アクティブ・レンジャー日記 [北海道地区]
飼育展示
2009年12月02日
洞爺湖
この時期、このところ毎年耳にする台詞。
「雪が降らないねぇ…」
もう師走だというのに、事務所から眺める有珠山の山頂がわずかに白いくらいで、洞爺湖周辺の平地にはまったく雪がない。
僕が大学生の頃は、11月の初めくらいになると札幌近郊のスキー場もフルオープンし、がんがんパウダーを滑っていた。
人間の活動がどれだけ地球に影響を及ぼしているのか、正直僕にはよくわからない。だけど明らかに雪は少なくなっている。それが地球の自然な変化だという意見もあるようだけど、ちょっとスピードが速すぎる気がする。僕が大学生だったのは10年と少し前。そんな大昔の話ではない。地球の歴史の中での10年なんて、時が流れたことにすら気付かないくらい、ほんの一瞬に過ぎない。
そんなわずかな時の流れの中でもはっきりと変化が感じられるのだから、人間の活動がまったく無関係であると言い切るのはどうかと思う。だけど地球が汗をかいている姿が見えないぶん、実感がわきにくい。
比べて外来生物問題は、問題の出所が明らかすぎるくらい明らかであり、これもまた極めて短時間で、しかも直接的に在来種とその地域の生物多様性にダメージを与えている。
食べるため、釣りを楽しむため、研究や実験のため、人間に害のある動物をやっつけるため、人間の食べ物となる動物のエサにするため、毛皮をとるため、ペットにするため…
みんな人間の「ため」じゃないか。そんなワガママのせいで、地球の歴史から見ても長時間と言えるくらいの時間をかけて築いてきた様々な生き物の暮らしが脅かされ、さらには人間の勝手であちこち無理やり移動させた生き物たちを、今は人間の手で捕まえて殺している。それが私たち人間という生き物だ。
今年度洞爺湖では、4万3千匹のウチダザリガニを捕まえて殺した。正直なところ、僕もいまだに迷う時がある。
これ以上、こんなことが起きないようにという願いを込め、洞爺湖ビジターセンターにてウチダザリガニの飼育展示を始めた。
※外来生物法に基づき、許可を得て飼育しています。ペットとしての飼育は許可されません。無許可での飼育は違法行為となります。
ウチダザリガニの他、アメリカザリガニ、ニホンザリガニも並べて飼育展示し、外来生物問題や生物多様性について説明するポップも作成した。
※ニホンザリガニは絶滅危惧Ⅱ類(絶滅の危険が増大している種)に指定されています。野外で見つけてもなるべく持ち帰らず、自然の中に戻してあげて下さい。
全ての文章は、できるだけ子供にもわかりやすいような言葉を選んだ。誰よりも、これからの世の中を背負っていく子供たちに見てもらい、考えてもらいたい。人間が同じ過ちを繰り返さないように。
展示を使った環境学習も実施。やはり「現物」を前にすると子供たちの食いつきも違う。
洞爺湖にウチダザリガニがいると、どうして良くないのか。
ウチダザリガニの他にはどんな外来生物がいて、どんな問題が起きているのか。
どうしてこんな問題が起きてしまったのか。
これ以上こんな問題が起きないようにするにはどうしたらいいのか。
飼育展示に併せ、洞爺湖温泉小学校の4年生が作成した「ザリガニ新聞」も掲示している。総合学習の時間をつかい、ウチダザリガニ防除体験学習、同じ洞爺湖に生息するサクラマスの遡上観察学習… 外来生物や生物多様性についてかなり突っ込んで勉強しただけあって、小学校4年生とは思えない高い完成度。子供ならではの視点から外来生物問題を取り上げている。
来年度の目標は洞爺湖町と壮瞥町の全小中学生に、現場もしくはビジターセンターにて、ウチダザリガニをはじめとする外来生物問題、生物多様性について勉強してもらうこと。
計10校なので、やってやれないことはない。
北海道洞爺湖サミット開催、支笏洞爺国立公園指定60周年、世界ジオパーク認定… 自然環境に関わるニュースでにぎわったこの地の自然とそこに暮らす生き物が、いつまでも安心して生活できるような場所であって欲しい。
◆飼育展示の開設にあたり、多大なご協力をいただいたUWクリーンレイク洞爺湖と酪農学園大学環境システム学部生命環境学科 野生動物保護管理学研究室の皆様に感謝いたします。
