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北海道地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [北海道地区]

【日本のいのち、つないでいこう! COP10まで100日前】

2010年07月09日
上川
高山蝶の密猟

 新聞報道等でご存じの方もいらっしゃるでしょうが、大雪山系で天然記念物の高山蝶を違法に捕獲していた人が警察に捕まりました。ウスバキチョウ、アサヒヒョウモン、ダイセツタカネヒカゲの三種類で約170頭も違法採取されていました。


違法に捕獲された蝶
(写真はいずれも旭川東署提供)


 後日、私も違法捕獲の現場へ行き、2時間程いましましたが、その間にダイセツタカネヒカゲ1頭のみしか目撃することができませんでした。聞いた話によると、そもそもとても数が少ない蝶だそうです。
 蝶は成虫になるまで3回脱皮しなければなりませんが、高山蝶は1年に1回しか脱皮しないそうです。ウスバキチョウ、ダイセツタカネヒカゲは卵から羽化するまで足かけ3年かかります。来年は例年通り観察することができたとして3年後はどうなるでしょう?もし産卵する前に捕獲されていたとしたら個体数は激減するでしょう。高山蝶の幼虫を食べる種もいます。幼虫になるべき卵が産まれていなければ少なからず影響があるはずです。高山帯でも食物連鎖は立派に成立しています。極端に言えば生態系が崩れ生物の多様性も失われてしまいます。




包み紙に入れられ潰れてしまったウスバキチョウとアサヒヒョウモン

 今回違法に捕獲された蝶は氷河期から生息し、温暖化が進むにつれて寒冷な気象条件を求め高山帯へと生息地を移して行きました。現在では厳しい自然環境下の高山帯のごくわずかな限られた場所にしか生息していません。蝶が好きならなおさら数年後、数十年後野生の飛んでいる蝶が見られるように守って行かなければなりません。