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北海道地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [北海道地区]

感動を共有する時間

2010年06月29日
洞爺湖
 
先月、地元の洞爺湖温泉小学校4年生のこどもたちと「火山」をテーマに3回の学習を行いました。今年の4年生は8人で少数ですが、いつも元気いっぱいで、特に野外へ出かける時のテンションは最高潮です!
  まずは、洞爺湖ビジターセンターで洞爺湖と有珠山の生い立ちについて勉強しました。子どもたちは目の前にある巨大なカルデラ(噴火などによってできた直径が2kmを超える窪地のこと:洞爺湖はその窪地に水がたまってできたカルデラ湖)がどのようにできたか想像するのは少し難しいことのようです。でも自分たちに生い立ちがあるように、洞爺湖や有珠山にもきちんと生い立ちがあることを知りました。


マグマの仕組みを洞爺湖ビジターセンターパネルで学習しました。
「実は日本には有珠山と同じように活火山が多く、決して有珠山だけが特別なのではないんだよ。」
 噴火の仕組みを知るために、コーラを使って実験も行いました。


2回目、3回目は早速、火山を体感する野外学習です。過去100年の間にも4回噴火が起きている有珠山で、10年前に活動してできた西山山麓火口群と金比羅山麓火口群を見に行きました。8人のこどもたちはどちらもほとんど歩いたことがないようです。地元にこんなすばらしい自然があるのに、今まで歩いたことがないという事実は最初は寂しく感じました。でも水蒸気をあげる火口、地熱のある地面や盛り上がった地面、コバルトブルーの水をたたえる大きな火口やその周りに住む生きものを初めて見るこどもたちは今日、どんな気持ちでそれらを見るのかなあと、ある意味、子どもたちとは違ったわくわく感もありました。


地熱を測ったり、世界でもなかなか見ることができない地溝(グラーベン)を見る。※地溝(グラーベン)とは、互いに向き合った一対の階段状の断層群ができて、見かけ上、中央部が落ち込んだように見える地形のこと。ここではマグマの上昇によってできた。

ある子から火口から出てくる白い煙を見て「あの煙は何なのか?」という質問がありました。大人であれば「水蒸気です。ここには地熱があって・・・」のように簡単に答えは済む時もあるのですが、子どもたちには「煙」が「水蒸気」なのではなく、子どもたちが言う「煙」がなぜ出てくるのか?について簡単そうで難しい質問にわかりやすく説明しなければなりません。いつもそのためにイラストを描いた画用紙を持っていったり、写真を使ったりします。また興味を引き出すために、双眼鏡で発見させたり、温度計で地熱を測ったりといったこともします。当日を大きく左右するこの下準備は大変ではあるけれど、自分にとっても勉強になっていて、子どもたちはどんなことに興味がわくのだろう?と想像しながら作成します。
  自然の中を歩く時、どんな言葉よりも見て触って感じることが一番の心に残る感動となり、またそれが興味へとつながります。これは自分の経験から感じていることなのですが、だからこそ、こどもたち自身が自然の不思議を発見したり、自然の姿に感動する時、自分もこどもたちと共に発見や感動を共有できる時間がとても幸せに感じます。豊かな地域の自然を知ることで自分たちの身の回りにある自然へ興味を持ってくれるよう今後も、少しでもお手伝いできたらいいなと思っています。


2000年噴火でできた金比羅山麓火口群の有くん火口。「火口から飛び出した噴石の層も見ることができるんだよ。」