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北海道地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [北海道地区]

遅い春

2010年06月03日
稚内
 今年の春はなかなか暖かくならず、冷たい雨混じりの風が吹く日もありました。
そのためか、原野の草花の生長も例年より遅い気がします。
 しかし、しぶとい寒さに負けない逞しさを持つ最北の植物たちは、
薄茶色の枯れ草の間から活動を始めていました。
 5月下旬。
サロベツ原生花園の木道をゆっくり一巡りしてみると、
ホロムイツツジの花が沢山の白い鈴のように釣り下がり、満開になっているのに気づきました。
遠目には目立たない小さな花には控えめだけど強い印象を受けます。
まだ茎が短いショウジョウバカマの薄紫色の花もところどころに咲いています。
種をつける頃には花を頂いた茎は長くなっています。花は真っ直ぐ空を見上げていました。
 そして、視線をもう少し低くしてみると今度はヒメシャクナゲが蕾をつけていることに気づきます。
ヒメシャクナゲの蕾は大変小さいですが、蕾にギュッと凝縮されたピンク色が鮮やかでとても美しく見えます。


満開のホロムイツツジ(2010/5/21)

 春が訪れ、季節が進んでいることを告げてくれるのは花の開花だけではありません。
原生花園では一番早く、4月の下旬には雄花をつけていたヤチヤナギ(枝先についた花芽は鱗片に覆われており、鱗片が開くと、その間から小さな小さな黄色い花が無数にのぞきます)は、次は葉を広げる準備をしているようです。萌黄色の葉芽が膨らんでいました。
 パッと見ただけでは地味で色合いが乏しく思われがちな湿原にも春はやって来ていました。
その日は寒さに縮こまっていないで、感覚を鋭くして春を探してみようと思った一日でした。
それから十数日経ち、今度はヒメシャクナゲの蕾がほころび始めました。
湿原が次はどんな表情を見せてくれるのか、とても楽しみです。


ヒメシャクナゲ(上:2010/5/21、下:2010/5/31)