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北海道地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [北海道地区]

とうやこタイム~火山~

2009年12月16日
洞爺湖
 とうやこタイムとは、洞爺湖温泉小学校の先生が名付けた「洞爺湖の自然」を学習する時間のこと。今年、加藤ARが今まで行ってきた地元小学校に向けての外来生物の学習やサクラマス学習なども“とうやこタイム”のひとつです。そのつながりを受けて、洞爺湖の自然の一部である「火山」をテーマにした学習ができないかというお話があり洞爺湖温泉小学校の4年生と一緒に2回シリーズで火山学習を行うことになりました。

「火山」と一言にいっても、地球単位の話を子どもたちへいったいどのような切り口で話していけば良いのかということで大変悩みました。平成19年度に洞爺湖温泉小学校5・6年生を対象に子どもパークレンジャー事業で「火山」をテーマに3回行ったこともあり、その時の内容を参考にしたり、火山について調べていくうちにわからなくなればその都度、火山に詳しい先生へしつこいほど何度も確認しました。でも、私がこの地に来て、洞爺湖を初めて見て、また有珠山に登ったりして目の前に立ち上る噴気や火口を見て感じたのは、やはり「地球が活動をしている」ということでした。その感動は今でも忘れませんが、その感動は、「どのようにしてこの噴気や火口が出来て、どのように大地が変化するのか?」といったような“興味”へと変わってきました。それを思い出した時に、“火山”を伝えるには、まずは、あまり難しいことは抜きにして、子どもたちには実際に歩いて自分の目で確認し“感”じてもらい、いずれ“興味”から“探求心”へ変わればいいということでした。そんなこんなで、それを補う手作りの資料をたくさん抱え、今までの地域で行われてきた学習会のメモや書籍、火山の先生から聞いた話などを頭にまとめて、火山学習を行うこととなりました。

1回目は「生きてる火山を感じよう!」というテーマで行いました。学校の学習では有珠山については多少触れるものの、火山のメカニズムまでは授業には組み込まれないようで、「いったい火山ってなんなんだ?」ということを伝えるため、コカ・コーラを利用したマグマの噴き出す様子を再現した実験や、地球が出来た時から、洞爺湖が出来た時、そして今といった時間をメジャーを使って地球の時間幅を知ってもらえるように工夫したりして伝えました。そして早速、有珠山へ行きました。まずは地殻変動をしたポイントで、地面を触ってもらいました。「なぜ温かいの?」「マグマ!?」「そう!マグマが近くにあるんだね。」地熱の温度を温度計で子どもたちは「すげー!熱い。こっちの方がもっと熱い。」といいながら地球には体温があることを実感してもらいました。


噴気地帯にて。

その後、有珠山の銀沼火口を見学(※1)しました。銀沼火口では1977年~78年の噴火によって出来た地層を見ることができます。その縞模様に見える地層は、上空から降下した噴石や火山礫・火山灰、地表を流れ拡がった火砕サージ、そして軽石の堆積物です。そして被災した樹木もところどころ埋まっています。またその際に大地が約180mも隆起し(沈降もあり)有珠新山を作りました。地球が生きている証拠を子ども達は目の前で見ることになります。


銀沼火口を見学。背後には、有珠新山と大有珠が見える。

 その目には有珠山がどのように映ったでしょうか。噴気地帯も見学し、最後には洞爺湖や羊蹄山、昭和新山を望むことが出来る場所へ行きました。さらにここでの子どもたちはずっと絶叫していました。「俺の家あの辺」「あそこが学校」とか言いながら、自分の住んでいる場所や学校がどんな所なのかを再確認したようです。洞爺湖も約11万年前大量のマグマを噴き出す火砕流が発生し大きなくぼ地に水が溜まってできました。その洞爺湖は日頃、自分の目線の位置でしか見ていなかったものが、眼下に見え、絶叫どおり、言葉にはならずとも“すごい場所に住んでいる”ということは感じてもらえたのではないでしょうか。


羊蹄山と洞爺湖を見てみんなは絶叫した。

 ここ最近、子どもたちがゲームを一人一台持っているのを見かけます。そういったゲームの中では非現実の世界が広がります。そのような様子を日頃、目にするといつも思うのは、“現実にある現象”を自分の目でそして足で確かめて体で感じてほしいということです。
 ここに住む子どもたちは、身近に貴重な自然があるというのはとても恵まれたことです。しかも歩いて行ける距離にあります。子どもたちには子どもたちなりに自然を感じているのかもしれませんが、さらにその自然への窓口を広げ、感じてもらうことがこれからも大切だと思っています。

※1 有珠山の一部(銀沼火口など)は立入制限区域となっており、一般の立入はできません。