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北海道地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [北海道地区]

冬の森を歩く②

2010年03月17日
稚内
 円山の森を散策した後、私たちは稚咲内砂丘林に入りました。
夏場は沼地である場所も今は開けた雪原になっています。

 雪原を横切り森に入ってまもなく、サブレンジャーが早速おもしろいものを発見しました。落ちた枯れ枝についたモスグリーン色の小さな塊。細かく枝分かれした茎とも葉ともつかないような組織が集まってできており、苔のように見えます。まるで“愛・地球博”のマスコットキャラクター、“モリゾー&キッコロ”みたいです。
名前は分かりませんが“地衣類”の一種と思われました。
“地衣類”とは、菌類と藻類の共生体の総称であり、光合成もできるそうです。共生体とか菌類とか聞くと、生活様式も形態も人間とはかけ離れすぎてなかなかどんな生き物なのか想像がつきません。ひとまず、変わったやつはジ~ッと観察してみるに限ります。よ~く見ると、細かい枝の間から平べったいキノコの頭のような部位がちょんちょんと突き出ています。これは胞子をつくっている子実体だと思われました。
 地衣類は木の幹にもありました。幹の微妙な色合いや模様の変化は着生している地衣類の種類の変化によることが多い気がします。私たちはしばしば立ち止まって木の幹を観察しました。黒い地衣類、白い地衣類、オレンジ色の子実体を持つ地衣類、組織の枝分かれの具合も様々でした。虫眼鏡で覗くと子実体や菌糸が大きく見えて、“風の谷のナウシカ”に出てくる腐界の風景のよう。


枯れて落ちた小枝についていた地衣類(よくみると胞子をつくって飛ばすための子実体が見えます。)

 クマゲラが餌を探してトドマツの幹にあけた穴も見つけました。美味しい虫がたっぷりいそうな木だったのか、幹には機関銃で撃たれたように沢山の穴があいていました。クマゲラが盛んにつついた様子が目に浮かぶようです。
 そして、上部が折れてしまった木の上を覗き込んでみると、折れた部分は切り立った岩山のようになっており、苔に覆われて鮮やかな緑色をしていました。シダも生えていてまるで日本庭園のミニチュアような世界が創られていました。その他にも、エゾシカの糞塊や落ちているヤドリギの枝、サルノコシカケの仲間のキノコなどを観察しました。ヤドリギの枝は数列が書けそうなくらい規則正しい出方をしているのが分かりましたし、サルノコシカケの裏側の管孔と呼ばれる構造を虫眼鏡で拡大すると、胞子を飛ばすための小さな小さな穴が無数に空いているのを確認することができました。


左:クマゲラが餌を求めてつついた跡
右上:日本庭園のミニチュアのような切り株上 右下:サルノコシカケの裏側を虫眼鏡でのぞく

 今回の散策では、サブレンジャーたちと自然に対する素直な感性を分け合いながら冬の森を楽しめたような気がします。幾つになっても自然が創りだした美しいもの、おもしろいものを見いだす目を持ち続けていたいと感じた一日でした。



ヤドリギは数列を描く!2のN乗!?(ところどころ折れているものの枝の分岐点では2つずつ枝が伸びていく?)