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北海道地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [北海道地区]

集合!を観察

2009年12月25日
釧路湿原
釧路湿原もうっすらと雪化粧。
街中の師走の慌ただしさとは正反対に、お客さんに滅多に会わない静かな時期を迎えていますが、フィールドは日々変化があります。
冬も国立公園内を定期的に巡回してフィールド情報を収集しています。
むしろ動物に関しては、冬は「集合」する動物がいるので、観察ネタにこと欠きません。

2009年もいよいよ終わり。
今年の巡視納めということで、釧路湿原でも一番人気のビュースポット、細岡展望台へ。



最高に良い天気。
釧路川の蛇行、その向こうには隣の阿寒国立公園の山々が見えます。
(これが細岡展望台の人気の理由です。)

さて、展望を楽しんだところで、定位置におもむろに望遠鏡を設置。
右手にはカウンターを持ち、さあカウント開始!

カウント対象はエゾシカです。

望遠鏡を覗くと・・・



黒い点がみんなエゾシカです。
カウント途中にお客さんがいらっしゃると、ちょっと望遠鏡をのぞいてもらっています。
一見枯れ草色の景色の中に、多くのエゾシカがいることを知ると、皆さん驚いています。
(保護色なのでなかなか気がつかないようです。もう少し雪が積もると探しやすくなります。)
展望台からの視野200°強の範囲、少しずつ角度をずらしながら眺めていくと、こんな風に所々にエゾシカが「集合」しています。

寒さの割に雪が少ない釧路湿原は、エゾシカにとって餌となる植物を探しやすい環境です。
また湿原の中には所々ハンノキの林が、周辺の丘陵地には樹林帯があり、風雪を除けて休む場所にも困りません。
格好の越冬地というわけです。

よく見るとエゾシカが集合しているのは、釧路湿原の中でもあまり草丈の高くないところ、スゲなどの植生の所です。
遠目には同じように見えますが、シカが細かな植生の違いに気づかせてくれます。

近年、北海道ではエゾシカが増加し、植生の破壊などが各地で深刻な問題となっています。
釧路湿原での越冬は昔からエゾシカがとっていた行動、自然の営みの一環であったはずですが、最近は植生への食圧や踏圧などの影響が心配されています。

さて目の前にして数えているエゾシカは、湿原が「養える」数より多いのか、少ないのか。
(因みに上の写真の1群れで約40頭・・・)
一定の方法で観察を続けることは、それを知る手がかりの一つだと思っています。





おまけです。
この季節「集合」する代表といえば、やはりタンチョウ。
(写真は雪が降るちょっと前のものです)
釧路湿原周辺には、タンチョウを保護する目的で、冬場の餌不足解消のために公的に給餌が行われている場所があります。
今年もたくさんのタンチョウが集まっています。


***

色々な野生動物が集合している釧路湿原に、年末年始を利用して来訪される方もいらっしゃると思います。

雪が少なく道路が乾いているように見えても、寒さの厳しい釧路地方では朝夕の時間帯や日中でも日陰は路面が凍り滑りやすくなります。
また、エゾシカが道路を横切ったり、タンチョウが道路の近くを飛んだりすることもあります。

車の運転には(ご自身のためにも動物のためにも)十分ご注意下さい。