◆飼育展示は常設の予定です。ぜひ洞爺湖ビジターセンターに足をお運び下さい。
「雪が降らないねぇ…」
もう師走だというのに、事務所から眺める有珠山の山頂がわずかに白いくらいで、洞爺湖周辺の平地にはまったく雪がない。
僕が大学生の頃は、11月の初めくらいになると札幌近郊のスキー場もフルオープンし、がんがんパウダーを滑っていた。
人間の活動がどれだけ地球に影響を及ぼしているのか、正直僕にはよくわからない。だけど明らかに雪は少なくなっている。それが地球の自然な変化だという意見もあるようだけど、ちょっとスピードが速すぎる気がする。僕が大学生だったのは10年と少し前。そんな大昔の話ではない。地球の歴史の中での10年なんて、時が流れたことにすら気付かないくらい、ほんの一瞬に過ぎない。
そんなわずかな時の流れの中でもはっきりと変化が感じられるのだから、人間の活動がまったく無関係であると言い切るのはどうかと思う。だけど地球が汗をかいている姿が見えないぶん、実感がわきにくい。
比べて外来生物問題は、問題の出所が明らかすぎるくらい明らかであり、これもまた極めて短時間で、しかも直接的に在来種とその地域の生物多様性にダメージを与えている。
食べるため、釣りを楽しむため、研究や実験のため、人間に害のある動物をやっつけるため、人間の食べ物となる動物のエサにするため、毛皮をとるため、ペットにするため…
みんな人間の「ため」じゃないか。そんなワガママのせいで、地球の歴史から見ても長時間と言えるくらいの時間をかけて築いてきた様々な生き物の暮らしが脅かされ、さらには人間の勝手であちこち無理やり移動させた生き物たちを、今は人間の手で捕まえて殺している。それが私たち人間という生き物だ。
今年度洞爺湖では、4万3千匹のウチダザリガニを捕まえて殺した。正直なところ、僕もいまだに迷う時がある。
これ以上、こんなことが起きないようにという願いを込め、洞爺湖ビジターセンターにてウチダザリガニの飼育展示を始めた。
※外来生物法に基づき、許可を得て飼育しています。ペットとしての飼育は許可されません。無許可での飼育は違法行為となります。
ウチダザリガニの他、アメリカザリガニ、ニホンザリガニも並べて飼育展示し、外来生物問題や生物多様性について説明するポップも作成した。
※ニホンザリガニは絶滅危惧Ⅱ類(絶滅の危険が増大している種)に指定されています。野外で見つけてもなるべく持ち帰らず、自然の中に戻してあげて下さい。
全ての文章は、できるだけ子供にもわかりやすいような言葉を選んだ。誰よりも、これからの世の中を背負っていく子供たちに見てもらい、考えてもらいたい。人間が同じ過ちを繰り返さないように。
展示を使った環境学習も実施。やはり「現物」を前にすると子供たちの食いつきも違う。
洞爺湖にウチダザリガニがいると、どうして良くないのか。
ウチダザリガニの他にはどんな外来生物がいて、どんな問題が起きているのか。
どうしてこんな問題が起きてしまったのか。
これ以上こんな問題が起きないようにするにはどうしたらいいのか。
飼育展示に併せ、洞爺湖温泉小学校の4年生が作成した「ザリガニ新聞」も掲示している。総合学習の時間をつかい、ウチダザリガニ防除体験学習、同じ洞爺湖に生息するサクラマスの遡上観察学習… 外来生物や生物多様性についてかなり突っ込んで勉強しただけあって、小学校4年生とは思えない高い完成度。子供ならではの視点から外来生物問題を取り上げている。
来年度の目標は洞爺湖町と壮瞥町の全小中学生に、現場もしくはビジターセンターにて、ウチダザリガニをはじめとする外来生物問題、生物多様性について勉強してもらうこと。
計10校なので、やってやれないことはない。
北海道洞爺湖サミット開催、支笏洞爺国立公園指定60周年、世界ジオパーク認定… 自然環境に関わるニュースでにぎわったこの地の自然とそこに暮らす生き物が、いつまでも安心して生活できるような場所であって欲しい。
◆飼育展示の開設にあたり、多大なご協力をいただいたUWクリーンレイク洞爺湖と酪農学園大学環境システム学部生命環境学科 野生動物保護管理学研究室の皆様に感謝いたします。
◆飼育展示は常設の予定です。ぜひ洞爺湖ビジターセンターに足をお運び下さい。