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北海道地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [北海道地区]

命と命

2010年04月01日
洞爺湖

4月。4年目の僕には最終年度。残る1年、精一杯頑張ろうと思う。


3月某日、保護された野生生物の引き取りで渡島管内の森町まで。

ここ洞爺湖自然保護官事務所は、道内のレンジャー事務所の中では最南に位置し、例えば渡島方面で生物が保護・捕獲された場合、現地まで引き取りに行くのは当所の担当ということになる。

これまで、クマタカ、ハヤブサ、オジロワシなどの猛禽類のほか、特定外来生物であるカミツキガメの引き取りなどで何度か(たしかこの3年間で6~7回くらい)、函館や七飯など、渡島方面へ車を走らせている。

今回は函館市内で保護されたハヤブサ。渡島支庁の方が森まで運んでくれたので、運転距離はかなり短くなった。カラスの群れに追いかけられ、学校のガラス窓にぶつかり動けなくなっていたところを保護されたとのこと。カラスが強いのかハヤブサが弱いのか、大きくて強い鳥類の王、という猛禽類のイメージを覆す感じだが、ハヤブサはワシなどに比べるとそれほど大型の鳥ではない。見たところ左肩の辺りがおかしな形で盛り上がっており、上手く飛べないようだった。

たいていの場合、引き取った生物は洞爺湖まで運んだあと、苫小牧の自然保護官が洞爺湖まで引き取りに来てリレーする。そしてウトナイ湖野生鳥獣保護センターに収容され、そこで獣医師の診断のもとリハビリ、リリースされる(前回のオジロワシは苫小牧とリレーできなかったため、洞爺湖→七飯→苫小牧→洞爺湖という長距離となり、保護官と交代で運転しながら運んだ)。



(2010年1月、大沼にて保護されたオジロワシ)



(ウトナイ湖野生鳥獣保護センターにて。鳥類専用の保護ラップにくるまれ、診察される)


これらの猛禽類のように、種の保存法で指定される希少種や、鳥獣保護法で指定される希少鳥獣および国指定鳥獣保護区で発見された全ての鳥獣が、環境省が収容すべき対象種となる。種の保存法では鳥類のほか、哺乳類5種、爬虫類・両生類が1種ずつ、魚類4種、昆虫類10種、植物23種が希少種として指定されているが、鳥類は38種と圧倒的に種数が多い。

このように希少種として保護され、人間が自然復帰の手助けをしてくれる生きものがいる反面、先述したカミツキガメなどの特定外来生物が引き取られた先に待つのは「死」だ。

2009年6月に函館警察署まで引き取りに行ったカミツキガメ。路上をトコトコ歩いていたところを一般の方が捕獲して警察署に届けた。その後、希少種と同じように僕が洞爺湖まで運んだあと苫小牧へリレーされ、そこで炭酸ガスによる殺処分となった。



(飼育・運搬・譲渡などに規制がかかる特定外来生物)


どうしてカミツキガメが函館の路上に?

原産はアメリカ大陸。1960年代以降にペットとして輸入されているが、2005年、特定外来生物の指定を受けたことにより、ペットとしての飼育は不可能となったため大量遺棄されたと言われている。

救われる命と断ち切られる命。

人間にそんなことを決める資格があるのだろうか?仕事柄、僕が必要以上に敏感なだけなのだろうか?

3月末の春近い道南。快晴の噴火湾と駒ヶ岳を眺めつつ、助手席の段ボールの中で時折ゴソゴソ動くハヤブサを気に掛けながら、複雑な気持ちで洞爺湖に戻った。