の特別保護地区に指定されていますのでキノコ採集はしないようお願いしますね。


 鮮やかな朱色が曲がりくねって細長く伸びた写真のこのキノコ、まるで蝋細工のよう。隣の針葉樹実生の艶のある濃い緑とのコントラストがとても美しいです。調べてみるとどうやらベニナギナタタケだと思われました。


ベニナギナタタケと思われるキノコ 


※しかし、ベニナギナタタケに似たキノコに猛毒のカエンタケというのがあって誤食をしないよう注意が必要です。カエンタケは北海道では特にまれなキノコで発生する場所も苫小牧市、恵庭市など限られているようですが
(五十嵐恒夫著:北海道のキノコ 北海道新聞社より)、
食べられるキノコ、食べられないキノコを見分ける際には、専門家に見てもらうなど確かな情報をもとに十分気をつけてください。「きっとこれは食べても大丈夫よ。」という思いこみは危険です。くれぐれもご注意を!

 また、鮮やかな緑に苔むした倒木の上にはかわいらしい白いキノコがちょんちょんと並んでいました。私にはこのキノコたちが「もののけ姫」に出てくる木霊みたいに見えました。この倒木はこれら白いキノコたちによって森の土に還っていく途中なのです。何キノコなのかは分かりませんでした。かわいらしいけれど毒かもしれませんね。


苔むした倒木に生える白いキノコ 倒木は白い水玉がついた緑の衣を着ているようです。


 そしてっ!最後に紹介するのは!なんと「ひげじい茸」!・・・と命名したくなるようなキノコです。
キノコの細長い針(胞子を飛ばす部分)の束が白くふさふさした立派なおひげのように垂れ下がっている様子は、NHKで放送している生き物番組「ダーウィンが来た」に登場するキャラクター、「ひげじい」にそっくりだと思いませんか?この「ひげじい茸」の正式名称はおそらくヤマブシタケであると思われました。このキノコの形が山伏が着る着物(結袈裟)についている丸い飾りに似ているためにつけられた名前だそうです。


「おおっ!こんなところにヒゲジイがっ!」 ヒゲジイにそっくりのこのキノコはヤマブシタケか・・・。


 人間とはかけ離れた生き物であるためかキノコにはどこか得体のしれないところがありますが、じっと観察しているうちに、人間やキノコに比べて人間により近い生き物には見られない色や形の斬新さ、ユニークさに魅せられました。

秋はキノコノコノコ・・・の季節。
皆さんも毒キノコには十分注意しながら、キノコを観察してみませんか。