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北海道地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [北海道地区]

四十三山 森の観察会

2010年07月22日
洞爺湖
  先月、火山活動によって誕生した四十三山(明治新山)で自然ふれあい行事を行いました。今年は誕生して100年目の節目となります。噴火当時の写真を見ると火口周辺には植物は見られません。また火口内部からは噴気があがっている様子さえ見られます。でも噴火により荒れ地となった四十三山は100年たち、現在では緑豊かな森となっています。その森はどのように変化してきたのか?またこれからどのように変化していくのか?を想像しながら参加者21名と歩きました。


噴火当時の四十三山。(四十三山歩道解説板より)
現在、噴気は一部しか見られません。

  森についてお話していただくのは元林業普及指導員の鈴木 隆さんです。今回のキーポイントになる木はこの時期に空気中にふわふわと雪のように種子を飛ばすドロノキ(ドロヤナギ)の種子です。みなさんに聞いてみると「あ~よく飛んでいるわ!!」という声。実は、10年前の2000年噴火の際にできた金比羅山麓火口の斜面には約2mほどのドロノキが育っています。他にもイタドリやケヤマハンノキ、ウダイカンバ、カラマツなどが見られます。このドロノキは風に飛ばされた種が火口の小さな沢筋に定着しています。きっと四十三山も現在の金比羅火口のように噴火後にドロノキが入り、育っていったと想像できます。四十三山のドロノキはいったいどのくらいの大きさの木に成長しているでしょうか?


講師の鈴木さん。

 歩き始めてまもなくドロノキの大木が見ることができます。でも風によって運ばれてくる木ばかりではありません。ミズナラの木も多くはありませんが見ることができます。ミズナラの木はご存じドングリから芽を出します。そのドングリはおそらく小動物によって少しずつ山の上へ上へと、または雨に流れて山の下へと種が運ばれていきます。風や雨、または小動物などによって種が運ばれたりして森が作られていくことがわかります。また、四十三山では昭和40年代にトドマツなどの植林された場所がいくつかあります。人によって植えられた人工林と、歩道を挟んで、人の手を加えない自然の力によって変化してきた天然林を見ることのできる場所があります。かたや緑まぶしく葉をいっぱい広げ、太い木から細い木までさまざまな天然林。手入れのされていない人工林の方はといえば、同じ1種類の木で木の太さは細いまま、そして森の中は暗い印象です。それだけ天然林と手入れのされていない人工林では違いがあります。四十三山の天然林では講師鈴木さんによると少なくとも確認しただけで約30種類以上の木が現在見られるそうです。でも常に同じ木の種類があるのではなく、木は少しずつ種類を変化させていきます。今まさに初めの方に定着したはずのドロノキが倒れ初め、少しずつカツラやミズナラといった木に変化しているようです。それはすべて自然の力で変化していき、今の四十三山もさらにまた100年経てば木の種類(や優先している木の種類)も変化していることでしょう。私たちは普段なかなかそのような森の変化に気づくことはありません。じっくり森の姿を見てみると、いろんな種類の葉っぱを見ることができます。噴火によってできる火口などの自然景観とともに、何気なく見ている植物が長い時間をかけて変化しているのだと思うと、“生きもの”の生きる生命力を感じます。


緑豊かな四十三山の森を歩く参加者。
  
  過去100年の間に4回噴火している有珠山は、噴火後の植生(植物)がどのように変化するのかをまさに体感できる貴重な場所であり、また植物が変化することによってそこで生活する動物も変わってくるでしょう。火山という現象のみならず、動植物なども含めた地域自然の魅力を再発見できた行事でした。