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北海道地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [北海道地区]

春に向かって (※生々しい写真が苦手な方は注意してください)

2010年04月07日
羅臼
半年近くも続いた北海道の冬も、季節は春へと変わりつつあります。
少しずつ気温が高くなり、日当たりの良い場所では、雪に覆われていた笹やフキノトウが顔を出しています。

春はいつも以上に「命の循環」を目にする季節です。木々や草花は芽吹き、厳しい冬に耐えた動物には子が生まれ、また、一方で冬を越えられずに死んでゆく命も数多くあります。

目まぐるしい変化を迎える春・・・には少し時期が早いのですが、先日まさに命の循環を目の当たりにしました。発見したのはエゾシカの死体(※)に集まるキツネやカラスの姿でした。
(※エゾシカは積雪の多い場所では餌が採りにくくなり、体力の少ない若い個体や、繁殖期の秋にケンカに明け暮れたオス達は、新たな春を迎えられないことがあります。)



すぐ近くにいた私の姿を気にする事もなく、食事を続けるキタキツネ。
久しぶりのごちそうに、舌鼓を打っているのでしょうか!?
しかもその後満腹になったのか、シカの体の上で暖かそうに眠ってしまいました。




キツネが食事を終えると、今度はカラスたちが集まってきました。一団の中には、「カポンカポン」と独特の鳴き声を出すことで知られる、ワタリガラス(越冬個体・写真左)も混ざっていました。


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このような光景は一見残酷なようにも見えますが、厳しい冬を耐え抜く野生動物達にとって、エゾシカの死体は重要な食料となり、食べる側の動物の命を支えています。こうした現場を目の当たりにすると、自然の中での「命の循環」は、「食う」、「食われる」の関係によって成り立っているということを、改めて強く実感させられます。

野生動物大国の知床にいれば、こうした光景も特に珍しいわけではないのですが、人間などには頼らずに、厳しい自然環境を生き抜く野生動物の姿には凄みがあり、知床という場所の特異さを改めて感じてしまいました。
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◆知床に来る皆様へ
季節は春にまっしぐら・・・と言いたいところですが、まだまだ雪が降る可能性があります。道路が滑ることは十分に考えられますので、くれぐれもお気を付けてお越し下さい。