アクティブ・レンジャー日記 [北海道地区]
オオワシが食べていたもの
2009年12月07日
稚内
天候や事務所内の仕事のために、しばらく外に出られない日々が続いていました。
11月の半ば過ぎ、そろそろオオワシがカムチャツカ半島から渡ってくる頃です。
久しぶりに海岸線に巡視に出かけました。
風が強く雪がちらちらと舞う日でした。
寒々とした灰色の日本海が目の前に広がっています。
私は空を飛ぶ猛禽の影に注意しながら、海岸線を稚咲内に向かって車を走らせました。
と、突然、海岸線道路からすぐそばに見下ろせる海岸帯にいた大きな猛禽と目が合いました!
オオワシです。美しい成鳥です。
悠然と飛び立つオオワシ
車を止めようとするとオオワシは悠然と飛び立ち、海岸砂丘の向こう側へ行ってしまいました。
私は海岸に降りて見ることにしました。
砂丘を越えて目を懲らしてみると向こうの方にワシやカラスが複数かたまっているのが見えます。
砂浜につけられたオオワシの足跡。大きい!
「きっと動物の死骸があるんだ」、と思った私は彼らが食事をしている合間を縫って何を食べているのか調べることにしました。
ゆっくり近づいてみると1メートルくらいの尾びれのある生き物の死骸が横たわっていました。
「大きな魚だろうか?それともイルカや鯨の仲間だろうか?」
サロベツ原野に隣接した海岸線には、3メートル数十センチもあるばかでかい鯨の下顎の骨がでんっと流れ着いたことがあります。でも、海棲哺乳類であるとしたら、こんなに小さなものを今までに見たことがなかったので、最初は魚だろうと思いました。けれど、肋骨らしき骨があることと、魚の鱗のようなものがなくイルカのように黒くて滑らか肌をしていることから、海棲哺乳類であると考え直しました。この生き物を記録としてカメラに収めると、ワシやカラスたちが食事を続けられるように急いで車に戻りました。
帰ってきてから知り合いの学芸員さんにこの生き物の写真を送ってみました。学芸員さんによると「ネズミイルカ」の仲間ではないか、ということでした。ネズミイルカ科かどうかは頭部の形状と歯で分かるそうです。
頭部については他科のイルカと比べて口吻が短く丸みがあります。そして歯については他科のイルカが円錐形であるのに対し、ネズミイルカ科はスペード型(円錐形の歯よりは丸みがある)です。写した写真を見ると頭部に丸みがあるのは分かりましたが歯までは分からなかったので、次の日、調べ直してやろうと同じ場所に行ってみました。しかし、波にさらわれてしまったのか、死骸はもうありませんでした。残念!
オオワシとカラスが食べていた生き物はネズミイルカかっ?!
生き物の死骸を見るのは一般的に気持ちのよいことではないと思います。
でも、死んだ生き物が何であるかを推理し、どんな動物がその生き物の体を食べているのかを調べていって、食物連鎖の一つの繋がりを確かめられた時、野生の世界でどんな最期を迎えたとしても一生懸命に生きた命が必ず還っていく場所があることを実感できます。
以前も書きましたが“人”である私は、自分が食物連鎖の真ん中に入ることなど怖くて想像もしたくないです。けれど、現在サロベツ原野で見られる野生生物たちの生きる様子を通して、改めて様々な命に生かされていることを教えられています。
(注意!)
生き物の死骸を調べることのおもしろさに触れましたが、北海道では、ヒグマなど人間を襲うこともある動物が食べているものに近づくこと、ヒグマがいなくてもヒグマが出没する場所で動物の死骸に近づくことは危険です!ヒグマは戻ってきて餌の続きを食べることが多い上に、自分のものに対する執着心が非常に強いです。餌を取られると思って襲ってくることがありますので、このような危険がある場所では絶対に死骸に近づかないようにしてください!
11月の半ば過ぎ、そろそろオオワシがカムチャツカ半島から渡ってくる頃です。
久しぶりに海岸線に巡視に出かけました。
風が強く雪がちらちらと舞う日でした。
寒々とした灰色の日本海が目の前に広がっています。
私は空を飛ぶ猛禽の影に注意しながら、海岸線を稚咲内に向かって車を走らせました。
と、突然、海岸線道路からすぐそばに見下ろせる海岸帯にいた大きな猛禽と目が合いました!
オオワシです。美しい成鳥です。
悠然と飛び立つオオワシ
車を止めようとするとオオワシは悠然と飛び立ち、海岸砂丘の向こう側へ行ってしまいました。
私は海岸に降りて見ることにしました。
砂丘を越えて目を懲らしてみると向こうの方にワシやカラスが複数かたまっているのが見えます。
砂浜につけられたオオワシの足跡。大きい!
「きっと動物の死骸があるんだ」、と思った私は彼らが食事をしている合間を縫って何を食べているのか調べることにしました。
ゆっくり近づいてみると1メートルくらいの尾びれのある生き物の死骸が横たわっていました。
「大きな魚だろうか?それともイルカや鯨の仲間だろうか?」
サロベツ原野に隣接した海岸線には、3メートル数十センチもあるばかでかい鯨の下顎の骨がでんっと流れ着いたことがあります。でも、海棲哺乳類であるとしたら、こんなに小さなものを今までに見たことがなかったので、最初は魚だろうと思いました。けれど、肋骨らしき骨があることと、魚の鱗のようなものがなくイルカのように黒くて滑らか肌をしていることから、海棲哺乳類であると考え直しました。この生き物を記録としてカメラに収めると、ワシやカラスたちが食事を続けられるように急いで車に戻りました。
帰ってきてから知り合いの学芸員さんにこの生き物の写真を送ってみました。学芸員さんによると「ネズミイルカ」の仲間ではないか、ということでした。ネズミイルカ科かどうかは頭部の形状と歯で分かるそうです。
頭部については他科のイルカと比べて口吻が短く丸みがあります。そして歯については他科のイルカが円錐形であるのに対し、ネズミイルカ科はスペード型(円錐形の歯よりは丸みがある)です。写した写真を見ると頭部に丸みがあるのは分かりましたが歯までは分からなかったので、次の日、調べ直してやろうと同じ場所に行ってみました。しかし、波にさらわれてしまったのか、死骸はもうありませんでした。残念!
オオワシとカラスが食べていた生き物はネズミイルカかっ?!
生き物の死骸を見るのは一般的に気持ちのよいことではないと思います。
でも、死んだ生き物が何であるかを推理し、どんな動物がその生き物の体を食べているのかを調べていって、食物連鎖の一つの繋がりを確かめられた時、野生の世界でどんな最期を迎えたとしても一生懸命に生きた命が必ず還っていく場所があることを実感できます。
以前も書きましたが“人”である私は、自分が食物連鎖の真ん中に入ることなど怖くて想像もしたくないです。けれど、現在サロベツ原野で見られる野生生物たちの生きる様子を通して、改めて様々な命に生かされていることを教えられています。
(注意!)
生き物の死骸を調べることのおもしろさに触れましたが、北海道では、ヒグマなど人間を襲うこともある動物が食べているものに近づくこと、ヒグマがいなくてもヒグマが出没する場所で動物の死骸に近づくことは危険です!ヒグマは戻ってきて餌の続きを食べることが多い上に、自分のものに対する執着心が非常に強いです。餌を取られると思って襲ってくることがありますので、このような危険がある場所では絶対に死骸に近づかないようにしてください!